鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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ドイツっ娘たちの登場です……が、ユーちゃんはお休みです


二十八皿目:ドイツ料理が食べたいの!

「んー、こんなもんかな。どう思う?」

 

「思ったよりも酸っぱくないですね。でも美味しいと思います」

 

「もう少し熟成させて発酵が進めば、酸味も強くなると思うけど。初めて作ったにしてはまあまあかな」

 

 今週手伝いに来てくれている吹雪も美味しいと言ってくれたので、とりあえずオッケーだろう。今俺たちが味見していたのは、一週間寝かせたザワークラウトだ。消毒した保存瓶に、千切りにして塩もみしたキャベツとローレル、キャラウェイシードを入れて漬け込むだけのドイツの家庭の味だ。

 

 今日はこのほかに、この島で作っているヴルスト(ソーセージ)とじゃがいもとベーコンのチーズ焼き、アイントプフを作る予定だ。ドイツパンはライ麦もないし、今回はバゲットで我慢してもらおう。

 

 とまぁ今日はドイツ料理を色々と作るつもりなわけだけれど、それはどうしてかって言うと、この間ドイツからあちらの艦を元にした艦娘が派遣されてきたそうで、挨拶に来た時にドイツ料理をリクエストされたという訳だ。

 

 他の国にも艦娘がいたことが驚きだったんだけど、日本ほど多くは無いが、ドイツのほかにもアメリカやイタリアの子も居る……と聞いて、そう言えばユーちゃんもドイツだと言っていたのを思い出した。

 

 時間が経って慣れてくればそうでもないのかもしれないけど、来て間もないということもあってホームシック的な感じなのだろうと思い、ドイツ料理を作ることを了承した。とは言え、ドイツ料理はそれこそさわり程度しかやったことが無かったので、改めてどんなものがあるのか調べてみた。ジャーマンポテトがドイツ料理じゃないとは驚きだ。元になったと思われる、似たようなものはあるらしいが……ナポリタンみたいなもんか。

 

 ともあれ、彼女たちが来る前にある程度仕上げてしまおう。ヴルストとチーズ焼きは来てからの方がいいので、先にアイントプフを作っておく。

 

 小さめのサイコロ状に切った玉ねぎとニンジンをオリーブオイルで炒め、その後同様に切ったじゃがいもとレンズ豆を加えてさらに炒め、次にブイヨンを加えて煮込んでいく。ある程度具材が柔らかくなったところで太めのヴルストをゴロっと入れたら程よく煮込んで完成。

 

 以前作ったポトフとも似た料理だけれど、あっちはフランス生まれ。それにこのアイントプフは、ドイツ軍とも関りが深い食べ物だったりする。

 

 ドイツでは家の数だけレシピがあると言われているこの料理は、簡単に作れることから野戦糧食としても食べられていたそうで、かのヒトラーも『アイントプフの日曜日』なる政策を打ち出したことがあるらしい。

 

 とまぁ、こういった歴史的背景もあり、家庭の味ということもありで今回作ることにしたのだ……野戦糧食ってことは陸軍?まぁ、簡単に作れるから軍艦でも作ってたよね、多分。

 

「いい匂いですねー。おいしそうです」

 

 他のお客さんの料理もやりつつだったので、吹雪にも見てもらいながら煮込んでいるとカランカランと扉の開く音が聞こえた。

 

「Guten Abentテンチョーサン!」

 

「コンバンワ!」

 

「コ、コンバンワ」

 

 入ってきたのは重巡洋艦だというプリンツさんと駆逐艦のレーベちゃんにマックスちゃん。三人を席に案内して、料理を出す前にちょっと気になってたことを聞いてみることにした。

 

「ドイツだと晩ごはんは軽く済ませるって聞いたんだけど、量はどうする?少なめにしておくかい?」

 

 ドイツ料理を調べているときに知ったんだけど、ドイツではお昼ごはんとおやつをしっかり食べる代わりに晩ごはんはあまり食べないらしいのだ。日本の習慣では考えられないけれど、夜は寝るだけだからと言われれば……わからなくもないかな?と、そんな俺の質問に答えてくれたのはプリンツさんだった。

 

「大丈夫ですよ。『ゴーにはいればゴーにしたがえ』最近は皆と同じように夜も食べてます!」

 

 若干発音がおかしかった気もするけど、そういう事なら心配はいらないね。少々お待ちくださいとその場を離れ厨房に戻る。

 

「あ、店長さん。注文はひと段落したみたいですけど、何かお手伝いすることありますか?」

 

 すると、煮込み終わった吹雪が声をかけてきたので、フランクフルトやハーブを練り込んだもの等の各種ヴルストを焼いてもらうことにする。彼女は川内や浦風の様に元々料理ができるという訳ではないが、とても真面目で働き者なのでこちらとしてもかなり助かっている。ヴルストもきっちり焼き加減を見ながら焼いてくれるだろう。

 

「はい!吹雪、頑張ります!」

 

 うんうん、良い返事だ。その間に俺はチーズ焼きを作ってしまおう。

 

 厚切りのベーコンを太めの短冊切りにしてフライパンで炒めていく。ベーコンから脂が出てきたところで一度ベーコンを取り出し、その脂でスライスしたじゃがいもとアスパラを炒めていく。じゃがいもに火が通り、ベーコンの脂を良い感じに吸わせたところでオリーブオイルを塗った耐熱容器にベーコンと一緒に入れて、上からたっぷりのシュレッドチーズと粗びきコショウをかけてオーブンで焼いていく。具材の方は火が通っているので、チーズが溶けて軽く焦げ目がついたら出来上がりだ。

 

 ヴルストも良い感じに焼けているようで、パチッパチッと皮が弾ける音が聞こえてくる。時折吹雪の「きゃっ」「ひゃうっ」なんて声も聞こえてくるのはご愛敬だろう。

 

 焼きあがったヴルストは、たっぷりのザワークラウトと一緒にお皿に盛り、チーズ焼き、スープ皿に入れたアイントプフ、スライスしたバゲットと一緒に持って行く。

 

「お待たせしました。上手くできてるかわからないけど、ご注文のドイツ料理です。パンはバゲットで勘弁してね」

 

 そう言いながら三人の前にお皿を並べていくと、三人から揃って「ワーォ」という声が漏れた。こういうとこは外国人っぽいね。

その料理のなかでプリンツさんがまず口に運んだのはフランクフルトだった。フォークを刺して豪快にかぶりつく。

 

「ンー!Lecker!Bierが欲しくなりますね!」

 

 ん?ビールは分かるけど、レッカーってなに?とちょっと首をかしげていたらレーベちゃんが教えてくれた。

 

「店長、Leckerは美味しいって意味だよ。このザワークラウトも手作りだよね?とても美味しいよ」

 

 そっか、良かった。ちょっと酸味が弱いかと思ったけど、ザワークラウトもうまくできてるみたいだ。そして、物静かなマックスちゃんを見ると、一さじ一さじ味わいながらアイントプフを口にしていた。

 

 次に彼女たちはチーズ焼きに手を伸ばす。できることならシュレッドチーズをかけて焼くのではなく、お客さんの目の前で溶かしたラクレットチーズをかけて提供したいところなのだけれど、まずラクレットが手に入らないからね……生産施設でも各種チーズを作り始めているところらしいから、そのうち手に入るようになるのかな?

 

 そのチーズ焼きも彼女たちは美味しそうに食べてくれている。そのまま食べたりバゲットに乗せて食べたり……笑顔が途切れることがないのが嬉しい。

 

 そうして楽しそうに食事を終えて、いよいよ帰ろうかと会計をしながらプリンツさんがお礼を言ってきた。

 

「テンチョーサン。今日はほんとに感謝ね!レーベやマックスはいてくれたけど、ビスマルクお姉さまがいなくて最近ちょっと寂しくなってたけど、テンチョーサンの料理を食べたらなんだか元気出てきました!また作ってもらえます?」

 

 今はユーやハチもいるけど、そのうちいなくなっちゃうし……と俯いたのがどことなく寂しそうに見えた。だからって訳じゃないけど、プリンツさんの申し出を快諾する。

 

「ああ、もちろん。それに今日のヴルストは商店街のお肉屋さんでも売ってるから買いに行くといいよ」

 

「Danke Danke!また食べに来ます!Wurstも買いに行ってみるね!」

 

 さっきまでの表情と打って変わって花が咲いたような笑顔でそう言うと、手を振りながら出ていった。確かダンケってありがとうだったよな。うん、それくらいは知ってる。レーベちゃんは丁寧にお辞儀してくれて、物静かなマックスちゃんも一緒に手を振ってくれた。

 

「三人とも嬉しそうでしたね」

 

 横で見ていた吹雪もそう言ってくれた。あまり作ったことない料理でちょっと自信なかったけど、満足してもらえたみたいで良かった。これからも頑張ってもらいたいね。

 

 

 ……後から聞いた話なのだけど、商店街の肉屋に毎回大量のソーセージを買いに来る女の子の常連客ができたとかできなかったとか……

 




外国艦のホームシックネタも定番かもしれませんが、やっておきたかったので……
そして、本来であればイベントで入手のプリンツですが
ドイツからの派遣ということでレーベ、マックスと共に登場です
ただしビス子はまだうちに居ないので、出て来ません……くそぅ


お読みいただきありがとうございました
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