鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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連続投稿2/3です


二皿目:金剛姉妹と初めての喫茶店2

まずはスープの準備から。今朝仕込んでおいた玉ねぎを炒めるのだが、ここであまり時間をかけて色が濃くなりすぎるとスープの色味も濃くなりすぎるので注意する。いい感じに色が付いたところで裏ごしコーンを入れてこげないようにサッと混ぜたら、さらに牛乳を入れながらのばしていく。そこにコンソメを入れて溶かし、塩コショウで味を調えたらとりあえずは完成だ。あとは盛り付ける前に軽く温めなおせばオーケー。

 

 続いて、一つ目のメインに取り掛かる。スープづくりと並行して刻んでおいた野菜と鶏肉を炒めていく。野菜はシンプルに玉ねぎ・ピーマン・マッシュルームで、ここでも玉ねぎ大活躍だ。しっかり火が通ったところで、塩コショウを軽く振ったらご飯とケチャップを投入。フライパンをあおりながら強火で一気に炒めながら絡めて味をつける。

 

 このケチャップで味付けをするときは短時間で一気にやらないと、ごはんがべちゃっとする上に、トマトの風味も消えてしまうので注意だ。しっかりと味が付いたところで一度ボウルに開けておいておく。

 

 チキンライスを作っている間に沸騰させておいたお湯に塩とパスタを投入。さらにパスタを茹でている間に具材を炒めていく。今度は玉ねぎ・ピーマン・マッシュルーム・ソーセージだ……って切り方は違うが、さっきとほとんど同じなんだよね、味付けもケチャップだし。

 

 という訳で、先ほど同様に具材に火が通ったところで塩コショウを振る。そうこうしているうちにタイミングよく茹で上がったパスタを、良く水気を切ってから投入し、ケチャップをかける。チキンライス同様に炒めながら手早くパスタに絡ませて、喫茶店の定番メニューその一『ナポリタン』の完成。これはこれで盛り付けたら、冷めないうちにもう一つを完成させなくては。

 

 しっかりと熱したフライパンにバターを入れ、回しながらなじませる。完全に溶けてしまうとすぐに焦げてしまうので、溶け始めたところで、溶き卵を投入。フライパンと菜箸を振りながら、卵に空気を含ませてふわふわにしていく。そのままある程度表面を焼き固めたら、先ほど除けておいたチキンライスを入れて卵でくるむ。リズムよく手首を返しながらフライパンを振って形を整えれば、喫茶店の定番メニューその二『昔ながらのオムライス』の完成。

 

 あとはお皿に乗せて、ケチャップをかけて持って行こう。若い子達にはふわふわ卵の奴の方が人気かもしれないが、喫茶店のオムライスと言えばコレみたいにしっかり卵でくるまれている奴かなって思うんだよな。ま、次からはどっちがいいか聞いてから作るけど。

 

「はいよ、おまちどうさま」

 

 出来上がった料理を温めなおしておいたスープと一緒に持って行く。サラダがないのが残念だけど、葉物を中心にサラダ野菜はまだ入荷がないみたいだし仕方ない。

 

「Wow!これはオムライスとナポリタンですね。Tomato ketchupの香りがおいしそうネー」

 

「えぇ、それにこのコーンスープも……さっそくいただきましょう。お姉さまはどちらになさいますか?」

 

「それはもちろん、ふたりでshareしましょう!」

 

 ま、この仲の良さそうな姉妹ならそうするよな。なんとなく予想できていたので、取り皿を渡す。

 

「あ、ありがとうございます。お姉さま、お取りしますね」

 

「Thank youネ、霧島」

 

「どうぞ、ごゆっくり」

 

 いただきますとスープカップに手を伸ばす二人にそう声をかけて、洗い物を済ませてしまおうと厨房に引っ込む。背後からおいしいという声が聞こえてきて嬉しくなる。その後もあれこれと楽しそうに話しながら食べている様子が厨房まで伝わってくる。こうしているとやっぱり普通の女の子と変わらないな。

 

 洗い物も手早く済ませ、アイスティーを作ってカウンターに戻ると二人とも食べ終わってたみたいだ。お茶を準備するのがちょっと早かったかなと思ったけどちょうどよかったみたいだ。二人の前の皿を下げてアイスティーを出しながら声をかける。

 

「食後のお茶をどうぞ。で、どうでした?」

 

「ハイ!とってもとってもdeliciousでした。ごちそうさまデス。ネ、霧島」

 

「えぇ、マスターさん。とてもおいしかったです。ごちそうさまでした。それにしても、当たり前ですが、レトルトなどとは比べ物にならないですね……」

 

 二人とも満面の笑顔でそう答えてくれた。にしても、レトルトとは比べ物にならないか……最近はレトルトもおいしいものが増えてるから捨てたもんじゃないんだけど、やっぱり出来立てを普段と違う環境で食べるっていうのはおいしさも変わってくるからな。食べてもらえてよかったよ。

 

「霧島、ヒデトさんのお料理をレトルトと比較するなんて失礼デスよ」

 

「し、失礼いたしました!」

 

「いやいや、気にしなくていいよ、レトルト便利だもんね。普段はやっぱりそういう物が中心なの?」

 

「えぇ、我々の鎮守府は駆逐艦のような小さい子が多いですから、私たちに限らずほとんどの艦娘がレトルトやインスタントを利用していることが多いみたいですね。深海棲艦の侵攻以降そういった物も増えましたし」

 

 そうなのだ、霧島さんが言うように奴らが現れて以来、湯煎するだけのレトルトに限らず、缶詰やインスタント食品などが大きな発展を見せた。味はもちろん、保存期間や調理方法、栄養バランスも考えられた様々な商品が生まれていた。初めは非常食としての需要が大きかったかもしれないが、ある程度国内が落ち着いた今でも、その人気は高い……もしかすると家庭での省エネの意識もあるのかもしれない。

 

 ただ、最近では食料事情も侵攻以前に近づいていることもあり、今までの反発からか手作り志向という動きも出てきているそうなので、しばらくすれば落ち着くだろうと言われている。以上ニュースからの受け売りだ。

 

「ですが、最近では料理ができるようになりたいという子達も増えてきまして、鎮守府の方でも作業が落ち着いてきたので、自衛官の方が簡単な料理教室を開いてくれたりもするんですよ」

 

「ワタシは行けなかったデスが、同じおうちの子が先日そのlessonに行きましタ。その日の夜肉じゃがを作ってくれましたが、とてもおいしかったデース」

 

「ほう、それはいいね。じゃぁ、うちでもそのうち料理教室でもやってみようかな」

 

「Oh! それはgood ideaデス!その時はぜひワタシも参加しマス!」

 

 そんな感じで和やかに会話を楽しんでいたが、一つ気になったことを聞いてみた。

 


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