鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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今回は料理描写が無い上に、かなり短いです。
バレンタインって今日だっけ?って程度の認識しかなかったもので……すみません


四十二皿目:鎮守府島のバレンタイン

「ほい、チョコレート」

 

「おう、サンキュー」

 

 いつものように朝食を食べに来たさくらから渡されたそれを、何の気なしに受け取ってしまったけれど、これって結構高級品なんじゃないの?

 

「ふっふっふ。色々と伝手があるのだよ……というか秀人だって製菓用にチョコとかココアとか仕入れてるじゃない?似たようなものよ」

 

 はぁ、なるほど。つってもチョコみたいに原料を輸入に頼っていたものに関してはいまだに価格が高いままだからな。ちょっとドキドキしてしまう……俺たちがガキの頃はこの離島でさえ数十円で買えるようなものもあったのに……

 

「そうか、今日はバレンタインか。最近じゃチョコを贈る方が珍しいらしいけど……ありがたく頂くよ」

 

「うん、ありがたく頂いてちょうだい。つっても、実はうちもその原料の輸送に一枚噛んでてね。割と安く買えたりするから、あんまり気にしなくていいわよ。実際小売価格はまだ高いけど、原価はかなり下がってるらしいから、このバレンタインが終わったあたりで小売価格も下がってくるんじゃないかしらね」

 

 へー、護衛任務かなんかにそう言うのがあるのかな。そういや最近遠距離の護衛任務でしばらく島を離れるなんて子が何人かいたけど、関係あるのだろうか。

 

「そうそう、うちの子達もなんか用意してるみたいだったから、後で持ってくるかもね。ねー雷?」

 

「あー!だめよ司令官。内緒なんだから!」

 

 ふーん、へー、ほーぅ。いや、別に気にならないこともないというかなんというか……ごめんなさい、すごく気になります。これなら黙っててくれた方が良かったよ……くそぅ、さくらの奴め。

 

「じゃ、そう言う訳で私はそろそろ行くわねー……鼻の下伸びてるわよ」

 

 最後にそんなことを言い放ってさくらは出ていった。

 

 その後気を取り直して営業を行っていたわけなんだけど、例によってうちの店でもバレンタインフェアというのを行っている訳で……うちの店ではココアシフォンケーキとチョコクリームのミルクレープを出している。

 

 実はこの二つは普段から置いている物ではあるが、さっき話したような事情によって他の商品よりもいくらか値段が高めになっている。それを本日限定で値下げして販売しているという訳だ。

 

 そしてこれがまた結構なペースで注文が入っている。午前中はそうでもなかったのだが、午後になって、いつものご婦人方や研究施設の女性陣。そして暁や熊野さんなんかの艦娘も何人か食べに来ていた。

 

 艦娘の子が来るたびにお互い意識してしまって、なんとなくソワソワしてしまったが、結局何事もなく夕方になってしまい、今日はもうあと何人もお客さん来ないだろうなと思っていた時だった。

 

「ヒデトサーン!こんばんはデース!」

 

「店長おじゃましまーす」

 

「おう、いらっっしゃ……い?」

 

 金剛さんと川内がやってきた……大きな段ボールを抱えながら……何を持ってきたのかと首をかしげていると、金剛さんが「ふっふっふー」とニヤニヤしながら差し出してきた。

 

「ヒデトサンにpresentネー!Happy Valentine……な、Chocolate持ってきたヨー!」

 

「鎮守府の皆から店長にって。ね、ね、開けてみて!」

 

 差し出されたそれを受け取って、恐る恐る開けてみると……お?おー!これは!

 

「ココアパウダーと、製菓用チョコレートか!ってこんな高級品貰っちゃっていいの?」

 

 そこにはうちで取り扱っている物よりもランクが上のココアパウダーとチョコレートが入っていた。

 

「今回は、鎮守府の皆で少しずつお金を出して買いマシタ。ヒデトサンはこっちの方が喜んでくれるんじゃないかって……」

 

「うちに護衛依頼をしてくれる業者さん……って言っても軍を通してだから直接会った事は無いんだけど、そこがカカオの取り扱いもやっててさ。提督を通して相談してみたら、かなりお買い得にしてくれたんだ……私達でも買えるかどうかを聞いただけのつもりだったんだけどね」

 

 二人とも照れくさそうに頬を掻きながらそう説明してくれた。いやほんと嬉しいよ……確か密閉して冷暗所に置いとけばかなり持つよな。ホワイトデーはこれで何か作らなきゃ。

 

 それにしても、これを手に入れられるとは流石軍の伝手……朝さくらから貰ったチョコもこれか……。

 

「とりあえず、なにか食べていく?こんないい物貰っちゃったし、サービスするよ?」

 

「Sorryヒデトサン。今日はこれで帰ります……非常に残念デスガ……」

 

「うん、今日はこれを届けに来ただけだから。それに一応みんなからって事だし私達だけサービスしてもらうのもね……」

 

 まあそれもそうか。でもお茶くらい飲んでいっても罰は当たらないと思うんだけど……と思っているうちに、二人はそそくさと店を出ていった。帰り際俺の隣にいる雷を気にしているようだったけど気のせいだろうか。

 

 そんな風に思いながら雷を見てみると、腰に手を当てて満足そうに仁王立ちをしていた。

 

「あはは、あの二人は届けるだけが役目だったのよ。それ以上は……と言っても、お茶くらいは飲んでいっても構わないと思うのだけれどねぇ?」

 

 俺の視線に気づいて、慌てて何かをごまかすように早口になっているように感じたが、雷のセリフに「そんなもんか」と一応納得しておくことにした。

 




という訳でどんな乙女協定があったのかはご想像にお任せします

とりあえず言えるのは
金剛のバレンタインボイスは
『な!』の言い方が可愛いと思います



お読みいただきありがとうございました

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