鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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今回はみんな大好きあの人の登場です


三皿目:第六駆逐隊と引率お姉さん1

 あれから何人かお客さんは来たものの、特に大きな混雑もなく夕方になった。さすがに注文が続くとちょっとお待たせしてしまうこともあったけれど、まだメニューが少ないこともあって、何とか回すことができたのは一安心だ。中には開店祝いにと思わぬお土産を持ってきてくれた人なんかもいて驚いたのだが、皆歓迎してくれてるみたいでよかった。

 

 まだ半日だけれど、一人で店を回すっていうのは俺が思っていたよりも難しい。ただありがたいことに金剛さんも動いてくれるみたいだし、今の段階で気づけたのはよかったのかな。

 

 気づけば五時を回り、店じまい予定の六時まではあとわずかとなっていた。もっとも、最後のお客さんと思っていた彼女たちが来るまでは待とうと思ってはいるのだが……四時に任務終了と言ってたからそろそろかな?なんて考えながら片付けをしているとドアベルが鳴った。

 

「いらっしゃいませ」

 

 お待ちかねのお客様が来たようだ。先頭で入ってきたのは、服装は割といそうな女の子っぽいのになぜか眼帯をしている女の子。おまけに頭の横では耳っぽい形の機械がぴょこぴょこ動いている……なにそれ?

 

「おう、来たぜ大将!オレの名前は天龍。フフフ、怖いか?」

 

「あ、あぁ。いらっしゃい。ここの店主の田所秀人だ。よろしく……ん?というか、軍人が一般人を大将なんて呼んでいいのかい?」 

 

 ちょうどホールのテーブルを拭いているところで出迎えたのだけれど、近づいてきた彼女の勢いに押されて思わず後じさってしまった……こ、怖かったわけじゃないぞ?いや、ある意味凶悪なものはお持ちでいらっしゃるのだけれども……

 

 いや、それは置いといて、『大将』なんて彼女たちにとっては特別なワードなんじゃないのか?と、ふと思いついた疑問に、彼女は俺の肩をバシバシたたきながら言い放った。

 

「むしろ、一般人だからいいんじゃねぇか?店主なんだから大将で間違ってねぇだろう?まぁ、大将以外の立場の軍人をそう呼んだら問題だろうけどよ。つか、こまけぇことは気にすんなよ!」

 

 そうなのか?あまりにあっけらかんとした返答に少し呆けてしまったが、彼女は俺のそんな様子にはお構いなしで、後ろについてきていた子達を店内に促す。というか、なんかテンション高いな。

 

「ほら、お前らも入ってきて挨拶しろよな」

 

 そういわれてはいってきたのは四人の小さな女の子たちと一人のお姉さん。四人はおそろいのセーラー服を着ていて、キョロキョロしながらちょっとおっかなびっくりという感じだが、最後のお姉さんはにこにこと優しそうな笑顔でそんな彼女たちを見ている。ただ、一つわからないのが、彼女の頭の上にぷかぷかしている謎の機械の輪っか……なにそれ?

 

「あっ、あのっ!」

 

 おそろいの四人の中でも先頭で入ってきた黒髪の子が周りの子から促されながら口を開いた。ん?挨拶してくれるのかな?なんだか一生懸命な感じがして微笑ましい。つい応援したくなる感じだ。

 

「とっ、特Ⅲ型くちきゅ、くちっ、駆逐艦一番艦の暁よ。い、一人前のレディとして扱ってよね!」

 

 おー、途中ちょっと噛んだけど、最後はポーズも取ってキメてきた。小声で「やった、言えたわ」なんて言ってるのもかわいらしくて、思わず拍手してしまう。そうか、この子があの『レディ』の子ね。

 

「では、次は私だね。特Ⅲ型駆逐艦二番艦の響だ。素敵なお店を始めてくれてありがとう。スパスィーバ」

 

 ふむ、この子はまたクールな感じだね。『スパシーバ』はこの子か。そういえば、昨日調べてみたんだけど、ロシア語でありがとうって意味なんだっけ。なんというか、冷たい印象を持ちそうな見た目と話し方だけど、いい子なんだろうな。

 

「じゃーん!特Ⅲ型駆逐艦三番艦の雷よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわね!」

 

 今度は万歳するようにアピールしながら自己紹介をしてくれた元気っこ。三番艦ってことは人間でいうところの三女ってことなんだろう。この子が『じゃーん』の子ってことは最後が……

 

「特Ⅲ型駆逐艦四番艦の電です。どうか、よろしくお願いいたします。……なのです」

 

 この子が『なのです』の子ってわけだ。この子はちょっと気弱そうな感じだけど、どこかで見たような……って、あっ!

 

「『始まりの六人』の子!?」

 

「はっ、はわわっ!それは……そうなのですが……そうではないのです」

 

 おっと思わず口に出て驚かせてしまった……でも「そうだけど、そうじゃない」ってどういうことだ……なぞなぞか?

 

「それに関しては私が説明するわ~。まずは自己紹介からね、軽巡洋艦、天龍型二番艦の龍田だよ。天龍ちゃん共々よろしくお願いしますね」

 

 これは、ご丁寧にどうも。こちらこそよろしくお願いします。

なんか話しぶりから彼女の方がお姉さんのような感じもするが、二番艦ってことは妹か。

 

「それで、さっきの話なんだけど~、詳しくは機密に触れるからあまり話せないんだけど、私達艦娘は同じ艦が何人も存在しているの。でも、『艦娘』としての性能とかは一緒で、姿形が似ていても、それぞれ別の人格を持った『人』なのよ~。そこのとこ、忘れないでね」

 

 そう話す彼女はにこにこと優しく教えてくれていた様に見えるが、最後一瞬だけ真顔になったように見えた……

 

 あぁ、そっか……なんでそうなのかとかはほっといて、今俺がこうして顔を合わせている彼女たちは、彼女たち以外の誰でもないってことでいいのかな?

 

「うん、わかってくれたみたいね~。でも、あんまり気にせず接してくれていいよ~、少なくともうちの鎮守府では一人ずつしかいないしね~」

 

「了解……さぁ、一通り自己紹介も済んだところで、適当に座ってくれ。仕事帰りでお腹もすいているだろう。そこの四人のお嬢さん方は今日はサービスだ。作れるもんが限られるんで、メニューはこっちで決めさせてもらったんだが、お代はあの素敵な看板で先払いってことで。すまないがそちらのお姉さんたちはお代をもらうことになるけど、いいかい?」

 

「おう!いいぜ!元々俺たちが奢るつもりだったしな。メニューもお任せで頼むぜ!」

 

 うん、良い子だ。言葉遣いはちょっと乱暴だけど、面倒見もいいんだろう。暁ちゃんたちも懐いているみたいだし、後輩たちに慕われるいい姉御って感じかな。

 

 そして、言葉遣いだけでなく、行動もちょっと乱暴というか、まさに『どかっ』といった感じで席に着くもんだから、その凶悪な体の一部に思わず目が行ってしまう……が、その瞬間どこからか思わず身震いをするような視線を感じたのですぐさま目線を外す。

 

「さ、さて、皆さん。飲み物はどうする?」

 

「はいはい!紅茶がいいわ。さっき金剛さんが教えてくれたの!素敵な香りの紅茶を出してくれるって!」

 

「かしこまりました。それでは少々お待ちください」

 




という訳で、園長先生登場です。
一応鎮守府から出るときは天龍刀は持っていません
ただ、手持無沙汰なので外出用の木刀を買おうかと
最近密かに考えているらしい……


次回は第六駆逐隊のために腕を振るいます。
ではまた明日のこの時間に。

読んでいただいてありがとうございました

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