鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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謎の少女の正体が明らかになるみたいですけど……



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四十四皿目:謎の少女の正体は?1


「あ!おはよう司令官、雷よ……うん、早くにごめんね。そう、緊急事態。深海棲艦がらみ……いいえ、危険は無いわ……うん、お店……とりあえず、金剛さんと加賀さんを連れてきて欲しいの。長門さんは……鎮守府の方を見ていてもらった方が良いかしら……」

 

 うーむ、険しい表情で会話が続いているな……雷からは大人しくしていろと言われたが、さてどうしたものかねぇ?と、そんな感じでこちらを不安げに見つめる謎の少女と目を合わせ、頭を撫でる。

 

「あー、あとうちの暁も呼んでくれるかしら?私が電話してもいいけど、司令官から言ってくれた方が良いかもしれないわ……うん…………わかった。待ってるわ」

 

 途中でこちらを見ながら話をしていた雷だったが、ようやく話が終わったようだ。

 

「えーっと、なんかすまん」

 

「いいのよ、これくらい。それに最初は驚いたけれど、見た限りだと危険は無いみたいだし……」

 

 よかった。とりあえずは落ち着いてくれたみたいだ。と、ここで俺の腰に引っ付いていた少女が、コックコートの裾を引っ張った。何事かと彼女を見ると、

 

「オナカスイタ……」

 

 俺のことを見上げながらそう言ってきた。そっか、昨日は結局夜ごはんも食べないでずっと寝てたからね……そりゃお腹もすくよね。

 

 彼女の言葉に俺と雷が顔を見合わせ、雷もふっと険しかった表情を緩めて言った。

 

「そうね、私も朝ご飯食べてないし、お腹がすいたままじゃ考えもまとまらないわ」

 

「よし、それじゃ何か作ろう。っとその前に臨時休業のお知らせを書かなきゃね」

 

「それなら、私が書いておくわ。マスターはお料理の方をお願い」

 

 そう言って雷がレジの下の棚からマジックを取り出してイーゼル黒板に書き始めたのを見て、俺は厨房へと向かった。謎の少女も後ろからついて来ようとしたのだが、それを雷が止める。

 

「あなたはこっちで一緒に待ってましょう。お姉さんに少しお話聞かせてくれるかしら」

 

 雷の言葉を聞いて、少女は少し不安げな表情でこちらを見たが、笑顔で頷いて見せると、雷の所へと歩いていった。

 

 さてと……今日は普通に営業するつもりだったからな……細かい仕込みは雷が来てからと思ってまだあまりやってなかったけど、パンは結構作っちゃってあるんだよね。とりあえず食べきれない分は冷凍に回すか……鎮守府の皆に訳を話して協力してもらうか。

 

 ひとまず、今食べる分の朝ごはんは、たくさんあるロールパンでロールパンサンドにしようかな。

 

 そうと決まれば、さっそく中に挟む具材を作ることにする。あの子は昨日の夜を食べてなくてお腹すいてるだろうから、ちょっとガッツリ系も考えよう。それにさくら達も後から来て食べるかもしれないし、多めに作っておこうか。

 

 まずは定番の卵から。卵フィリングはシンプルに作る。ゆで卵を、食感を残すようにフォークで荒くつぶしたら、マヨネーズ・塩・コショウで味をつける。マヨネーズだけだとちょっとぼやけた感じになってしまうので、塩とコショウで引き締める。

 

 そして卵でもう一つ。同じくらいの大きさにみじん切りにしたベーコンと玉ねぎをバターで炒め、ベーコンに火が通ったところで溶き卵を投入、スクランブルエッグにしていく。

 

 大きくかき混ぜながらしっかりと火を通して、最後に塩・コショウで味を整えたら出来上がり。柔らかい卵の食感とカリッ、ジュワッっとしたベーコンの食感、脂の旨味が美味しい。

 

 お次はツナフィリング。薄くスライスした玉ねぎを水にさらして辛味を抜いたら、油を切ったツナと合わせて卵と同じようにマヨネーズ・塩・コショウで味を整えれば完成だ。

 

 後は、ちょっと重めの物として焼き肉に自家製ドレッシングを絡めたものと、玉ねぎとピーマンで作ったシンプルなナポリタン。そのほかレタスやキュウリ、ハムやチーズなどそのまま挟むものや、焼いたウインナーも用意した。

 

 それぞれお皿に入れて、切れ目を入れたロールパンと一緒に持って行く。後は好きなものを挟んで食べてもらおう。

 

 っていうか……結構用意したけど、食べてくれるよね?向こうに持って行ったらバトってるとかないよね?と、一瞬考えてしまったけれど、軽く気合を入れなおして持って行く。

 

「お待たせ―、このパンに好きなものを挟んで食べてね」

 

「はーい!待ってました!」

 

「マシター!」

 

 ……あれ?……なんか仲良くなってる?

 

 二人で並んで手を挙げながら、待ってましたと声を上げてくれた。すると、驚きで呆けた顔をしてるだろう俺を見て、雷がクスっと笑って説明してくれた。

 

「大丈夫よマスター。ちょっと話を聞いたら、色々あるみたいだけど敵ではないわ……ねー、ほっぽちゃん」

 

「ウン!」

 

 はぁー……何があったかは分かんないけど、仲良くなったのなら良かった。それに彼女の名前はほっぽちゃんっていうのか。やっと知ることができた。

 

 それでは、ほっとしたところで朝ご飯にしよう。俺がそう言って手を合わせると二人も手を合わせて笑顔を見せてくれた。

 

「いただきます!」

 

「イタダキマース!」

 

 そのほっぽちゃんがまず手を付けたのは卵フィリング。スプーン一杯に乗せてパンに挟みこんでいく。嬉しそうに挟んでいってるけどそんなに挟んだらかぶりついた時にこぼれるよ。

 

「あーあー、ほっぽちゃん。口元に卵がついちゃってるわよ……ほら、拭ってあげるからこっち向いて」

 

 そんなほっぽちゃんを見かねて雷がおしぼりで口元を拭ってあげる。なんというか、さすがだね。

 

「イカヅチ、アリガト」

 

 と、その時だった。店の扉が勢いよく開けられて……。

 

「秀人、雷どういう事!?」

 

「あ!何してるデース!」

 

「……離れなさい」

 

……あ、結構来るの早かったね。

 




皆さんお察しの通り、ほっぽちゃんの登場です

最後に鎮守府組が到着しましたが、さてさて……

新章タイトル大して変化無くてスミマセン
結局のところ、日常には変わらないかなぁと

お読みいただきありがとうございました

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