鎮守府島の喫茶店   作:ある介

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当初の予定では前回の後書きにかいたように駆逐艦を出す予定でしたが
変更してこの子達に登場してもらうことにして書き直しました




四十八皿目:先生と生徒と春の味2

 翌日、手伝いにやって来た雷に事情を話して、朝からさっそくたけのこ料理の仕込みに入る。まずは主菜から。一気に量を作れて、ご飯のおかずにもぴったりってことで豚バラとの煮物にする。

 

「わぁ、なんだか聞いただけでご飯と合いそうね。でも、ご飯もたけのこご飯にするんでしょ?その主菜なら白飯の方がいいんじゃない?」

 

 メニューを説明していると雷からそんな質問をされた。正直そこは迷ったんだけどね……まぁ、たけのこご飯の方は味を薄めにする予定だから大丈夫だと思う……ことにした。

 

 さて、それじゃさっそく作っていこう。まずは昨日のうちに茹でてアクを抜いておいたたけのこを一口大の乱切りにしていく。その大きさに合わせて豚バラブロックも角切りにしていこう。

 

 まずは豚肉から煮ていく。出汁・醤油・酒・みりん・砂糖でアクを取りながら弱火で煮て、火が通ったらたけのこを入れ落し蓋をして、豚肉の旨味をたけのこに煮含めていく。とりあえずこれは軽く煮たところで火を止めて置いておこう。

 

 続いては小鉢を二種類。一つ目はこれも煮物になってしまうのだけれど、若竹煮を作ろうと思う。たけのこ料理と言えばやっぱりこれは外せないよね。という訳で、香りを強めにとったかつお出汁と酒を合わせたところに適当な大きさに切ったたけのこを入れて煮ていく。

 

 中火で出汁が沸くまで加熱して、沸いたら火を弱めてアクを取る。醤油・みりん・塩で軽く調味したら煮汁がコトコト沸くくらいの火加減で煮ていく。わかめは後で温めなおす時に入れて軽く温まる程度でオーケーだ。同じ煮物でも、豚肉の時とは違って出汁の風味を強めに効かせて味にメリハリをつける。

 

 そしてもう一つ、お次は炒め物。たけのこのきんぴらを作っていく。油を熱したフライパンに輪切りにした鷹の爪を入れて軽く香りを出す。そこにたけのこを入れてサッと和えたら、醤油・みりんで味付け。ごぼうなんかのきんぴらよりも甘さを抑えて作るのが美味しさの秘訣だ。

 

 とここで雷があることに気が付いた。

 

「ねぇマスター、なんだか全体的に茶色いわね……もう少し野菜が欲しいところだわ」

 

「さすが雷、鋭い指摘……一応味噌汁を具沢山にして補おうかとは思ってるよ。根菜中心でけんちんっぽい感じでどうかな?」

 

「なるほど、良いと思うわ!」

 

 よし、雷からもオッケーが出たところで、まずは材料を切っていこう。大根とにんじんは銀杏切り、ごぼうはささがき、しめじは石突を取ってばらしておく。これらを出汁に入れて火を通していき、火が通ったところで味噌を溶いて完成だ。

 

 と、ここまで作ったところでたけのこご飯の方も炊きあがったみたいだ。雷と二人で釜の前に立って、いざ御開帳……。

 

「うわぁ、良い匂い!美味しそう!」

 

 そう言って笑顔を向けて来る雷に、しゃもじにちょっとよそって差し出す。

 

「熱いから気をつけてな」

 

「いただきまーす……あふっ、はふ……んー、お出汁の香りとたけのこの風味がたまらないわ。なるほど、これだけだとちょっと物足りない感じもするけれど、あのおかずと一緒に食べるならこれくらいが良いのかもしれないわね」

 

 ま、そういうことだね。今日のたけのこご飯は、かつお出汁と少しのお酒と塩だけで炊いている。さっきも言ったように味が濃い目のおかずがあるからね。

 

 そんな感じで他の仕込みなんかも並行してやってたら、あっという間に開店の時間だ。今日も一日頑張ろう。ちなみにほっぽちゃんはまだ夢の中だ……ま、起きてきたらお店の方でモーニングでも食べてから仕事に入ってもらおう。

 

 開店してからはいつも通りに営業していたのだけれど、ランチの時間になってからありがたいことに日替わりランチ……つまりたけのこ御膳の注文が殺到していた。おかげで、昼休憩の間にもう一度それぞれのメニューを作ることになったのだけれど……。

 

 これは加賀さんと赤城さんがかなり消費したからだろうな。加賀さんは鎮守府では艦娘たちのスケジュールのとりまとめもしてるって言うし、昨日の天龍さん達の行動もばっちり把握して、狙ってきたんだろうな。

 

 そんなこんなで、新しくたけのこ御膳を拵えて午後の開店を迎える。天龍さん達は午後一で来るって言ってたからそろそろ……。

 

「おーっす、来たぜ大将!おら、ちび共入んな」

 

「てんちょー、久しぶりー」

 

 天龍さんの後から入ってきたのは、あれ?佐渡ちゃん?俺があったことない子だって聞いた気がしたけど……と疑問に思っていたら、さらにその後ろから同じような格好の女の子が二人、龍田さんに促されて入ってきた。

 

「初めまして!日振型海防艦一番艦、日振です!よろしくお願いします!」

 

「あたいは日振型海防艦、その二番艦、大東さっ!よろしくなっ」

 

 白地に青の大きな襟がついたセーラーワンピとセットの水兵帽をかぶった女の子。見るからに姉妹艦だけど、海防艦って言ってたから佐渡ちゃんと同じなのか。確かに見た目の年齢も同じくらいだね。

 

 いつも明るい佐渡ちゃんも、同じ艦種で同じ年頃の子が来たからか、いつも以上に笑顔な気がする。よかったね、佐渡ちゃん。

 

「こちらこそよろしくね。それと、今回はたくさんのたけのこありがとうね。他のお客さんも美味しい美味しいって食べてくれてたよ」

 

「いひっ!良いって事よ!」

 

 さて、昨日会えなかった三人にたけのこのお礼を言いながら、テーブル席へと案内したところで、ほっぽちゃんがおしぼりとお冷を持ってきた。

 

「ドウゾー……アッ!サドー!イラッシャイ」

 

「おう、来たぜほっぽ。そうだ、ほっぽにも紹介するな、ひふと……じゃなくて、日振と大東だ。仲良くしてくれよな」

 

「オー、サドノトモダチハ、ホッポモトモダチ!ヨロシク」

 

 そう言ってお互いに握手をする三人。日振ちゃんと大東ちゃんはちょっとおっかなびっくりといった感じだったが、佐渡ちゃんが間に入ってくれたおかげか何とかなりそうだ。まぁ、年齢も近そう?だし、すぐに仲良くなれるだろう。

 

 彼女たちのやり取りの横で、龍田さんにアイコンタクトを送ると「お願いするわぁ」みたいな視線が返ってきたので、さっそくたけのこ御膳を用意しよう。

 

 昼休み中に追加で作ったので、出来立てをそれぞれ器に盛ってお盆に載せて持って行くのだけれど、雷にお願いして持って行ってもらっている間に、もう一品追加で作ることにする。彼女たちはせっかく立派なたけのこをたくさん持ってきてくれたので、プラス一品サービスだ。

 

 今度はちょっと洋風にして、たけのこと海老のガーリック炒めだ。たけのこは和風の味付けも美味しいんだけど、オイルやニンニクとも相性がいいからね。

 

 まず、油を熱してみじん切りにしたニンニクを炒めて香りを移したところで、背ワタを取ったむきエビを入れて炒めていく。むきエビは下ごしらえとして、塩・白ワインを揉みこんで臭みを取っておく。

 

 ある程度火が通ったところでたけのこを加えて炒めて、固くならないようにエビに火を通したら、塩・コショウで味を整えて完成。お皿に盛って、最後に刻みパセリを散らして皆の所へ持って行く。

 

「はい、おまたせ。こちらのガーリック炒めもどうぞ。これは他のお客さんには出してないからね、たくさんたけのこを持ってきてくれたからサービスだ」

 

「おっ、サンキューな。へへっ、これも美味そうだ、ニンニクの香りがたまんねぇな。よーし、お前ら、景気づけにたっぷり食っとけよー」

 

 獲物を狙うような鋭い視線を向けながらそう言った天龍さん。ちょっと怖いですよ……というか、景気づけってのが気になったんだけど何かあるのかな?

 

 その疑問に答えてくれたのは龍田さんだった。

 

「実は明日、日振ちゃんと大東ちゃんの初出撃なのー。それで、景気づけってわけ。まぁいつもの対潜哨戒で、敵がいてもひと当てしたら損傷に関わらず帰ってくるけどねー」

 

 その龍田さんの言葉に年少組三人が得意げに話してくれた。

 

「いひっ、潜水艦相手ならこの佐渡様にお任せってね!」

 

「はい!日振、はたらきます!」

 

「ま、この島の海はあたいらが守ってやるよ」

 

 おー、頼もしいねぇ……と感心していたのもつかの間、三人は「いただきまーす!」と声をそろえて食べ始めた。あ、早く食べたかったよね、ごめんね。

でも、まぁよかった。おいしそうに食べてくれてるわ。まさかこんなに幼い子が来るとは思ってなかったから、ちょっとメニューが渋すぎたかなって思ったんだけど、大丈夫みたいだね。

 

「てんちょー、これうまいぜ!ちょっとピリ辛だけど、ご飯が進むな!」

 

 佐渡ちゃんが気に入ったのは意外にもきんぴらだった。小さい子にはちょっと辛いかなと心配だったんだけど、たけのこご飯と一緒に食べるとたまらないらしい。

 

「いやいや、こっちの肉と煮た奴だろ。あたいはこっちのが好きだなぁ。やらかい豚肉と味が染みたコリコリのたけのこがうめーんだ」

 

 ちょっと佐渡ちゃんにも喋り方が似ているこの子は大東ちゃんだったか。彼女は豚肉をご飯の上で軽くほぐして一緒に食べている……

 

 トロトロになるまで煮込んだ豚バラは箸で簡単にほぐれて、タレと一緒に脂がご飯にじんわりとしみ込む。豚肉のガツンと来る脂の旨味と、お米にしみ込んだ出汁の旨味が良い感じに合わさって、新たなおいしさが生まれる。そこに食感のアクセントとしてコリっとたけのこが入ってくると完璧だ。あれは間違いなく美味い。

 

 とまあここまで言うのも、さっき昼に食べた賄いで同じような食べ方をしたからなんだけどね。鍋の中で崩れてお客さんに出せなかった豚肉を、ほぐしてご飯にのっけて丼みたいにして食べたんだよね。雷も「うまうま」と美味しそうに食べていた。

 

 そしてもう一人の新人さん、日振ちゃんはさっき持ってきたガーリック炒めがハマったみたい。

 

「にんにくの香りとぷりぷりのエビ。シャキシャキのたけのこの食感がおいしいです!でも、こういう料理にも合うんですね……日振の知ってる中にはなかったんですが……」

 

 真面目な元気っ子という印象の日振ちゃんがそんな風に首を傾げて聞いてきた。まぁ、そこまで真剣な疑問って訳じゃないだろうけど、ちょっと答えることにしよう。

 

「日本人としてはたけのこっていうと、どうしても出汁と一緒にって印象が強いけど、アジア圏では割とポピュラーな食材だからね。東南アジアの方ではスパイスと一緒にカレーの具材なんかにも使われてるし、中華料理でも良く使うでしょ?有名なのだと青椒肉絲とか……」

 

「あぁ、確かに!そうですねっ!」

 

「そう考えると、たけのこってオイルやニンニクとかの香味野菜、スパイスとの相性もピッタリなんだよね。他に洋風に使うならパスタとか、チーズ焼きなんかも美味しいかな」

 

 そんな風に講釈を垂れてみると、日振ちゃん以外の面々も「へー」「そうなんだ」と聞いていた。いや、そんなに真剣に聞かれても困っちゃうんだけど……と照れくさくなったので、お姉さん二人に話を振る。

 

「と、ところで、そっちの二人はどうだい?口に合ったかな?」

 

「ったりめーよ!大将の料理はなんでもうまいぜ!」

 

 天龍さんが即座に返すと、それに続いて龍田さんもゆっくり口を開いた。

 

「そうねー、私はこのたけのこご飯が好きかしらぁ。確かにちょっと味は薄めでおかずと一緒に食べるのが前提なんでしょうけど、私は普段からこれくらいがいいわぁ」

 

 ふむふむ、龍田さんは薄めの味付けが好きなのかな?今後の参考にさせてもらおう……っと、ちょっと話し込んじゃったな。そろそろ他のお客さんも来るかもしれないし、俺は戻らせてもらおう。

 

 その後も、時々ほっぽちゃんや雷とも話をしながら食事を楽しむ一同。最後にお姉さん方にはコーヒーを、年少組はデザートのアイスをサービスで出しておく。その時の喜びようが見た目相応で、なんだかほっこりしてしまった。

 

 うん、今日は喜んでもらえて良かった。明日の出撃も無事に終えてもらって、また食べに来てもらいたいもんだね。

 




新たな海防艦の二人に登場してもらいました
最初は択捉型にしようかとも思ったのですが
せっかくなので新規艦の二人で……

今後ほっぽちゃんと仲良くなってもらいたいですね



お読みいただきありがとうございました
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