うちのメタモンこそさいかわ   作:うちメタ

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 0話のどこかで主人公が牛乳を飲むシーンがあったと思います。モーモーミルクに差し替えました。やだ、私ってば天才(真顔)
 あの世界に牛なんていないからね、仕方ないね。

 そういえば本作の時系列とかは一切明かしてないけど、読んでくれてる人たちからしたらどの世代で映ってるんだろうか。
 一応それっぽい描写入れてたりするんですが、はてさて。


 今回は3000字超え。1000台、2000台、と増えてる感じなので、次は何文字になるかもうお分かりですよね!(知らない)



2/不慮の出会い

 

 

 

 

  0/Accidental Encounters

 

 今日も今日とてテレビを見ているメタモン。

 それをぽけーっと眺めていると、この間のことを思い出す。

 なんで、泣いたんだろうな、俺。

 数日たった今でも分からない。あの時の心境、あの時の考え。どうして涙がこぼれたのか、さっぱりだった。

 疲れてたんだろうか。疲れて泣くとか何それ怖い。

 はぁっとため息が出た。

 

「幸せ逃げるぞ」

 

 聞きなれた低い声。

 振り向くと、モーモーミルクの入ったコップを片手に仁王立ち、テレビを見る父さんの姿。

 いかつい顔は件のリザードを連想させるが、はて、この父親は口からりゅうのいかりでも吐きに来たんだろうか。吐くとしたらミルクか。

 何の用、と問う。

 ここは俺の部屋で、普段なら父さんは来たりしない。何かしら用事があるんだろう。

 しかし返事がない。ただの屍のようだ――なんてことはなく。また振り向くと、いかつい顔が変わらずそこにある。

 にや、と父さんは笑みを浮かべて、

 

「話をするときは人の顔を見ろ」

 

 テレビ見ながら話しかけてきたのはどこのどいつだよ。

 思わずため息がでた。

 あぁ、幸せが逃げていく……。

 

 

 

  1

 

 軽くいらっとした様子の俺を見て満足したのか、にやにやしながら父さんは部屋を後にした。結局、何しに来たんだよ。

 父さんは子供の俺から見ても子供っぽい。気ままに悪戯したり、ちょっかいをかけたり。よく俺が「大人っぽい」と言われるのは、おそらく父さんを反面教師にしたからではないかと思う。意識したことはないが。

 今のは単にちょっかいをかけに来ただけなんだろう。部屋まで来られたのは初めてだったな。本当に用があるときと見分けがつかないのでやめてほしい。母さんに告げ口して止めさせるか……。

 

 思考にふけっていると、不意に膝が冷たくなった。

 メタモンだとなんとなく分かった。

 テレビはすでに終わっていて、やることもなくなったのだろう。かまってほしそうにつぶらな瞳を向けてくる。

 くそ、また攻撃力が下がってしまった。これじゃあ撫でるぐらいしかできないじゃないか。

 こいつめ、この、この。

 

「……」

 

 ――伝われ、伝わってくれ

 ――なんで、なんで

 

 メタモンを撫でる右手に、少しばかり力がこもった。

 

 

 

  2

 

「あっそ」

 

 母さんに相談した。この気持ちは何か。どうして泣いてしまったのか。

 話しているうちに泣きそうになるのをこらえ、言い切った。

 暫し母さんは沈黙していたが、突然ため息を吐いたかと思えば、出ていけと言いたげにしっしっと手を振った。

 どうして、と聞くが無視される。

 話すことはないと。暗にそう告げられた。

 自分で理解しろっていうのか。また、それか。手助けぐらいしてくれてもいいじゃないか。分からない。母さんが何を考えているのか。いったい俺に、何をしろというのか。

 何をしたら、理解できるんだ。

 俺の存在なんて鼻からいなかったかのように夕飯を作り始める母さん。

 その背中を呆然と見つめた。

 

 

 

  3

 

 メタモンが窓越しに外を見ていた。

 何の変哲もない普通の町、だと思う。観光名所ってわけでもない。ありきたりでありふれた街並みだ。でもメタモンからしてみると、また別の感想が出てくるんだろうか。

 空模様を見る。快晴。雲一つない。風もいい感じに吹いている。

 ……ふむ。

 最近は悪天候が続いたし、久しぶりに散歩でも行くか。

 声をかけるのは嫌だったが、もしもということもある。我慢して外出する旨を母さんに話しておく。から返事が返ってきた。

 財布は一応持っていこう。

 ちゃちゃっと着替えて、玄関に向かう。

 メタモンがいた。

 玄関の扉が開くのを待っているらしい。目を輝かせるばかりで微動だにしない。

 

「メタモン」

 

 呼びかけると、そこでようやくメタモンは動き出した。

 ぐぐ、と体をひねらせて振り向いた。眩い瞳が俺を照らす。期待の視線である。

 笑みがこぼれた。

 もとより連れて行く気だったが、ここまで嬉しそうにされると、なんだかこっちまで嬉しくなる。

 言葉は伝わらなくても、メタモンの期待に応えてあげられた気がする。

 

 行こう、と扉を開けた。

 風が吹き抜けた。

 

 

 

  4

 

 ワカバタウンは風の吹きわたる町だ。

 風向計が多く設置され、風力発電のための風車もそこら中に見える。

 風の止まない町。そう比喩されることも珍しくない。

 どうして風が吹き続けているのか。それなりの研究はされたものの断定はできず、おそらく土地やその周囲の環境が要因だろうということだけ広まっている。一説には守り神的な何かがいて、それが風を吹かせているだとか。ひこうタイプなので電気で封殺しましょう、とどこかの研究者が言っていた。守り神倒すのか……。

 

 閑話休題。

 とにかく風が気持ちいいのである。

 天候も快晴なだけあって、普段歩きなれてる場所でも、まるでピクニックしているかのような気分になる。

 メタモンも同じ気分なんだろう。楽しそうにぴょんぴょん跳ねている。

 商店街につくと、微笑ましげな視線が一気に集中した。

 おやおや、まぁまぁ。うふふ、と買い物中の奥さん方が多い。は、恥ずかしいな……。

 

「――あれ?」

 

 こっちに目もくれず、並べられた果物を厳選している男がいた。

 いや、それが普通なんだろうけど。なんだか自意識過剰みたいで余計に恥ずかしくなる。

 しかし皆が皆こっちに注目している中、一人だけ商品を見ているというのはどこか異質だった。

 ずっと木の実を見ているが、なんだろう。珍しい果物でも売られているんだろうか。

 

 と、足に何かがぶつかった。

 反射的に「ごめんなさい」と言ったが、そこには誰もいない。

 代わりにズボンのすそを引っ張るメタモンを見つけた。

 メタモンは興奮しているようだった。俺が話すより早く、ぴょぴょぴょぴょーんといった感じに飛び跳ねていった。

 どこへ向かったのかと思えば、先ほどの果物屋。

 それも、男が見ているコーナーへ、まっしぐら。

 

「まじかぁ」

 

 奥さん方は相も変わらず微笑んでいた。

 

 

 

  5

 

 見たことのない男だった。

 血のように、といっては失礼だけど、真っ赤な髪色。黒いコート――いやマントだあれ。おおよそ一般人には見えない風貌である。

 ワカバは住人同士の交流が深い。ここの住人の顔はだいたい把握している。

 はて。この町にあんな奇抜ファッションな人なんていただろうか。

 近くまで来ると顔の造形もなんとなく見えてきた。イケメンである。歳は17とかそこらへんだろうか。わんちゃん俺とメタモンなんかよりも奥さん方の注目を浴びそうな好青年。ちょっとよくわからないファッションセンスがすべてをダメにしているが、本人はそれを承知なんだろうか。

 関わりたくねぇ……。

 しかしメタモンの行動は早く。ほどほどに加速して男にたいあたり。「ふぐ…っ!」と顔が苦痛にゆがむ程度のダメージを与え、男の立ち位置をあっさり奪った。こわーい。

 じゃねぇよ。

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

 慌てて駆け寄ると、男はうつぶせで、おそらくメタモンが直撃したであろう脇腹のあたりを手で抑えている。相当痛そうな顔だ。何度も声をかけて、ようやく聞こえたのか、男はふっと笑って右手を掲げた。グッジョブ。

 いやそれあかんやつ。

 商店街の喧騒がいっそう深まった気がした。店の奥から若い店員が現れて、俺と男、ついでにメタモンをそれぞれ一瞥。はーっと溜息をついた。お仕事お疲れ様です。助けてください。

 

「あー、キミ。そいつ大丈夫だから心配しないでいいよ。――起きてんだろワタル。この子を泣かせたら酷いぞ」

 

 びく、と男が揺れた。

 しかし起き上がる様子はない。身体はぶるぶると震えていて、やっぱりまずいんじゃと店員さんを見る。俺も震えた。

 ――真顔。一切の感情を捨て去った素の表情。

 店員さんは近くに陳列してあったリンゴを手に取り、ばきゃっと片手で握りつぶした。

 えっ……。

 ドン引きしている俺をよそに、店員さんは垂れだす果汁を男にぶちまけて、

 

「おい」

 

 低い、とても低い、地獄からの声。

 男は飛び起きた。

 

 

 

 

 




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