第96話
うちの学校には「お姫様」と言う渾名をつけられた女子生徒がいる。紅い悪魔や銀の小悪魔など、中々怖い渾名を持つ女子生徒もいる。事実怖いし、危険と言うのが共通の認識だが、中々に美少女なのが実に悔しい、だがその仲でもお姫様の渾名を持つ女子生徒「八神龍花」は正直言って桁が違う。そこにいるだけなのに圧倒的な存在感を持ち、そして……
「はわわ!」
「へぶろお!?」
周囲に甚大な被害をもたらす。俺は顔面に命中した辞書の角の激痛に蹲り顔を押さえた
(ゆ、油断した)
ちょっとあの美しい銀髪に見惚れたその一瞬の惨劇。辞書の角は正直死ねるぞ……しかし俺は空手をしているので痛みにはある程度耐性があったので比較的早く回復できた
「あわわ。スバルさん大丈夫ですか!?」
心配そうに俺の顔を覗きこんでくる龍花。これ以上心配させると鬼が来るかもしれない。それにそんなにダメージもないので
「ああ、大丈夫だ「そうですか。良かった」ごぼお!?」
大丈夫だと言うと龍花が嬉しそうに顔を上げその石頭が俺の顔面を穿つ、さすがに今回のは大ダメージでそのままひっくり返って動けなくなってしまった
「あわわわ!!!王花ちゃんどうしよう!?」
「ほっておけ、馬鹿だから死なん」
ひでえ言われようだ。だからお前は百合って噂が流れているんだと心の中で呟くと
「おっと足が滑ったー(棒読み)」
物凄い棒読みの割りにとんでもない力を込めた蹴りが俺の脇腹に命中し
「ぐああああああ!?」
階段に蹴り落とされ階段を転がり落ちていく、普段なら受身でも何でも取れるのだが龍花の頭突きのダメージが予想以上に大きく、俺は3階から2階の踊り場まで転がり落ちた
「何をしている?スバル?」
呆れた感じで尋ねて来るティアナの声。俺は少しだけ顔を上げて
「悪魔に蹴り落とされた……」
その言葉を最後に俺は意識を失うのだった……なお俺はその後その場に放置され、3時間目の終わりまでその場に放置されていた。幼馴染に放置されるのはかなりの精神的ダメージがあった
「なんで俺をあそこに放置したんだ!?」
昼休みにティアナに尋ねると、やつはしれっとした顔でサンドイッチを頬張りながら
「体重・身長・腕力で考えた結果だ。私をお前が運ぶなら可能だが、私にスバルを運ぶのは不可能だと判断した」
「少しは運んでやろうとか思わなかったのか?」
仮にも友人なのだからと思いながら尋ねるとティアナはふむと頷いてから。鞄から
「お詫びのしるしに駅前の特製カツ丼を買って来たのだが、いらないようだな。すまないな。気がきかなくて」
「いやそんな事ねえ!いやマジサンキュー」
駅前の和食所のお持ち帰りNO1メニューのカツ丼。蕎麦のだしを使っているので抜群に美味い、しかもかつはヒレカツと言うこと梨だ、だがあまりの人気で中々入手できない。これがあるなら別に構わないとティアナに差し出されたカツ丼を頬張るのだった
単純だな、この男は……嬉しそうにカツ丼を頬張っているスバルを見て小さくそう呟く。色気より食い気だな
「で?何があったんだ?」
王花は龍花に関わらなければ基本的には前任だ。何か理由があったのではないか?と思い尋ねる
「龍花が転んで辞書が顔にめり込んで、龍花の頭突きを喰らって悶絶して」
何をやっているんだ!?いや確かに龍花はかなりのうっかり属性だが、それにしたって酷い
「んで王花が百合って心の中で呟いたへぼお!?」
「スバル!?」
開いていた窓から飛び込んできた石がこめかみに当たり蹲る、スバル。思わず窓の外を見ると
「ぽーん……ぽーん」
石もってイイエガオで笑っている王花。これは危険だ、下手な事を考えればスバルが死ぬ
「い、いるのか?外に」
青い顔をしているスバル、まさか襲撃されると思ってなかったのだろう。私もまさか襲撃があるなんて思ってなかった
「ああ。しかも石をスタンバイしている」
これはいけない変なことを考えればやられる。私とスバルは椅子に座りなおし
「凄い地獄耳なのか?」
「直感のような気もするがな」
王花と言えばその強気な態度と男子にも負けない運動神経で女子にも人気だ、だがいたってノーマルなので百合と噂されるのはいやなのだろう。仮に私とスバルがそんな噂を流されたら真面目に殺意を覚えるレベルだ
「ならあんなに龍花に構わなければいいのにな」
「まぁそうも言えないのだろう」
龍花は見ているだけでも心配になる。それが従姉妹ならなおの事心配になるのも当然だろう。仮に私の妹が龍花だとしたら私も多分王花と同じようになるという確信がある
「俺もだな……不安になるもんな」
「ああ。不安になる」
いつもふらふらしているし、うっかりするし、あんな妹がいたら心配になるよなとスバルと笑い合っていると
「「ぐはあ!?」」
窓から飛んで来た石が後頭部を直撃し私とスバルは揃って意識を失うのだった
「なんで石を投げたんですか?」
中庭でレジャーシートを敷いて食べていた龍花が王花にそう尋ねる。急に立ち上がり石を投げた従姉妹を見ればだって尋ねるという者だろう
「なに少し不埒な事を考えている連中がいたので制裁だ」
にやりと笑う王花に不審な物を感じた龍花だが
「龍花?これ美味しいですよ?」
「ありがとうございます」
星花に差し出されたカップケーキを前にその不信感を失うのだった……流石は従姉妹。龍花の扱いを熟知しているのだった……
龍花に出会ってから学校をサボる事もなく、毎日通うようになった。サボると怖いのだ、父さんや兄弟ではなく
【セッテさん?昨日はどちらへ?】
笑顔で迫る龍花はある意味恐怖になっている。目が笑っていない笑顔はかなり恐ろしい、影の女王と呼ばれているのも納得だ。龍花の一声で武闘派と名高いシグナムとセイバーも動くだろうし、頭脳はの生徒会長に紅い悪魔こと遠坂凜も動く。一見可愛らしく護られているだけの存在に思えるが、もっとも強いのは間違いなく龍花だろう。そんな事を考えながら弁当を食べていると
「「ぐはあ!?」」
窓から飛んできた石でスバルとティアナが昏倒する。ちらりと窓の外を見ると王花が石をその手にしていた
(凄まじい肩だな)
あれだけの距離をストレート返球できる。ソフトボール部がきいたら是非入部してくれと言うだろう。まぁ恐らく断るだろうが
(やれやれ、あいつらも大概過保護だな)
そんなんだから百合と噂されるんだと小さく笑いながら弁当を食べる。窓の影なので王花が石を投げ込んでくる事もないので安全だ……昏倒しているスバルとティアナは結局昼休憩が終わっても目覚める事はなく、教師が足元に落ちている石と意識のない2人を見て保健室に運んでいた。以前ならば俺が疑われるが最近は大人しくしているので疑われる事はない、それにスバル達と喧嘩をする理由もない。そんな事を考えながら退屈な授業を受ける
(ふぁあ……ねむ)
元々サボリ気味だったので授業についていけないが、そこは大家族の武器。兄弟に教わるというのでクリアしている、欠伸をしながら授業を受ける、教科書は開いているだけだが、その事を注意するような教師はいない
(楽しそうに授業を受けてるなあ)
俺にとってはくだらないだけだが龍花は凄く楽しそうに授業を受けている。そんなに楽しいか?と思いながら進むのが遅い時計を見ているのだった
「帰るか」
授業も終わったし帰る準備を済ませ学校を出る。前までなら喧嘩かゲームセンターに向かう所だが、今はそんな事をしても楽しいと思えないので真っ直ぐ家へと向かう
(これも龍花の影響か?)
家族は揃って食事!と言うのを大事にする龍花の話を聞いたせいか?と思わず苦笑する。普通なら何を馬鹿なと笑うところだが、不思議とそうなんじゃないかと思う。それほどまでに龍花の言葉と言うのは考えさせられるものが多い
「セッテ!ウーノ姉にお使い頼まれたっす!手伝ってくれっす~!」
「量が多いから手伝って」
私服姿で俺を呼ぶウェンディ達の姿に苦笑する、前までの俺なら絶対に断っていたなと思いつつ
「少し待て、制服の上だけでも家に置いてくる」
さすがに制服で買い物に行くのは不味い。上着だけでも変えて来るというと
「「了解~」」
楽しそうに返事を返す2人。前なら絶対に面倒くさいとか言って手伝う事はなかったな。自分で思うほどに今の俺は変わってしまっているが、こんな自分は嫌いではない。自分の部屋の机の上に制服の上着を置いて
(財布持って行くか)
確か途中に美味い鯛焼きやがあったはずだが、あの2人の事だ小遣いなんて残ってない筈だから俺が買ってやるしかないな。まぁついでに兄弟の分も勝って帰ればいいだろうと思い、財布をポケットにねじ込み、家の外で待っている2人と合流してスーパーへと向かったのだった
「じゃがいもと牛肉と人参。カレーかな?」
「えーシチューがいいっす」
「黙って歩け!」
背が高い俺とウェンデイと比べてかなり低いオットー。そのせいでかなり悪目立ちしていることに気づき、俺は引率者か!?と心の中で叫びながらあーだコーだと話している2人と共に買い物に向かうのだった……
テストも近いのでテスト勉強を始める、試験範囲も多いのでかなり勉強しないと大変だ
(ここら辺かな~?)
今回のテストの範囲はかなり広いのである程度山を張らないととてもじゃないけど、試験で良い点を取るのは難しい。私の感を信じてある程度山を張っていると携帯に着信が出る
「誰だろ?」
携帯を見るとエンちゃんからの電話だ。何のようだろうと思いながら通話ボタンを押す
『やあ?リューカ。忙しかったかい?』
「いいえ、大丈夫ですよ?それでなんのようですか?」
エンちゃんから電話してくるのはとても珍しい。何のようですか?と尋ねると
『今度のテストの範囲はかなり広いだろう?今度の休みの日にギルの家に来て一緒に勉強しないかい?』
ギー君の家。そういえば1回も行ったことがない。だけど私だけで行くのもなぁ……
「おにーちゃん達も誘って良いですか?」
『勿論いいよ、ギルも良いよって言ってくれてるからね』
それならおにーちゃんとイリヤちゃん達を誘って行こうと思う、たくさんの人数で勉強したほうが楽しいから
「行きます、今度の土日ですね。楽しみにしています」
『うん。判ったよ、僕も楽しみにしているよ』
そう笑って電話を切るエンちゃん、多分イリヤちゃん達にはエンちゃんが連絡しているはずだから、おにーちゃんには私が説明しようと思い、私は部屋を後にしてリビングでTVを見ているおにーちゃん達にギー君の家に勉強を誘われている事を話し、おにーちゃん達も誘われているので一緒に行こうと話をするのだった……最初は怪訝そうにしていたけど、何回も話すと良いよと言ってくれたので、今度の土日におにーちゃん達とギー君の家で勉強する事になったのでした……
第97話に続く
次回は勉強会の話にしようと思います。ほのぼのの話で面白い感じにしようと思います。それでは自壊の更新もどうかよろしくお願いします