第99話
リューカのドジでびしょびしょになった服を着替えなおし、リビングに降りてきた我は少しだけ混乱していた、何故なら勉強会の予定なのだが、そんな雰囲気がまるでないからだ
「勉強はどうしたんだ?」
目の前の光景を見て近くのハヤテに尋ねる。ハヤテは頬をかきながらソファーを見て
「見て判るだろう?力尽きたんだ」
ソファーで寝転んでピクリとも動かないリューカとヨウカ。エルキドゥが布団を掛けているのかスカートが見えないのが残念……
「ふん!」
「うぐわあ!?」
オウカの強烈なローキックに蹲る。そして顔を上げえるとオウカはない胸を……
「死ね」
「ごがあ!?」
まさかの後方からの辞書の角アタック。この声は……りん……
「お前は決して考えてはいけない事を考えた」
その冷酷とも思える言葉を最後に我は意識を失ったのだった。そして目を覚ますと
「これはなんだああ!?」
縛られている上に固い板の上に正座。そして膝の上には大量の参考書……何時の時代の拷問だ!?
「何って……罰ゲーム?」
「何で疑問系だ!?」
疑問系で答えるリンにそう怒鳴るといつもの鉄面皮で参考書を見ていたセイカが我を見て
「今龍花を起こしますか?その格好を見たら龍花はなんと思うでしょうね?」
ニヤニヤと笑うその笑みは悪魔としか思えないものだった。この性悪と思ったがそれよりも早く我は
「止めろォ!!!」
今までリューカに対して築いて来た我のさわやかなイメージが全部消し飛んでしまう。何とかならないか?とシロウとハヤテを見るが
「そこ違うぞ?」
「なに?どこだ?」
自分に飛び火する可能性を恐れたのか、我を完全に無視して勉強しているし、普段なら助けてくれるエルキドゥは
「そこはこの数式を入れるんだ」
「何で?」
アホの子のライカの面倒を見ていた。起こっているのか助けてくれる気配は当然0だ。我の目の前には悪魔の笑みを浮かべているセイカとオウカ。そしてニヤニヤと小悪魔の笑みで我を見ているイリヤ・クロエ・セイカ。我に出来る事は1つだけだと判断した……
「そこのタンスに我の財布があるから、タクシーを呼んで好きなものを買ってくると良い……」
嬉々とした表情で我の財布を手にして出て行くリン達を見て、我は涙を流す事しかできないのだった……なお戻ったとき、財布に8人いた諭吉が1人も存在せず、明らかに高いと思われる本を持っているオウカの姿に更に涙を流すのだった……
「んにゅー?ふあああ……」
欠伸をしながら体を起こす、結構長い時間歩いていたから、クーラーの効いた涼しい部屋に入って眠くなってしまったようだ。私が体を起こすと
「しくしくしく」
「ギー君?どうしたんですか?」
体育すわりで泣いているギー君に尋ねるが反応がない、私が寝ている間に何があったのだろう?私が首を傾げていると
「リューカ。ご飯にするから手伝ってくれるかい?」
エンちゃんに言われて時計を見ると12時を過ぎている。私は慌ててソファーから立ち上がり、髪と服を調えて
「何を手伝えば良いですか?」
勉強道具の片づけをしているおにーちゃん達の代わりに手伝おうと思い尋ねる。エンちゃんは食器棚を見て
「ご飯をよそってくれればいいよ。今日はカレーだから」
カレーライス。暑い夏場には丁度良いとおもいながら、おにーちゃんとシロ君とギー君のお皿には多めにご飯をよそい、私達の分は若干少なめによそう。この所は家で慣れているので慣れた物だ
「甘口と辛口。リューカはどうする?」
「甘口で」
エンちゃんの問い掛けに即答する。私は辛いのが苦手なので甘口でいい、たぶん陽花ちゃんも同じはず
「了解。じゃあカレーをかけようか?」
「はい♪」
涼しい部屋でカレーを食べるのは中々贅沢かもしれないと思いながら、エンちゃんの手伝いをして昼食の時間となったのだった……
「あーお腹一杯だから眠いよ~」
カレーを3杯もお代わりして机の上に伏せている雷花ちゃん。ほっておけば寝てしまいそうだけど
「寝たら補習の課題の手伝いをしてやらんぞ?」
王花ちゃんの鋭い視線とその言葉にびくっと背筋を伸ばして
「う、頑張る」
王花ちゃんの言葉に欠伸をかみ殺し頑張ってシャーペンを手にする雷花ちゃんに苦笑しながら、自分の筆箱からシャーペンを取り出して課題の範囲の再確認をする。問題はやっぱり範囲の広い現代国語と数学かな?
「判らない所があれば聞いてくれれば構わない。私と金ぴかは暇だからな」
そう笑うおにーちゃん。3年生のおにーちゃんはテストがない、だけど変りに進学か就職か?と言うので、面談があるので面接のマニュアルを見ながら
「字が違う。そこは数式が違うぞ」
私やイリヤちゃんの答えの間違いをしてきてくれるので助かる。私も線を引いて、要注意のマークを入れながら
「リューカ」
「大丈夫ですよ。ゆっくり頑張りましょう?」
文字が苦手なクロちゃんの課題を見ながら一緒に現代国語のワークをやるのだった……この日は夜の7時まで勉強をし、ギー君が
「折角だからご馳走にしよう。エルキドゥに迷惑をかけるわけにもいかないからな」
とのことでお寿司を注文してくれたのでとても楽しい夕食になったんですが
「「「!!!!」」」
イリヤちゃんとクロちゃんと陽花ちゃんが山葵の刺激に悶絶し、じたばた暴れるのを見ていると
「龍花さんは山葵平気なんですか?」
マグロの握りを食べながら尋ねて来る桜さんに私は
「平気ですよ~とっても美味しいです」
悶絶しているイリヤちゃん達に悪いと思いながらそう返事を返すのだった……
金ぴかの家は思っていたよりも参考書がとても豊富で自分で思っていたよりもかなり勉強が進んだ。土曜日はまぁ色々とハプニングがあったけど、日曜日は朝から勉強がスムーズに出来ている
「龍花あたしも手伝おうか?」
自分の勉強ではなく、イリヤ達の面倒を見ている龍花にそう尋ねる。1年は半端じゃなく、テストの範囲が広い。自分の勉強もしないと難しいと思い尋ねると
「大丈夫ですよ~復習にもなりますしねー」
龍花がそう笑う。教えられている方がなんか切ない顔をしているけど、まぁそれは仕方ないかもしれない。龍花は天然ではあるが頭はいいから……
「私が必死で勉強しているのにリューカにとっては復習なの……」
「これが現実……胸の大きさと頭の良さはリューカに劣る運命なの……」
イリヤとクロエが蹲って嘆いている。その気持ちはあたしも判る。桜と並んで勉強を見ている龍花を見ていると嫌でも自分とは違う場所が目立つ……
「そんなに恨めしい目をするな。龍花が悪いわけじゃない」
王花があたしの肩を叩いて言う、その顔は切なさに満ちている。これは女子にしか判らない悲しみだろう……背が自分よりも低いのでなんでこうも差が出るのかがとても気になる。
「どうかしました?」
私と王花の視線に気付いた龍花がそう尋ねて来る。あたしと王花は首を振りながら
「なんでもないわ。大丈夫よ」
「疲れたのならいえよ?我が雷花の勉強を見るのを変ろう」
「ええー王花の教え方厳しいから嫌だー」
雷花が嫌だと言う。それに対して王花の眉が少し上がる……どうやら若干怒っているようだ。
「先輩。ここはどうすれば良いですか?」
若干目を逸らしたその隙に桜が士郎の傍を陣取っている。油断した……
「え?あー困ったなあ。俺はあんまり頭良くないからなあ……」
士郎があたしを見る。そして手招きしながら
「遠坂。助けてくれ」
「ええ?先輩が……「しょうがないわね。あたしが教えてあげるわよ。士郎も桜もね」
慌てている桜の隣に座り小さな声で
(あたしを出し抜こうなんて100年早い)
(うう……チャンスだと思ったのにい……)
まぁ若干巻油断していたあたしも悪いんだけど……桜がここまで行動的だとは思ってなかった。これからはもう少し警戒しておこう
「そこはそこの数式を使ってだな。XをYに置き換えるんだ」
「あ、そう言うことですか、なるほどなるほど」
はやてもはやてで星花の勉強を見ている。それに意外と言えば意外なのだが……
「そこの文法は違うな、こっちだな」
「え?違います?」
「ああ。間違えやすい所だけどな」
金ぴかが龍花と雷花の勉強を同時に見ている。普段の馬鹿な行いからは想像出来ないけど、あいつも結構頭がいいんだよなあ……あれで俺様じゃなくて、もっと常識人ならもっと人気も出るんだろうに……まぁあたしは士郎の方がいいけどね……
「遠坂。ここはどうすればいいんだ?」
数学の教科書を手に尋ねて来る士郎。その隣では
「えとえと……」
判らない所を尋ねようとして、尋ねる事ができないでいる桜……あたしは溜息を吐きながら
「判らないなら聞きなさい。その為にいるんだから」
折角の勉強会なのに、聞かなかったら意味がないでしょう?ほらどこ」
桜の手にしている教科書を覗き込んで、判らない所を見てあげる事にする。
「えーとこれはこれ?」
「そうそう正解。段々読めるようになってきたねクロエ」
よしよしとクロエの頭を撫でているエルキドゥ。外人だけどそこらの日本人より日本語上手なのよねえ、エエルキドゥは……そんな事を考えがら士郎と桜の課題を見る。龍花は龍花で雷花達の面倒を見ているし
(まぁ何とかなるかな?)
あたしもテストはあるけど、毎日予習復習をしてるからある程度は大丈夫なはずだ。だから今回はテストに不安のある、士郎達の面倒を見る事に集中する事にしたのだった……
この奇妙な世界で暮らし始めてもう少しで1ヵ月と言う所で漸くジェイルと連絡を取ることが出来た。そしてジェイルいわく。この世界はある意味全ての理想が揃った世界と言うことらしい
「どういうことだ?」
【争いがなく、平和で穏やかな世界。それはこの世界の全員が望んだ事なんだよ、あんまり長時間いるとその世界に対応してしまって、リンカーコアの出力が落ちる危険性がある】
ジェイルの言葉に眉を顰める。確かに魔力の収束がしにくいのは感じていた、デバイスがないとは言え、これは異常だと感じていた
【闘争・戦争に疲れた時。思うだろう?平和が欲しい、幸福が欲しいとね?その世界は争いなんて概念が存在しない世界なんだ。非戦闘区域とも言えるかもしれないね。少し休むのはいいかもしれないが、長時間は危険だ。こうして連絡が取れたんだ、丁度4日後が満月だその時に迎えに行くよ】
言うだけ言って伝播が悪いからと言って連絡を切るジェイル。私は溜息を吐きながら大分住み慣れた双子館を見て
「どうやらこれまでのようだな」
まだネクロとの戦いは続く、この世界の穏やかな時間は悪くはなかったが、ここまでのようだ
「ただいまー」
「今戻りました」
丁度はやてとセッテが買い物から戻ってきた。折角食料品を買ったのだが、仕方ない。私は荷物を持っている2人にジェイルと連絡がついたことを話すと
「そうかあ……しかたないなぁ」
なんだかんだでこの世界を気に入っていたはやてが寂しそうに呟く。魔法を使えない事を除けばここまで落ち着ける世界は無いので
「魔法陣を刻んでおこう、また来れるようにな」
転移魔法自体は使えないが、ジェイルの話では満月の時だけ魔力が使えるらしいので、その日に魔法陣を刻もうというと
「私はあんまりですけどね」
乗り気ではないセッテ。この世界の自分が男なので複雑な気分もわかるが……
「ゆっくり出来る世界は大事だ。静養所としてな」
ネクロとの戦いは徐々に激しくなっている。ゆっくりできる場所は大事だというと、セッテはしぶしぶと言う感じで頷いた。
「近いうちに時臣さんと切嗣さんにお礼を言っておくか。明日からは館の掃除だな」
結構長いこと暮らしていたこの館。返すときはしっかり掃除をしておくべきだ。それが礼儀と言うものだろう、今後の方針も決まったので取り合えず
「夕食にするか?」
とりあえず食事にすることにした。この奇妙な世界で暮らすのもあと4日……そう思うと中々寂しい物だなと思うのだった……
第100話に続く
次回で1度お姫様は完結にします。続編を書くとすれば、もっと設定を固めてからにしようと思います。今のままだと満足いく作品にはならないと思うので、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします