海鳴のお姫様!!   作:混沌の魔法使い

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第1話

第1話

 

 

 

退院してから数日たった朝

 

ジリリリリッ!!!チン……

 

「朝……ご飯つくらないと」

 

目覚ましの音で目を覚ました小柄な少女がもそもそと布団から抜け出し、寝巻きから私服に着替えてから他の家族を起こさないように気をつけ料理を作り始めた。まずは男兄弟の分のお弁当を作り。その後で朝食の準備を始める、味噌汁を作ろうと上の戸棚に手を伸ばそうとして

 

「背……足りない」

 

しょぼーん……キッチンの前でがっくりと肩を落とす。入退院ばかりしていたせいか私は運動なんてした事がない。そのせいか歳の割り偽が低い……がっくりと肩を落とした視線の先には身長の割には大きい胸がある

 

(胸が大きいより……もうちょっと背が欲しい)

 

しかも身長は伸びる気配なんてまるでないのに胸だけはまだ大きくなっている事が、嬉しい様な悲しいような……私はそんな事を考えながら椅子を戸棚の前に持って行きその上に乗った

 

「あ、あとちょっと……」

 

いつもの踏み台がなく致し方なく、イスに乗り背を伸ばすがギリギリ届かない

 

「あっ!と、届いた!?……きゃっ!?」

 

無理な背伸びをしていたせいかバランスを崩しイスから落ちかける

 

「っとと!危ないな。大丈夫か?」

 

「あっ……おにーちゃん」

 

落ちかけた私を支え大丈夫か?と尋ねてくるおにーちゃんに

 

「う、うん。大丈夫はやておにーちゃん」

 

私より2歳年上の兄である。八神はやてにそう笑いかけると

 

「くっ!?駄目だ!?この可愛い小動物は!?」

 

「はやておにーちゃん?」

 

頭を抑え何か葛藤しているはやておにーちゃんをきょとんとした目で見ていると

 

「あ、ああ!気にしないでくれ。ちょっと考え事だ龍花」

 

「そう?そっか!じゃあいいや!もうちょっとでご飯出来るから待っててね」

 

彼女の名は「八神龍花」八神家秘蔵の天使は今日も元気です

 

「おーい、龍花。醤油とってくれ醤油」

 

「あんまり掛けると身体に悪いよ?ヴィータ兄?」

 

「だいじょーぶ!だいじょーぶ」

 

ダバダバと醤油を目玉焼きにこれでもかと掛ける。あんまり塩分を取ると身体に悪いのに……

 

「ご馳走様でした。では行って来る」

 

「ほえ?シグ兄はもう学校?」

 

長い赤髪を腰元で縛った、常に凛々しい顔つきの兄にそう尋ねると

 

「剣道の大会が近い、朝連だ」

 

「じゃあすぐに包むよ!」

 

まだ布巾で包んでいないので包みに行こうとすると

 

「構わない、それくらい自分でやる」

 

さっとお弁当箱と布巾を持ってリビングを出て行くシグ兄を見ながら

 

「私ってシグ兄に嫌われてるのかな?いつも顔見てくれないし」

 

ぼそっと呟くと

 

「あーいやいや、シグナムはあれだ、あれ。自分の中の獣を抑えられなくなるのが怖いんだ」

 

「獣?」

 

「ヴィータ!龍花に変なことを言うな」

 

「へいへい、ごっそさん。じゃあ俺も学校行くわ、弁当いつもありがとな。龍花」

 

ぐりぐりと私の頭を撫でてからリビングを出て行く、ヴィータ兄を見ながらはやておにーちゃん箸を置き、立ち上がろうとした所で気付いた

 

「さてと。私も学校に行く準備を……」

 

「ほっぺにご飯粒ついてるよ?おにーちゃん」

 

ひょいっとそれをつまみ自分の口に運ぶと

 

「!?!?」

 

酷くうろたえるはやておにーちゃんは

 

「すまん!教科書を忘れた!!」

 

ドタタタタッ!!!

 

と凄まじい音を立てて階段を駆け上っていった

 

「?」

 

私は2階から聞こえてくる

 

【無防備すぎる!】【私の義妹マジ天使!!】【おーおーシグナムとはやては葛藤中か。相変わらず龍花のナチュラル男心ブレイカーは強力だな】

 

そんな声を聞きながら食器の片づけを始めた

 

「良いか?私達が帰るまで勝手にうろつかない事。あと誰が来ても鍵を開けないこと。良いね?」

 

「うん。判ってるよはやておにーちゃん」

 

つい先日まで入院していた為、私は転入と言う形でおにーちゃん達と同じ学校に通うことになる。そのための書類を纏めなくてはならない。多分今日と明日くらいかかって準備が終るだろう

 

 

「じゃあ戸締りはちゃんとする事。もう少ししたらアインスが帰ってくるだろうから。それまでは大人しくしているんだぞ?」

 

繰り返し気をつけろというはやておにーちゃんに

 

「もう大丈夫だよ!ほら遅刻するよ」

 

時計を指差すともう7時40分頃。急がないと遅刻する時間だ

 

「それもそうだな、行ってくる」

 

「いってらっしゃーい」

 

私はそれを見送り書類の準備を始めた

 

 

 

 

 

上履きを取ろうと蓋を開けた瞬間

 

ドサドサ……

 

無数のラブレターとプレゼント足元に落ちる、斜め横の2年の下駄箱を見ると

 

「あーまたか」

 

ヴィータも同じように頭を抱えていた。野球部2年 エースで4番のヴィータの人気は凄い。熱心なファンクラブが出来るほどだ。私はそんな事を考えながら足元のラブレターを拾おうと屈んだ時

 

「おーう、はやて朝からモテモテだな」

 

「黙れ、死ね。直哉」

 

にやにや笑う悪友にそういうと

 

「学年主席かつ生徒会長である八神はやての言葉とは思えんな」

 

「うっさい。黙ってろフェイト」

 

怖い怖いと肩を竦める振りをするフェイト。小学校からの腐れ縁の2人だからこそ知る私の本来の口調を聞いた2人は

 

「おお?はやてが怒ったぞ。雷が落ちる前に行こうぜ。フェイト」

 

「承知した。はやてが怒ると長いからな」

 

触らぬ神に祟りなしと言いたげな顔をして、上履きに履き替え拾ったラブレターを階段したの箱の中に入れる。誰が言い始めたか知らないが、夢散る墓場といわれるこの箱にはとんでもない数のラブレターの山が出来ている

 

(全く断っても断ってもきりがない)

 

最初こそ断っていたがもう面倒くさくなりここにおくようになってもう1年、いい加減諦めてくれればいいのに

 

(私が……私が好きなのはあいつだけだから)

 

もう何時のことだったか忘れたが死んだ両親が連れてきた女の子、感情のない生気のない瞳をした子供。それが龍花。中国語ではロンファというらしいが、私達はそのまま龍花(りゅうか)と呼んでいる。気が付いたら私は彼女に恋していた……きっかけなんて憶えてないただ彼女が愛おしいそれだけが重要なのだ

 

(と言っても。傷付けるのを怖れ何も出来んがな)

 

愛している、だがそれゆえに傷付けるのが怖い。触れることすら躊躇う。雪の様に美しい白い髪に透き通るような青い目……それは雪の妖精の様な儚さと美しさを兼ね備えている

 

(私が好きだといったらどんな顔をするのやら)

 

驚くか……嬉しいというか……いやきっと私も好きだよ。とか言って兄妹としての好きだと受け取るだろう……私はそんな事を考えながら自分の教室へと向かった

 

 

 

「ただいま……」

 

「おかえり!アインス」

 

ふらりとリビングに入ってきた兄にそう言うと

 

「龍花……そうかまだ学校の手続きは終わってないのか?」

 

「うん、もうちょっと」

 

「手伝うか?」

 

「んー明日市役所と病院に行きたいから車出してくれる?」

 

「判った。仕事の後でよければ車を出そう……」

 

ふらふらと歩くアインスに

 

「ご飯作る?」

 

「いい……外で食べてきた。ところで?弁当箱が1つ残っているが誰のだ?」

 

へっ?言われてキッチンの机を見ると確かに1つ弁当箱が見える、あの青い包みはおにーちゃんのだ

 

「持って行くの忘れたのかな……んー」

 

時計を見る11時20分。いまから行けばお昼に間に合う

 

「うん!おにーちゃんに届けてくる!」

 

「?駄目だろ?勝手に出歩くとはやてが怒るぞ?」

 

水を飲んでいたアインスに止められるが

 

「お弁当を忘れたおにーちゃんが悪いんだよ、だから怒られる理由なんてないもんね!」

 

書類を片付け鞄にお弁当箱を入れていると

 

「私が届けに行こう」

 

「いいよ、アインス仕事で疲れてるでしょ?」

 

よくは知らないが、アインスは夜の仕事をしているとヴィータ兄が言っていた、夜の仕事の意味がわからないが大変な事は間違いない。ならばここは私が行くべきだ

 

「だが……」

 

「いいの!通うかもしれない学校も見たいんだ」

 

そういうとアインスは折れたが

 

「これを……」

 

「なにこれ?」

 

渡された黒い棒みたいなのをしげしげと見つめながら尋ねると

 

「100ボルトのスタンガン」

 

「危なくないの!?」

 

「護身用だから問題ない、あとこれ日傘」

 

白い日傘を差し出される。漫画とかアニメで見るお嬢様が使ってるような日傘だ

 

「可愛かったから買ってきた」

 

「ありがとう!アインス♪」

 

受け取った日傘とスタンガンを鞄に入れて私は学校へと向かった。はやておにーちゃん達が通う私立聖祥大附属高等学校はスポーツも勉強も得意な生徒が多い

 

(私は身体弱いけど大丈夫かなぁ?)

 

多少の不安はあるがまぁなんとかななるかと思う。悩んでも仕方ない事は悩まないそれが私のやり方だ

 

「ここかー」

 

大きいなー私が感じたのはそれだった。職員室はどこかな?きょろきょろと辺りを見回していると

 

「なぁッ!?なんでここに!?」

 

慌てたヴィータ兄の声がし振り返ると、ジャージ姿のヴィータ兄と多数の男子の姿が見えた

 

「おお?ヴィータ。彼女か……しかし年下趣味はどうかと」

 

「違げえ!!龍花は俺の妹だよ!」

 

凄い速さのパンチで殴り飛ばされたけどあれ大丈夫かな?

 

「ええ?ヴィータの妹!?なにむちゃくちゃ可愛いじゃん」

 

あわわわ!?あっというまに囲まれて私が慌ててると

 

「邪魔だ!どけっ!龍花なんで来たんだ?勝手に出歩くなって言われてなかったか?」

 

周りの男子を蹴散らし近付いてきたヴィータ兄に

 

「はやておにーちゃんがお弁当忘れたから届けに来た」

 

「なにやってんだよ。はやて……」

 

がっくり肩を落とすヴィータ兄を見て首を傾げていると

 

「まぁ良いや。ほれ俺が届けてやるから渡せ」

 

「やだ。ここまできたんだから自分で渡す」

 

折角ここまで来たのに渡さないで帰る事なんて出来ない

 

「言い出したら聞かないか……しゃーねえ。ほれちょっとこっちだ」

 

ヴィータ兄に手を引かれ校舎の中に入っていく

 

「失礼しまーす」

 

「し、失礼します」

 

ヴィータ兄の後を追って職員室に入る

 

「ん?八神か?後ろの小さいのは何だ?」

 

「俺の妹、来週くらいには転入予定だ」

 

「転入?ああ。中学校か」

 

先生らしき男性と話しているヴィータ兄の邪魔をしては行けないと思い黙っていたが、中学生と言われ私は

 

「私は高校生です!!」

 

「あーあ、クロノ。龍花苛めやがった。サイテーだな」

 

「なっ!?僕は見たままを言っただけで」

 

「ヴィータ兄。私あの人嫌い」

 

見たままとか失礼すぎる。そりゃ確かに小さいけどそういう事は言う物ではないはずだ

 

「良し良し、おい、クロノ龍花を苛めるんじゃねえ」

 

「人聞きの悪い事をいうな!!でっ?八神さん?君は何しに来たのかな?」

 

「はやてに弁当を届けに来たんだと。だから入校許可出してやってくれ」

 

「僕は一応先生なんだが?溜め口はどうかと思うぞ?」

 

「俺よりでかくなったら考えてやるよ」

 

「今更背など伸びるか!!」

 

仲いいのかな?絶妙なやり取りを続ける2人を見ていると

 

「はい。入校許可証。帰りにまた持ってきてくれたらいいから」

 

渡されたカードをポケットにしまい

 

「失礼しました」

 

くるりと返事もせずに出て行く、小さいなんていう人に払う敬意はない

 

「くく……龍花に嫌われたな。さーてと俺はあいつをはやての教室まで連れてくかなー」

 

 

 

 

 

「ない……」

 

そんな馬鹿な!?龍花の作ってくれた弁当がないだと!?鞄をひっくり返すがやはり弁当箱はない

 

「おお?どうした?弁当でも忘れたか?完璧主義のお前にしては珍しいな」

 

「大して美味くない購買のパンか、良い気味だな。はやていつも美味そうな弁当を食いやがってと思っていたので実に良い気味だ」

 

フェイトがふんと鼻を鳴らすのが非常に不快だ、だが腹が減っているので昼食を食べないわけにも行かない

 

「仕方ない今日は購買のパンで我慢を……」

 

購買に行こうと教室の扉を開けた瞬間

 

「はやておにいちゃーん!!」

 

「ぐはっ!?」

 

聞きおぼえのある声と共に腹部に衝撃が……恐る恐る下を見ると

 

「龍花!?なんでここに!?」

 

「お弁当忘れたから届けにきた」

 

渡された弁当箱は確かに私の弁当箱だが……いかんせん場所が悪い

 

「へーはやてはロリコンか」

 

「しかもおにいちゃんと呼ばせるか。度し難い変態だな」

 

フェイトと直哉の視線が痛い!!っていうかそれ以前にこいつらに龍花を見せるのが嫌だ

 

「失礼な事を言うな!龍花は私の妹だ!!」

 

それだけ叫び龍花を小脇に抱えダッシュする

 

「ああ!?はやておにーちゃん!あの人たちおにーちゃんの友達なんですよね!?挨拶!挨拶しないと!!」

 

「そんなのはどうでもいい!!そもそもあいつらは友達なんかじゃない!!」

 

変なところで礼儀正しい我が妹をあの2人から遠ざけようとするが

 

「まぁまぁ落ち着けよ。はやて」

 

「うおっ!?」

 

流れるような足払いで転倒しかける。それでも龍花を落とさないのは兄の意地だ

 

「何をする!?ヴィータ」

 

「何をって足払い?」

 

「そういうことを言ってるんじゃない!!」

 

私とヴィータがもめているうちに龍花は私の脇から抜け出し

 

「どうも初めまして。来週転入予定の八神龍花と言います。はやておにーちゃんの友達の人なんですよね?宜しくお願いします」

 

「おお?なんか礼儀正しい子だな。俺は高町直弥。でこっちが」

 

「フェイト・テスタロッサ。よろしく可愛らしいお嬢さん」

 

「駄目だ!龍花!そいつらに近寄るな!!」

 

あの目を見るんだ!獲物を見る目をしているぞ!(はやての視点からすると自分達以外の男の目は全部そう見える)

 

「そうだ!お菓子食うか?お菓子?」

 

「わぁ!良いんですか?ありがとうございます!」

 

餌付けされるな龍花!くそ!こうなれば!携帯をポケットの中で操作する、すると

 

「あっメールです。えーと「レンジ 爆発 なう」……アインス?なにやったんですか?」

 

……マジでレンジ爆破したのか?アインスならやりかねんが

 

「すいません。兄が家でとんでもないことをしたみたいで、急いで帰ります。あ、またメール「洗濯機 崩壊 なう bY シャマル」……おにーちゃんどうしましょう、レンジと洗濯機がご臨終したみたいです」

 

あのお惚け2人を頼った私が悪かった!!このままだと家が崩壊する!!

 

「急いで帰るんだ龍花!いや寧ろ私が送ってく、「ピロリン♪」……おおおお。お兄ちゃん!!!ままままままたメールがアアアア!?」

 

もはや一刻の猶予もない私は鞄を担ぎ

 

「今日。早退する!!先生に言っておいてくれ」

 

ピロリン♪

 

「あああ!?またメール!またメール!?」

 

「あのお惚けコンビが家を破壊する前に帰るぞ!!」

 

「はいいい!!!」

 

小脇に龍花を背負い全力ダッシュで家へと走った。ちなみに帰るまでに崩壊したもの、レンジ・洗濯機・ミキサー・クローゼット……あの2人の破壊工作の技能には脱帽する

 

走り去るはやてをみていた直哉とフェイトは

 

「可愛い子だったな」

 

「ああ、来週転入予定と言っていたな」

 

「「面白い事になるかもな」」

 

くっくと笑う直哉とフェイトの目は小脇に抱えられた龍花を見ていた……

 

 

 

第2話へ続く

 

 




次回はそうですねーTS化したなのはキャラの誰かとエンカウントさせるのがいいかもしれないですね。スバルとかチンクとかとあわせたら面白いかもしれませんね
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします
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