第21話
「今日も出かけるのか? 龍花」
昨日と同じく出かける準備をしている龍花にそう尋ねると
「はい、今日は凛さんが遊びに行こうって誘ってくれてるんです」
にこにこと笑う龍花。今まで遊びと課とは無縁の生活だった龍花は友達と遊びに行くと言うのが堪らなく楽しいのだろう
「えーと、だから今日もお昼は……」
「いいよ、龍花。私が何とかするから、お前は何も気にしないで遊びに行っておいで」
私達だって簡単な料理くらい出来る、何の心配も無いと言うと
「はい、その代わり夜はちゃんとしたの作りますね」
そう笑う龍花に
「そんなに気にしなくてもいいんだぞ?」
「良いんです、はやておにーちゃんもシグ兄達も美味しいって食べてくれるからすっごく嬉しいんです」
この笑顔を見れるのなら多少の無茶でも何でもするさと思っていると
ピンポーン
「あ、迎えに来てくれたみたいです」
「そうか、じゃあ気をつけてな」
龍花が玄関の戸を開けるとそこには
「はーい。龍花迎えに着たわよ」
「やあ、リューカ。今日も良い天気だね」
凛とエルキドゥが居た。この2人なら何の心配も無いか……
「あら。はやて、どうしたの?」
そう尋ねてくる凛に
「いや、なに……金ぴかストーカーかと思ってな」
龍花に付き纏う変態というか天敵の強襲かと思ったというと
「心配ないよ、はやて。ギルは今日は僕達が一緒に出掛けるとは知らないから」
ギルには秘密にしておいた、一緒に出かけるとなれば確実に付いてくると言うのは目に見えていたから……と笑いながら言うエルキドゥ
「そうか、じゃあ……凛、エルキドゥ。龍花を頼む」
「もう、はやておにーちゃん心配しすぎですよ」
龍花に心配のし過ぎという事は無い。龍花は迷子と魅了のスキルに加え生粋のトラブルメイカーだ、ここはしっかり者の凛とエルキドゥに頼んでおかないと何が起こるか判らない
「判ってるわよ、じゃあ。はやて龍花借りていくわね?」
「じゃあ、行ってきます。はやておにーちゃん」
ひらひらと手を振る龍花を見送りリビングに戻る
「折角出かけようと思っていたが……また今度にするか」
龍花と一緒に出かけようと思っていたが、また今度にすることにしよう……それより昼食の準備をしないとと思いキッチンに向かうと
「これを暖めて食べてね♪」
と紙の張られた鍋がある事に気付き開けるとそこには肉じゃがが用意されていた。その隣の鍋には味噌汁も作られていた
「龍花そんな事気にしなくても良いのに」
そう苦笑しながらリビングに向かい。
「ヴィータ達とカラオケでにも行くか」
休みなのに家で閉じ篭るのもなんだと思い。私はヴィータ達を誘い出掛けて行った……
「リン、僕は何か悪い事をしてしまったのだろうか?」
周囲から感じる鋭い視線にビクビクしながらリンに尋ねると
「それはね。エルキドゥ、貴女の格好が原因よ」
「何でですか? 凛さん、エンちゃん格好良い服着てますよ?」
その言葉にピンと来た……リンに
(あの……もしかして僕が2人を侍らせている様に見えてる?)
(当たり前じゃない。何を考えて男装してきたの?)
呆れたような口調のリンに僕は
(スカートが無かったんだ)
(あのさ? 仮にも女でしょう? スカートの1つや2つ用意してなさいよ)
(面目ない)
リンとひそひそ話をしていてふと気付いた
「リューカ?」
「あれ? 龍花」
隣に居たはずの龍花の姿が無い
「「……はぐれた?」」
近くにリューカの姿が無い。冷や汗を流しながら辺りを見渡すと
「居たー!?」
「走るよ! リン」
エスカレーターの前にいるリューカを発見しダッシュで追いつく。あのままエスカレーターに乗られたらデパートの呼び出しを使用しないといけなくなる。 慌てて走りリューカと合流した
「リューカ。勝手に歩き回らないでくれ」
「そうよ、はぐれたらどうする気?」
「……ごめんなさい」
しゅんとするリューカ。同姓とか関係無しに愛らしい
「いや、怒ってるわけじゃないからね? さっ! 早く行きましょうか龍花」
リンが慌てながらそう言うとリューカは
「怒ってないですか?」
上目目線+若干涙目でそう尋ねてきた
((ぐっ!? 何だこの可愛い生き物は!?))
ノーマルのはずの僕とリンの理性をガリガリ削るリューカ。魔性EXは伊達でもなんでもないらしい
「ええ! 怒ってないから行きましょう!」
強引に手を引いて歩き出すリン。それは正解だと言える。あのままではずっとリューカは涙目で怒ってないですか? と尋ねてくるに決まっているからだ。そうなれば無意識に僕達の理性を削るだろう……怖ろしいのはリューカの魔性にも似た魅了の才能だと僕は思う
「あたッ!?」
「はうっ!?」
ゴンッ!!
2人揃って頭を打つリューカとリンを見て
(うっかりがパワーアップしてる)
リンは学校では優等生の振りをしているが実際は結構うっかり屋でミスやポカを良くする。それがリューカと手を繋ぐことで更にパワーアップしている……
(うっかりと天然か……しっかり見てないと不安だ)
僕はそんな事を考えながら2人の後を追って歩き出した
女子高生の強い味方であり。私の行きつけの服屋に2人を案内する。安くて、お洒落で、種類が豊富と3拍子揃ったこの店ならば、2人に合う服もきっと見つかるだろう
「龍花ってどんな服が好きなのよ?」
服を選びながら尋ねると
「着れれば何でもいいですよ? ねっエンちゃん」
「うん。僕もそうかな」
「アンタ等は本当に女か……」
呆れて溜息が出てしまう。着れれば良いって
「OK、おしゃれって言うのがどういう物か教えてあげるわ」
ポケットからメガネを取り出しかける。特に意味は無いが気分だ
「かっこいいですね、凛さん」
「……なんか複雑な気分になるわね」
ふざけたつもりだったのだが……龍花の考えていることって本当によく判らない
「じゃあ。まず龍花はこれ、水色のワンピースと黒のショートパンツ。 目の色にも合うし、龍花の雰囲気にも合うと思うけど?」
「うーん。良くわかんないです♪ 私の服って全部アインスとかはやておにーちゃんが買ってくれたので、自分じゃ良く判らないです」
……あの過保護どもめ! 女子としての感性が0じゃない!?
「とりあえず着てみて。でエルキドゥは薄紫色の長袖シャツとショート丈のデニムパンツ、 ボーイッシュ系だけどちゃんと女の子らしく見えるわよ」
「へぇ。そうなのかい? じゃあ早速着てみるよ」
2人に服を手渡し試着室に押し込む
「まいったなぁ……まさかここまで無頓着とは……まぁ一緒にいるのがあれじゃあ納得だけどさ」
龍花には過保護な兄軍団 エルキドゥには我が道を行く我儘男
一癖も二癖もある連中ばかりだ……到底女子的感性があるとは思えない
「桜を連れてこれば良かったなー」
正直私だけでは手に余る。問題児揃いだ……
「着れましたー」
「へぇ。良い感じじゃない。龍花」
「へへ……そうですか?」
ふわりとしたワンピースは龍花のお嬢様の様なオーラとよく似合う。
「あれ? 携帯をどうするんですか?」
「写真を撮るのよ。いや?」
「いえいえ、お願いします」
龍花の許可を得てから写メを取る。これも良い記念になるだろう
「リン。これで本当に女らしく見えるのかい?」
隣の試着室から出てきたエルキドゥを見て
「誤算ね。ミスを認めるわ」
「? エンちゃん格好良いですよ?」
「リューカ、方向性が違うんだ」
格好良いのではなく、可愛いの方向性を目指している。エルキドゥに格好良いというのは嬉しくもなんとも無い言葉のはずだ
「リン……何とかならないか?」
「任せて。ちょっと待ってて」
普通のボーイッシュ系の格好では駄目だ。もう一歩超えなければ……
「これと、これと……これ! 良しこれなら行ける! エルキドゥ着てみて」
「ああ。判った……」
渡された服の量に驚きながら受け取ったエルキドゥを見ながら
「また何か服選んであげようか?」
私が離れた間に支払いを済ませていた龍花にそう笑いかけると
「私はこれだけで良いんですけど……」
袋を抱えながらそういう龍花に
「駄目駄目! 女の子なんだからもっとお洒落とかに気をつけるようにしないと! リボンとか髪留めも良く選ばないと駄目何だからね!」
「はぁ……」
首を傾げる龍花。本当こういうのに疎いんだからと思っていると
「ど、どうだろうか?」
試着室から出て来たエルキドゥが着ているのは。黒キャミに白ブラウス更に濃いめのベージュ色のベストそして白のデニムのショートパンツ姿のエルキドゥだった
「良いじゃない。ばっちりよ」
私と同じくスレンダー体型のエルキドゥにはこういうのが良く似合うと思ったが、予想以上に似合っていた
「わあ、エンちゃん可愛いですよ」
「そ、そうかい? しかしこの……短いズボンは落ち着かないよ」
「それはショートパンツって言うの……」
ズボンって……いくらなんでもその言い方は酷い……
「じゃあ。それ買って着て帰えること」
「ええ!?」
「何で驚くのよ」
本気で驚いているエルキドゥに龍花が
「可愛いからそのままが良いと思いますよ」
「……うん」
龍花に言われると強く出にくい。それは私達含めた全員に共通する。この純粋なキラキラした目で言われると反論しにくいのだ
「じゃあ、後色々選びましょう。スカートに似合う服を選んであげるからね」
「す、スカートはちょっと……」
今までジーンズかズボンしか穿いた事のないエルキドゥが慌ててそう言うが
「龍花はどう?」
「んーワンピースとかしか着た事無いんで、偶にはスカートもいいかなって思います」
「決まりね。じゃあ行くわよ」
2人を先導して歩き出すがエルキドゥは往生際が悪く
「いやいや……待ってる。僕待ってるから!!」
スカートだけは断固穿くものかと言いたげに激しく抵抗するエルキドゥを無視し。ハンガーに掛かっていたミニスカートを持ち
「ねぇ、龍花。 こういう短いスカートをエルキドゥに穿かせるのどう思う?」
「!?!?」
「良く判んないです」
「そりゃそうよね。見たこと無いも……「判った! 行こう! さぁ!早く!!」
私のやろうとした事に気付いた。エルキドゥが慌てて私の手からスカートを取り上げ掛かっていた場所に戻し歩き出す
「急に元気に……ああっ! エンちゃんも可愛い格好がしたかったんですね」
明後日の方向の回答を導き出した龍花にエルキドゥは
「まぁ……そんな所かな」
疲れたようにそう呟きスカートを選び始めた……
「楽しかったですねー」
「そうね」
凛さんに色々と服を選んでもらったりリボンや髪留めを見るのはとても楽しかった。昼食に来たカフェで凛さんとそんな話をしていると
「僕はもう2度とリンとは買い物に来ない」
エンちゃんは酷く暗い顔でそう呟いた
「一杯可愛い服買えたじゃないですか、凛さんがいないと判らなかったと思いますよ?」
白いフリル付きのブラウスに膝丈のスカートにジャケットやリボン、可愛い服が一杯増えたのに何でこんなに暗い顔をしてるんだろう?
「ふふふ……着せ替え人形にされるとは思わなかったよ」
「文句ある? 大体ジーンズしか持ってないってどういう了見よ?」
あれ? 凛さんとエンちゃんの間に火花が散ったような……?
「そう言えば凛さんって何を買ったんですか?」
少し買い物があると5分ばかり離れた凛さん、大事そうに膝の上に載せている紙袋を見ながら尋ねると
「あ、ああ? え……あ? これ? なななな、なんでも無いわよ!?」
なんだろう凄く慌ててる? 私がそんな凛さんを不思議そうに見ていると
「貰い!」
「ああ! こら!」
エンちゃんがさっとそれを掻っ攫い中身を取り出す
「毛糸と編み棒? 何でまたこんな季節外れのものを?」
「練習しようと思って……」
ふてくされたように言う凛さんに
「それでしたら今度お教えましょうか?」
へっ!? と驚く凛さんとエンちゃんに
「私入院生活が長かったものですから。編み物とか得意なんですよ。前におにーちゃん達に毛糸の手袋とマフラーを作ってあげた事もあるんですよ」
私がそう言うと2人は
「あの売り物みたいに綺麗な黒いマフラー?」
「はい、そうですよ? はやておにーちゃんが黒で、ヴィータ兄がオレンジ、シグ兄は赤で、シャマルは緑、でアインスは黄色です」
なお龍花は知らないが冬場にはやて達が身に付けているマフラーと手袋は売り物と大差ない出来で、同クラスの男子や女子に何処で買った? と良く聞かれていたりする
「教えてくれるの? 私不器用よ?」
「全然平気です♪ それにいつもお世話になってますし、それくらい全然平気ですよ」
私がそう言うと凛さんは
「ありがとう! 龍花! 毎年挑戦するんだけど全然上手くならなくて困ってたの!」
「そうなんですか、でも大丈夫ですよ。ちゃんとやればマフラーとかセーターも作れますから。エンちゃんはどうします?」
一緒にやりますか? と尋ねるとエンちゃんは
「そうだね、自分用に作るのも悪くないかもね」
エンちゃんも乗り気みたいですね。
「じゃあ、今度一緒にやってみましょうか。あみぐるみ作るのも楽しいですよ」
「あみぐるみ?」
不思議そうな顔をする凛さんに
「こういうのですよ」
鞄から前に作ったあみぐるみを取り出す
「うわ……すご」
「確かに凄い。はやてにそっくりだ」
デフォルメしたはやておにーちゃんのあみぐるみを見て驚く2人に
「入院生活って暇で寂しくて……寂しさを紛らわせるかと思いまして作ってみたんです、あとシグ兄とかのもありますよ?」
「へー毛糸でこんなのもできるんだ。龍花に教えてもらったら上達しそう」
そう笑う凛さんに
「皆で作ると楽しいと思いますよ。だから今度皆で集まってやりませんか?」
「皆って?」
「エンちゃんと桜さんとアルトリアさんとバゼットさんと王花ちゃん達と……」
知り合いの名前を読み上げていくと
「OK、そこまでで良いわ。皆でわいわいやるのも楽しいと思うわ。今度もっと寒くなってからやってみましょう」
「はい! きっと楽しいですよ」
お友達が増えて最近は凄く楽しいなと思いながら言うと凛さんは
「ええ、きっと楽しいと思うわ、さてと! そろそろ帰りましょうか」
「そうだね、もう4時だしね。色々と服を選ぶのに時間が掛かってしまったしね」
楽しい時間があっという間に過ぎるのって本当何だなと思いながら立ち上がると
「じゃあ、家まで送っていくわよ。龍花」
「ああ、そのほうが良い」
「大丈夫ですって、大袈裟ですよ」
そう笑うと2人は真剣な表情で
「龍花、家はどっちの方角?」
「こっちです」
「リューカ。それは学校の方角だ」
「え?」
「リン、やはりリューカは家まで案内すべきだ」
「そうね、この迷子属性(EX)をほっておくのはあまりに心配だわ」
うんうんと頷くエンちゃんと凛さんは私の方を見て
「ほら、行くよリューカ」
「行くわよ龍花」
伸ばされた手と私に向けられた笑顔を見て
「え……はい!」
今まで私の手を取ってくれた人はおにーちゃん達しかいなかったけど……今はこんなにも優しい友達がいてくれる事が。とても嬉しく幸せに思えた
第22話に続く
次回は再び学園編です予定では運動会の準備とかの話にするつもりです。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします