のんびりとした話にしようと思います。それでは今回の更新もどうか宜しくお願いします
第23話
今月末の体育大会の準備で、各学年が大忙しの中……ある一箇所だけその空気が違っていた
「陽花ちゃん。それ逆だよ?」
「え? あっほんとだー」
「全く。ヨーカは仕方ないわね」
「あの……なんで私まで?」
栞を作る役目を任された龍花と陽花。そしてイリヤとエリスが居る一箇所だけ。空気がほわほわとしていた
「だって仕方ないじゃない。私だけじゃリューカとヨーカの面倒見きれ無いもの」
そう笑うイリヤさんは危ないから貸しなさいと、逆向きにホッチキスで止められた栞を受け取り。その針を外していた。過保護すぎると思うが
(この2人を見てると心配になるんですよね)
2人ともふわふわとした雰囲気をしていて。中身も当然ぽわぽわとしたお嬢様と言うか、見ていて不安になる様な性格をしている
「はい。またホッチキス打ってね。指を挟まないように気をつけるのよ」
「うん~気をつけるねー。イリヤちゃん」
イリヤさんが纏めた栞を受け取りホッチキスを打とうとしている。陽花さんを見ていると
「はい。エリスさん、お願いしますね」
「え? あっはい」
龍花さんに渡された栞にホッチキスを打つ。他の学年でも栞を作っているそうだが、1年は明らかに遅れているとの事。その理由は言う間も出なく
「龍花ちゃん。折る順番が違うよ?」
「え? あ。本当だ」
この天然系お嬢様2人のせいだ。陽花と龍花が交互に間違えるので、全く作業が進まないのだが
「もうしょうがないねー」
「ごめんねー」
あの2人を見ていると、こんなことで怒るのが悪く思えてくるのだ……
(過保護と言われる。八神先輩とかの気分が判るようです)
2年と3年に居る龍花さんのお兄さん達に。陽花さんの従姉妹の3人が心配するのも無理ないと思える
「ちょっとごめんね」
「失礼するよ」
私がそんな事を考えていると。2年生の遠坂先輩と見覚えのない生徒が入ってくる
「全然進んでないわね。龍花、陽花」
「あ。凛さん。ちょっと失敗しちゃいまして」
「ごめんなさい~」
ぽわぽわと謝る2人に遠坂先輩は穏やかに笑いながら
「はいはい、良いのよ。私とエルキドゥの分は終ったからね。手伝いに来たのよ」
近くの空き椅子座り。手早く栞を纏める遠坂先輩とエルキドゥと呼ばれた男子生徒に
「ありがとうございます♪ 凛さん。エンちゃん」
ん? ちゃん? この人男子の制服着てるけど……ちゃんはおかしいんじゃ? 私がそう思っていると
「僕は女の子だよ?」
「え?」
きりっとした顔付きの男子だと思っていた。エルキドゥさんはにこにこと笑いながら
「だから僕はれっきとした女子だよ?」
「じゃあなんで男子の制服を……?」
私がそう尋ねると。陽花さんの束ねた栞を直していた遠坂先輩が
「エルキドゥは男装が趣味なの。そのせいで女子に告白されて困ってるのよ」
「なに? まだ女子に告白されてるの?」
「そーなんだよ。イリヤ。なんで僕がこんな目に」
ふうと溜め息を吐くエルキドゥ先輩。そんなに悩んでいるなら普通に女子の制服を着れば良いのでは? そして
「なんで耳を塞がれてるの~」
「何で、でしょうね?」
イリヤさんと遠坂先輩に耳を塞がれている。龍花さんと陽花さん……きっとあれだ。同性愛者なんていう話を聞かせる訳には行かないと判断したのだろう
にこにこと笑ったままの龍花さんと陽花さんの耳を塞ぎながら
「どうして僕は女子に人気があるんだろうね?」
「男装のせいでしょ?」
「それしかないでしょ?」
と私には到底理解出来ない話をしている。イリヤさん達を見て
(この学校も学校でおかしいのかもしれない)
藍越学園も藍越学園で酷いところはあった。例えば無自覚で女子生徒を多数落とす男子とか。嫉妬深くすぐ暴力に出る女子とか。弟を愛していると公言する教師とか
かなり変わり者が多いが。この私立聖祥大附属高等学校も大概だと思う。私はそんな事を考えながら栞作りを再開した
グランドにアーチや他の設備の準備を終えた後。教室に弁当を取りに行ってから。中庭に向かうと
「あっ。おにーちゃん」
「こんにちわ。はやてさん」
にこにこと笑う龍花と陽花に
「どうも。はやて」
「やっほー♪ 早くおいでよ」
「龍花が待つと言うから待っていたのだぞ。早く来い」
陽花と龍花を護っていると言うか見守ってくれている。王花達に呼ばれ何時も陣取っている一角に腰掛ける
「悪い、遅れた!」
「すまんな」
私が腰掛けてから数分後に。シグナムとヴィータはその手にジュースを持って歩いてくる。
「ほい、好きなの取れよ」
「はやて、龍花」
ヴィータは王花達にジュースの袋を手渡し。シグナムは私と龍花にジュースを手渡してからそれぞれ座り
「じゃあ。皆揃ったから、頂きます」
「「「「「頂きます」」」」」
龍花の声に合わせて頂きますを言ってから。弁当箱を開け昼食にする
「ウマー♪ 龍花の玉子焼きは甘くておいしーね♪」
「そうですか? 私は王花ちゃんの出汁巻き卵好きですけどね」
龍花達は何時もの様に自分たちのお弁当の中身を交換しながら。ワイワイと食べている。若干私達は場違いの気がしないでもないが
(ちっやはりいるか)
中庭を覗き込む何人かの男子生徒の姿を見つける。何時もここで昼食を食べている龍花達と仲良くなろうと考えている。男子生徒が私達を見つけ肩を落としながら歩いていくのが見える。天然系の龍花と陽花に、口は悪いが美少女の王花達は非常に男子生徒に人気がある。油断をしているとすぐに男子が寄ってくる。それを防ぐ為に一緒に昼食にしているのだ
「ウム。美味い、このクリームコロッケは相変わらず絶品だな」
「私はこの煮物が好きですね」
龍花のおかずを絶賛している。王花と星花に龍花もまた、コロッケを食べながら
「そうですか。褒めて貰えて嬉しいです」
にこにこと笑っている。病院生活が長かった龍花にとって友人とこうやって過ごせる時間は楽しくて仕方ないのだろう。私はそんな事を考えながら煮物を口にし
(本当に美味いな、この煮物)
龍花の得意料理である。煮物系は何時食べても美味い、味付けも良いし良く煮てあるので食が進む
「いやマジで美味いな。これ何の魚なんだ?」
「ランサーさんのお裾分けです。なんでも前にトローリングに行ったとかで。小さいけどマグロが獲れたって切り身を持ってきてくれたんですよ」
という事はこれはマグロの煮付け? 弁当に入ってるおかずじゃないな。 まぁ美味いから良いが……私はそんな事を考えながら昼食を食べ進めた
「ところで龍花は体育大会でどうなるんだ? やっぱり応援するのか?」
身体が弱く運動できない龍花がどうなるのか? と言うのは教師から何も聞いてない。それが気になったのかシグナムがそう尋ねると
「はい、皆の応援をすることになりました。この旗を使いますよ」
パタパタと小さい旗を振る龍花の隣で陽花が
「私もだよ~」
同じ様なデザインの旗を降り始める陽花の隣で王花がひそひそと
(陽花に何かをやらされると大変な事になると判断した。教師の英断だ)
うん。それは間違いじゃ無いと思う。陽花はやることなすこと全部失敗する。下手に何かをやらされるよりかは龍花と応援係にまわしたほうが安全と言える
「頑張って応援するんで頑張ってくださいね♪」
にこにこと笑う龍花に雷花が
「もう。龍花と陽花が応援してくれるなら僕頑張っちゃう♪ 目指せ学園トップだ!」
とガッツポーズを作る雷花に星花が
「まぁアホの子ですが、雷花は運動得意ですからね」
「アホの子言うなーッ!!!!」
ガーッ!! と吼える雷花に
「くすくす、何時も雷花ちゃん達は仲良しですね」
「そーだね」
楽しそうに笑う龍花と陽花。騒がしく賑やかな陽花達を見ていると自然に笑みが零れる
「ふふ。相変わらず騒がしい連中だ」
「そうだな」
だがこの騒がしさは不快ではない。言うならば平和の象徴とも言える。
「だって毎回補習室送りのアホじゃないですか」
「だからアホの子言うなー!!!」
星花にからかわれて怒鳴る雷花と、それを見てクスクスと笑う龍花と陽花につられて。私達も笑いながらのんびりとした時間を過ごした……
授業を終えて。家に帰ろうとしていると
「はーい。龍花。途中まで一緒に帰らない?」
「あ、凛さん! 良いですよ。 一緒に行きましょう」
門の所で待っていた凛さんと一緒に家に向かって歩きながら
「そう言えば龍花は体育大会ってどうするの?」
「クラスのところに日傘を設置して。そこで応援するんですよ」
佐々木先生がその方が良いだろうと、色々と考えていてくれている。少々変わった先生だが良い人だと思う
「佐々木先生か。あの人はいろいろと生徒の事を考えてくれてるからね」
色々と私とか陽花ちゃんの事も気に掛けてくれてるし。良い人であることは間違いない
「あ。そうそう。今日帰りに夕食の材料を買ってきてくれって桜に頼まれてるのよ。ちょっと付き合ってくれる?」
生徒手帳からメモを取り出しながら言う凛さんに
「はい! 私も色々と買い足したいのがありましたから一緒に行きましょう」
1人で買い物するよりかは楽しいから。断る理由はない、2人で一緒に商店街に足を向けた
「えーと何でもいいから、白身魚と卵とパン粉に牛乳とホタテの水煮? 何を作る気よ?」
メモを見ながらそう呟く凛さんに
「あ、多分あれですよ。 前に教えてあげた。白身魚の季節の野菜のパイ包みと。ホタテのクリームコロッケ」
料理のバリエーションを増やしたいと言っていた。桜さんに色々と私が得意な洋食のレシピを教えてあげたのを思い出しながら言うと
「へーそうなんだ。まぁ桜は洋食得意だしねー」
買い物籠にメモの材料を入れている凛さんに
「でもあれなんですよね。シロ君は和食のほうが好きなんですよねー。前に作った。筍の煮物とキノコの炊き込みご飯と茶碗蒸しが凄く美味しいって喜んでくれたんですよねー」
一杯作ったのでお裾分けした。煮物と炊き込みご飯を美味しいって言ってくれたのを思い出しながら言うと
「へー……し、士郎が美味しいって? どういう風に作るの?」
興味津々と言う感じの凛さんにくすりと笑いながら
「今度私の家に来てくれたら。教えますよ」
「本当? じゃあ今度の休みに行ってもいい?」
メモを見ながらそう尋ねてくる凛さんに
「良いですよ? その代わりお願いがあるんですけど」
「? なに?」
不思議そうな顔をする凛さんに
「前にシロ君に聞いたんですけど、凛さんは中華が得意なんですよね? 私はどうも中華が苦手で。教えて貰えると嬉しいなと」
私は和食と洋食は得意だけど。中華料理は殆ど知らない、料理のバリエーションを増やしたくて泰山にバイトに行く時もあるけど。毎回行ける訳ではない、となると中華料理の師匠が居ない。身近で中華に詳しい人が居るのに聞かないと言うのはあまりに勿体無い
「OK! 色々と教えてあげるわ」
「そうですか。ありがとうございます」
やっぱり料理をするなら。喜んで貰える方が良い、中華料理もバリエーションに増えるのは嬉しい
「じゃああれね。来週の土曜の朝に買い物に行って。それからね」
今週は体育大会があるので。駄目だから来週ねと笑う凛さんに
「そうですね。色々買い足さないといけないですしね」
そんな話をしながら。買い物を済まして店を出ると
「じゃあ。また明日」
そう言って凛さんと別れようとすると
「龍花。そっちは海よ?」
「へ?」
あれ? こっちじゃなかったけ? 私が首を傾げていると
「やっぱ心配だわ。家の前まで送るわ」
「すいません……」
どうして私ってこんなに方向音痴なんだろう? あまりの自分の方向音痴具合にがっくりと肩を落としながら。家にと向かった……
「良しっと宿題をも終ったし、後はご飯の準備かな」
今日はミートパスタにするつもりだったから。昨日のうちに準備していたトマトソースに挽肉を入れて煮込みなおしながら
「んーどうせなら。私も体育大会に参加したかったなー」
応援と言う形ではなく。私も何かの競技に参加したいなと思ったが
「まぁ無理して。おにーちゃん達を心配させたら駄目だもんね」
走ったりして倒れたりするとおにーちゃんが心配するといけないから。応援で我慢しないと……若干気落ちした気持ちで私は夕食の準備を始めた……のだが
後日
「こういう形でよければ。競技に出れるのだが。どうだろうか?」
佐々木先生に差し出された紙を見て。私は
「はい! これで良いです! 是非お願いします」
「そうか。ではその方向で話を決めさせてもらう」
そう笑って職員室に戻っていく佐々木先生を見ながら
(やった、私も競技に出れる!)
この龍花に出された提案が。この学園の一部の生徒にとんでもない衝撃を与える事となる……
第24話に続く
次回はあれですかね。体育大会の話にしようかなと思っています。上手く表現できるか凄く不安ですが頑張ろうと思います
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします