第26話
昼休憩の後。クラス別の応援合戦を終えた後の1番最初に競技「借り物競争(?)」の番が来たのだが、全員この競技を警戒していた
保険医「カレン・オルテンシア」別性だが、海鳴の外道神父こと言峰綺礼の娘であり。その性格を120%引き継いでいる。サディストで有名なあのカレンが監修した競技という事で全員が警戒に警戒を重ねていた。あのカレンは思いついた物という事で嫌がらせ以外の何物でもないだろう
「警戒しないと不味いよな」
「ああ、何を仕掛けてくるか判らん」
まずは1年からなのだが、絶対走者順に考えた嫌がらせのメモが用意されているに違いない。しかもそこに辿り着くまでに幾つか障害物も用意されている。
警戒に警戒を重ねてもまだ足りないだろう
「じゃあ。セッテ頑張れ」
「ああ。行って来る」
1組からはセッテと俺が選ばれている。普段は仲が悪いがこう言うときこそ協力するべきだろう。俺はセッテを激励し第2走者の所に並んだ。
(他のクラスからは雷花とセイン、それと陸上部が2人か……第2・3レースが勝負か)
第1レースで様子見し。第2レース・第3レースに本命を用意しているのかと分析していると
「では。各クラスの名前を書いたメモを置いておきますので、絶対に自分のクラスが書いてあるメモを取ること。良いですね?」
不信感を煽る笑みを浮かべる。カレン先生がピストルを構え
「では……よーいどん」
パーンッ!!
そして、恐怖の借り物競争が幕を開けた……
第1走者 セッテ
ここまでは普通の障害物競走だな。障害物の大半は午前の部の障害物競走の物の併用だが、問題は
(あのカレンが用意したと言うメモだ)
人の不幸を愉しむあの外道が用意したメモだ。碌な物ではないだろう……そんな事を考えながら1番最初にメモの置いてある場所に到着し、自分のクラスが書かれたメモを手に取り、中を見て
「なんだ! これはああああッ!!!」
思わず思いっきり地面にメモをたたきつけた。あの野郎とんでもない物を用意しやがって。次々来た面々も同じ様にメモを叩きつけている、くそっ他の連中も同じか。俺はメモを手に取りもう1度確認した
『貴方の父親』
なんで自分自身の親父が借り物になってるんだ!!!
他の連中はと言うと
星花
「貴方の大事な従姉妹を好きな方法で運ぶ事ですか……陽花ですね」
セイン
「……貴方の姉をお姫様抱っこで なんでだよ!!」
他の面々と比べると俺は大分ましなのかもしれない。俺はそんな事を考えながら、保護者席に走り
「父さん、来てくれ」
「なんだ? 私が借り物なのかい? じゃあしょうがないな」
どこと無く嬉しそうな父さんと一緒にレースに復帰する。それを見ていた他の学年やクラスは
「「「マジで? 皆あんな感じなのか」」」
カレンの悪質かつ精神的ダメージの大きい、借り物のメモの内容に顔を歪めている
「陽花。走れますか?」
「む、無理っぽいかな~」
俺と父さんの後から陽花の手を引いた星花が走ってくるが、陽花は運動が物凄く苦手だ。息切れしてる陽花を見た星花は
「致し方ありませんね。失礼します」
「わわ!?」
陽花をお姫様抱っこで抱え上げ走り始める。星花……おい、下手な男子よりよほど男らしいぞ。その後ろでは
「大丈夫ですか? セイン?」
「だ、大丈夫じゃない……」
ウーノ姉とセインでは頭1個分身長差がある。流石の肉体派のセインも限界が見え隠れしている。その分俺はと言うと
「はっは。中々楽しいじゃないか」
「……良かったな。父さん」
俺の横をハイテンションで走ってくれているので、その分2人よりかは優位だろう。案の定徐々に距離が開き。俺と父さんが1位でゴールした
「ありがと。父さん」
「うむ。中々楽しかったぞ」
楽しそうに戻っていく父さんを見ながら。次のスタート位置で待機しているモードレッドに近付き
「心を強く持て。これは……精神的ダメージが半端無いぞ」
「ああ……見ていて俺も思ったよ。アドバイスありがとう」
そう返事を返すモードレッドを見ながら。俺は他の走者から離れた所に腰掛けた
(なんだよ。この恥辱……あの野郎。絶対に愉しんでやがる)
にやにやと俺たちを見ているカレンを見ながら。俺は紅くなっているであろう顔を隠した……
第2走者 モードレッド
(何て事を考えやがるんだ、あの先公)
保険医の癖に相手の嫌がる事を愉しむ。カレンに恐怖しながら走り、俺に書かれてそうなメモを考える
(多分姉貴とかだろうな。まぁ姉貴と思えば大分楽か)
後で説教くらいで済みそうだ。それくらいなら何時もの事だ、と思いメモを取り中を確認し。俺は血の気が引いた
(う、うううう……嘘だろ!? 何て物を要求しやがるんだ、あの野郎!!!)
思わず心の中で罵倒してしまうほど、そのメモに書かれていた言葉は衝撃的だった。可能ならば棄権したいほどの内容だったが、俺をよほど追い詰めたいのか棄権したらのペナルティも書かれていた。
(どちらにしても殺される……)
片方は肉体的に、もう片方は精神的に殺される……
(俺はどうすればいいんだ!)
メモを握り締めたまま暫く考え……決断した。
(どうせ殺されるなら、肉体的にだ!!)
精神ダメージより、肉体のダメージのほうが遥かにましだ。俺はそう判断し借り者の方へと走り出した……
「士郎、モードレッドが逆走して行くぞ?」
「何を借り物に書かれたんだろうな?」
カレン監修の借り物競争との事で全員が警戒していたが。あの第1レースの悲劇を見る以上、精神的に来る者であるに違いない
「多分あれじゃないかい? アルトリアとか?」
自身の姉ならあれだけ葛藤していたのも判るなと俺が思っていると
「あ、あれ? モードレッドのやつ。セイバーの前を通り過ぎたぞ?」
覚悟を決めた表情で走っている。モードレッドはセイバーの前を通過して行った
「じゃあ。何が借り物なんだ?」
「さぁ?」
ヴィータとエルキドゥが首を傾げている中。モードレッドの借り物が判明した、いや物ではなく……者だったが
「あーそれは覚悟を決めた表情をするのも納得だね。シロウ」
「エルキドゥ。あれは覚悟とかじゃない。逃れられない死を受け入れた顔だ」
俺はそう呟きながら、隣のヴィータを見た
「……コロシテヤル」
うん。やばいな……怒りの沸点を越えて片言になっているな。
「セイバー。お前の弟を半殺しにしても構わないか?」
「殺さなければ、どうぞ」
隣のクラスではシグナムがヒートアップし、セイバーはあっさりと弟を見捨てた……
(俺だけはモードレッドの味方であろう)
俺はそう心に決めて、モードレッドを見た。モードレッドが抱えていたのは
「大丈夫ですか? 重くないですか?」
「いや。全然平気」
お姫様抱っこで抱えられた。八神家秘蔵の天使こと八神龍花の姿だった……
俺の借り物……いや。借り者はリューカだった。メモに書かれていたのは
『八神龍花をお姫様抱っこで運ぶ事。 棄権すれば貴方の価値観が変わるほどに苛めて差し上げます。 カレン・オルテンシア』
リューカを運べば。過保護な従姉妹達、そしてシグナム先輩達に睨まれ。しかも我が道を行く傲慢男ギルガメッシュにも睨まれると判ってはいた。だが
(価値観が変わるほど苛めるって何する気だ)
本気でやりかねない。あのドSに関わるのも嫌で、俺は肉体的な死を選び。1組の待機所のリューカの元へ向かい
「リューカ。そのこれを」
拾ってきたメモを見せると、リューカは
「ああ。借り物競走に出れるって、借り物の方だったんですね」
聞いてたのかよ。断っておこうぜ……
「で、そのだな……お姫様だっこって指定されててだな。その抱き上げても「駄目に決まってるだろうが!!」
リューカの前に立ち駄目だと言うオーカ。まずオーカを説得しないと絶対にリューカを抱き上げるなんて言は出来ないだろう
「駄目なのは判っている! だがあの外道保険医に関わるのはごめんなんだ!!!」
「知るか! 貴様は死ね。あの保険医に苛められるが良いわ!!」
ふんっと鼻を鳴らすオーカの後ろで話を聞いていたリューカは
「私を連れて行かないとなにか罰があるんですか?」
「あ、ああ! ある! だから俺は死を覚悟してまでお前を迎えに来たんだ」
リューカはオーカに
「私ね。モードレッドさんに着いて行っても良いよ?」
「なに!? お姫様抱っこだぞ!? 判ってるのか?」
「別に良いよ? 私そんなにモードレッドさん嫌いじゃないし。モードレッドさんは良い人だもん」
100%信頼の眼差しで見てくる。リューカの言葉を聞いたオーカ
「ちっ……良いか! モードレッド、変な所を触れば貴様を殺す」
「そんな事するか!?」
オーカの忠告にそう怒鳴り返し。
「えっとじゃあ。良いか?」
「あ、はい。どうぞ」
両手を伸ばしてくるリューカを抱き上げると、ふわりと良い匂いが鼻を擽る
(すっごい。良い匂いがする)
柔らかい花のような香りを感じ一瞬激しく動揺するが、殺してやると言いたげなオーカの視線に気付き。俺は心の中で念仏を唱えながら走り出した
(柔らかいし、凄い良い匂いがする)
女子ってこんなに柔らかくて良い匂いがする物だなんて知らなかった。もし叶うのならば
((((殺してやる……))))
視線だけでも殺されかねない。視線が無ければもっと良かっただろう
「大丈夫ですか? 重くないですか?」
心配そうに尋ねてくるリューカ。重いわけが無い、ふわふわと柔らかいし、胸とかお尻とか触らないように気をつけてはいるが、それでも腕に感じる柔らかさからは、重さなんて感じられない
「いや。全然平気」
そう返事を返し、あちこちから感じる殺意の視線を意図的に無視し、ゴール地点まで走り出した……
「ああ。こういう形ですけど競技に参加出来てよかったです」
にこにこと笑うリューカに
「そ、そうですか……」
俺は心的疲労でそんな所ではない。次の部活の日で殺されかねないので、面を少し改造しておこう。それが良い
「汗が酷いですね。やっぱり重かったですか?」
「いや。全然」
リューカは重いと言う言葉から最も程遠いだろう。人1人だから重いことは重いはずなのだが、不思議と重みは感じなかった
「でもやっぱり。汗が酷いですね、これどうぞ」
「え……あ、ありがとう」
差し出されたハンカチを受け取るとリューカは
「では。私は待機所に戻るので」
にこりと微笑み歩いて行くリューカの後ろ背を見ながら
(あの感触。忘れたくないな)
リューカを抱き上げた時のあの柔らかい感触を絶対に忘れたくないと思いながら。浮かび出る冷や汗を拭った……
だが、この後の2年・3年の借り物競争にも「リューカ」は登場することになり。幾らかは俺に向けられる殺意が減った事に安堵した……
第27話に続く
まさか。まさかの龍花さんが借り者として登場でした。ありえないだろ? という突っ込み話でお願いします。
あと次回は2年・3年でもやろうと思っています。それでは次回の更新もどうか宜しくお願い致します