第29話
紅いお兄ちゃんの動揺
何時もは早めに起きて、ランニングに出るのだが、今日は昨日の体育大会の精神的疲労もあって、目覚ましをセットせずに眠りについた
「あ~良く寝た」
ベッドから身を起こし頭をガシガシと掻きながら立ち上がりながら
(英語教諭のメディア先生があんな趣味だったとわな)
体育大会の片付けを終えて、英語の授業の準備室に向かうと
「ああ。来たのね、じゃあこれとこれとこれね。ちゃんとリューカちゃんに渡すのよ?」
渡されたのは箱は全部で3つ。それを憂鬱な気持ちで受け取ると
「ああ、言っておくけどね? 折角リューカちゃんは可愛いんだからもっと良い服を買ってあげなさいよ?」
「考えときます」
俺はそう返事を返してから家に帰り。龍花に
「これメディア先生が龍花にって」
「はぁ。ありがとうございます?」
首を傾げながら受け取った龍花の顔は今でも思い出せる。そりゃそうだ、学校の先生から服を貰ったなんて普通は困る事だろう
「まぁその服を着るほど龍花も着ないだろうな」
そう思いながらリビングに下りると
「あ、おはよう、ヴィータ兄」
そこにはメディア先生が龍花に送った紅いゴスロリ姿の龍花がいた。その事に驚きながら
「なんで着てるんだ?」
「アインスが折角だから着てみたら? って言ってくれたから」
あの馬鹿が!? しかし姿が見え……
「……」
ソファーの陰で鼻血を出して倒れているアインスを見つけた。その余りの姿に俺は何も言うことが出来なかった……
「もうちょっとで朝ご飯出来るから待ってね」
そう笑う龍花に頷きソファーに座り新聞を手にした
「龍花、おは……」
丁度新聞を開いた所でシグナムが入ってきて、紅いゴスロリの龍花を見て
ズダン!?
顔からフローリングに突っ込んだ……あの勢いだと相当痛いと思う
「シグ兄!? どうしたの!?」
「心配ない……滑っただけだ」
それは100%嘘だ。ゴスロリの龍花に驚いたからだろ? と内心思いながら俺は新聞を捲った。なおその後リビングに下りてきたはやてとシャマルも目に見えて動揺していた……
(着ている服が変わるだけで随分と印象が変わるな)
ふわふわとしたゴスロリのせいで何時も以上に愛らしく見えた。龍花の事を考えながら庭のピッチングネットにボールを投げ込む
「んーまぁこんなもんか?」
捕手が居ないから変化球は試さず、ストレートだけを色々と握りを変えて試してみたが。やはり何時も通りの握りがしっくり来る。俺は持って来ていたタオルで汗を拭い
シャワーを浴びる為にリビングに面した窓を空けて家の中に戻った
「ふーすっきりした」
龍花がいるかもしれないのでちゃんと着替え、首からタオルを下げてキッチンに足を踏み入れて
「う、嘘だろ?」
冷蔵庫に張られていたメモに絶句した。そこには
「買い物に行ってきます 龍花」
あのゴスロリで出かけた? おいおい
「はやてー! シグナーム!! 緊急事態だ!!!」
俺は思わずそう叫んだ……
バッタリ会いました 藍越学園編
「なぁ。スミスあれってもしかして」
「間違いない」
今日俺とスミスは隣町の大型書店に用があり、海鳴に来ていたのだが。駅から降りて来たところで偶然見つけたのは
「あれ? あの時の」
紅いゴスロリに帽子と日傘姿の龍花嬢だった
「こんにちわ」
「あ、ああ。こんにちわ」
ぺこりと頭を下げる龍花嬢に驚きながら頭を下げ返し
「お買い物ですか?」
「まぁそんな所だな」
弥生が返事を返すと龍花嬢はポンッと手を叩いて
「そう言えば自己紹介してませんでしたね、八神龍花です」
にこにこと笑う龍花嬢に私と弥生は
「ご丁寧にどうも、俺は薄野弥生だ」
「ヴィクトリア。ヴィクトリア・スミスだ」
「そうですか。ヴィクトリアさんと弥生さんですね。では改めて、あの時はどうもありがとうございました」
あの時迷子になってた時の事か? 義理堅いと言うか、真面目と言うのか良く判らないが、礼儀正しい子だなと思いながら
「で? 龍花は何しに来たんだ?」
「お買い物ですよ。家族が多いですから」
にこにこと笑う龍花嬢を見て
(やはり、可憐だ)
最近に多いタイプの子では無く。おっとりとした感じの龍花嬢にそんな感想を抱いた時
「リューカ? 何をしているのかね?」
「あ、アーチャーさん。こんにちわ」
褐色の肌に鷹のような目をした青年が、なれた感じで私達と龍花嬢の間に割って入り
「それで君達は? まさかナンパかね?」
鋭い視線で私と弥生を威圧してくる。尋ねかけてきているが、100%ナンパと決め付けているような声色に
「あ? 何イチャもんつけてくれるんだ?」
気の短い弥生が苛立った様子でそう言うと目の前の男は
「ふーこれだから最近の若者は、そうやって凄めば済むとでも思っているのかね?」
肩を竦めて馬鹿にする素振りを見せる、それを見た弥生が握り拳を作ったところで
「アーチャーさん。止めて下さい、この人達は前に迷子になってる時に助けてくれた人なんです。前みたいにナンパされてた訳じゃないんです」
龍花嬢が喧嘩になりそうだった弥生と男を止めに入る
「弥生さん。ヴィクトリアさん。すいませんでした、前に私がしつこいナンパにあったことがありまして、アーチャーさんはまたかと勘違いしてしまったみたいなんです」
ぺこりと頭を下げる龍花嬢に気勢をそがれた弥生は
「ちっ。まぁ良い。行こうぜ、ヴィクトリア」
「あ、ああ。ではまたどこで」
私はそう返事を返し弥生と共に書店にと移動した……折角だからお茶にでも誘おうと思ったのだが……
私は少し残念な気持ちになりながら弥生の後を付いて歩いた
紅い執事怒られる
不味い、私はリューカがしつこいナンパに絡まれていると思って割って入ったのだが……まさかリューカの知り合いだとは。リューカの小さい背中から明らかに怒りの気配が伝わって……
「あいだ!?」
無言でリューカが振るった鞄が私の脇腹を捉える。鞄とは思えない重量に
(こ、これ財布か……)
財布に入った小銭の重さを利用した遠心力のついた一撃に顔をゆがめると
「アーチャーさん」
「なにかな?」
とても淡々とした声だが、その声に満ちた怒気に内心怯えていると
「助けてくれるのは嬉しいです。でも決め付けるのは良くないです。勿論、アーチャーさんが喧嘩が強いのは知ってます……でもそういうのは止めて下さい。アーチャーさんが怪我をするのも、相手が怪我するのも嫌なんです」
「……申し訳ない。私の早とちりだった」
これは私が悪い。私は素直に自分の非を認め謝るとリューカは
「謝るのは私じゃないです、ヴィクトリアさんと弥生さんにです、と行っても行かれてしまったので今度会ったときに謝ってください」
今度会う可能性はかなり低いと思いながらも
「わかった約束する」
私がそう言うとリューカはそれなら良いですと笑って
「アーチャーさんはお買い物ですか?」
気を取り直してそう尋ねてくるリューカに
「ああ。そういう君は?」
紅いゴスロリにはあえて突っ込まず。というか私自身冬場は常に紅いコートなので、人の事を言える立場ではないので言わない。と言うか寧ろ
(良く似合っている)
ゴスロリと言えば冬場の服なのだが、リューカが着ているのは恐らく手作りの品、夏場に着ても涼しいように色々と工夫されているのがわかる
「私はお買い物ですよ。それじゃあ、また今度」
にこにこと笑い歩いて行くリューカに
「待ちたまえ」
「はい?」
振り返ったリューカに私は
「そっちはスーパーじゃない」
「え?」
本気で驚いているリューカに
「どうせ私も買い物に行くんだ。一緒にどうかね?」
「そうですね。一緒に行きましょうか」
リューカだとどこに行くのか考えるだけでも恐ろしい、ここで会ったのも何かの縁だろう。私はリューカと共に近くのスーパーに出かけ。そこで恐ろしい物を目にした
「ねー綺礼さんは、何が好きなの?」
白い髪に眼帯とかなり目立つ容姿をしているのだが、全体的にぽわぽわとしたオーラを纏っているのでとても柔らかい印象を受ける女性
「私は何でも良い」
死んだ目にいつものカソック姿の外道神父が腕を組んで買い物をしていた……
(馬鹿な!? あの人格破綻者結婚していたのか!?)
人の不幸を何より愉しむあの外道と結婚するような、物好きがいるとは
「あ。綺礼さん、こんにちわ」
私が戦慄している間に龍花は外道神父に挨拶していた
「おや? 龍花。買い物かね?」
「はい。隣の方は?」
リューカにそう尋ねられた女性はにこりと微笑み
「クラウディア・O・言峰。よろしくね」
「ご丁寧にどうも。八神龍花です」
にこにこと笑うリューカとクラウディアの周りだけ異様なまでにほのぼのした空気を持っている。
(こ、これは同じタイプの人間か!?)
天然系お嬢様の二乗が放つ癒しオーラはとんでもない効果を発揮していた
「どうした。何をそんなに癒された様な顔をして?」
「そういう貴様は何をそんなに苦しそうな顔をしている」
外道神父は死んだ目のまま私に
「あれのことは愛してるが、あのほんわかオーラはどうも苦手なんだ」
じゃあ何で結婚したんだと言う言葉を言おうとして気付いた
「綺礼。大変だ」
「なんだ?」
「お前の妻とリューカが居ない」
僅かに目を離した隙に2人の姿がない。しかも近くに2人の姿を見つけれずそう言うと綺礼は
「大変だ。クラウディアは超がつく方向音痴なんだ」
死んだ目のままなので顔を見ただけでは動揺しているのかわからないが、その声は真剣そのものだった……
「何てことだ!?」
方向音痴の二乗。どうなるか考えるだけでも恐ろしい、私と綺礼は慌てて2人を探し始めた。
「「居た」」
私と綺礼が見つけた時。リューカとクラウディアは
「お魚を選ぶ時はですね。目を見ると良いんですよ?」
「へーそうなんだ」
にこにこと笑いながら魚や肉の選び方を話していた……そんな2人の光景を見て私は酷く疲れた気分になりながら
(これは何時も以上に大変そうだ)
何時もの倍以上気を使わないと不味そうだ……
なおその後、言峰夫妻と別れるまでのたった30分の間にリューカとクラウディアはそれぞれ4回ずつはぐれ。
私と綺礼はそれぞれ息を切らすまで走り回る事となり、その30分の間に私は少しだけ綺礼に仲間意識を持つ事が出来るようになった……
お兄ちゃん合流
昼前に出かけて行った龍花を探して、ヴィータとシグナムと別れ龍花が居そうな場所を探している
「あっ、おにーちゃん」
龍花が私を見つけて手を振ってくる、その隣ではアーチャーが6つの買い物袋を手に酷く疲れた表情で歩いていた
「ああ、はやてか。ほら」
アーチャーが手にしていた買い物袋の内3つを渡して来るのを受け取りながら
「何をそんなに疲れているんだ?」
「ふっ、聞いて驚くな。あの外道神父の妻はリューカ並みの天然で方向音痴だ。振り回されて疲れたよ」
ふーと溜め息を吐くアーチャーは龍花に
「では後ははやてと帰ると良い」
「はい。途中までありがとうございました♪」
疲れた様子で歩いて行くアーチャーを見ていると
「行こう。おにーちゃん、今日はねー海老餃子と蟹シュウマイを作ろうと思うんだ。あとね、北京ダックもどき」
夕食のメニューを話しながら自然な素振りで私の手を握る龍花に内心どきりとしながら
「そうか、それは楽しみだ」
「むふー凛さんに色々とレシピを教えてもらったからね。今日はきっと美味しいよ♪」
にこにこと笑う龍花の手を握りながら、携帯を取り出しヴィータとシグナムに見つけたとだけ打ってあったメールを送信し
「じゃあ、帰るか」
「うん♪」
龍花と手を繋ぎ、ゆっくりと家に向かって歩き出した……
ゆっくりと歩きながら、私は何時までもこうして龍花の隣に立っていられるのが自分だったら良いなと思った……
第30話に続く
次回はそうですねバツさんの店でのあるバイトイベントとかをやりたいですね
それでは次回の更新も宜しくお願いします