第3話
(なんだこれ?)
目を覚ました私は目の前を染め上げる水色に困惑した。昨晩怖い夢を見たと龍花が来たのは覚えている、そして理性がログアウトする前に意識を絶ったのも覚えている
だがこの水色は何だ?
「ふみゅー」
むにゅむにゅ
「!?!?」
とんでもない柔らかさを感じ声に鳴らない悲鳴を上げる。そして良くその水色を見る。水色と肌色が直ぐ近くにあり、はだけたYシャツが……
「!?!?!?ーッ!!!!!!」
再度声にならない絶叫を上げる。完全に認識してはいけないと理性が警告するがもう遅い。私は状況を完全に理解してしまった。私が今顔を埋めているのは
(龍花のブラジャーか!?どうしてこうなるんだ!?)
龍花の寝相はとても悪い、それにしたってこれは酷い。いや健全な男子高校生としてはこの上ない幸運なのだが……兄としてはとても不味い。何が不味いかって?理性のログアウトの危機だ。しかも脱出しようにも両腕でしっかり頭を抱き抱えられているので脱出も難しい。その間も柔らかい感触は私の理性の崩壊を進めている
(携帯を……)
人体の稼動域を超えてベッドの横の携帯を掴み、空メールで01とセットしていたメールをシグナム達に送信する。緊急非常事態の連絡だ……01はもう一刻の猶予もないと言う意味を持つ暗号だ
「「何ごとだ!?」」
慌てて飛び込んできたシグナムとヴィータの声に寝ぼけた龍花が反応する
「ふみゅ?」
ぽよんむにゅ
「----ッ☆↓↑■◇※ッ!?!?!?!?」
声にならない大絶叫を三度上げる。今までの非ではない柔らかさに理性が完全に崩壊しかける
「た、たすけ……「ふみゅー」☆↓↑■◇※ッ!?!?」
寝返りで更に顔に異常なまでの柔らかさを感じ四度声にならない絶叫を上げる
「シグナムそっとな」
「判ってる」
そーと私の頭をホールドしている龍花の手を外す、シグナムとヴィータ
「はぁッ!!はぁッ!!!」
バクバクと高鳴る心臓を押さえ息を整える
「大丈夫か?顔がいまだかつて見たことない色してるぞ?」
ヴィータが鏡を見せてくれる。赤いのに青い、青いのに赤いと言う奇妙奇天烈な色をしていた
「大丈夫。何とか……理性は保ってる」
後数分遅かったらやばかったがなんとか理性は保っている、ヴィータに手を借り立ち上がるとシグナムが凍り付いていた。一体何ごとかと思いシグナムの視線の先を見る……見るんじゃなかったと後悔する
「むにゅ……むにゅ……」
ボタンが全部外れ。辛うじて身に纏っていると言う状態のYシャツ。そのせいで下着が丸見えになり膝丈もないショートパンツも完全に見えている……
「……ここは魔窟だ、早急に退出すべきだと思う」
「「異議なし」」
私達は即座にこの部屋を出る事にした、このまま居ると自覚したくない獣が目を覚ましそうでそれが凄まじく恐ろしかったからだ
「龍花の無防備さには正直まいるな」
朝食を作りながらそう呟く
「だよなあ……あんな格好されてると正直くらっと来ちまうよな」
ぶつぶつと呟くヴィータはコーヒーを淹れている
「龍花がはやての部屋に居たと言うことは、何時もの悪夢を見たと言うことか?」
「そうらしい。12時くらいに来たんだ」
昨日の状況を説明しながら卵を焼いて目玉焼きを焼く
「と言うことは私とヴィータの部屋に来ていた可能性も合ったのか」
「だろうな」
龍花が自分達の部屋に来る可能性もあった事に気付いた2人は声を揃えて
「「……良かった」」
男子高校生としてはラッキーだが、兄としては極めてアンラッキーな自体が来なくて良かったと安堵している2人だったが
ガチャ
「むに……むに……」」
リビングの戸が開き寝ぼけ眼の龍花が私の部屋に居た時の格好のままトコトコと歩いてくる
「「「☆↓↑■◇※ッ!?!?」」」
思わず私達の悲鳴が重なるYシャツのボタンは外れたまま、水色の下着も丸見えのまま冷蔵庫を開き、水を飲んでまた何事もないようにリビングを出て行く龍花
「心臓が止まるかと思った」
「ああ。どうしてああも無防備なんだ。龍花は」
小柄なのに出るところは出ている龍花の無防備さには正直参る
「それだけ私達を信用していると言うことだろう?……さっ、出来た朝食にしよう。昼は……コンビニの弁当で我慢しよう」
あの様子だともう1眠りするであろう。仕方ないが今日の昼はコンビニの弁当になりそうだ
「まぁ良いけどな。遅刻する前に食っていくか」
ゆっくりしていると時間ギリギリになってしまう。私達は急いで朝食を食べ龍花に手紙を書いて出掛けて行った
「……ふみ?……もう10時!?朝ご飯!!」
目を覚まし時計を見るともう10時慌てて着替えて階段を駆け下りると
「おはよう。龍花」
ニュースを見ながらパンを齧っているアインスが居た
「アインス?皆は?」
「学校だ。手紙が置いてあったぞ」
ほらと渡された手紙を見る
『よく眠っていたので私達で朝食を食べて行く。昼はコンビニの弁当でも食べるから気にしないでくれ。 はやて』
悪い事をしてしまった。おきて朝ご飯とお弁当を作らないといけなかったのに
「はやてが私達の分も朝食を作っていてくれていたぞ。温めるか?」
「あ、いいよ自分でやる」
アインスがレンジを使うと破壊しかねないから自分でやると言って置いてあったハムエッグをレンジに入れ。バターを塗った食パンをトースターに入れる
「今日は市役所と病院に行くんだったな?」
「うん、石田先生に診断書書いてもらって。市役所で転入の書類と身元引受人の書類貰ってそれを書いて学校に提出しないといけないから」
ハムエッグをパンに乗っけながら言うと
「そうか。では食べたら直ぐに出かけよう、昼食はどこか適当な所で食べよう」
「うん。でもちちょっと待って。夕食の準備だけするから」
おにーちゃんが作ってくれた朝食を食べ終え、私はアインスと共に出掛けて行った
「思ったより時間が掛かったな」
「ごめんね」
診断書は思ったより早く書いて貰えたが、市役所で思いのほか時間を取られてしまった。2時前に漸く帰ってこれたアインスが仕事に出掛ける3時間前だ。本当はもう少し早く帰ってきてアインスを休ませたかったんだけど……
「良いさ、お前を1人で出掛けさせるのも不安だしな。仕事まで時間がある少し寝るから4時になったら起こしてくれ」
私の頭をぐりぐりと撫でて2階に上がっていくアインスを見ながら、私は書類を書き始めた
「んっんーやっと終った」
1時間30半かかってやっと書類の整理が終った。それを封筒に仕舞って
「よし!アインスにお弁当を作ってあげよう♪」
30分しかないが充分お弁当を作る時間はある。夕食に焼こうと思っていたタレにつけて味を染み込ませていた鶏肉を焼きながら
「えーとパンを焼いて、レタスとトマトを切ってと」
時間が無いのでサンドイッチにしよう。パンにマーガリンを塗りトースターに入れ、そのままレタスとトマトを洗い丁度良い大きさに切る
「良し焼けた♪」
丁度良い焦げ目のついた鶏肉を薄く切りパンに乗せる、その上にチーズとレタスを敷き、レタスの上にトマトを乗せパンを乗せて半分に切る。それを弁当箱に入れて
「これで良し!後はアインスを起こしてっと」
アインスを起こしに行こうとしたら
「おはよう」
「あっ起きたんだ」
アインスがリビングに入ってくる。起こしに行くつもりだったのに
「良い匂いだな。何を作っていたんだ?」
「アインスのお弁当!はい」
出来たお弁当を手渡す
「時間が無かったからサンドイッチになったけど……良い?」
「ああ。作ってもらって文句は言わんさ。ありがとう龍花、では行ってくる」
「行ってらっしゃい。アインス」
玄関でアインスを見送りリビングに戻る
「んーメインはこれで良いけど。ちょっと足りないかな」
私にはこれで充分だけど。おにーちゃん達には少し足りないかもしれない
「時間はあるし。買出しに行こうかな」
サラダとスープも欲しいし、良し買い物に行こう。日傘と財布を持ち私は出掛けて行った
「何にしようかなー」
近くのスーパーでメニューを考えながら材料を選ぶ。朝と昼に何も作れなかったから少し豪勢な物にしたいなーと考えながら歩いていると
「あら?龍花ちゃんじゃない」
「あ!アイリさん。こんにちわ」
私と同じ銀髪に赤い目をした女性に話しかけられる、ご近所に住む衛宮切嗣さんの奥さんのアイリスフィール・フォン・アインツベルンさんだ。詳しくは知らないがアイリさんと切嗣さんは事情があり夫婦別性だが仲睦まじい夫婦として近所でも有名だ
「アイリスフィール。うろつかれては困る」
「あ、アーチャーさんもこんにちは」
アイリさんの後ろから長身の男の人が姿を見せる、褐色の肌に白い髪をしたこの人はアーチャー・フォン・アインツベルンさんだ。なんでもアイリさんのボディーガードさんらしい
「むっ?龍花。退院したのか?言ってくれればお祝いの品を持っていったのに」
「あはは。そんなに気にしてくれなくて良いですよ。アーチャーさん」
笑いながらそう言ってアイリさんに
「珍しいですね。アイリさんが買い物に来るなんて」
「うん、何時もは士郎君かアーチャーにお願いするんだけど。偶には料理しようかなって思ってね」
そう笑うアイリさんだがその後ろにアーチャーさんはこの世の終わりとでも言いたげな顔をしていた。アイリさんは優しくてとてもいい人だが、致命的な欠点がある……それは料理がとんでもなく下手なのだ。聞いた話によると切嗣さんが食べて病院送りになったらしい……
「やはりアイリスフィール。私が夕食を……」
「良いの、偶には料理しないとね♪」
きっとシロ君とアーチャーさんと切嗣さんが病院に送られる事になるだろう
(君からも何か言ってくれないか?アイリスフィールが料理をすれば我が家は壊滅する)
(なんていえばいいんですか?)
小声で助けを求めてくるアーチャーさん、しかしなんといえば良いのだろう?
「ねぇアーチャー。カレーのあれって何で色つけてるの?チョコレート?」
(頼む!何とかしてくれ!アイリスフィールにはカレールーを使うという選択肢がない!?)
カレーの色をチョコレートでやろうとしてる!?このままでは今夜の衛宮家の夕食の食卓には余にも奇妙なチョコレート味のカレーが並ぶ事になる
「あっそうだ!魚の切り身を入れるのも良いわね♪」
そう言ってアイリさんが手に取ったのはマグロ……駄目だこの人に料理をさせてはいけない。そうだ!!
「アイリさん!折角だからデザートを作ったらどうですか!メインはアーチャーさんに任せたらどうですか?」
「デザート?でも折角ならメインを作りたいわ」
「デザートは食後の楽しみです!だからそれを作ってあげた方が皆喜ぶと思います!私も一緒に考えますから」
うーんと悩む素振りを見せるアイリさん。ここで畳みかねないとアーチャーさん達の胃が終る
「そうだ!アイスとかプリンとかどうですか?」
「そうねえ。うん。龍花ちゃんの言うとおりにしようかしら。じゃあアーチャー今日の夕食は任せても良い?」
「勿論だ。アイリスフィール。今夜も最高の物を用意しよう」
心底ホッとした表情のアーチャーさんとアイリさんと一緒に買い物をし、途中で分かれ私は家へと戻った
「アーチャー!?アイリが料理をすると書置きをして出かけて……」
「落ち着きたまえ切嗣。龍花が上手くアイリスフィール説得してくれた」
心底ホッとした表情の切嗣。アイリスフィールが部屋に着替えに行ってるからこそ出来る会話だ
「良かった。また胃が崩壊して入院する所だった」
「ご愁傷様としか言いようが無いな」
ありとあらゆる面で完璧なアイリスフィールだが、料理だけは習得できなかった。それを除けば彼女ほど素晴らしい女性は居ないだろう
「龍花ちゃんにお礼を言わないと。彼女は僕達の救世主だ」
「その意見には全面的に同意しよう。今度退院祝いをもって行くべきだと思うがどうだろう?」
私達を助けてくれた龍花に感謝の気持ちを込め。退院祝いを持って行こうと言うと
「素晴らしいアイデアだ。アーチャー彼女が喜びそうな物を用意しよう」
切嗣も同意してくれたし今度彼女が喜びそうな物を持って……
「切嗣。彼女が喜びそうなものとは何だ?」
「……何だろう?」
私達の知る八神龍花と言う少女は良く笑う娘で欲のない子だ、そんな彼女が喜びそうな物と言われても判らない。2人でうーんと唸っていると
「ただいまー。じーさん、アーチャー?なに唸ってんだ?」
「ただいまー。なに唸ってるの?キリツグにアーチャー」
「ああ、おかえり士郎、イリヤ。ちょっと考え事をね」
赤毛の少年と白銀の髪の少女が帰ってくる。切嗣の養子の衛宮士郎と娘のイリヤが尋ねてくる、そうだこの2人なら
「士郎。龍花が喜びそうな物を知っているか?」
「突然なんだ?アーチャー」
不思議そうな顔をする士郎に
「今日龍花がアイリスフィールが料理をしようとするのを止めてくれた。それの感謝と退院祝いを兼ねて何か贈ろうと思うのだが。何が良いのか判らないんだ」
「それは絶対にしないといけないな。じーさんと俺達の胃を救ってくれた救世主だ」
うんうんと頷く士郎だったが
「龍花の好きそうな物ってなんだ?」
「それが判らないから悩んでいる」
私達の間に士郎が入りうーんと唸る。駄目だ何も思いつかない
「イリヤは龍花の好きそうな物を知らないか?」
「うーん、本とか読むの好きって言ってたけど昔の事だし良く判らないわ」
龍花は入退院を繰り返しているので好みや好きな物についてよく判らない
「でも龍花は何を貰っても喜ぶと思うけどね」
確かにそう言われるとそんな気もする
「まぁそれについてはまた考えるとして。私は夕食の準備をしよう」
「手伝うか?」
士郎がそう尋ねてくるが
「良い。学生らしく勉強でもしていろ」
「もうちょっと言い方があると思うんだが?」
「ふっ、余計な気遣いをするからだ学生は学生らしく、勉強の事でも考えていろ」
「ああ、判ったよ。じゃあな」
部屋に戻っていく士郎を見ながら切嗣が
「もうちょっと優しく言ってあげてくれないか?アーチャー」
「すまないが、そう言うのは苦手でね」
わたしはそう言うと立ち上がり
「では夕食の準備をしてくる。切嗣はTVでも見ていると良い」
「うん。そうするよ」
そう言って居間に戻っていく切嗣を見ながらキッチンに向かった。
「?卵の殻と鍋に使った後がある?」
綺麗に片付けてあるが何者かが料理をした痕跡がある
「はは……まさかな……」
私は嫌な予感を感じながら夕食の用意を始めたのだが、私の嫌な予感は的中した
そして夕食後のデザートの時間。私が特製のゼリーを皿に盛ってリビングに戻るとそこには
「アイリ?これは……?」
どす黒い瘴気を放つ黒い物体が切嗣の前に鎮座していた
「何って?プリンよ?」
この黒い瘴気を撒き散らす物をプリンだと私は決して認めない
「それ1つしか出来なくて、だから切嗣に食べて欲しくて……士郎君達にはまた今度作ってあげるわね」
そのまたが2度と来ない事を願う……切嗣はだらだらと汗を流し
「そうか。じゃあ頂くよ」
(やめろ!じーさん死ぬぞ!?)
(その通りだ!死ぬにはまだ早い!!)
私と士郎が小声でそう言うが切嗣は答えずその黒いプリンを口に運んだ
「うっ!?」
1口食べただけで激しく痙攣する切嗣……凄まじい汗を流しながらプリンを食べ終えた切嗣はゆっくりと倒れこむ。
「じーさん!?」
士郎がそれを抱き止める。毛穴という毛穴から汗を噴出しながら切嗣は
「士郎。僕は昔正義の味方に憧れてたんだ」
「じーさん!?何言ってるんだ!?」
うわごとの様に呟く切嗣……やばい三途の川に行きかけていると一目で判る
「もう切嗣ったら悪ふざけが好きね♪」
悪ふざけでは決してない。切嗣は今正に三途の川を渡りかけている
(士郎!)
(判ってる!)
私と士郎で切嗣を担ぎ家の外へと連れて行く。一刻の猶予もない
「正義の味方は期間限定で……」
「アーチャー!じーさんの目が死んでる!!!」
「元からだ!!!今は何が何でも三途の川から引き戻す事が重要だ!!!」
結論から言うと切嗣は助かったが小刻みに痙攣しながら
「死んだナタリアに会ったよ」
そう語る切嗣の目は何時にも増して光がなかったが無事に生還させる事が出来て、私と士郎は大きく息を吐いた……
こうして衛宮家の騒がしい夜は明けて行った
第4話に続く
衛宮一家。海鳴のお姫様!!に参戦決定!!士郎は2年生。イリヤは1年で龍花さんと同じクラスの予定です。こういうなんでもありのパロディも結構やってみると面白いものですね。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします