第54話
仲良しコンビは気づかない
いつからだろうか?あの雪のように輝く銀髪を目で追いかけるようになったのは
同じ年の筈なのに何処かふわふわと柔らかくて、可愛いのに綺麗と言う奇妙な特性を併せ持つその少女のことが気になり始めたのは。昼休み、ギン姉の作ってくれた弁当を食べながらティアに言うと
「……私も気になっている。なんかこう……見てて不安になるんだよな」
「おう。そうなんだよな」
高校生なのに落ち着きゼロ。たまーに校舎に入ってくる蝶等を追いかけていなくなる。あと
「なんかクラスメイトのやつが言ってたんだけどさ」
最近どの学年の間にもまことしやかに語られていることがあるというと
「なんだ?」
「なんか龍花は動物と話せるんじゃないかって」
俺がそう言うとティアは何を馬鹿なことをといって笑っている。だから俺は同級生から貰った写真を見せて
「これ」
「……凄いなその光景は」
珍しく王花や八神先輩達の姿が無い。だがその代わりになんと
「どこの国の……いや何の伝説の妖精だ」
ティアが混乱している。だがそれも無理はない、なぜなら学区内のベンチでうとうとしている龍花の周りにはどこから来たのか不明だが犬・猫・鳥・リスが龍花の周りに大集結。猫は膝とかの近くに座り、犬はそれ以上近づくなと言いたげに威嚇。鳥は木の実を銜えて飛んでるし。リスは龍花の肩の上で丸くなっている
「本当だよな」
兄達が居なくても自然に防衛。龍花は普通の人間と違って実は妖精なんだというのも噂されている。そして2枚目には
「鳥と会話してる」
「そう見えるよなあ」
窓枠に止まった雀が翼を広げたり、斜めを向いて鳴いているの見て相槌を打っているかのような素振りをしている龍花。これはどこからみても会話しているようにしか見えない
「龍花。ぱないな」
「ほんとだよな」
天然だが頭はいい。そして小動物系に加えて妖精と言う渾名(1部ではお姫様と言う名称もあり)
「でさ?なんで俺達龍花が気になってるんだろうな?」
「さぁ?見ていて不安になるからじゃないか?」
そして今まで恋愛と無縁だった2人は何故自分たちが龍花を気にしているのかその理由さえ判らないのだった……
ヤンキーな弟をからかう弟気づく、あ。俺もだ
「セッテ~随分真面目に学校行ってるな?最近」
家でTVを見ているときに帰ってきた弟にそう声を掛ける(弟とは言え俺達は全員養子なので血縁関係は無い)と
「うるせえ!」と叫んで鞄を投げつけてそのまま階段を上っていってしまった
「反抗期っぽくて可愛いいね。セッテは」
「セインは趣味悪いっす」
呆れた様子で溜息を吐くウェンデイの頭を掴んでぐりぐりとやりながら
「いいじゃんいいじゃん!同じ年でもさ弟っていい物だからさ」
養子状仕方ないが、同じ年でも弟・兄と言うのは分かれる。セインは一番最後に養子になったから末弟で決定している
「まぁ龍花に会ってセッテが明るくなって良かったって思うっすよ」
そう笑うウェンデイ。確かにセッテは龍花に会ってから明るくなったと思われる
(まぁあの子可愛いしな~)
俺達兄弟は自分で言うのもなんだがイケメンが揃っていると思う。可愛い系とかアホ系もいるけども、それでも十分にイケメンで通るだろう。それに俺やオットーは野球部員で女子生徒にモテて居るという自覚もある(好きな相手は居ないし、ヴィータ先輩と比べると劣るが)無論可愛い子や綺麗と思う子も居るが
(やっぱり龍花と比べると劣るんだよな)
野球部の練習をたまに見に来ている龍花、勿論1人ではなく王花や雷花が必ずついて来ている。ヴィータ先輩の練習を楽しそうに見つめて、ヴィータ先輩が休憩しているとジュースを抱えて歩いてくる。その時だけはいつも殺伐としている野球部がほんわかする。龍花一人の存在がいかに清涼剤になっているのかがわかる
「龍花可愛いし、綺麗だからな。あんなクラスメイトに良い人とか言われたら嬉しくもなるだろ?」
妙に幼い龍花は助けられたり、道案内してもらうと凄く嬉しそうに笑って「良い人ですね」っと笑ってくれる。その笑顔は嘘偽りが無くとても可愛い
「ああー確かに可愛いっすよね~同じクラスの男子が羨ましいっす」
龍花と同じクラスの生徒は羨ましいよなあと思っているとふと気づく
(あれ?なんで俺龍花の事ばっかり考えてるんだ?)
野球部の活動中くらいしか係わり合いが無いのにもかかわらず、これだけ気に掛けている。
(俺……惚れてる!?龍花に惚れている!?)
セッテをからかっていて。ウェンディと話していて気づいてしまった。あーそっか、そっか。うん
「偶にはいいことい言うな~ウェンディ」
「なんか言ったっすか?」
不思議そうに首を傾げるウェンディに俺は
「俺も大分龍花のことが好きみたいだ。なんか考えてみたら驚くほどあっさり判った」
俺が龍花を気に掛けているのも
セッテをからかっていたのも
その原因は俺がどうやら龍花に随分と惹かれていたからのようだ
「?なんかわかんないっすけど、褒められてる?」
「うん。褒めてるよ、なんかアイスでも買ってきてやるよ」
多分言われるまで気づかなかっただろう、いっつも馬鹿なことばかりしているウェンディも偶には良いことを言うものだな。俺はそんなことを考えながらコンビニに向かったのだった……なおその途中で
「あれ?セインさん?偶然ですねえ」
「別に話さなくてもいいのよ」
「バウッ!!ウルルルルルルッ!!!」
龍花とイリヤ。犬の散歩中であろう2人に会い。かみ殺されるんじゃないか?と思うほどでかい黒犬は怖かったが、龍花に会えて
(ああ、やっぱり俺龍花好きなのかも知れない)
ドクンっと高鳴った心臓の音にそんなことを思うのだった
お姫様カレンダーを見て笑い。おにーちゃんは頭を抱える
「おにーちゃん。もう直ぐ夏休みだね!」
楽しそうに笑う龍花。カレンダーにはしっかりと夏休みの所に二重丸が書いてある。そういう仕草でさえ愛らしさを伴っているのが不思議だ
「龍花は補習は無いのか?」
成績の悪い生徒とは思わないが学校に来れてない分遅れているはずの龍花にそう尋ねると
「大丈夫だよ!テストも全部80点台キープしてるもん」
えっへんと胸を張る龍花。天然で子供っぽいのだが頭はいい、性格と頭の良さは比例しないという事か
「夏休みに何かしたことはあるのか?」
グローブの紐を締めなおしていたヴィータの問い掛けに龍花は
「おにーちゃんとかイリヤちゃんと一杯遊びたいです!」
ぱああっと華の咲く様な笑みで笑う龍花にどきんとする。この愛らしさは既に凶器だなと私は思う
「その前に宿題をやらないとな?」
その内心の動揺を見せないように気をつけそう言うと龍花は
「はい♪王花ちゃん達とエンちゃんと凜さんにアルトリアさん♪皆でお勉強したいと思うんですよシロ君の家で」
シロ君……そういえば士郎とギルガメッシュだけは渾名だったな。小さいときの名残なのだろう、課と言う私もおにーちゃんと間延びした呼ばれ方だしなと思いながら配られた夏休みの課題を見ていると
「おにーちゃんも来てくれますか?」
上目目線で尋ねてくる龍花。ここで目を逸らすな意識していると思われる。自分に言い聞かせるようにそう呟き
「私が行ってもいいのか?凜とか王花が居るんだろう?」
「大丈夫です。モードレッドさんにギー君。それにシロ君も居ますから」
「良し判った。私も行こう。ヴィータとシグナムはどうする?」
士郎ならまだいい。もし龍花に手を出そうものなら紅い悪魔が降臨するからだ。だから心配はない、だがモードレッドとギルガメッシュは駄目だ。あいつらと龍花が一緒など許されるものではない
「俺は野球部の練習があるからなあ。試合も近いし、悪いけどパス」
「私は平気だ。一緒に行こう。龍花」
「わあ。嬉しいです。凜さんにメールしておこう」
楽しそうに笑って携帯をいじる龍花を見ながら、私とシグナムはカレンダーを見つめた。夏休みはもう直ぐそこまできていた
「ふふー、お友達と一緒の夏休みなんて初めて♪」
ぬいぐるみを抱えて笑う龍花。今まで入退院の繰り返しだった龍花に友達を呼べる人間は少ない。だからこそ、初めて友人と過ごす夏休みが楽しみで楽しみで仕方ないのだろう。私は本当に楽しそうに笑っている龍花を見て
(やれやれ、今回の夏休みは忙しくなりそうだ)
今までの夏休みは私達が病院に行って龍花を寂しくさせないことを考えていた。だけど今年は違う、龍花は私達の手の届くところに居る。だからこそ今年の夏休みは忙しくなる。そんな気がしていた、窓の外から見た青空はどこまでも澄んでいてもう夏が来ていることを告げていたのだった
第55話に続く
次回はお勉強会みたいな感じの話にしたいですね。まぁただの勉強会になんてするつもりはありませんがね?どたばた喜劇こそお姫様のコンセプトなのです。あと夏休み中こんな話を見たいなと言う方が居ましたらメッセージにて募集します、気軽にメールください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします