第63話
昨日作ったお土産の水羊羹と大福を持ってセイバーの家に向かいながら
(朝から大変だったな)
ちょっと用事で出かけるというとイリヤとクロがデートだ……誰かとデートだって言い出してバーサーカーをけしかけられた。奮闘する事30分、アーチャーが
「士郎は私の代わりにおつかいで4つ隣町に行くのだが、2人も行くかね?」
この言葉に停止した2人は、バーサーカーの首にリードをつけて散歩に行って来まーすと逃亡していった。
「バーサーカーはやばいよな」
頼れる我が家の番犬にして軍用犬バーサーカー。その戦闘力はやはり偉大だ……そんな事を考えながら歩いていると
「こっちだぞ白野」
「いや1回行ってるから知ってるよ。ネロ」
赤いワンピースの少女に手を引かれている少年の姿が視界に入る。それ自体は何の問題もないのだが
(セイバー……じゃないよな)
顔つきと背丈は似ているがセイバーじゃない。なんか雰囲気が違う……セイバーと比べると凜とした感じがなく明るいと言う感じがする。もしかするとセイバーが前に言っていたお姉さんなのかもしれないと思いながら2人が歩いていくのを見る
(目的地は一緒か?)
どうも俺と同じくセイバーの家に向かっているようだ。もしかするとあの2人もセイバーのお母さんに呼ばれているのかもしれない
(うん、アーチャーの言ってた婚約云々は大丈夫そうだな)
俺以外にもいるのならそんな話になるわけがない、心配して損したと思いながら俺もゆっくりと歩き出したのだった……
「シロウ。今日はどうもありがとうございます」
「ああ、いや別に暇だったからいいよ」
もうすぐつくと連絡するとセイバーが門の外で待っていてくれた。暑いのに悪いなと思いながら
「これ。お土産。和菓子が好きって言うから水羊羹と大福を作ってきた」
「ありがとうございます。シロウ」
お土産の袋を持って嬉しそうに笑うセイバーに
「さっきセイバーのお姉さんみたいな人を見たけど、その人も来てるのか?」
「ええ。ネロとハクノです。どこか外国を旅していると思っていたら日本にいて驚きですよ」
そう笑うセイバーと一緒にリビングに行くと
「貴方がエミヤ・シロウ君ですね。リリィ。リリィ・セイバーです。よく来てくれましたね」
セイバーそっくりと言うか……もうセイバーが成長するとこうなるんだと思える綺麗な人がソファーに腰掛けていた
「衛宮士郎です」
まずは挨拶だよなと思う深く頭を下げるとリリィさんはにこにこと笑いながら
「どうぞ。座ってくださいシロウ君。ハクノ君は紅茶に砂糖はいくつですか?」
「えーと1つで」
その声に横を見るとさっきネロが手を引いていた少年がいて、俺と同じように萎縮していた。なんと言うかカリスマ性が凄いのだ…
…流石セイバーのお母さんだ……俺はそんな事を考えながら座ろうとして
「シロウこっちですよ」
セイバーにそう声を掛けられる。白野の隣にはネロがいる。どうも俺もセイバーの隣に座ったほうが良さそうだと思いセイバーの隣に座りなおしたのだった……
この人がネロのお母さんかぁ……ソファーに座りながらリリィさんを見る。髪を黒いリボンで結び前髪が1本アンテナのように跳ねているアホ毛って言うのかな?しかしそれにしても
(綺麗な人だなあ)
ネロと顔つきは良く似ているが感じる感じがまるで違う。高貴って言うのかな?気品があるって言う感じがする。ネロの妹さんのアルトリアさんも同じ雰囲気を持っている姉妹でもこうも違うんだなあと思っているとネロが
「母上。彼が余の婚約者の岸波白野だ」
ばふうっと紅茶を吐き出しかけたのをこらえる。確かに結婚を前提に付き合ってくださいと言われて、うんと頷いてしまったけど
まさかリリィさんの前でも言い出すなんて思ってなかった。リリィさんを見ると嬉しそうに笑っている
(あれ?予想と反応が違う)
ネロはこんな性格だけど、かなりの名門貴族の生まれのはずだ。そんなネロと僕みたいな一庶民の婚約なんて駄目なんじゃ……
「そうですか。ネロは自分で決めた人を婿に迎えると決めたのですね。それならば私が言う事はありません、ウーサーは私が説得しておきますね」
「は、母上。ありがとう!白野は母上に認められたぞ!良かったな!」
予想より遥かにあっさりしてた!?大らかなのだろうか?アルトリアさんと士郎君も驚いたように目を見開いている。リリィさんはにこりと笑いながら
「家柄とかで結婚をするのではないですよ。大事なのは当人同士の気持ちです、私はお見合いで結婚しましたが。ウーサーの事は好きでしたからね。それで良いと思っています」
紅茶のお変わりを注ぎながらリリィさんは士郎君を見て
「貴方のお義母さんは駆け落ちをしたって聞いてないのですか?シロウ君?」
「え、いや……聞いてますけど。リリィさんはアイリさんを知ってるんですか?」
お母さんのイントネーションが違ったような気がする……リリィさんは士郎君の問い掛けに
「アイリスフィール・フォン・アインツベルンは私の幼馴染です。そしてアイリの駆け落ちを応援したのも私ですね。ボートとかを用意させていただきました」
……何をしてるんだろう?いやでも好きじゃない人と結婚させられそうになったら逃げたくもなるだろうけど、それを手伝うのもどうなんだろう?
「お母様!?私はそんな事を聞いてませんよ!?」
絶句していたアルトリアさんが再起動してリリィさんにそう尋ねる。リリィさんはにこやかに笑いながら
「聞かれて無いですから」
しれっと言うリリィさんにがっくりと肩を落とすアルトリアさん。自分の母親がしたことにショックを受けている様子だった
「今度アイリに会いに行くと伝えておいてくださいね、シロウ君」
「は、はい。伝えておきます」
リリィさんの笑顔は綺麗だけど何か怖いように見えた、ネロが耳打ちで
(母上はアホ毛を掴まれると性格が変わるのだが、普通でも少し黒い所があるんだ)
アホ毛で性格が変わるって……士郎君の隣で項垂れているアルトリアさんを見て
(アルトリアさんも?)
(うむ。アルトリアだけが母上の体質を受け継いでいるのだ)
それは良い事なのか?悪いことなのか?どうなんだろう?
「ま、まあじーさんもアイリさんも幸せそうだしさ!そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな?セイバー」
「し、しかしですね。私の母親がまさかシロウの両親の駆け落ちを応援していたとは思ってもいなくてですね」
落ち込んでいるアルトリアさん励ましている士郎君を見たリリィさんは何かを感じ取ったような顔をして。微笑ましい物を見るような顔をしてから
「今日は来て頂きどうもありがとうございます。お茶でもしながら話をしましょう?」
笑顔で言うリリィさんに頷き僕達はリリィさんに入れてもらった紅茶を飲みながら話をし、昼食をご馳走になり。リリィさんが学校でのアルトリアさんやネロの事を聞いてきてそれに答えているとあっと言うまに夕方になってしまった
「そろそろ帰ったほうが良いですね。今日はありがとうございました、夏休みの間はずっとアルトリアの所にいるつもりなのでまたきてくださいね」
そう笑うリリィさんに見送られ僕とネロ。それに士郎君はそれぞれ帰路についた
「ネロのお母さんは凄く優しそうな人だったね」
「うむ!なんせ余が家を出ても資金を援助してくれていた、そのおかげで見聞が広がったのだぞ!世界は広いということを自分の目で耳で確かめることが出来たのだ」
ふふんっと笑うネロ。相変わらず自信に満ちた顔をしているなあと思う
「だから今度は余だけではなく白野も一緒に行こう。広い世界を見に!」
「そうだね。ネロが行って楽しかった場所に行こうか。今度」
「うむ。約束だぞ♪」
判ってるよと返事を返し僕はネロと並んで家へと歩き出した。ネロと一緒に見る世界はきっと輝いているんだろうなあ……何時の日か2人で世界を見てみたいと思ったのだった……
「しかしセイバーのお姉さんは随分と陽気な人だったな」
世界を見て回っていると聞いてはいたが、明るくて気さくな人だった。そしてその人の婚約者だという白野は大人しくてネロを窘めたり世話をするなどいい組み合わせだったと思う
「婚約者とかって紹介されなくて良かったな」
セイバーは同じ学年の友人だとリリィさんに紹介してくれた、その時リリィさんがとても微笑ましい物を見るような顔をしていたけど、どういう意味があったんだろう
「とりあえず、このメモをアイリさんに渡しておかないとな」
リリィさんの携帯のアドレスと番号。イギリスで使っているのは国際電話用の電話でこっちで使っているのは別の携帯だから渡して欲しいと言われて預かったのだ。
「あら?士郎君。もう帰ってきたの?」
スーパーから出てきたアイリさんにそう声を掛けられる。一緒に居るはずのアーチャーの姿がない珍しいこともあるものだなと思いながら
「荷物持ちますよ」
「ありがとう士郎君」
アイリさんから買い物袋を預かり家に帰る途中でアイリさんが
「そういえばアーチャーに聞いたんだけどリリィに会ったそうね。元気そうだった?」
幼馴染と聞いていたので多分アイリさんにも連絡が行ってたんだろうなあ。多分日本に来る前に国際電話で連絡していたんだろうと思いながら
「元気でしたよ。それとこれリリィさんから預かってきました、日本での携帯の電話番号とアドレスです」
「あら、ありがとう。これで連絡しやすくなるわね」
にこにこと笑うアイリさんの隣を歩きながら
(俺もいつか結婚するときが来るんだろうか?)
リリィさんの言葉がどうにも頭に残っている
『家柄とかで結婚をするのではないですよ。大事なのは当人同士の気持ちです』
遠坂も桜も家柄の良い名家の長女と次女だし、セイバーも同じく名家の次女。それに比べたら俺は事故で両親を失った孤児
到底つりあわないと思っていた。だけどリリィさんの話を聞いて思ったのは家柄とかではなく当人の気持ちが大事と言うこと
(いつか誰が好きとか判るのかなあ)
まだ俺にはそう言うのは全然判らない。普通の高校生が誰が好きとか誰と結婚したいかなんて明確なビジョンを描けるわけがない
(何時かわかるんだろうなあ……)
じーさんとアイリさんのように駆け落ちしても良いと思えるほどに、全ての地位や名誉を捨ててもなおこの人と添い遂げたいと思えるような恋が何時か出来るのだろうか?夕日に染められた空に伸びる雲を見ながら俺はそんな事を考えてしまうのだった……
士郎と白野がリリィにあった日の翌日
「アイリこっちですよ」
「リリィ!久しぶりねえ」
士郎から携帯のアドレスと電話番号を聞いたリリィは早速電話しリリィを呼び出していたのだった
「昨日シロウ君に会いました。うちの娘が随分と気に入っているようですね」
「そう見たいね。でも士郎君は結構モテてるみたいよ?」
アイリの言葉を聞いたりリィは知っていますと返事を返し注文していた紅茶を飲む
「なんで?アルトリアちゃんに聞いたの?」
「いえ。シロウ君の顔を見たら大体判ります」
そう言うものなのかしらねえと呟くアイリにリリィは
「それにリューカちゃんにも会いました。愛らしい子ですよね」
「ええ。可愛い子よねえ。素直で良い子だし」
久しぶりに会ったとい事で会話が弾んでいる2人、ふとアイリが思い出したように
「何時まで日本にいるの?」
「夏休みと言うのが終わるまでは居るつもりです。もしかするとウーサーも来るかもしれませんね、仕事の都合が付けばですけどね」
そう笑うリリィにアイリは肩から提げた鞄から一冊の雑誌を出して
「今度龍花ちゃん達を誘って一緒にここに行こうと思っているんだけど、リリィもアルトリアちゃん達と一緒に行かない?」
渡された雑誌を見たリリィはそこのページに書かれていた記事を見て
「良い場所のようですね。私達もご一緒しましょう」
「本当?じゃあ計画を練らないといけないわね。またこうして会える?」
「いつでも大丈夫ですよ。メールや電話でも大丈夫ですしね。では連絡を待っていますね」
「あら?もう行っちゃうの?」
会ってからまだ1時間くらいよ?と言うアイリにリリィは
「はい。1ヵ月ほどの滞在ですが、どこに何があるかとかは覚えておきたいので辺りを見て回るつもりなんです。それでよければ一緒に来ますか?」
「そうね。偶にはそういうのも良いわね。私が案内してあげるわ、リリィ」
「ありがとうございますアイリ。では行きましょう」
こうして士郎や白野。そして龍花達が知らない所で母親コンビの旅行の計画が進行していくのだった……そして当然アイリやリリィは知るよしもないが、凜が見ている雑誌も奇しくもアイリ達が見ている物と同じで、士郎を誘っている場所だったりする……それが判るのはもう少し先の話になる、その時士郎に待つのは言うまでもなく死亡ルート一択だろう……
第64話に続く
次回はうーん……いきなり旅行って言うのもおかしいですよね。と言うわけで困ったときの赤い悪魔様に頑張ってもらおうと思っています。あと影が薄い桜とか、IS学園のキャラも出したいですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします