第70話
ホテルの夕食を終えた所で、アイリさんとリリィさんが手を叩いてニコニコと笑いながら
「ホテル主催の肝試し大会があるんですって、皆行って見ない」
肝試しですか、えーとお化けとかの奴ですよね。そんな事を考えていると
「肝試しですか?廃墟とかなら嫌ですよ?」
廃墟……そう言うのは私も嫌だなあと思っていると、リリィさんが違いますと前置きしてから
「肝試しと言っても夜にやるスタンプラリーのような物です。街頭もあるので足元も大丈夫です、それに賞品も出るそうなのでどうですか?」
スタンプラリーと聞いて、雷花ちゃんがうんうんと嬉しそうに頷きながら、遊び足りなかったから僕行きたいと言いはじめた。だけどおにーちゃん達は何故か浮かない顔をしている
(アイリさん達に連れて行かれて、何の話をしたんだろう)
昼寝から起きてからなんかずっと上の空と言う感じがして気になっている。なので隣のイリヤちゃん
(なんかおにーちゃんが変なんです)
(お兄ちゃんも変なのよね)
イリヤちゃんの視線の先にはシロ君が居るんだけど、なんか顔色が青い。それにイリヤちゃんもおかしいと思っているなら私の勘違いじゃない。ここは1度おにーちゃんに尋ねてみようと思い、おにーちゃんのほうを向くと
「そろそろ時間のようだな。組分けもあるから行ったほうがいい」
アーチャーさんにそう促され、私はおにーちゃんに様子のおかしい理由も尋ねる事ができないまま、ホテルのロビーへと向かうことになりました……だけど、おにーちゃんにヴィータ兄も様子がおかしいのはどうしてなんだろう?そんな疑問はずっと頭の片隅に残るのでした……
あの野郎、今度殺してやる。それが私達の共通の認識だった。にやにやと笑っているアーチャーに対する殺意は時間が経つにつれて増加している。
(アイリさんとリリィさんもだ、絶対楽しんでいる)
私達の話を聞いて満足そうにしていたリリィさんとアイリさん。これで開放されると思いきや
『じゃあ肝試ししましょう。全員参加で』
とか言い始め。拒否権など与えられる間もなく、夕食に連れて来られ、今こうして自分の名前を紙に書いている。人数が多いのでペアを分けるとアイリさんが言い出したからだ
「むふー肝試しは初めてです」
「龍花。あんまり楽しい者ではないぞ?」
はしゃいでいる龍花を窘めている王花を見ながら、私はアイリさんに思わず言ってしまった自分の気持ちを考えていた
『龍花は大切だが、それが異性に対する者なのか、それとも妹に対する物なのか判らない』
ちなみにこれはヴィータとシグナム。そしてアインスも同じである。なおギルガメッシュとモードレッドは
『我は好きだぞ!まずは交換日記だ』
小学生か。あと何時の時代だ金ぴか野郎
『判りません・本当に判り』
最後まで言い切る前にリリィさんのビンタが決まっていた。大人しい人だと思っていたが、セイバーの母親だけ合って強烈な性格をしていたようだ。
「じゃあ誰と誰がペアかなー」
楽しそうに全員分の名前を書いた紙を箱に入れて振るアイリさん。そして振り分けが決まった
士郎&セイバー
はやて&陽花
シグナム&雷花
イリヤ&クロエ
ギルガメッシュ&エルキドゥ
白野&ネロ
ヴィータ&王花
アインス&星花
アーチャー&凜
モードレッド&龍花
となった。私はきょとんとした顔で私の顔を見ている陽花を見ながら
(龍花はモードレッドか。やはり奴は今度締めるべきだな)
何故か知らないが、モードレッドと龍花は相当縁があるようだ。とにかく龍花とモードレッドは良く会うし、こうして組み合うことが多い。
「よろしくお願いします」
「んん……よろしく」
浮かない顔をしているのは、きっと私とかシグナムとかの報復を恐れているからだろう。心配しなくて良い、今度確実に冥界に叩き込んでやるから。
「じゃあ、早速行きましょう。そろそろ始まる時間だから」
にこにこと笑うアイリさん。今までこんな事を思ったことは無いが、この人が1番怖いのかもしれないと実感した瞬間だった
「はやてさん。よろしくお願いしますね」
「うん。とりあえず1人で移動するのをやめてくれ」
並んで歩いているのに、明後日の方向に向かいかけている陽花の手を握り、集合場所へと向かったのだった……
俺どうしてこんな事になってしまったんだろう?隣できょとんとした顔で俺を見ているリューカ。20人いるから絶対ペアにならないと思っていたリューカとペアになってしまった。これを幸運と言うべきなのか、それとも不幸と言うべきなのか?俺はそれを真剣に考えるのと同時に
(遺書が必要なのかもしれない)
一瞬凄い目で見てきたシグナム副主将の目は間違いなく、視線だけで人を殺すことが出来ると思うだけの眼光をしていたと思う
「じゃあ次はモードレッド君と龍花さんです。これスタンプカードと防犯ブザー。なにかあったら鳴らしてくださいね」
ホテルの従業員からカードと卵型のブザーを受け取り。コースを見る
(比較的明るいコース。危ない所とかはないよな)
街頭の明かりもあるので大丈夫だし、木にはランプヲ模した電球がぶら下がっているので大丈夫だ。
(ここら辺は流石高級ホテルって言う所かな)
ホテルの催し物で怪我をさせるわけには行かないという配慮だろう。スタンプと地図を見ていると
「モードレッドさん。行きましょうか」
えへへと笑うリューカにそう声を掛けられ、はっとなる。考え事に集中していてりゅーかをほったからしにしていた。姉貴が居たらこれだけで鉄拳制裁が待っているだろう
『女性に優しく』
これは俺が物心ついてからずっと父さんと姉貴たちに言われていた事だ。いかんいかんと頭を振り
「うっし、行こうか」
「はい!」
夜に出歩く事は殆ど無いと言っていたリューカにとっては、夜にこうして遊ぶ事なんて殆どなかったのだろう。いつも以上にキラキラと目を輝かせている。だがこういう時こそ怪我をしやすくなる
(俺がちゃんと見ておかないとな)
もしリューカが怪我をすれば、俺の命は間違いなく刈り取られる。そしてそれだけの事が出来る面子が今ここにいる、慎重に慎重を重ねても足りない。だがそれだけでは駄目だ
「最初はどっちに行けばいいんですか?」
キラキラとしためで俺を見上げているリューカ。彼女を楽しませることを忘れてはいけない。悲鳴や怖そうな素振りはしてはいけないそう……
(俺が幽霊やお化けが駄目だとしてもだ)
そう。俺はお化けや幽霊と言った類が苦手だ。本当ならこんなイベントに参加したくないが……母さんの命令に逆らうわけには行かない。俺は覚悟を決めて、肝試しの巡回路のほうへと歩き出したのだった……
楽しそうに歩くリューカちゃんに対して固い顔をしているモードレッドの背中を見て、私は内心溜息を吐いた
(まだ克服出来てなかったのですか)
モードレッドはオカルト関係が苦手だ。いい歳だから克服していると思っていたのに、あの固い顔を見る限りまだ克服できてないのだろう。
(これは誤算ですね)
肝試しと言うのは女子が怖がり男子が平気そうな顔をすることで、頼もしく見せることが出来るという。夏の定番のイベントらしいのだが、モードレッドの固い顔を見る限り、その結果になるかどうかが不安だ
「大丈夫よ。きっとモードレッド君はやる時にはやってくれるわよ」
アイリが私の肩を叩いてそう笑う。私もここまでお膳立てしたのだから頑張って欲しいと思うが、こればかりはモードレッドのがんばり次第だ
「じゃあ次の組の。えーとイリヤさんとクロエさんどうぞ」
イリヤちゃんとクロエちゃんが並んで歩き出す。女子が多いからこういう組み合わせも想定していたが、従姉妹同士になるとは思ってなかった
「では待機の人と保護者の人はこちらへどうぞ。暗視カメラで通路を見ること……が?」
係員の方が最後まで言う前に移動していくハヤテ達。その競歩並みの速さに驚いている係員さんに彼らは少し特殊なのでと声を掛けて待機所に向かう。先にスタートしているのはハクノ君とネロ、リューカちゃんとモードレッド、それとさっきスタートしたイリヤちゃんとクロエちゃんだ。
『はわわわ!?』
『だ、大丈夫?ネロ?』
『大丈夫きひゃっていりゅ!』
うん。大丈夫じゃないですね、ネロ。どこかの国のお化け祭りで怖い思いをしたとかで苦手になったと言ってましたが、ここまでになっていたんですね。娘の変化を微笑ましい気持ちで見ている
「ネロがこんなに怖がりだったとは……」
「あれ?そうなの?ネロさんってどんな人よ?」
「人の話を聞かない性格で我が道を行きます。それで家を出て放浪の旅をしていました」
「何してるのよ、あの人」
モニターを見ながらそんな話をしているアルトリア達を見ていると係員が
「次のヴィータ君と王花さん。スタート位置にどうぞ」
そう呼びかけられた二人は軽くストレッチしながら
「追いつくぞ」
「ああ。判っている」
ぎらぎらとした光をその目に宿して、スタート位置に向かって行った。私はその背中を見て
(自覚するのは何時なのでしょうね)
義妹と異性。その線引きを超えたいと思うのは何時になるのでしょうね。そんな事を考えながらモニターを見ると、丁度リューカちゃんとモードレッドが最初のチェックポイントに差し掛かったところだった。さてこれからどうなるのかと思いながら、私は用意されていたパイプ椅子に腰掛けて計画通りに行けば良いですねと思っていたのですが……これから起きる展開は私の予想を180度裏切るのだった……
第71話に続く
次回から肝試しと言う名のお母さん達の悪巧みが始まります。そしてモードレッドが色々と可哀想な目に合う予定ですが、ほのぼのギャグなのでこういうのもありだな程度に思っていただければ幸いです、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします