第71話
ホテルの人から貰った地図はモードレッドさんに持って貰って、スタンプを打つ紙を持って暗い道を進む
(んー夜に出歩くのは初めてです)
おにーちゃんが夜で歩くのは危ないから駄目と言うので、殆ど夜に出掛けた事なんて無かった。それにこうして遊ぶイベントと言うのも初めてだから実に楽しみ
「モードレッドさん。最初はどこに行けばいいんですか?」
地図を持っているモードレッドさんにそう尋ねる。モードレッドさんは自分が持っている地図を見て
「最初はこっちだな。一本道だから大丈夫」
このスタンプラリーのコースはホテルの敷地の林に仕切りを立てて、簡単な迷路のようにしてある。地図もあるし、道標もある。何の心配も無い遊びなのだが
「モードレッドさん。その木の枝どうしたんですか?」
何故かモードレッドさんが木の枝を持っていたのでそう尋ねるとモードレッドさんは
「い、いやな!念の為にな!」
なんかおどおどしているし、ホテルの敷地内なのだから危ないことは無いと思うんだけど……だけど念の為と言われるとそうかもしれないと思い。モードレッドさんといっしょに夜道を歩いていると
バンッ!!!
提灯お化け登場
「ああ。可愛いですねえ」
デフォルメされているので怖いというより可愛い。私がそんな事を呟きながら振り返ると
「ブルブル」
「へ?」
モードレッドさんは頭を抱えて蹲っている。これが?
プラーン
提灯お化けを可愛らしくデフォルメされており。怖いところか可愛らしいと思う、急に落ちてきて確かにびっくりしたが怖くは無かった
「もしかしてこういうの苦手なんですか?」
蹲ったままのモードレッドさんにそう尋ねると頭を抱えままこくりと頷いた。お化けは確かに怖い、モードレッドさんはイギリスの人だからこういうのは苦手なんだろう。ネロさんも怖がっていたし
「大丈夫ですよ。一緒に行きましょう。ねっ?」
モードレッドさんの前に手を伸ばす。モードレッドさんは少し考える素振りを見せてから私の手を取った
「大丈夫ですから、一緒に行きましょう」
手を握り返しながら言うとモードレッドさんは俯いたままこくりと頷いたのだった……
スタンプラリーの状況を写しているモニターを見た私は心の中で溜息を吐いた
(逆でしょう。リューカちゃんと貴方のポジションが)
リューカちゃんの後ろに隠れている息子を見て、なんとも言えない気持ちになっていた。普通は男らしさをアピールできる格好の舞台なのに
『ほわあ!?』
『大丈夫ですよ。かわいーですよ』
リューカちゃんの方が堂々としている。むしろ可愛いと言って出てきたお化けのおもちゃの頭を撫でている。私と同じようにモニターを見ているアイリは
「リューカちゃんらしいわね。全然動じてないわ」
リューカちゃんは天然でぽわぽわしているが、動じない芯の強さもある。そして何より
『可愛いですね。これお持ち帰りできませんかね?』
出てくるお化けのおもちゃを拾って帰ろうとしている。なんとも言えず芯の強い子だ
「リューカにはぬいぐるみか!?」
「物で釣ろうとするな。ギルガメッシュ」
ギルガメッシュが手帳に熱心にメモをしていて、それを見たアインスが蹴り突込みをしているし
「我が弟ながら情けない。いい加減にお化けくらい克服しなさい」
「ずっと苦手なの?モードレッド」
「へたれだな。へたれ」
「全くだ。へたれだな」
ぼろくそに言われてるモードレッド。だけどさすがにこれは私でもフォローできない。自分よりも遥かに背の低い少女の後ろに隠れてビクビクしている。情けないにも程がある戻ってきら、日本にいる内に性格矯正を試みよう。
(少しばかりトラウマが増えるかもしれませんが、それは仕方ないことですね)
リリィ・セイバー。温厚で優しい性格だが、剣の才は非常に高く幼い時の、ネロ・アルトリア・モードレッドに剣の手ほどきをした程だ。だがその指導はとても厳しく3人の心に深いトラウマを残している。それゆえに3人はリリィに逆らう事ができないのだ、逆らえばトラウマになっている剣が再び炸裂するとわかっているからだ。だが今回のモードレッドの醜態で再びモードレッドがトラウマを刻み込まれることとなる。それはリリィだけではなく
「あの野郎。殺してやる……冥界送りだ」
「ほほう。面白そうだな。シグナム我も手を貸そうではないか」
「私も手伝いましょう。あのへたれは1度殺すべきです」
龍花の後ろに隠れているモードレッドを見ていたシグナム達もまた、モードレッドに仕置きをすることを決めていた
「あのーギルガメッシュさんとエルキドウさんの順番なんですが」
「申し訳ない。直ぐに宥めて出発の準備をするから」
そしてそんな怒り心頭な様子のシグナム達を見て、困っているホテルの従業員にそう謝るエルキドゥ。待機所は待機所で混沌としていたのだった……
「さ、参加するなんて言うんじゃなかった」
白野の腕を抱え込みながらそう呟く。普段なら赤面している白野の顔を見て遊ぶのだが、今の余にはそんな余裕はなかった。夜道、そして出てくるお化けのおもちゃに完全に心を乱されていた
「引き返す?リタイアも出来るよ?」
心配そうに尋ねてくる白野。確かにリタイアも出来ると説明は受けたが
「だが断る!余は最後まで『ばあー♪』うっひゃああああ!?」
木の上から落ちてきたお化けに思わず絶叫する。お化けの類は本当に苦手だ、母上の指示でなければ絶対に参加してない。
「大丈夫!おもちゃだから!」
白野に手を握られ何とか正気に戻る。うう……恥ずかしい。こんなの余のキャラじゃない……
「ぷっ!うっひゃあああだって♪」
「あははは!年上なのに恥ずかしくないの?」
突然聞こえてきた笑い声に振り返ると、そこには楽しそうに笑っている、イリヤとクロエの姿があった。今のを見られたと理解した余は
「黙れ!小悪魔コンビ!」
恥ずかしさを誤魔化すためにそう叫んだ。誰にだって苦手な物はある!笑うことはないだろう!余が恥ずかしさで一杯になっていると
「あーネロさん、それにイリヤちゃんにクロちゃん!追いつきましたー♪」
楽しそうな龍花の声に振り返った余達は声を揃えて
「「「どういう状況だそれは!?」」」
「??」
余達の言葉の意味が判らないと首を傾げる龍花の後ろでは
「ブルブルッ……」
その小さな背中に隠れるようにしているモードレッドがいた……龍花はぽんっと手を叩いて
「さっきの悲鳴が怖かったそうでさっきからこれです」
へたれ!我が弟ながらへたれ過ぎる!?龍花がこれならまだ理解できる、だけど男がこれでは余りに情けない
「何やってるのよ!馬鹿モードレッド!」
イリヤの鋭い蹴りがモードレッドに向かうが、モードレッドは器用に龍花の背中に隠れたまま回避する
「やめてあげてください、モードレッドさんはお化けが怖いんです」
違う!龍花その反応は違うぞ!見て見ろ白野でさえ
「龍花さん?モードレッド君を甘やかすのは……え、えーとどうやって説明すればいいのかな?ネロ」
龍花になんと説明すればいいのか判らず困惑してしまっているではないか!
「いい?リューカ。逆、逆なのよ。リューカが怖がるのは判るけど、モードレッドが怖がるのはおかしいの。判る?」
そんな中クロエが説得を試みるが……龍花は
「でも誰だって怖い物はあると思いますし、おかしいとは思いません」
「……リューカ」
ときめくんじゃない!モードレッド!そこはおかしいところなんだぞ!
肝試しで女子に庇ってもらい、ときめく弟。正直言ってどう言う状況下は判らないが、余のするべきことは判った。龍花の後ろのモードレッドの肩を掴んで強引に立ち上がらせる
「ね、姉さん?」
困惑してるモードレッドににっこりと笑い
「このへたれがあッ!!!」
バチーン!
「へぶうっ!?!?」
全力でモードレッドの頬に平手打ちを叩き込んだ。色々と思うことはあったが余りに情けない、流石の余でも許容できなかった
「ああ!モードレッドさんが!?」
龍花が慌てているのが見えるが、イリヤとクロエガそれを防ぎ
「リューカ。ここはお姉さんのネロに任せなさい」
「そうよ。姉弟の間に顔を入れたら駄目」
2人にそう言われた龍花はしぶしぶと言う感じで頷き、余とモードレッドを見ている。余はゆっくりとモードレッドに近づき
「男だろうが!龍花に護られてどうする!」
普通はかっこいい所を見せるべきイベントで情けない所を見せてどうする!色々といいたい事はあったが、モードレッドは余の平手で我に帰ったのかさっきまでのビクビクしている様子は無い
「悪い姉さん、もう大丈夫」
「うむ。余り情けない所を見せるんじゃない」
龍花の寛容差が高いから助かった者の、普通の女子なら幻滅しているぞと思っているとモードレッドは
「もう大丈夫だから行こう。リューカ」
「はい!じゃあイリヤちゃんクロちゃん、ネロさん、白野さんまたあとで」
モードレッドに手を引かれ歩いていく龍花を見ながら。イリヤとクロエに
「良いのか?邪魔をしなくて?」
イリヤは龍花の幼馴染だけ会って龍花をとても心配している。モードレッドと夜道で2人きりと言う状況をよしとするわけが無いと思いながら尋ねると、白野が余の肩を叩いて
「あっちみて?」
「ん?あっちに何が……」
白野の指先を見るとそこには鬼神の軍団がいた……
「あ!イリヤー!それに龍花ちゃーん!」
「やっ、ネロそれにイリヤ、クロエ。追いついたみたいだね」
のほほんと挨拶してくる陽花とエルキドゥに返事を返している間に鬼神軍団は進軍していった。先頭のはやてのオーラはとんでもなかったと思いながら近くの岩に座り
「白野。少し休んでいこう。リアル肝試しを見るのはさすがに嫌なのでな」
「そ、そうだね」
余の隣にちょこんと座る白野。イリヤとクロエ、それに陽花とエルキドゥも同じように座る。暫くすると
「ぎゃー!出たアアアアア!!!」
「あっ、おにーちゃんにギー君♪早かったですね~♪」
風に乗って聞こえてきたモードレッドと龍花の声を聞きながら余は両手を合わせ、モードレッドの無事を祈るのだった……
第72話に続く
次回も少しだけ肝試しの話をして、後半はモードレッドに起きた悲劇を書いていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします