第74話
海鳴の街から大分離れたキャンプ場ではランサーとバゼットが荷物を片付けながら
「いやーしかしここはいい所だなあ。バゼット」
ディルムッドのやつに教わったキャンプに良いと言う山は、川があり、近くに海がありいいところだった
「ですね。ホテルは近くにあるそうですけど、こっちの方が楽でいいですよ」
「全くだ」
俺やバゼットはホテルより。こうやって山の中でテントを張っているほうが気が楽で良い
「釣りでも行くかぁ」
車から釣竿を取り出しながら言う。一応車まで来ているし、道も整備されてるから買い物にはいつでもいけるが、折角キャンプに来ているのだから、自分で食材を取って食うのが1番良い
「ですね。行きましょうか」
2人分の釣り道具を担ぎ河川に行くと
「ん?なんか騒がしいな」
「ですね」
昨日はもう少し静かだったんだけどなと思いながら川に下りると
(んん!?なんであいつらが)
アーチャーとアインスが居る。しかも周囲を見ると
「んー仕掛けってこうなの士郎?」
「いや違う。ウキはもう少し上の方がいいな」
お嬢ちゃんの同級生の姿も見える。夏休みだから旅行に来ているのか?と思いながら
「よう。アーチャー」
「む?ランサー?何している?」
怪訝そうな顔をするアーチャーの奴は、川には相応しくないフル装備。
(何やってるんだよ。こいつ)
呆れながらバゼットを指さして
「キャンプ。ちょっと離れたキャンプ場を借りてるんだよ」
俺がそう言うとアーチャーは納得と言う感じで頷き
「それならば一緒にどうだ?と言うか手伝え、私では正直手に余る」
アーチャーの視線の先を見て、俺は深く溜息を吐いた
「ふみゃー!?」
「はわわわ!?」
お嬢ちゃんとその友達らしい、ふわふわした雰囲気の少女が互いの釣り針を服に引っ掛けて慌てていた。スカートだったら大変な事になっているが、ズボンだったので平気そうだがじたばたしている
「あー了解。手伝うぜ。いいだろ?バゼット」
「ええ、構いません。龍花の方は私が行きましょう」
そう言って自分の釣り道具を担いで龍花のほうに歩いていくバゼット。俺は自分の釣竿の用意をしながら、大人数で釣りをするのも楽しいだろうなと思いながら仕掛けの準備をするのだった……
「「ふぃにー」」
龍花と陽花が互いのズボンに釣り針を引っ掛けて転んで泣きべそをかいている。この2人は何をしているのだろうか?あたしはそんなことを考えながら
「士郎。悪いけど龍花と陽花を見てくるわね」
「おう。じゃあその間に俺は遠坂の仕掛けの準備をしておくよ」
そう笑う士郎にお願いねと声を掛けて龍花と陽花のところに向かっていると
(あ、あれ?)
紫のスーツ姿の麗人の姿が見える。間違いなくバゼットさんだ
「はい。これで大丈夫ですよ」
「わぁ、バゼットさんありがとうございます」
「ありがとうございます」
にこにこと笑う龍花と陽花にいいですよと笑うバゼットさんはあたしに気づいて
「どうも凜さん。こんにちわ」
「ああ、はい。こんにちわ」
如何してここに居るんだろう?いや、でも夏休みだから遊びに来ていたのかな?だけどこれはラッキーだ。はやて達もいるけどやっぱり面倒を見れる人がいるのは嬉しい
(こんなときにいないもんね。あの連中)
はやてやヴィータは、川に岩と石を投げ込んで流れを遮っている
「ねーまーだー?」
「もう少しだから待ってろ。雷花」
水遊びをしたいらしい雷花達のために、ちょっとしたダムを作っているので龍花達の面倒を見てなかったのだ
「ふーお待たせ。リューカ、ヨーカ。僕の仕掛けも出来たから一緒に……どなた?」
バゼットさんを見て困惑しているエルキドゥ。知人しか居ない筈なのに知らない人間がいたら驚くのは当然だろう
「バゼットさんです。アインスとアーチャーさんの働いている所で一緒に働いている人です」
龍花の紹介にバゼットさんは自分の釣竿の準備を終えてから
「バゼットと呼んでいただければ結構です、それでは龍花さん。川釣りの仕方ですけど、こうやってですね」
慣れた手つきで仕掛けを投げているバゼットさんを見て。これならあたしが見ている必要もないかと思い
「龍花達をよろしく」
「はいはい。お任せ」
エルキドゥに龍花達を任せて士郎の所に戻ると
「お、おかえり遠坂。はい、出来たぞ」
士郎に手渡された釣竿を受け取る、糸の長さは竿の長さと殆ど同じで、中ほどの所にウキではなく
「なにこれ?鳥の羽?」
「そうそう、鳥の羽の目印なんだ。アーチャーが持ってたから借りてきた。魚が掛かると羽根がくるくる回るからわかりやすいんだぞ?」
士郎の説明にへーっと頷きながら餌は?と尋ねる。虫餌とかならあたし絶対無理なんだけど……
「ん?イクラ。マスが多いらしいからな」
それならなんとか大丈夫そうね。あたしは士郎のほうを向いて
「あたし釣り始めてだからよろしくね」
「おう。任せとけ」
そう笑う士郎の隣を歩き、龍花達の後ろと熱心に糸を繰り返し投げているギルガメッシュの脇を通り、岩が並んでいる所に腰掛けた
「さっきなんか糸を何回も投げてたけどあれなに?」
「フライ釣り。まぁルアー釣りの仲間みたいな物だな」
釣りって言っても色々あるのねと感心しながらあたしは士郎の隣に座り
「それでどうやってやるの?」
釣りが初めてなのは本当でどうやって投げるのか判らず尋ねると士郎は
「こうやってだな」
竿を右手に、左手に針の少し上のところを持ち
「よっ!」
ぱっと針を放し、竿を動かして上流のほうに投げる
「振込みって言うんだ。上流に投げて仕掛けを流す、んで足元まで来たら回収してまた投げる」
ふーんと頷き士郎の真似をして上のほうに投げてみる。ゆっくりと流れる羽の目印を見ながら
(なんかのんびりしてて良いわね)
なんかこうとても落ち着く。あたしはそんな事を考えながら羽の目印を見つめていたのだった……
「ん。来たな!」
竿をあおりしっかりとあわせを入れるとググンっと力強い引きが伝わってくる
「わ、ネロ凄いね。これで5匹目だよ」
たもを手に笑う白野に余はふふんっと笑いながら
「当然だ!余はすごいのだからな!」
世界を旅しているときによく釣りをしていた、海でも川でもだ。その地域の特有の食文化を楽しむ。それも旅の醍醐味と言えるからだ。そんな事を考えながら丁寧に魚を岸まで寄せると
「はいっと」
白野が道糸をつかみマスを掬い。慣れた手つきで針を外し魚籠の中に入れる
「白野は釣りをしないのか?」
今の感じを見てもそうだが、魚を掬う手際も実に良い。白野も釣れば良いのにと思いながら言うと白野はにへらと笑い
「いいよ、ネロがやってるのを見てるの楽しいから」
にこにこと笑う白野。一体何のことやらと思いながら餌を付け直し上流に振り込み。仕掛けが川の流れと馴染むのを待っていると
(む?)
目印を見ている余をじっと見つめている白野の視線に気付き
(お、おちつかん!?)
余りにじっと見つめられているのでつりに集中できない。意識してしまうとますます集中できない
「空振り……一体何がいけないのですか」
「根掛り……むううう。士郎餌!」
風に乗って聞こえてくる凜とアルトリアの声。ふとそちらのほうを見ると
「はいはい。セイバーは合わせるのが遅い、もう少し気持ち早めに。遠坂は流しすぎ、自分の前に来たら回収して」
2人の世話をしている士郎が見える。どうも自分の釣りは諦めて2人の世話に集中しているようだ
「はわわわ!!来ました!やっと来ました!!」
「龍花。落ち着いて、ゆっくりだ。ゆっくり」
「は、はい!おにーちゃん」
はやてと一緒に釣りをしている龍花。そういえばモードレッドの姿を見てないと思い辺りを見ると、少し離れたところで釣りをしていたモードレッドの後ろからこっそりと近づいているイリヤとクロエ。そして
「「どーん!」」
「ごぶああ!?」
川に突き落とされたモードレッドに石を投げ込んでいるイリヤとクロエ。モードレッドはそれを必死で回避しているが何発か命中している。あ、這い上がってきて力尽きた
『死体に付き触らないこと』
そんな事を書かれた看板を前に突き刺され放置されるモードレッド。昨日の肝試しの分だろうと思っていると
「ネロ!引いてるよ!」
「むっ!」
白野にそう言われ反射的に合わせを入れると、穂先が大きく曲がる
「これは大きいぞ!?」
片手で持っていた竿を両手で持ち直し、その強烈な引きに驚く
(これはなんだ!?)
さっきから何匹も釣っているマスの引きではない。一体何が掛かって
バシャッ!!
音を立てて水面から飛び上がったのは大型の岩魚だった
「大きいね!ゆっくり行こう!」
「うむ!」
あのサイズなら塩焼きにしても美味いし。飯ごうで炊き込みご飯にしてもいい。慎重に慎重に引き寄せようとするが
ググン!!!
「ぬう。全然弱らない!!」
力強い引きに足場を移動することで対応する。しかしそれにしてもいい引きだ
「ぬっ。ととっと……簡単にはいかせんぞ」
竿を操作して上手く岩魚の引きを殺しながらゆっくりと足元に寄せてくるが、最後の抵抗と大きくジャンプした岩魚。もう取ったと思って油断してしまった、岩魚は力強く空中で暴れてテグスを切ってしまった
「逃がすかー!」
「白野!?」
岩魚が水の中に飛び込む前に白野が網を振るい岩魚を捕獲するが、変わりに
「わわっ!!!」
ばっしゃーんっ!!!
白野はそのまま川に落ちてしまったが
「えへへ、ちゃんと捕まえたよ」
「はー驚いたぞ、白野」
白野の手の中に網には30センチ後半くらいの大型の岩魚だった。びしょぬれの白野を見て
「少し待っていろ、今タオルを持ってくる」
「うん。お願いしてもいいかな?少し寒いかなあ」
あははと笑う白野に背を向けて余は自分の鞄からタオルを取り出そうとして、離れた所で見ていた母上とアイリさんのほうを見て目を見開いた。なぜなら龍花が母上のアホ毛をがっしりと両手で掴んでいたからだ……
(た、大変なことになるぞ!?)
余は慌ててタオルを掴んで白野の元に走り。白野のを目を見て
「白野だけは余が護るから」
あの状態の母上はとても危険だ。白野に何をしでかすか判らない、だが白野だけは余が護るというと
「???何の話?」
不思議そうに首を傾げる白野。出来ることなら白野にあの母上を合わせたくなかったと思いながら、これから起きるであろう惨劇に心を乱されることが無いように、大きく深呼吸をしたのだった
魚を釣り上げて、1回休憩にとアイリさん達の方に戻ると
「漸く釣れたのですね。お疲れ様でした」
「あはは。おにーちゃんとかギー君は一杯釣ってますけどね」
おにーちゃんは私と同じ餌つりで、ギー君はフライ釣りで魚をどんどん釣っている。ヴィータ兄は
「おい。大丈夫か?」
「い、石が頭に……」
ふらついているモードレッドさんに肩を貸して歩いているヴィータ兄を見ながら歩いていると
「あっ」
偶然そこだけへこんでいてそれに足を取られて、転び掛ける
「危ない!」
リリィさんが危ないと立ち上がり私を受け止めてくれたのですが
「あ」
「あ」
「へっ」
リリィさんとアイリさんのあっと言う声がする。なぜなら私は咄嗟にリリィさんのアホ毛をしっかりと掴んでしまっていて
「リューカちゃん!」
アイリさんが慌てた様子で立ち上がり、私の手を引いてリリィさんから距離を取る。リリィさんは俯いていて、なんか凄く怖い
「あちゃー。アホ毛触ると危ないのよね」
そう言えばアルトリアさんのアホ毛を掴んだ時もそんな感じだったっけ
「ふむ。中々いい感じだ」
顔を上げたリリィさんは、前に見た黒いアルトリアさんと似た雰囲気を放ちながら私とアイリさんを見て
「リューカ。こっちへ来い」
おいでおいでと手招きするリリィさんの前に座ると
「良し良し良い子だ」
私の頭を撫でながら笑うリリィさんはぼそりと
「アルトリアもネロも勇ましい性格に育ってしまったが、私としてはリューカのような性格の娘が欲しかった」
アルトリアさんとネロさんが近くにいなくて良かった。お母さんにそんな事を言われると悲しいはずだから
「アイリ、久しぶりだな。元気にしていたか」
「ええ。貴女と話すのはんー?7年くらいぶり?」
「忘れたな」
はははと笑うリリィさんは釣りをしている。ネロさんやアルトリアさん、そしておにーちゃん達を見てから
「全員集合ッ!!!!」
その大声にびくうっとアルトリアさんが背筋を伸ばして振り返り。青い顔をしているのが見えた。そして明らかに怯えの色を見せているアルトリアさんと
「いやだー!俺帰るうう!俺帰るうううう!!!!!!」
「ちょっ!?急にどうした!?」
錯乱して逃げ出そうとするモードレッドさん。私はその姿を見てリリィさんの隣で手を合わせて
(ごめんなさい)
心の中でそう謝るのだった……明らかに怯えた様子で近づいてくるアルトリアさん達に深く頭を下げるのだった……
第75話に続く
はい。このタイミングで黒お母様を出してみました。面白いかなーって思いまして、次回はまぁ前にあった黒セイバーと同じ感じで進めていこうかな?っと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします