第77話
~女子部屋~
龍花が居ない。と言っても迷子などではなく、リリィさんとアイリさんが一緒なので何の心配も無い。あたし達は買ってきたジュースとお菓子を前にして
「今日は自棄食いOK。あたしはそうする、皆はどうする?」
置かれているお菓子はクッキーやケーキ、それにシュークリームと高カロリーで普通は夜に食べるものではないが、今は食べないとやってられない気分だった。アルトリアはとてもではないが、あたし達の買ってきたお菓子で足りるわけが無く、1階のレストランの食べ放題に行っている。いつ戻ってくるのか判らないが、少なくとも1時間は帰ってこないだろう。ネロは白野と夜の散歩に行くと言って部屋を出て行った。
「夏だから直ぐ痩せるからOK」
「あと少し食事節制をすればなんとでもなります」
イリヤと星花がそう言うが早くシュークリームに手を伸ばし封を切る、あたしはプリンを手にとってラベルを剥がし食べ始めた
「あー龍花は酔うと危険だわ。あれは悪魔よ、悪魔。言峰よ!」
昼間の事を思い出しながら言う。けらけら笑いながら全員を再起不能寸前まで追い込んだ、デビル龍花の姿を思い出す。あれは最悪だった、コンプレックスや自分のことでからかわれ。精神的ダメージが酷い
「精神ダメージくらいなら良いじゃないか……僕は肉体的ダメージも受けたよ」
「……私も」
エルキドゥと陽花が暗い顔をしてそう呟く。エルキドゥは剥かれた上に胸を揉まれ、そして陽花は川へシュートされた上に抱き締められて高速回転で瀕死になっていた。
「あーうん。判るわ、とりあえず食べなさいよ」
ショートケーキとプリンを渡す。エルキドゥはショートケーキをちまちまと食べ、陽花はプリンを食べながら
「龍花ちゃんにアルコールは駄目。危険すぎる」
陽花の意見は確かに的を得ているが、あたしは思わず
「でもさ?陽花が酔っても同じ事になるんじゃないの?」
基本的に龍花と陽花はとても良く似ている。もしかすると酔うと同じ感じになるのではないのか?
「試して……見る?」
雷花が机の上にウィすきーボンボンを持ち上げて陽花に向ける。少し考えて見る。もしも、もしも陽花が龍花と同じと考えると……
「「「駄目!絶対駄目!!!」」」
両手を×にしてそう叫ぶ。エルキドゥも珍しく声を荒げて
「僕はもうこれ以上トラウマはいらないよ!余計なことを提案しないで!」
温厚なはずのエルキドゥにそう怒鳴られた雷花は
「う……ごめんなさい……」
怒られた事でしょぼーんとする雷花。だけどこれで良いとおもう
「でも龍花が酔うとあんなに怖くなるとは思わなかったわ」
あたしがそう呟くともくもくとポッキーをかじっていたイリヤが
「あれは怖いというか……んーなんて言うんだろう?」
怖いというのは先入観でもっと相応しい表現があるのかもしれない。それから暫く全員でなにか良いあだ名は無いか?と全員で考えたのだが
「止めにしないか?思い出したくないことを思い出しそうになる」
王花の言葉にあたし達はうっと呻いた。あたしの脳裏に昼間の事が鮮明に浮かんだ
『貧乳~ぺちゃんこ~テンプレート~』
「「「あうううう……思い出したくない」」」
食べていたお菓子を取りこぼしあたしとイリヤとクロエは頭を抱えて蹲る
「ううう……忘れたいのに」
「……川の水は冷たかったなあ……」
「我は我はああ」
駄目だ。これ以上は思い出してはいけない、閉じたはずの……いや、閉じようとしていたトラウマの扉が開きかけている。
「止め!これ以上考えるのは止めにしましょう!」
これ以上考えても、思い出せるのはトラウマだけと昼間の龍花の凶行しか思い出せない。これ以上は思い出すのは止めてお菓子を食べて忘れることにしよう
「チョコレートなんだよね……食べようかなー?」
陽花がウィスキーボンボンを見つめてそう呟く。それを素早くエルキドゥが取り上げながら
「止めておいてくれないかな?陽花まで悪魔化されたらもう立ち直れないよ。僕もリン達も絶対に」
絶対にと断言されるのは凄く悲しかったが、あたしもそうだと断言できる。それほどまでの昼間の龍花の姿は記憶に残っている。
「凜。ケーキ回してくれないか?」
「ん。はい」
王花にケーキを回す、あたしと王花がそんなやり取りをしていると
「お菓子を食べながらトランプでもやる?」
「いやよ。トランプがべたべたになるじゃない、トランプをするならお菓子を食べ終わってからよ」
「あ、お菓子ですか?私も食べて良いですか?」
「良いわよ、好きなのを……ん?」
「ん?」
「ん?」
「はい?」
いつの間にかあたしと王花の間に座っていた龍花が両手でチョコレートを抱えている。それはさっき陽花が食べようとしてウィスキーボンボン。いつ入ってきたのか?そう言うのを尋ねる前にあたしは
「食べるならこっちの方が良いわよ!絶対美味しいから!」
ウィスキーボンボンを取り上げ、代わりにチョコレートケーキを龍花の前に置き、ウィスキーボンボンを取り上げた
「わあ♪ケーキですね。嬉しいです」
ケーキを幸せそうな顔をしてもそもそ食べ始める龍花。普段通りの龍花に少し安心しながら、あたしは龍花から取り上げたウィスキーボンボンを頬張った。ほんのり甘く、そして感じるアルコールの味わい
(龍花に食べさせて酔わせるわけには行かないものね)
あたしはそう苦笑して、お菓子を食べながら
「これが終わったら何かして遊びましょうか?」
「はい!遊びます!」
にこにこと笑う龍花を見て、やはり龍花はこっちの方がいいと思いもう1度笑いながら、もう1つチョコレートを頬張るのだった
~男部屋~
女子達がお菓子を自棄食いしているのに対して男部屋では
「「「ずーん……」」」
何人かがまだ昼間のダメージから回復できず、体育座りで暗いオーラを撒き散らしていた。その中には
「ふっはは……ロリコン……ロリコンに決定か?ふっはは……笑えよ」
1番年上であるはずのアーチャーが取り分け濃いオーラを撒き散らしていた
「脆過ぎるだろ?なんだあのガラスハート」
「仕方ない。ああ見えて繊細なんだ」
ダメージが比較的軽微だったはやてとアインス。いや勿論ダメージは受けたのだが
『おにーちゃんすきー♪なーんちゃってーッ!!!きゃははは!ドーンッ!!!』
龍花に川に突き落とされただけなのでダメージはそんなに受けていない。まぁ好きと言われて一瞬思考が停止するというみっともない所を見せたが、川に落とされたことで頭も冷えたので問題はない
「お前は良いよなあ……好きって言われて川に落とされただけだろ?俺は変態だぜ?しかもスケベ呼ばわりだぜ?」
「ああ。好感度の違いと言う奴か?理不尽すぎないか?アインスは思いっきり顔面に頭突きを食らってるからまだ良いがな」
布団から顔を出しジトーっと私とアインスを見る。シグナムとヴィータ。そしてアインスは鼻を押さえた
「痛むなら氷を出すか?近いしな」
珍しくギルガメッシュがそう尋ねてくる。傲岸・わがままなあいつが少し大人しいのは
『わがままなギー君は嫌いにゃー』
その言葉にフリーズしたギルガメッシュは返す刀で放たれた裏拳で沈んだ。別に裏拳の後遺症とかではないが、嫌いと言われたのが堪えているのだろう。暫くほっておけば綺麗なギルガメッシュになるのでは?と思っているのは私だけではないはずだ
「いや。かまわない、ありがとう」
アインスはギルガメッシュの申し出を断り、深くイスに腰掛け溜息を吐いてから。一際大きい男に
「アーチャー。いい加減に再起動したらどうだ?執事」
最もダメージの大きそうなアーチャーにそう声を掛けるが
「ふふふ……心はガラス……ガラス」
ぼそぼそとガラスとか何とかって呟いている。どう診ても末期患者にしか見えない
「いや。マジで立ち直ろうぜ?アーチャー」
そして平気そうな顔をしてアーチャーにそう声を掛ける士郎。唐変木や朴念仁などと色々と言われていたが、意味を全然理解してなかったのでノーダメージだ。受けたダメージといけばよろけた龍花のアッパーが軽く当たった程度と私達の中では1番ダメージが軽微なのは間違いない
「「「うるさい。黙れ。リア充爆発しろ」」」
ダメージ深刻組みが布団から顔を出して、恨めしそうに呟く。しかし肝心の士郎はと言うと
「なぁ?はやて。リア充爆発しろってどういう意味だ?俺は爆発しないといけないのか?」
私はその質問に答えるのも面倒だと思った。確かリア充は現実が充実していると言う意味だ。士郎の周りは確かに美少女が多いが、その分命に関わる事も多い。到底羨ましいと思える状況ではないだろうなと苦笑しながら
「いや。私も知らないな、ヴィータ達はほっておいてもかまわないだろう」
色々と気持ちの整理がつけば復活するだろうと判断し、ほっておいてもかまわないと言ってから
「モードレッド。お茶」
「え?ああ、はい。買ってくれば良いんですね、言ってきます」
財布を渡そうとしたのだがそのまま出て行くモードレッド。その余りに自然な動きを見た私は
「よっぽどセイバーに躾けられているんだな」
思わずほろりと来た。恐らくセイバーに色々と躾けられたのだろう。主に恐怖政治で……そう思うと少し可哀想に思えたが龍花と仲が良いのは看過できないので、恐らく私がモードレッドに対する対応は絶対に変わる事が無いだろう
「さてと、じゃあ何をする?トランプでもするか?」
TVやDVDを見るというのはあまり良くないだろう。後ろのほうで瘴気を出している連中が居るから、画面に集中できないとおもう
「それならばポーカーでもするか?「「却下」」
ギルガメッシュの幸運は凄まじい。私達が勝てる要素が無いので却下する。すると士郎は
「じゃあ何をする?」
4人いるからな……人数が多くて皆で遊べるカードっとなると……
「モードレッドが来るのを待ってから大富豪でもするか?」
1対1のポーカーでは勝てないが、複数相手ならギルガメッシュに勝てる目が出てくる。それに5人でやればカードもばらけるだろうから、大富豪が良いだろうというと士郎もアインスも良いなと言うので、大富豪に決定になった。モードレッドが戻ってきてから5人で大富豪をしていると。のそのそとゾンビのように這い出してきた、ヴィータが入り、更にシグナムが入り。最後にアーチャーが入り最終的にかなりの大人数での大富豪でわいわいと盛り上がるのだった。ちなみに1番勝ったのは何故かモードレッドだった、不幸人属性かと思いきや、意外と引き運が良いんだなあと思わず感心してしまうのだった
女子部屋と男部屋がそれぞれ盛り上がっている頃。ネロと白野はと言うと
「線香花火も良い物だな!白野」
「そうだね。なんか感慨深くなるよね」
夜の砂浜で散歩をした後。線香花火を持ち出して2人でのんびりと話をしながら、線香花火をしていた
「ふふー白野♪「だーめ」むう!何故だ」
抱きつこうとしたネロを押し返した白野。押し返された事に不機嫌そうな顔をするネロ。それに対して白野はぽわぽわと笑いながら
「ゆっくり進んで行きたいから。余りに焦らないでね」
「む……日本人との性格の違いか、ならば仕方あるまい。白野の言う通りにしよう」
そうは行った物の不機嫌そうな顔をしたままのネロに白野は苦笑しながら夜空を指差して
「見てネロ。流れ星」
「むっ?本当だな!それならば」
「わわ!何するの?」
座っていた白野の手を握り立ち上がらせたネロは自然な素振りで白野の腰に手を回して
「踊るぞ!」
「ええーこれなにか逆じゃない?」
男と女の立ち位置が違うという白野。確かにネロが男側の立ち位置に居て、白野が女性の立ち位置に居る
「これで良いのだ!ほら!踊るぞ」
「わわ。僕知らないのに~」
「余が教えてやる!覚えろよ!今度は白野が余をリードするのだからな」
音楽も光も何も無い、夜の砂浜で降り注ぐ流れ星をバックにネロと白野は、ぎこちないながらダンスをしているのだった。誰も見ていないから指摘する者はいなかったが、ネロも白野もお互いの手をしっかりと握り、その手を放さないと言っているように見えたのだった……そしてリードをしている立場のネロは、必死で足元を見てステップを覚えようとしている白野を見て
(紅くなっているよな……頬が熱いぞ。だが心地いい)
夜なので自分の頬が赤く染まっていることを気付かれないことに安堵し、そして夏の暑さとはまた違う熱を心地よいと小さく呟き。夜風を浴びながらゆっくりとステップを踏むのだった……
第78話に続く
白野の方がよっぽどリア充爆発しろ状態ですね。おかしいとかの指摘は無しでお願いします。次回はそうですね、女子部屋とかの話をメインにしていこうかな?龍花さんの朝の弱い所とかをホテルでやるとどうなるのか?と言うのをやりたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします