第79話
「ふぉおおお……浮いてる」
キラキラと目が輝いているリューカに僕は頬をかきながら
「うん。浮き輪だからね?浮いて当然だよ?」
やっぱりと言うか何と言うか、リューカは泳ぐことが出来なかった……だから紐をつけた浮き輪を引いてあげてるんだけど
「ふあああ……」
「ちょっと静かにしてようか?」
リューカはさっきからこんな声を出し続けている。流石に注目をひくのでそう言うと、リューカははいっと言って静かになった。なお向こうの方では
「にゃー♪」
「……楽しそうで何よりだ」
そうは言っているけど全然楽しそうじゃないオウカの姿と、水に浮くマットの上でぷかぷかしているヨウカの姿が見える。僕ははぁっと溜息を吐いた。なんでか知らないがm僕とオウカが2人の面倒を見ることになっていた。いや別に良いんだけどさ……
(周りの目が痛いんだよなあ……)
楽しそうにはしゃいでいるリューカとヨウカを見ている視線があちこちから刺さり。どうかしました?と尋ねてくる2人の雰囲気もあいまって注目を集めている。こういう時にハヤテ達がいれば良いのに……肝心な時にいない過保護軍団を少しだけ恨むのだった……なお僕達のほかにお留守番をしているネロと白野は
「良い天気だな」
「だねー」
パラソルの下で荷物番をしている。もう少しで交代してくれる時間だから、それまで我慢していようと思い。ゆっくりと紐を引いていると
(もう少しで帰ってくるだろうから我慢するぞ)
(判ってるよ)
買出しに出かけている面子が帰ってくるまでの我慢だ。僕いはそんなことを考えながら浮き輪にしっかりしがみ付いている、リューカを引っ張るのだった……
エルキドゥと王花がお姫様と天然の世話に大忙しの頃。海の家は戦場と化していた。その理由は言うまでもなく
「やきそば10パック。お好み焼きの豚卵8個イカ玉を7個。たこ焼き20パック。それとカキ氷全種類を5つずつお願いします」
怒涛の勢いで注文を続けるセイバーのせいだ。荷物持ちとしてついてきた俺とはやて達も若干顔が引き攣ってきている
(士郎。これで何回目の注文だ?)
小声で尋ねてくるヴィータ。その手にはたこ焼きと焼き傍のパックが入った袋がある。かと言う俺もお好み焼きの入った袋を抱えている。と言うか
「まだ買うのか……末恐ろしいな。龍花は大丈夫だろうか?」
「大丈夫だろう?エルキドゥ達を置いてきている」
「ねーそろそろ帰ろうよ~」
買出しと言うことで着いて来ているはやて達が遠い目をしている。全員が全員荷物を抱えているし、海の家の従業員にいたっては
「て、てんちょおおお!助けてください~」
「黙って手ぇ動かせ!はい!たこ焼きおまちどお!!」
半分くらい泣いている従業員が大半だ。俺は心の中でその従業員さん達に謝りながらジト目で海の家の中を見る。そこには
(((ごめんね?)))
(いやだ!)
店内でかき氷を食べている。アイリさん達に視線で嫌だと叫んだ、まさかセイバーがここまで注文するとは思ってなかったのだろう
「さてでは……」
まだ注文する気か!?俺は慌ててセイバーに近寄る、パーカーで隠しているが近くに行くと白いビキニが見えて何か落ち着かない……ドスッ!
(うおう……)
荷物こそ持ってないが、腕組している遠坂の視線が凄まじく鋭い……しかも砂浜に叩きつけられたかかとが更に恐怖心をあおる……俺は大きく深呼吸してから
「セイバー。龍花達が待っているからそろそろ戻ったほうがよくないか?」
「ん?それもそうですね……ではこれで注文は終わりにします」
セイバーの言葉に心底ほっとした表情の従業員の皆様に俺は心の中で手を合わすのだった。なお諭吉さんが3人いなくなった……本当どれだけ買ったんだよ……俺は心底呆れながらおつりを受け取り。海の家を後にしたのだった……
関係ないが、あの海の家はこれから30分後に材料が泣くなり今日の営業を終了したそうだ……俺は本当に申し訳ないことをしたと思ったのだった……
「もっきゅもっきゅ……」
はーしかしセイバーの食欲は天晴れよね。と言うか何であれだけ食べて太らないのかしら?海の家に壊滅寸前の打撃を与え戻ってきたあたし達は龍花達と合流して昼食にしていたんだけど……かって来た大半はセイバーが食べている。
「準備しておいてよかったという訳だ」
アーチャーがまたバーベーキューセットを用意して、少しだけど買ってきた焼肉と魚を焼いている。あたしはそれを見ながら士郎の隣に腰掛ける。2人きりの旅行と思っていたけど、いつも通りの展開になっちゃったわね……まぁそれでも良いかなっと思いながらたこ焼きを頬張っていると
「なんか悪いな。遠坂折角誘ってくれたのになんかいつも通りになっちまった」
「べつに良いわよ。これはこれで楽しいし」
あたしの視線の先では龍花がこけて手にしていたたこ焼きが宙を舞い
「あづああああああ!?」
今まさにお握りを頬張ろうとしていた金ぴかの口の中にダイブする。
「ああ!?ご、ごめんなさい!ギー君」
予想外の熱さに悶絶する金ぴかとその隣であわあわしている龍花。そして悶絶している金ぴかと龍花を見て親指を立てている王花。いつも通りすぎて凄く安心する思える
「だけどさ。それだと折角誘ってくれた意味が無いと思うんだよな」
ん?士郎らしくない言葉ね?なにが言いたいのかしら?と思い士郎の顔を見ると士郎はほおをかきながら、小声で
「旅行から戻ったら映画でも行くか?」
士郎からデートのお誘い!?信じられない……士郎の言葉に驚いていると
「い、嫌なら別に……「いや、行くわよ!誘ってくれて……ありがとう」
嫌なわけが無い。こんな珍しいことはめったにない
「ありがと、楽しみにしてる」
「お、おう」
海の家のたこ焼きなんてたかが知れていると思ったのに、今の士郎の言葉にやけにおいしく感じる……
(気持ちで変わるって本当なのね)
あたしは士郎の隣で海を見ながらたこ焼きを頬張り。頬が緩むのを感じるのだった……なおこの後龍花に
「凄く嬉しそうだけどどうかしたんですか?」
にこにこと尋ねられ、あたしはなんと返事を返せば良いのか判らず。龍花の頭を撫でながら
「もうちょっとしたら龍花も判ると思うわよ?」
「???」
不思議そうに首を傾げる龍花。きっとこの気持ちは龍花も恋をすれば判ると思う、まぁその前にあの過保護な従姉妹と兄貴達を何とかしないといけないと思うけどね……
海で泳ぎ終えた後。アイリと一緒の部屋に戻り。ワインを冷蔵庫から取り出しながら
「思うようには行きませんでしたね」
「まぁ仕方ないんじゃないかしら?」
もっとこう恋愛関係を進めてあげようと思ったのに全然変化がなかった。もっと激的な何かが必要だったのかもしれない
「のんびり行きましょうよ?ね?」
アイリがそう笑う。まだ日本には滞在できますが……もっとこう変化を与えてみたかったのですが……
「また別の策を考えましょうか?」
「そうですね。ウーサーとキリツグが戻ってきてからまた何か考えますか」
私がそう言うとワインを飲んでいたアイリが驚いた表情をして
「え?和解出来たの?」
期待を込めた目で見てくるアイリに私は首を振りながら
「駄目だったので日本で和解会議を再開するそうです。私とアイリも交えて」
「あ。うん……そうそう上手く行くって思ってなかったわ」
それについては私も同意権です。ウーサーはかなりの石頭だし、それにキリツグも非常に頑固だ。私とアイリが間に入ったとしても和解は難しいだろう。何か別の一手があれば……
「リューカちゃんはどうですかね?」
ふと閃いたのはリューカちゃんを和解のばに連れて行くこと、ユーブス老も気に入っているそうですし……いてもおかしくないと思う
「え?連れてくの?和解のばに?」
驚いた表情のアイリに頷きながら、良いですか?と前置きしてから
「どこまで行っても平行線なら、別の人を間に入れれば良いのです。リューカちゃんの癒しオーラは武器になりますよ」
「いや……効くの?」
「多分」
リューカちゃんがいるだけで周囲の空気が和らぐ。きっとぴりぴりしてるからリューカちゃんの癒しは武器になる
「とりあえず旅行から帰ったら頼んでみましょう」
「はいって言ってくれると良いわねえ」
アイリの言葉に頷きながら、私もワインをあおった。いろいろと楽しいことはあったが、この旅行も今日で終わり……明日の朝にチェックアウトして、夕方くらいには家に戻る予定だ。中々珍しい体験が出来て面白かった。出来る事ならまたこの面子で旅行に来たいですねと思いながら。ワインをもう1口口に含むのだった……
ホテルのチェックアウトを済ませ、乗って来たバスに乗り海鳴の街に戻る途中で窓の外を見ながら
(楽しかったですねぇ……)
車酔いするから窓の外を見つめているから酔うことは無い。それにこうして窓の外を見ているのも楽しい……
「流れる景色を見ているのはすきなのか?」
隣に座っているネロさんにそう尋ねられ頷く。雷花ちゃんとか王花ちゃんは疲れているのか背もたれに背中を預けて眠っているし、席が空いてるからと一緒に乗って帰ることになったんだけど
「うーん。これは違うわね」
難しい顔をして何かの雑誌を真剣に見ている邪魔をするのも悪いので、話しかけないの方が良いだろうと思いながら
「とっても楽しいです!」
「そうか。それならいいが……余り下を見ないほうが良いぞ?酔うからな?」
そう笑って本を読み始めるネロさん。アルトリアさんと凄く良く似ているけど、アルトリアさんよりも優しくてお姉さんと言う感じがして安心する。そんな事を考えながら窓の外を見ていると
「あ、ギー君だ」
バイクに乗って併走していたギー君が手を振り分かれていく。給油しないと駄目と言っていたからそうだろうと思いながら、手を振り返し、窓の外を見ていると
「あふ……」
なんだか眠くなってきて欠伸をしてしまう。それを見たネロさんが
「疲れているのなら寝ても構わんぞ?起こすからな」
よしよしっと頭を撫でられて更に眠気が増す。私はもう1度大きく欠伸をして
「すいません……少し寝ます……」
ネロさんの肩に頭を預けて眠りに落ちてしまったのだった……
「ついたぞ?龍花?」
「ふえ?」
ネロさんに肩をゆすられ目を開けると、そこはもう家の前で空はオレンジ色に染まっていて……夕方だと判る。それに車中に残っているのは私とネロさんとイリヤちゃんとクロちゃん。王花ちゃん達の姿はもう無い、途中で降りたのだと判る。私は慌てて身体を起こして目を擦りながら
「ああ!すいません!どうもありがとうございました!」
「気にしないで良いぞ♪またな」
気をつけろよと声を掛けてくれるネロさんに頷き。私が車の外に出ると
「来たか。ほら行くぞ」
おにーちゃんが私の荷物を持っていてくれた。私は伸ばされた手を握り返し
「うん♪今回の旅行物凄く楽しかった!おにーちゃんは?」
「私も楽しかったよ。ヴィータとシグナムたちも同じだろう」
「そうだね!またこうやって旅行に行きたいな♪」
おにーちゃんの顔を見ながら言うとおにーちゃんはにこりと笑いながら
「ああ。また行こう。皆でな」
「うん!絶対にね!」
旅行の時のことはちゃんと日記に書いておこう。楽しい思い出だから忘れたくないから……こんな楽しい日がずっと続けば良いなあ……だって今までこんな事全然なかったし……入退院を繰り返していて、こんなことは今まで1回もなかった。だからこそ思う
(来年も再来年もずっと楽しい日が続くと良いな♪)
私はおにーちゃんの手を握りながら家の中に戻ったのだった……
第80話に続く
今回はとても短いです。流石に本当にネタ切れです……良く80話まで書けたなと我ながら驚きです。次回はそうですね、ウーサーさんを出してみようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします