それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第82話
はやてとセッテと海鳴の街を歩きながら、周囲を確認する。記憶と目の前の光景を比べると
(少しばかり街並みが違うな)
私の知る海鳴よりも商店街の店の姿が多い。それに私の世界の海鳴の街よりも広い様に思える。はやても同じ意見のようで
「なんか全然違う街見たいやね?」
小声で尋ねてくるはやて。何年も暮らしていた町だが確かに私も違う街のように思える。海鳴の街だからと少し安心したが、どうも同じ街と思っていると全然知らない所に向かってそうだと思っていると
「ふむ。私には判りませんがね?」
セッテはクラナガンの生まれだから仕方ないと言って、とりあえずこの世界にあるでだろう自分の家を目指して歩いていると
(む?)
すれ違ったオレンジ色の髪と銀髪の青年。おかしい何処かで見たことあるぞ?あの顔。どうもはやてとセッテもそう思ったようで立ち止まっている。何か話をしているようなので聞き耳を立ててみると
「アインス。今日の買出しってなんだっけ?」
「しっかりしろヴィータ。鶏肉と野菜。それと洗剤だ」
ヴィータ?アインス?思わず振り返り再度確認する。それは男になっているが、顔つきは間違いなくヴィータとリインフォースだった
(なんで?)
はやてが目を丸くして呟く。その気持ちは私も判る、何故?としか言いようがない。そして普段冷静なセッテでさえも目を丸くして
(頭が混乱しています、全く理解できません)
何を買うのか?と話をしながら歩き去っていく2人の背中を呆然とした表情で見ていたのだった。平行世界に来たと思いきや、とんでもないサプライズで混乱しきっているはやてとセッテ。だが私も混乱しきっている
「とりあえず喫茶店に入ろう」
立ち止まって話していては迷惑になるし、近くに喫茶店もあるので3人で喫茶店に入る事にしたのだった……この世界は今まで経験した事もない平行世界かもしれないなと思うのだった……
兄ちゃんとセッテと喫茶店に入り。それぞれ紅茶を頼んでから
「この世界って男女逆転してるんか?」
もしそうなら女の人の兄ちゃんがいるんか?と思いながら言うと兄ちゃんは
「そうでもなさそうだぞ?あれを見ろ」
兄ちゃんの指先を見るとそこにはツインテールと金髪の少女の姿がある。あれって……
「はー、沢山買い物したねえ?鈴」
「バーゲンだったからね」
ISの世界で出合った「鈴」と「シェン」が買い物袋を両脇に置いて、楽しそうに話をしながらお茶をしていた。ただしその姿は元の世界と同じく女性のままだ。私はそれを見てますます混乱した
(本当にこの世界何や?)
海鳴の街かと思いきや、ISの世界の人間がいる。更には性別が逆転している人間まで居る。この世界は本当になんなのだろうか?
「龍也様。デバイスにこの街の地図をダウンロードしたんですが、これどう思います?」
セッテが机の上にデバイスを置く。そこに書かれていた地図を見ると、私と兄ちゃんが暮らした海鳴の街よりも少しだけ面積が大きく、そして見過ごす事の出来ない地名が書かれていた
海鳴
冬木
藍越学園
の名前が踊っている。私と兄ちゃんは揃って目を見開いた。その3つはどれもこれも違い世界の物だ。それが1つになっている……
「多重融合世界か」
ぼそりと呟いた兄ちゃんが説明を始める。なんでも平行世界の1つなのだが、大変貴重な世界の1つだ。本来は異なる世界同士のはずなのだが、何かのきっかけで1つの世界となり。ベースとなった世界を中心に再構築された世界。つまりこの世界は
(平行世界の私達の世界をベースに2つの世界が融合した世界と言うことやね)
しかしまぁとんでもない世界やね。特に冬木が混じっているのが怖い、確かあの世界は聖杯戦争と呼ばれる魔術師と英霊の……この時ふと窓の外をも見た私と兄ちゃんは丁度店の前を通り過ぎて行った人物に目を見開いた
「……とんでもない魔窟やね。兄ちゃん」
「だな。なんなんだろうな。この世界は」
喫茶店の外を歩いていく青年の姿。アロハシャツに青い髪に紅い目で釣竿を担いでいる。ランサーと呼ばれていた英霊やよね?更には
「ふむ。悪くない、そうだろう?エルキドゥ?」
花束を抱えて歩きながら隣の少年……いや少女に話しかけている少年の姿が見える
「薔薇を選べなかったのは何故だい?」
「恥ずかしいに決まっている」
「へタレ」
そんな会話をしている金髪の青年と緑の髪をした少女の姿が見える。あの2人も英霊のギルガメッシュとエルキドゥの筈だ。まぁ面識があるわけではなく、魔力もないので外見が似ているだけだろうけど……かなり驚いた……私は机の上のケーキを口に運びながら
「帰れるんかな?私達」
ここまで複雑に世界同士が融合していると、そう簡単には脱出できないような気がする。そもそもなのはちゃんとかが迎えにこれるかどうかでさえ怪しい。兄ちゃんは兄ちゃんで
「さぁな……なるようになるだろう」
もう半分くらい諦めの境地に達していた。普段平行世界に飛ばされる事になれている兄ちゃんでさえもこうなってしまう……もしかして結構不味い状況なのかもしれない。
「どうしたんや。セッテ?」
普段なら絶対口を挟んでくるであろうセッテが黙り込んでいる事が気になりそう尋ねる。セッテは窓の外を見て
「そんなありえない……なんで、どうして?」
なんかやばい感じでぶつぶつと呟いている、何を見たのか気になり視線の先を見ると
「ちっ。何で俺が」
「はいはい。文句言わない、買い物くらい手伝えっす」
男になっているセッテとウェンディがいた。私が思わず噴出しそうになると
「参考書も高いな」
書店の紙袋を持って歩いてきた少年を見る。短めの茶色交じりの髪を……一瞬現実逃避しかけたが
「はうあ!?」
ちょうど窓の外をこの世界の私が通っていた。私よりも背が高くがっしりとした体格だったが、間違いなく私だと判った。そして男になっていて、セッテと揃って肩を深く落とすのだった。兄ちゃんはぼそりと
「平行世界の私は女なのか?」
とんでもなく嫌そうな顔をしてそう呟いていた。自分の境遇と重ね見て嫌な予感がしたのだろう、私と兄ちゃんとセッテは精神的ダメージが回復するまで無言で過ごし、店を出てからデバイスで連絡を取ろうとしたのだが、取れないことに絶望し
「ホテルにでも泊まるしかないか」
「やね……帰れるのかな?本当に」
行く末に不安しか感じず、私達は深く溜息を吐いたのだった……
いつもの帽子と日傘姿で完全防備体制の龍花と散歩している時。ふと思い出した
(あの3人組はどうしたんだろうか?)
昼少し過ぎくらいにすれ違った、私と同じ茶髪に快活そうな笑みを浮かべた女性と肩を落としている桃色の髪の女性。そして
(あの男がどうも気になるな)
夏場だというのに丈の長い黒いコートの黒の上下。そして腰元まで届くような長い銀髪。更にサングラスと目立つ容姿だったのだが、誰にも咎められる事無く歩みを進めていた。それがどうも気になった、普通は不審者として通報されてもおかしくない格好だったとおもうのだが
「おにーちゃん?どうかした?」
小首を傾げながら尋ねてくる龍花に何でもないと返事を返し、いつもの散歩道を歩いていると十字路の後ろの方から
「よっ、はやて。龍花」
「やっほー♪」
「シロ君。凜さんこんにちわ」
士郎と凜が並んで歩いてくる。士郎はいつもとおりだが凜は多少お洒落をしている。士郎だけが気付いてなかったパターンだろう
「どこかにお出かけしていたんですか?」
いつもと違い服装を見て龍花がそう尋ねると凜はええっと返事を返しながら
「ええ。士郎と映画を見に行っていたのよ。中々面白かったわよ?」
がっかりしていると思いきや上機嫌の凜を見ながら士郎に近づく
(映画を見に行っていたのか?その格好で?)
可愛らしいというか凜の雰囲気を生かす赤系統のブラウスとスカート姿の凜に対して、士郎はTシャツとジーンズ。明らかに吊り合ってないだろうと思っていると
(着替えていくとイリヤとクロエがうるさいからな。こうしたんだよ)
つまりは邪魔されないようにする処置だったと……士郎も少し賢くなったという所か。楽しそうに話をしている龍花と凜を見て、近づくのも悪いなと思い士郎と話をしていると
キキーッ!!!!
強烈なブレーキ音が聞こえて振り返るとスリップした車が龍花と凜の方に滑って来ていた。いや車とは言えない軽トラックがスリップしながら2人の方に滑っていく
「龍花!」
「遠坂!」
私と士郎の声が重なり、そして凜もブレーキ音に気付き、呆けている龍花の手を引くが間に合わない。私は慌てて2人の方に走り出し、届かないと判っているのに手を伸ばした瞬間
「ふんっ!!」
黒い影が龍花と凜の前に現れたと思った瞬間。車と車の正面衝突の様な音が響き車は止まっていた
「龍花!」
「遠坂!」
私と士郎は龍花と凜の方に走り涙目の2人が無事である事に安堵し、2人を助けてくれた人のほうを向く。その人は昼間に見た黒いコートの青年だった。その前には正面が陥没した軽トラ。そして……
「ふむ。折れたな……まぁ仕方ない。車に拳を叩き込めばこうなるか」
左腕が明後日の方向を向いている。その事に私達が絶句していると黒いコートの青年は肘の辺りから曲がっている左腕を見て
「じゃまだな」
何事もないように言ったその青年は右腕で左腕を掴み。そして……
「ふんっ!!!」
勢い良く肩から引き千切った……トサッと言う軽い音が2つ響く。言うまでも無く凜と龍花が気絶し倒れこんだ音だ。
「龍花!?大丈夫か!?」
「遠坂!?おい!遠坂!?」
完全に目を回している2人に焦り声を掛けるが、完全に目を回していて目覚める気配がない
「無事そうで何より。じゃあ」
笑って歩き去ろうとする黒いコートの青年に私と士郎は声を揃えて
「「ちょっと待てええ!」」
「なにか?」
引き千切った腕を肩に担ぎ歩いていこうとする男を呼び止める。良く見ると引き千切ったのは義手のようで配線が見えている
「大丈夫なのか?腕」
士郎が青い顔で尋ねると黒いコートの青年はからからと笑いながら
「ん?問題「ドアホーッ!!!!」ほぐうっ!?!?」
勢いよく走ってきた女性2人の飛び蹴りを喰らい吹っ飛ばされる青年。いい角度で電柱にぶつかった青年はそのまま動かなくなり、着地した女性は昼間に見た2人だった
「何してるねん!死ぬで!」
「何を考えておられるのですか!?」
がくんがくんと揺さぶられている青年はどう見ても気絶している。救急車とパトカーのサイレンの音を聞きながら立ち上がり
「あの、お連れの方は気絶しているようですし、とりあえず何処かに移動しませんか?」
妹の命の恩人をはい、さようならと言って別れることも出来ず。そしてお礼も言いたいということもあるし、なにより気絶している青年をそのままにしておけないと思いそう声を掛け。警察の事情聴取の後近くの士郎の家へと向かう事にしたのだが
「大丈夫なんですか?」
「ん?全然平気」
「問題ありません」
2人の美女に両サイドから捕まれ、ずりずりと引きずられてくる青年の姿はなんと言うかとてもシュールだった。私と士郎は噴出さないように注意しながら、それぞれ凜と龍花を背負い士郎の家へと足を向けたのだった……
第83話に続く
お姫様に夜天クオリティがプラスされます。ヤンデレはまぁ量産されないように気をつけたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします