第85話
俺とシグナムははやてに言われて、今日のバーベキューの為の買出しに来ていたのだが……
「しかし龍花を助けた人が、龍花と同じ目の色と髪の色をしてるなんてな」
龍花とはやてに聞いたが、最初はとてもではないが信じられなかった。銀髪は居てもおかしくないが、あの目の色はそうそうあるものじゃないからだ
「それに苗字も同じ八神。偶然にしては出来すぎているような気がするな」
確かにな。特にその八神龍也って言う人の妹の名前がはやて。関西弁らしいけど、何と言う偶然なんだろうか
「もしかしたら龍花の本当の家族とか?」
龍花は養子だから、その可能性を考え俺が口を開こうとすると
「いや、それはないな。私は捨て子だったしな」
突然聞こえてきた声に振り返るとそこには
「やっ、奇遇だな」
長い銀髪を首の後ろで束ねた、サングラスの青年が居た。風に揺れる左袖を見て
「八神龍也さんですか?」
シグナムがそう尋ねる。龍花とはやてに聞いた容姿のそっくりの青年は
「そうだよ。確か……ヴィータとシグナムであってたかな?聞いた話なので間違ってると悪いんだがね?」
にこにこと笑う龍也に頷くと、それは結構と楽しそうに笑いながら
「近くのスーパーに行きたいんだ。見た所君達も買い物のようだし、ご一緒してもいいかな?」
そう笑う龍也に俺とシグナムは何も言うことが出来ず、頷く事しかできないのだった。そのころ双子館のはやてとセッテは
『少し買い物に行ってきます、龍也。 夕方までには戻ります』
「なにしてるんやー!兄ちゃんは!?」
「ええい!探しに行きますよ!狸!」
「狸言うな!ストーカー!!!」
そんな喧嘩をしながら、龍也を探して双子館を後にしていたのだった……
それにしても面白い物があるものだな。平行世界に来る事は多いが、まさか男になっているヴィータとシグナムを見ることになるとは……いやいや、人生と言うのは本当に面白いな
「えーと野菜はトマトときゅうりと……」
メモを手に野菜を見ているシグナム。トマトに手を伸ばすシグナムの腕を掴む
「え?な、なんですか?」
おっかなびっくりしているシグナム。私はトマトを見て
「それは鮮度が悪い。野菜選びはしたことがないのか?」
シグナムが選ぼうとしたのはへたが萎びていて、全体的に角ばっている。これは鮮度が悪い証拠なんだと説明しながら
「こういうトマトが良いんだ。ヘタがぴんとしていて、ずっしりと重い」
「おっ本当だ。重い」
驚いた表情をしている。ヴィータを見ながら私はやれやれと肩を竦めながら、シグナムが手にしていたメモを取り上げて
「な、なにを?」
困惑しているシグナムに笑い返しながら、メモを見ながら
「またとんでもない物を選びそうだからな。私の買い物も切嗣さんの所に行くんだ、一緒に買い物して行こうか?この腕だしな。荷物を持ってくれるとありがたい」
まぁ別に右腕だけでも持てるんだけどなと思いながら、折角シグナムとヴィータが居るんだから2人に持って貰えばいいかと思いながら言うと
「判った。じゃあ良いのを選んでくれよ」
「よろしくお願いします」
ヴィータとシグナムの言葉に頷き、メモを見て
「じゃあ最初はサラダ用の野菜だな。このまま選んでいくか」
きゅうりにキャベツ、それに珍しい所でクレソンの文字がある。きっとこれを書いた人物は料理が好きなんだろうなあと思いながら、野菜売り場を歩くのだった
「ふむ。これはいいなカゴ」
スーパーなのに驚くほど鮮度がよく、そして種類が豊富だ。良い野菜をどんどんヴィータとシグナムの手にしているカゴのほり込んでいると
「あの?気にならないんですか?」
「なにが?お。これはいい、カルパッチョに仕えるな」
赤タマネギを5つほど手に取りカゴに入れていると、ヴィータが
「いや、すっげえ目立ってるんだが?」
「ん?気にするな。慣れろ」
周囲の視線が私達に集中しているの気付き、そう言うとヴィータとシグナムは声を揃えて
「「慣れるかあ!?」」
「あっはは。若いなあ。私はそう言うのは全然気にならないよ。もう慣れてるからな」
隻腕と銀髪のせいで目立つのは仕方ないし、シグナムとヴィータは私の世界では美少女なだけあって、この世界では美少年といえるだけの容姿をして居る目立つのは仕方ない事だよ?と説明しながら
「次は鮮魚コーナーに行こうか。カルパッチョに良い魚を選ばないといけないからな」
野菜を手にしている2人を見ながら、私は鮮魚コーナーに向かって歩き出しのだった。ヴィータとシグナムは歩いていく龍也の背中を見て
「なんだろうな。あのマイペースは龍花にとても似ていると思う」
「俺もだ、しかも不思議と逆らおうと思えないのが気になる」
2人は首を傾げながら龍也の後を追いかけて歩き出したのだった。そこで2人が見たのは
「これは鮮度が悪いな。大将」
「見る目有るな。若いの、何を探してるんだ?」
「カルパッチョに合う魚を探している」
「……なるほど。ならこれはどうだ?」
鮮魚コーナーの大将と仲良く話している龍也を見て、2人は更に深く溜息を吐くのだった……
キリツグさんに今日バーベーキューをするからおいでと電話を頂き、キリツグさんの家に向かっていた。お父様とお母様は少し幼児があるそうなので遅れて来るそうだ。私は後ろを振り返り
「モードレッド遅れていますよ?早く歩きなさい」
私とネロそして白野の歩幅よりも数段遅れているモードレッドにそう言う
「む、無理言うなあ。俺1人に荷物を持たせて」
お母様とお父様に持って行くように言われた。お酒と食材を持たせているモードレッドが半泣きで言う
「あのアルトリアさん?もう少し持ってあげたら?」
「ハクノの心遣いはありがたいですが、心配無用です。あれもモードレッドの修行ですから」
あの肝試しでの体たらく。あのへタレ具合は正直目にあまる。これからはもう少し厳しくして行こうと決めたのだ
「まぁ。頑張れモードレッド」
「姉さぁん……」
情けない声でネロを呼ぶモードレッド。ここら辺で1発殴っておくべきかと思っていると
「おや?あの2人は?」
私の視線の先には茶髪の女性と桃色の髪の女性が並んで歩いていたのだが
「死ね」
「そっちが死ね。狸」
「ストーカーの地雷女」
互いに互いを罵り合っていた2人は同時に立ち止まり
「「殺す!!!」」
同時に拳を繰り出し、喧嘩を始めるのだが、その勢いは喧嘩と呼べるものではなく。言葉の通り殺そうとしているようにしか見えなかった。一体どういう……
「たわけえ!!!」
「「!!!」」
スパパーン!!!と言う音が響く、すると女性達の前にはハリセンを担いだ隻腕の男性が居た
「全然見えなかった」
「うむ。余もだ」
あの男性の動きは相当早かった。何が起こったのかぜんぜん判らず目を擦っていると
「うーでも、ほら兄ちゃん」
「言い訳しない!それと道の真ん中で喧嘩しない!」
「「でも……」」
「でもはない!喧嘩をするな!」
ハリセンを担いだまま説教をしている男性を見ていると、漸く追いついてきたモードレッドがその男性を見て
「姉貴。あの人ってリューカを助けれくれた人じゃないのか?」
そう言われて思いだす、リューカと凜が先日交通事故に合いかけたときに助けれくれた男性の事を。メールで見た容姿と完全に一致したから
「ふむ?これは騒がしてすまないね。この2人はよく喧嘩するんだよ」
頭を押さえている女性を見てにこやかに笑う男性はモードレッドを見て
「そんなに持っては大変だろう。どれ手伝おう、モードレッド」
名前を知っている事に驚いていると男性は笑いながら
「切嗣さんに聞いてね、そろそろ来る頃だろうって言うから見に来たんだよ」
「いや、でも隻腕の人に「大丈夫大丈夫」
モードレッドから荷物を半分奪い取るように手にした男性は
「八神龍也だ。好きに呼んでくれれば良い、では行こうか?」
そう笑うタツヤはさっさと歩き出してしまう。私達は少し呆然としていたが直ぐに我に帰る
「中々凄い奴だ。あそこまでの人物は中々見たことがないぞ」
ネロがぼそりと呟く。それは私も感じていた、圧倒的なまでのカリスマとでも言うのだろうか?そこにいるだけで空間を支配する、そんな感じがしていた。ハクノも
「なんか凄い人って言うのは判ったよ」
「……父さんみたいな人って言うのは居るものなんだな」
感心したように呟くモードレッド。確かにタツヤは仕事をする時のお父様に似ているような気がする
「お前のせいで兄ちゃんに怒られたやないか!」
「はっ!人のせいにするんですね!さいて「どすッ!!!」
アスファルトに突き刺さるハリセン。ぎぎぎっとブリキの玩具のように振り返った2人の視線の先には
『喧嘩するな』
目でそう言っているタツヤの姿。その威圧感は凄まじく思わず身構えてしまうレベルだった。2人はだらだらと冷や汗を流して、仲良し!と言いたげに肩を組んだ。それを見たタツヤはゆっくりと歩き出す
「はあああ……危ない所やった」
「本当ですね」
ふーと冷や汗を拭った2人は私達を見て
「八神はやてや。よろしゅう」
「セッテ・スカリエッテイ」
愛想のいいハヤテと無愛想なセッテ。2人とも同じ学校の生徒と同じ名前だった事に少し驚きながら
「アルトリア・セイバーです。こっちは姉の」
「ネロ・セイバーだ。よろしく、これは余の彼氏の「岸波白野」だ」
「どうも初めまして」
「そこでへたってるのが愚弟のモードレッドです」
「姉貴!俺いい加減に泣くぞ!?」
「知りません」
へタレで臆病なモードレッドはやはり1から鍛えなおすべきだと思う。厳しくする事は既に決定しているのでモードレッドの言葉を無視していると
「面白い連中やなぁ。まぁええや、いっしょに行こうか?」
にこにこと笑うハヤテ。ここはハヤテと違うところですね。しかし同じ名前だと混乱するのでさんを付けて呼びましょう。
「……いきましょう」
「あいさ。いこか」
無口で無愛想なセッテさんの目力がとんでもない、なんと言えばいいのか判らないが、とにかく凄い圧力だ。とは言え私達に興味が無いようでさっさと歩いていってしまう。その歩幅は競歩のように早かったですが
「セッテはかなり気難しいよ。ほら行こうか?」
にこにこと笑うハヤテさんの後ろをついて歩いていると
「あ、悪いんやけど私。切嗣さんの家知らんねん。場所教えてくれへん?」
あはははと笑うハヤテさんに思わず笑みがこぼれる。愛想がいいからか、何と言うかすぐに周囲の光景に溶け込める人だなと思いながら
「こっちです。いきましょう。ハヤテさん」
「おおきに♪」
にこにこと笑うハヤテさんを連れて私達はキリツグさんの家へと向かったのだった……私ハヤテさんの隣を歩きながら
(彼女のような愛想が私にもあれば)
にこにことしている彼女の雰囲気はそれだけで場を和ませる。私も彼女のような愛想があればと思ってしまった。だが後に知る事になるこの愛想は俗に言う猫かぶりと言うやつで、その本質はとんでもなく、じゃあくで恐ろしい人だということを……
第86話に続く
次回は食事回になります。ほのぼのとした感じに、夜天特有のヤンデレを混ぜたいと思います。カオスになるといいですね
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします