第92話
お弁当を食べ終えてメドゥーサ先生が出してくれたケーキを食べている最中に電話がなり、ここに来ると言っていた陽花ちゃん達はすぐに教材準備室に来た。
「あら。早かったのね、今椅子を出すから少し待っててくれるかしら?」
陽花ちゃん達を見ても嫌な顔をせずに椅子を用意してくれるメディア先生。やっぱりいい先生だと思いながらチーズケーキを頬張っていると
「龍花?そのケーキどうしたの?」
雷花ちゃんが私の手元を見て尋ねてくる。私の手元にはチーズケーキとジュースの入った紙コップが用意されている
「メドゥーサ先生がくれたんです。美味しいです」
滅多に買う事のできない高級パティスリーのチーズケーキだけあって物凄く美味しい。この味は家では出せない味だ
「いいなー……」
「ライカも食べますか?大分買ってきてあるので全員出せますよ?」
メドゥーサ先生の言葉に嬉しそうに笑いながら雷花ちゃんは
「食べます!お願いします」
その嬉しそうな顔を見たメドゥーサ先生は少し待ってください。と声をかけて奥の部屋に向かい、入れ替わりでメディア先生が来て
「パイプ椅子しかないけどいいかしら?こんなに人数が来たの初めてで」
パイプ椅子を並べるメディア先生を見て驚いている表情をしている、王花ちゃん達に首を傾げながら
「はい、あーん」
「あーん」
物欲しそうに見ていた雷花ちゃんの口にチーズケーキを入れてあげるのだった……
私の部屋になっている教材準備室にここまで生徒が尋ねてきてくれたことは今までにあっただろうか?と少し考える。考えるまでもなく無い
(これもリューカちゃんのおかげね)
私の噂は知っている。ショタ好きとかレズの趣味があるとか、散々な言われようはしているが私自身はノーマル。いたって普通だ……ただ少し可愛い妹に憧れる事と可愛らしい服を作る趣味があるだけで……
(全くろくでもない男ですわね。あいつは)
私が日本に来たときにナンパしてきた名も知らない馬鹿。顔だけは良かったが、性格最低でナンパを断ったら人のあることない事をすき放題に言いふらしてくれた。それが今の私の孤立状態に繋がっているのかもしれない
(今度殺す。社会的に)
色々と調べたのだが、あの男は人様にいえないことを山ほどしている、それをリークして社会的に抹殺してやると心に決めながら
「こうして会いに来てくれて嬉しいわ。ヤガミオウカ・ライカ・セイカ・ヨウカにイリヤとクロエだったわよね?」
1年でかなり有名な女子の集団だ。私も数回見たことはあるのだが、一応確認で尋ねると
「正解ですよ~やっぱり先生だから担当じゃない学園の生徒のことも覚えているんですね」
凄いですと言ってくれるリューカちゃん。この子の純粋な瞳を見ていると本当にこんな可愛い妹が欲しくなる
「当然よ。私は2年に固定だからね。進級したら教え子になる生徒のことは覚えているわ」
基本的にクラス担当の教師が変わることはないのだが、各科目の担当教諭はその学年ごとに変わる。2年を担当する教師はずっと2年の担当教諭なのだ。つまり2年の担当教諭は1年の生徒の情報もある程度知っているのだ
「それは中々に凄い事じゃないの?全員の事を覚えているの?」
クロエさんがそう尋ねてくる。この子は転入組みだから私のことは知らないのか普通に接してくれる。あのうわさのせいで女子生徒は私を怖がるし、ただ普通に課題の提出が遅れてるから教材室に来るように言っただけなのに泣き出すし……
(この噂。本当に何とかしたいわね)
誰かこの噂を訂正してくれる存在がいると良いんだけどと思いながら
「勿論よ。英語担当だから英語だけどね。それよりジュース飲む?それとも紅茶?」
用意してあったジュースのペットボトルを見ながらクロエに尋ねると、私を怪訝そうに見ていたオウカさんとイリヤさんが
「こんなことを言うのは失礼だと判っているが……噂と随分違うのだな」
オウカさんの言いたいことは判っている。この学園ないのでの私の噂の事だろう
「あれはね……しつこいストーカーの嫌がらせなのよ。1部否定できない事もあるけどね?」
私の言葉に首を傾げながらリューカちゃんは
「噂?」
リューカちゃんも途中からの転入組みだから知らないのね。私は苦笑しながら
「私が小さい男の子とか女の子が好きとか、まぁそう言う私の事を誤解させるような噂よ。だから私ってあんまり生徒の受けが良くないのよね。本当にどうしようかしら、メドゥーサ」
聞かれるたびに訂正しているのだけど、中々望むような成果は出ていない。多感の時期の高校生だからか、余計に噂には敏感なようだ……これが私のここ最近の悩みの種になっている
「ええ、由々しき自体だとは思っているのですが、改善案がないのも問題ですよね」
私の事を詳しく知っている教師の同僚は違うのだと訂正してくれているのが、中々上手く行かない。人の噂は75日と言うが、それでもかなり苦しい状況になっている。こうして入ったばかりの生徒でさえも知っているのだから酷い話だ
「むう、それは良くないですね!人を噂で判断するなんて酷い話です!」
ぷんぷんっと言う擬音を出してそうな表情で怒りを露にする。こういう仕草も可愛いわね、子供っぽいといえばいいのかしら?
「良くないと思いますよね!イリヤちゃん!王花ちゃん!」
おおう……困ってる。物凄く困ってる顔をしているわ、その噂を信じていたサイドだからなんて帰せば良いのか物凄く困ってるわ
「イリヤちゃん?王花ちゃん?まさかその噂を信じていたなんていいませんよね?」
こ、怖いわ!?笑顔なのになんて圧力なの!?ゴゴゴッと言う擬音が聞こえて来そうな笑顔だ。おろおろしているオウカさんとイリヤさんに助け舟を出したのはリューカちゃんと同じオーラを纏うヨウカちゃんだった
「そんなわけないよー♪イリヤちゃんも王花ちゃんも噂で人のことなんて判断しないよ」
にっこりと笑いながら言うヨウカちゃんだけど眼が笑ってない。その笑顔はやはり怖い
(陽花怒ってるね。これは)
(ですね、陽花は基本怒りませんが1度怒ると怖いですからね)
ひそひそ話をしているライカさんとセイカさん。どうやらヨウカちゃんも怒ると怖い人種らしい
「あのさ?そんな話をする前に。その噂を如何するかの方が重要だと思うんだよね?話はそこからで良いんじゃないかな?」
メドゥーサの買って来たモンブランを食べながら呟くクロエさん。その一言で冷静になったらしい、リューカちゃんとヨウカちゃんは
「では、ここからはメディア先生の悪い噂を何とかしようプロジェクトを始めます」
えっへんと言う感じで胸を張りながら言うリューカちゃんとその隣で嬉しそうに笑いながらヨウカちゃんが
「始めまーす♪」
私やオウカちゃんの気まずそうな顔は完全に無視して、リューカちゃんとヨウカちゃんプロデュースの私の悪い噂を消してしまおうと言う作戦の話し合いが始まるのだった……結論としてでたのは
「龍花と陽花をメインにするべきだと思いますね」
「うん。龍花と陽花が頑張ってくれればいいんじゃないかな?」
この学園に入ったばかりなのにとんでもないほどに発言力が高い。リューカちゃんとヨウカちゃんが頑張るという方向性になった。彼女の兄のはやてやヴィータ・シグナム。そして問題児ではあるが、彼女の言うことは聞くギルガメッシュとエルキドゥの頭脳はコンビも協力してくれるそうだが
(それで大丈夫なのかしら?)
もうすぐ授業と言うことで慌てた様子で出て行くリューカちゃん達の背中を見ながらそんな事を考える。たぶらかしたとかで余計に悪評が増えるような気がするのは気のせいだろうか?特にあの過保護な兄貴軍団とストーカー予備軍の行動は読めないので不安になる
「私は大丈夫だと思いますけどね、リューカとヨウカは子供っぽいけど、そこまで馬鹿ではないですから」
まぁ確かに子供って訳じゃないんだけど、純粋すぎると私は思う……その純粋さが人をひきつけるので、それもリューカちゃんの魅力なんだろうけどね……
「そうだと良いんだけどねえ……」
若干の不安を感じながら私はお茶会の後片付けを始めるのだった。そして私の危惧した結果にはならず、僅か数日の間に私の悪い噂は全て消滅した、代わりにたまに準備室でお茶会をする事になるのだが、今までの事を考えればそんな事はどうでも良いと思える
(発言力凄すぎでしょう。リューカちゃん)
可愛らしいだけではなく、その発言力の高さに私とメドゥーサが絶句したのは言うまでもない。もし彼女が生徒会長に立候補したら間違いなく当選間違いなしだと思ったのはきっと私だけではない筈だ……なお、まったくの余談だが、この時渡す予定だった龍花の服を渡す事が出来なかったことに気付いたメディアは後でヴィータとシグナムを呼び出し、2人に服を持ち帰らせたのだった……
「……マジか……何と言うことだ」
その日私は家族から届いた手紙を見て絶句した。私は自分の進路のために親元を離れ海鳴の街で暮らしているのだが、まさか……まさか……
「姉さんが来るなんて……私はもう終わりだ」
私には2人の姉がいる、1人は実姉のアリシア・テスタロッサ。もう1人はクロノ・ハラオウン……これは母さんが懇意にしている人の娘なのだが……何と言うか、厳しい。物凄く厳しい人なのだ、言うならばセイバーに近いかもしれない……アリシア姉さんなら良い、少し天然が入っているので心配になるが、優しい良い人だからだ。だがクロノは駄目だ、あの人は厳しい。とても厳しい
【近い内に会いに行きます。生活態度・テストの点数・友人関係を判断します。駄目ならば転校です】
手紙に書いてあるその一文。あの人はやるといったらやる。私の意見なんて聞いてもくれないだろう……それは今までの経験で判っている。勉強にしろ、運動にしろ。私に常に高いレベルを要求し続けたのだから……最近何の音沙汰もなく油断していたらこの有様……
「あああ……どうしろって言うんだ……私が何をしたって言うんだ」
テストの成績はちゃんと上位をずっと維持しているし、それにちゃんとアルバイトだってしてある程度は学費も自分で払っているというのに……そして何よりも俺が恐ろしいのは近いうちと書いてあること、手紙の消印は3日前、何時来るか判らないという恐怖
「電話してみるかな……」
アリシア姉さんなら教えてくれるかもしれない。もしくはリンデイさんか母さんでも教えてくれる可能性がある。僅かでも身構えることが出来るのならそのほうが良い、私はそう判断して携帯をとりアリシア姉さんに電話したのだが結果は
【ここ2・3日会ってないから判らないよ?】
と言う絶望的な言葉だけだった。大学生で既に単位を取っているから好きに行動しているというのは聞いた。その言葉に心底恐怖を覚えたが、いつまでも悩んでいる余裕はない
「とりあえず、アルバイトの遅れると不味いから行くとするか」
とりあえず今は何時来るかもしれないクロノ姉さんの事は無視する。怯えていたら精神衛生上良くないからだ……俺はバイトの荷物を入れてある鞄を背負ってアパートを後にしたのだった。近い内に来るとは言っていたが、いくらなんでも2~3日は余裕があるだろうから、その間に直哉かはやてに相談に乗ってもらえばいいと気楽に思っていた、だが俺のこの考えは甘い、甘すぎたのだった……何故ならクロノ・ハラオウンは既に海鳴の街にいて熱心にフェイトの身辺を調べていたのだから……
「ふむ。ここがフェイトのアルバイト先の本屋。アパートはここから10分……」
ぶつぶつと呟きながら手にしている手帳に凄い勢いで何かをメモしている
「明るいうちに学校も見に行こう」
短めの黒い髪と女性の割には高い身長。そしてその雰囲気から男性のようにも思えるが、僅かだが胸があるので女性だと判る。
旅行鞄をガラガラと引きずりながら彼女。クロノはあたりと手にしている手帳を見ながら
「ホテルはこっちの方だから、学校を見てからでいいな」
時間は有益。一切の無駄を省くという性格をしているクロノは女性なのに一切の飾り気のない、黒一色の服装をしていた。自分が女性としての魅力に劣る事を知っているので、あえて男装に近い格好をしているのだ。そのせいもあり、切れ長の目とモデルのような長身の割に、周囲の男性は見惚れはするが、声をかけてこようとはしなかった。これが彼女の今までの風景だったのだが
「はうわ!?」
「あいたあ!?」
突然後頭部に走った激痛に振り返るとそこには銀髪の少女が転んでいて、彼女が落としたであろうペットボトルが足元に落ちていた
……それを拾いながらクロノは
「大丈夫?」
「うう……はい、大丈夫です」
他人にも自分にも厳しいクロノと八神龍花の出会い、これがクロノの今までの価値観を全て粉砕するの事になるのだが、今のクロノは当然ながらそんな事を知るよしもなかったのだった……
第93話に続く
はい、またTSキャラです。今度はクロノをTSさせて見ました。イメージ的には千冬のちょっとマイルド版?見たいな感じですね
次回はクロノと龍花の視点から始めてみようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします