この素晴らしい駄女神に祝福を!   作:イチセ

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この駄女神と素直じゃない男に祝福を!

 アクアが昨日、顔も名前も知らない男から告白された。

 その男いわく、いわゆる一目惚れだったそうで……

 町でアクアを見掛けて綺麗な人だと思い色々と調べていたら、この町では有名な冒険者でよくギルドの酒場にいる人だと分かり、そしてギルドで一緒に話しているうちに楽しそうに笑う姿に一目惚れした、ということだ。

 どこの少女漫画だよとは思うが、まったく現実なので不思議なものだ。

 そして今、俺はその告白された本人と二人きりで屋敷にいる。

 「それで、結局どうすんだよ。」

 「どうって……? いったい何の話?」

 俺が作った昼飯を一心不乱に美味しそうに食べるアクア。

 こいつ、昨日相手が物凄い勢いで告白してきたことを、忘れてるんじゃないんだろうな……

 「だからお前が告白されたやつのことだよ。お前昨日『返事は明日とかでもいいかしら?』とか言ってただろ……」

 「ああ、あの事ね! ご飯が美味しかったからすっかり忘れてたわ!」

 忘れてたのかよ、というか忘れるなよ。

 結局、昨日のアクアはその場で返事をすることもなく、戸惑ったのか明日答えるわとだけ言った。

 てっきり俺の予想では、アクアはその場でビシッと断ると思っていたんだが……

 アクアの返事が明日だという事実が気になって、昨日の夜からあまり寝ることも出来ていない。

 返事に答える気がなければ普通はその場で断るのに、考えさせてと言った事実が余計に俺を悩ませる。

 もしかしてこのままアクアはあの男と付き合うのではないか、そんなことを考えてしまう。

 自分でも、アクアのことでこんなに悩むとはまったく考えてもいなかった。

 「一つ言っておくが、俺たちのことを気にして悩んでるんだったら、そんなこと気にするなよ。俺はお前が好きなようにするのが一番いいと思う……」

 言葉ではそんなことをいいながらも、もしもの時を考えると、さらに自分の気持ちが沈んでいくのが分かる。

 「そう? まぁ、私はいつも自由にしてるとは思うけど……ねぇねぇカズマさん、こういう時って、私はどうしたらいいのかしら?」

 アクアがお皿に残った最後の一口を美味しそうに平らげてから、気軽にそんなことを聞いてくる。

 「どうしたらってそりゃ、お前の好きなようにするしかないんじゃないのか。別に俺にお前を止める権利なんてないし、さっきも言ったがアクアの好きなようにするのが一番だと俺は思う」

 心のどこかでもしアクアが離れていったら、そんなことを考えつつも、アクアを心配させまいと出来るだけいつも通りに返事をする。

 「まぁ、それもそうよねー! 男の子のカズマさんの意見も聞きたかったんですけど……それじゃ、カズマさんの言う通り好きなように返事をするわ!」

 やっぱりアクアは昨日の男の思いに答えるのだろうか。

 「それにしても昨日は驚いちゃったわー! まさかいきなりあんなこと言われちゃうとは思ってもみなかったし……いつもカズマさんや皆の日頃の乱暴な扱いを受けてて忘れちゃったけど、やっぱり女神である私だと一目惚れする人もそれはいるわよね!」

 「一人の男に告白されたからってあんまり調子に乗るなって……」

 得意げになっているアクアの頭を、手でコツンと軽く叩く。

 まぁ、実際こいつが可愛いのかどうかって言われると可愛いんだろう。

 はたから見ればかわいくて綺麗で、そして何よりも楽しそうに笑う女の子。

 俺もアクアの始めの印象は、確かそんな感じだった覚えがある。

 何よりもすぐ借金こさえてくるとことか、面倒事をすぐ持ってくるとこが無ければ、もっとモテてもいいとは思うんだがな……

 そういうことを除いて改めて考えてみると、やはり現実では、アクアは俺の手の届かない存在なのかも知れない。

 たまたま転生したときの担当がアクアで、そこからなし崩しに一緒に過ごすようになって。

 もしあの時転生した担当者がエリス様だったら、俺はアクアを連れていくこともなく、今頃チート武器を持って無双していたのかも知れない。

 前まではそんなことを夢見ていたが、今となってはやっぱりアクアを選んで良かったとは思う。

 だからアクアが俺たちから離れてしまうのは、やっぱり少し嫌だ。

 出来るならこれからも、俺はこのままの四人でずっといたい。

 「それじゃちょっと呼ばれてるから出掛けてくるわね! カズマさんも私がいないからって、寂しくて泣いちゃったりしないでね! あっ、あれ、どうしたのカズマさん……」

 出掛けようとするアクアの腕を、つい無意識に引っ張ってしまった。

 何でこんなことをしているんだと思いながらも、自分の気持ちが言葉になって溢れだしてしまう。

 「な、なぁアクア……やっぱり今じゃないとダメか……付き合うとかもう一回考え直さないか……?」

 「はっ、はぁ……!? 何言って……!?」

 「俺はアクアが好きなようにするのが一番良いと思うっていうのは変わらない……けどアクアが俺から離れるのを考えたら怖くなって……俺はこれからもアクアが俺の側にいて欲しい……」

 自分勝手なわがままを言う俺は、なんて情けない男なんだろう。

 それでも、そんなことを気にするよりも、アクアに離れて欲しくないという気持ちの方が勝ってしまった。

 一瞬の沈黙のあと、アクアの方をチラリと見る。

 俺のわがままに最初は戸惑った様子のアクアだったが、その後どこか嬉しそうな、そしてからかうかのような笑顔を俺に浮かべて、

 「カズマさんってばバカね……。ふふっ、私がそんな簡単にカズマさんから離れる訳ないじゃない。今からは断りにいこうとしてたのよ」

 えっ、今なんて……

 「だいたいなんでそんな一目惚れして、いきなり告白してきた人と私が付き合うって話になってるのよ。それを言うなら、そんな人よりもカズマさんと付き合う方がよっぽどあり得るわよ」

 あっ、あれれー、そういえばアクアは付き合うとか何にも言ってなかったような……

 「けどそんな泣きそうな顔で頼まれたら仕方がないわねー! 何だっけ『俺はこれからもアクアが側にいて欲しい』だっけ。ふふっ、カズマにもそんな素直な面があるのね! 大丈夫よ、私はこれからもずっとカズマさんの側にいてあげるから」

 アクアが俺の顔をニヤニヤと見ながら、俺のことをからかってくる。

 というかさっきの俺、相当恥ずかしいことを言ってたんじゃないか……

 「もう、カズマさんってばそんな面白可笑しい顔で固まってないで何か言いなさいよ。それじゃあ、行ってくるわね。帰ってきたらまたカズマさんの可愛い気持ち、聞かせてね!」

 そう言い残すとアクアがバタバタと屋敷を出ていく音が聞こえていった。

 そんな音を聞きながら、俺は出来るだけの大声で、

 「なああああああ!!!!! めっちゃ恥ずかしいことアクアに言ったあああ!!!!! 誰か俺を殺してくれえええ!!!」

 今さらどうすることも出来ないそんなことを、顔を赤くしながら嘆くのだったーー

 

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