「待ってくれセイバー、あのサーヴァントはまさかっ!?」
「知っているのですかっ!? シロウ」
衛宮士郎は日本人である。
故に、国民的に有名なイリヤスフィールのサーヴァントについて知っていたとしてもおかしくは無かった。
其は週末を肯定する永遠の象徴。
1つの周期の終わりを告げ、新たな周期の始まりを告げる者。
其は終末を否定する停滞の象徴。
年を取る事も無く同じ時を永遠に繰り返す囚われし輪廻の蛇。
「ああ、恐らくは間違いない。
あのサーヴァントの正体は――――――マスオさんだ」
登場人物が殆ど全員、上級の学歴で構築されたエリート世界『サザエさん』の住人。
主役のサザエさんの伴侶である。
自分の名前を言い当てられたサーヴァント、フグ田マスオは大袈裟に動揺する仕草の一つも見せず冷静に言葉を発した。
「シロウ君と言ったね。今日は日曜日かい?」
「いや、金曜日だ」
その質問にどういう意味があるのかは士郎にはさっぱり解らなかった。
その質問の答えは、マスオ自身によって直ぐに明かされることになったが。
「ならば僕は、フグ田マスオではない。
祝福されし安息の日でのみ、僕はフグ田マスオでいられる。
月月火水木金金―――――日曜日以外での僕は、フグ田マスオではない。
あの戦争時代を生き抜いた、フグ田特務陸尉だ。
――――
その気迫は、食えぬ物を食い、飲めぬ物を飲んで生き抜いた餓鬼の様な悍ましさと執着の塊だった。
「戦う前に1つ問おう。セイバー、君には子供はいたのか?」
「……何を言うかと思えば下らない揺さ振りですね。
残念ですが、――――――私に息子は存在しない」
「そうか、では君が愛した者は?
自分が愛していると理解してくれている者は?
そして自分を愛してくれていると信じられる者は?
……即答できない様だね。ならば君に負ける謂れは無い」
セイバーに対して、精神的な嫌がらせとも、ただの気まぐれともとれる質問を送り、
しかし自己完結させてしまったマスオに対し、
セイバーは、マスオが己に勝つ自信があるという必要な部分だけを抜き取り、
ある程度は冷静に、その要因の推測を士郎に尋ねる事にした。
「彼が士郎の想定していた人物だとして、何をしてくるか見当が付きますか?」
「う~ん、サザエさんたちを呼ぶとか?」
士郎としても、そこに明白な答えがある訳でもなかった。
何せ、目の前のサーヴァントがマスオさんである事は見て解っても、
其処からどのような戦闘行動が繰り広げられるかまでの想像がつかないからだ。
だが、士郎の答えはマスオに動きを与えてしまった。
その動きの原動力は怒りに似ていた。
「サザエたちを呼ぶ? それはあり得ない。
彼女達は僕の
愛する家族を狂気の場に連れてこれる筈なんかが無い。
女のサザエだけでなく、内地にいたお義父さんにも理解できはしない。
あの狂気は誰にも理解されないし、誰にも理解させてはいけないんだ。
そんな中で、一人だけこの狂気を理解してくれる――――」
マスオから魔力が爆発的に吹き荒れる。
「何か来るぞっ、セイバーッッ!!」
その士郎の声をかき消す様にマスオから放たれた声、それは――――
「来いっ
マスオの招来に従い彼は来た。
宝具である従兄弟、幼馴染、そして共に狂気を分かち合った戦友。
その名は―――――波野ノリスケ。
彼もまた、バーサーカーのマスオと同様に狂っていた。
巨大なスイカの中から現れては、そのスイカを内側から横一文字に切り裂き、
巨大な質量に負ける事無く、その上半分を持ち上げていた。
まこと恐るべき怪力の持ち主である。
「マスオさん、その状態のマスオさんと遇うのは、
アナゴさんが完全体になる為にマスオさんを吸収しようとした時以来かな?」
「あの時は、サブちゃんの本来の職場の力を借りる事になったねえ。」
いったい、サザエさんが放映されていない日曜日以外の曜日には、どのような事が繰り広げられていたのか?
色々、突っ込みどころは多かったが、マスオはそこから更に宝具を繰り出した。
マスオは大量の宝具を駆使する異色のバーサーカーである。
「『
マスオとノリスケの身体が影の様に、否、影そのものへと変わった。
セイバーは咄嗟に剣を振るったが、影には斬撃は通用しない。
しかし、影からのセイバーの影自身への干渉は出来た様で、
セイバーの影を無理矢理本体から引きはがして、突如現れた黄色い屋根と煙突のあるピンク色の家にセイバーを押し込むと、
その中で暴れるような騒ぎが引き起こされた。
そして、その後、影となったマスオとノリスケだけが家から出てきた後、その家が消滅した。
それと共に、マスオとノリスケは実体化して、セイバーは逆に消滅してしまった。
その後、イリヤスフィールのサーヴァントとして聖杯戦争に勝ち抜いたマスオは、
聖杯そのものに対して、
最終法具
を使用。
聖杯をぱっくりと割った。
性悪な神父に祝福されたであろう、邪悪なタマゴは生まれる事無く、
その中身はマスオによって食べられた。
マスオは、食した後、こう言い残して消えていった。
「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛」
じゃんけんポン。うふふふふふふ。