兵藤一誠に憑依した人柱力   作:ガーディアン

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七十九 白い子猫の追憶

アザゼルのおっちゃんと共に城に戻る道中、少し談笑をしている。

「とりあえず、あいつらはあれで大丈夫だろう」

松田と元浜のことに笑いながら言うアザゼルのおっちゃん。

まぁ、あれぐらいの特訓をこなせないと強くは成れないし、実際俺だってそうだし。

「ところでだ、イッセー」

「何だ?改まって」

急におっちゃんが真剣な顔になる。

「朱乃の事だ。何年か前に世話になったとバラキエルが言っていた。

お前の助けがなければ、妻を失っていたと」

「ああ、そういえば元気にしているか?

とは言ったものの、一日だけだがな」

「ああ、夫婦共に健在だ。だが、家の騒動で俺の施設に移転することになったがな。

だけど、朱乃は学校に行くことを楽しみにしていた。

だが、バラキエルもいつでも守ることができない。

それに、俺たち堕天使も家元からは嫌われているしな。

そこで朱乃はリアスと出会ったんだ。

悪魔になれば、家元からも手出しはできないからな。

まぁ、事情は様々だが、あいつは今も元気に過ごしている。

もし、朱璃を失っていたら、朱乃はどんな絶望に付き纏わされていたか……」

「でも、今は違う。だろ?」

その言葉におっちゃんは苦笑いをした。

「はは…。そうだな。感謝している。

ダチを助けてくれたことを」

「どういたしまして」

 

「それとなんだ、お前は朱乃の事をどう思っている?」

急な質問。いきなりなんだ?

「どうって、どんな意味で?」

「女の意味でだ。朱乃はお前に好意を持っているが、お前はどう答える?」

あー、そのことかぁ……。

「確かに朱乃の姉ちゃんは綺麗で優しい姉ちゃんだってばよ。

けど…。俺は……」

「…?どうしたんだ、黙り込んで」

ふと昔を思い出す。

あの記憶が、まだこびり付いている。

「いや、なんでもない。まぁ一応考えているってばよ」

「そうか。他の女たちもいるが、誰を選ぶんだ?」

「それはノーコメントで。ていうかそれで一回恐ろしい目に会っているし…」

「はは!セラフォルーから求婚を迫られたんだってな。お前も大変だな」

 

こうして少しばかりしゃべって城に戻った。

 

 

 

城に戻った途端、リアスの母ちゃんに少しお話を誘われた。

「どういった用件で?」

「あなたも気にしていると思いますが。あの子、小猫についてです。

ですが、少し踊りましょう」

俺はリアスの母ちゃんに言われるがまま社交ダンス的なものを練習させられた。

意外ときついもんだな……。

練習が終わり、リアスの母ちゃんは椅子に座り、俺は立ちながら休んだ。

そして、小猫ちゃんの話に移る。

「実はあの子には姉がいたんです」

「姉ちゃんが?」

「ええ、昔は姉妹仲がよかったんです。

イッセーさんは知らなかったと思いますが、小猫は猫又の妖怪なのですよ」

「猫又、妖怪類だと何か問題が?」

「その姉妹は貧乏がゆえに生活に苦しんでいました。

猫又は妖術が得意。それを狙った悪魔が、姉に交渉し姉を眷族にして姉妹を手に入れました。

ですが、力に呑まれ、力の暴走により姉は主を殺しはぐれになり、小猫は一人残されました。

実は姉妹は猫又の中でも高位に属する猫魈、仙術を自在に操れる。

しかし、悪魔たちは小猫を受け入れようとはしませんでした。

いずれこの娘も暴走し、悪魔に支障を齎すのではないかと。

ですが、そこに助けを入れたのは…。サーゼクスなのです」

……!それで、無事に助かったんだな。

 

「サーゼクスが監視するとのことで事態は収拾しました。

そして、サーゼクスはリアスに預けたのです。

当時、姉に裏切られ、悪魔たちに責められて、笑顔を無くした小猫を救えるかもしれないと。

小猫の名前ですが、その名前はリアスが付けたのです。

本当の名前は、白音」

白音…か。

 

こうして、俺はこの話を聞き、少し心が悲しかった。

力の暴走、か……。

小猫ちゃんに少し話してみよう。

 

 

 

 

リアスの姉ちゃんに小猫ちゃんと少し話がしたいと頼み、許可を貰った。

小猫ちゃんが休んでいる部屋に入る。

そこにはベットに休んでいる小猫ちゃんと看病をしていた朱乃の姉ちゃんがいた。

小猫ちゃんの姿を見て少し驚いた。

猫耳に尻尾。猫又の姿だ。

少し可愛いと思ってしまったが今は話すことが先決。

「大丈夫?」

「……何しにきたんですか…?」

まだ、不機嫌だな。

「心配しているからな。体調はどう?」

「……………」

何も話さない。

「それと、小猫ちゃんの事情も聞いたよ。

だからと言って、そのことについて話そうとは思っていないよ。

小猫ちゃん、確かに特訓は大事だけど、焦ったら元も子もない。

いつか、体が壊れてしまうよ」

「………強いから……」

……?

「……イッセー先輩は強いからそのようなことがいえるのですッッ!!

……私は、みんなが強くなっているのに、役に立たない……。

《戦車》なのに私が……一番…弱いから……。」

涙を流しながら俺に激昂する。

「……猫又の力は使いたくないです……。

使ったらヒック…。お姉さまと同じようにヒック……。」

力の暴走が怖いんだな。

誰だってそうかもしれない。いや、むしろ使いたくないのは正当かもしれない。

けれど、それを乗り越えてこそ、だな……。

「実はな、俺も昔誰よりも弱かったときが在ったんだ……」

「「「え……?」」」

この言葉に三人は疑った。

一番強いものに、弱かった時期があることに。

「俺の中の尾獣、九尾とまだあんまり話していなかった時期だ。

といっても、6歳ぐらいのときだけどな。

人柱力として、俺が住んでいた里のみんなに嫌われていたんだ。

化け者として、な。忍術もまともに使えなくて、よく馬鹿にされていたっけ。

それに、力の暴走は俺も経験している。

友達が連れて行かれそうなときに、友達を連れ去った相手を憎んだときに、

里が危機に陥ったときに……。

人柱力は精神が崩壊すると、仲良くなっていない尾獣に乗っ取られそうに成るんだ。

もちろん、その暴走は形振り構わず、辺りを壊しまくる。

仲間もろともな……」

「……………」

「でも、力を受け入れたとき。俺は強くなったと実感した。

でも体だけじゃない、心も成長して強くなったんだ。

きっと小猫ちゃんにもいつかその日が来るってばよ。

でも、受け入れるときには勇気が必要だ。

別に今すぐじゃなくてもいい。それは、自分で決めることだからさ」

 

俺は話が済んだため部屋を後にしようとした。

「……勇気…」

小猫ちゃんはその言葉を小さく呟いた。

部屋を出た後、リアスの姉ちゃんも後から出てきた。

「…あなたにも、そんな事があったのね」

歩きながら話す。

「ああ。でも俺は苦しいときも会った。

憎しみに従って殺そうとしたときもあった。

でも、俺は気づいたんだ。憎しみや怒りは何も生み出さない。

それと力がうまく使えないのは、恐怖。

勇気が恐怖に負けているから。でも、さっきも言ったけど、

いつか、勇気は恐怖に打ち勝つ日が来る」

「……ありがとう。小猫に代わってお礼を言うわ」

「別に大した事じゃないけどな…」

 

俺の経験したことが、同じ苦しみを味わっている奴の助けになるなら、

俺は、救い続けたいってばよ。

俺はそのことを胸に納めた。

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