八十七 手作りクッキー
自宅のリビング。
俺は考えことをしている。
アーシアの件についてだ。
数日前にアーシアは若手悪魔であるディオドラに告白された。
返事はいつでも待っていると。
ディオドラはアーシアに助けられた。
恩威があり、感謝があり、アーシアを愛している。
その気持ちで、アーシアに告白したんだろうな。
だが、俺は迷っている。
アーシアは今、どんな気持ちだろうな……。
助けたことで教会から追放され、辛い思いをした。
アーシアの心中は複雑極まり無いだろう。
「イッセーさん」
キッチンからエプロン姿のアーシアが寄ってきた。
可愛いライオンさんのマークが付いていて愛くるしい。
手元にはおいしそうに焼けているクッキーがあった。
「作ってみたんです。味見をお願いできないでしょうか?」
「おう、いいぜ。いたただきまーす」
俺は一枚手にとってパクッと一口。
口の中に甘い味覚が広がっていく。
「うまい!」
と俺の横から手が伸びてクッキーを取る奴がいた。
「あら、なかなかいけるわね」
黒歌は笑みを浮かべながらクッキーを食べている。
「アーシアちん料理の才能あるわね~。
イッセーのお嫁さんにぴったり!」
と世辞を言った。
そう言われたアーシアはお顔を赤くして嬉しそうにしていた。
「お、お嫁さん……」
人間界に留守にしてもらったレイランたちとレイナーレたちは、
黒歌を連れてきたことによってまた騒ぎが勃発。
女の子みんなには頭を撫でることで収まってくれた。
ドーナシークは俺らが留守中でもトレーニングをしていた。
・・・・・・・・・・
「また届いているのか?」
「ええ、これで何通目かしら…」
玄関には大量にプレゼントが届いていた。
膨大な量に俺はため息を付いた。
リアスの姉ちゃんの手元にはアーシア宛の手紙、ラブレターがある。
「こんな量のプレゼントははじめて見るぞ」
「困ったものね、置物やぬいぐるみはともかく、食品はどうしようかしら」
アーシアもこの量のプレゼントに戸惑っている。
「す、すみません…。私のせいで…」
「いや、アーシアは悪くないよ。
にしても、はた迷惑だぜ。こういうのは」
この悩みをアザゼルのおっちゃんに相談したところ。
冥界にもオークションやいらないものを買い取ってくれる店は少ないけどあるにはあるという。
そこに相談をして、プレゼントを消費していけばいいんじゃないかとアドバイスを貰った。
俺にもアーシアを譲ってもらえないかというお願いの手紙が届いていたけど、断ることにしよう。
・・・・・・・・・・
「はい、100メートル走ね」
次の日、ホームルームで体育祭に出る競技を決めている。
俺は二人三脚でアーシアとのペアだ。
ついでにリレーも出ることになった。
ゼノヴィアとイリナは転入してきてこのクラス。
信者を広めようとしているイリナだが、俺はストップさせた。
で放課後になり、体育祭の練習に入っている。
ゼノヴィアとイリナは100メートル走でお互い競い合っていて爆走中。
その様子を眺めている松田と元浜。
「いや~。物凄いスピードだからおっぱいの揺れが見えないな」
「そうだよな。やっぱりちょうどいい角度で、
ゆるいスピードで胸のふくらみが揺れるのをじっくり見たいよな」
といつも通りの会話をしている。
だけど、この二人もアーシアの件で複雑な気持ちだという。
アーシアは二人にも、クラス中のみんなにも手作りのクッキーを配っていた。
アーシアは皆さんの笑顔が見れて嬉しい、と喜んでいた。
二人三脚の練習をしているけど、アーシアは運動が苦手だから何回もこけそうになっている。
「うう、難しいです……」
「確かに。でも、練習しかないぜ、こういうのは。
お互いに心を合わせて、コンビネーションを高めないと」
「コンビネーション?」
「お互いに力を合わせる。お互いに助け合う。
俺は、アーシアを支える。アーシアは俺を支える。そういうことだ」
「なるほど…。わかりました!!私も一生懸命頑張ります!!」
しばらくアーシアと息を合わせて二人三脚をしていた。
休憩することにして、お互いにお茶を飲んでいる。
と、俺はアーシアに質問した。
「アーシア、ちょっと訊いてもいいか?」
「はい、なんでしょうか?」
この質問はあまりしたくないものだが、今のアーシアの気持ちも知りたいしな。
「ディオドラを助けたことで、後悔はしているか…?」
「………!?」
この質問にアーシアは少し驚いた。
「もし、アーシアが助けなかったとしたらさ、
辛い思いをせずに生きていくこともできた。
アーシア、どう思っている。ディオドラを助けなかったら良かったとか、思わなかったか…?」
アーシアは少し考え込んだが、すぐに顔を上げ、言った。
「思っていません」
この答えに、俺は安心したような気がした。
「確かに、私はあの人、悪魔のディオドラ・アスタロトさんを助けてしまったことで、
教会を追放されてしまいました。けど、後悔はしていません。
私は、誰でもいいのです。みんなが笑顔になってくれるのなら、私は全力で癒してあげます」
「…そうだな……。いや、そうじゃないとな!
わりぃな、こんなことを訊いて。やっぱりアーシアは、いい女子だってばよ」
「……!……ありがとうございます…!!」
その言葉を発したとき、アーシアの目に少しだけ涙があった。
「さぁ、どんどん練習するってばよ!!」
「はい!!イッセーさん!!」
・・・・・・・・・・
部室。
リアスの姉ちゃんたちはミーティングをしている。
次の試合でどうフォーメンションを決めるか。
前回の反省など、議題は様々だ。
俺たち《忍》やレイランたちもアドバイスや意見を言って協力している。
アザゼルのおっちゃんが用意した資料。
若手悪魔たちのステータスみたいなもので、パワー、テクニック、スピード、ウィザードの
四つの分類で評価している資料だ。
これも参考になる。
余談だがサイラオーグの兄ちゃんは相当な修行をしていたらしい。
生まれたときから魔力も無い、異能の力も無い。
その悔しさを糧に尋常じゃないほどに体を鍛えている。
ゲジマユも対戦したときには八門遁甲を四の門までするほどだ。
で兄ちゃんとレーティンゲームをしたゼファードルはトラウマを残し、
ゲーム自体をやめたと。
ビデオで見てみたが凄まじい攻撃だった。
あの一撃は、相当なものだ。
そして、ゼファードルが抜けたことにより、次に姉ちゃんたちと対戦するのは。
「次はディオドラと対戦だ」
アザゼルのおっちゃんが告げる。
アーシアの顔が少し優れない。
やっぱり気にしてしまうか。
「さっそくだが、ディオドラとアガレスの対戦の映像を――――――」
とアザゼルのおっちゃんが説明しようとしたそのときだった。
部室の床の一部から光が放たれ、魔方陣が出現する。
グレモリーでもシトリーでもない、見たことが無い紋章。
小猫ちゃんが言う。
「……アスタロト」
「やぁ、アーシア。会いたかったよ」
そこに現れたのは、笑みを浮かべているディオドラ・アスタロトの姿だった。
レイランの究極進化いいですね。
ディオドラの訪問。どうしようかな。
アーシアに叩かれるか、誰かに殴られるか。(アンケートではありません)