僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z  イナホに憑依)   作:ロベルトジョー

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10話

「え…外れた?」

ライエは銃口を僕に向けたまま放心していた。

その声を聞いて直ぐに、シャワールームの入り口にいたユキがライエに迫り、銃を取り上げて床に押さえ込んだ。

「独房に連れて行って下さい。状況が落ち着き次第、事情徴収を行います」

マグバレッジはユキに命じて、ユキは持っていたワイヤーでライエの手を縛って独房に連れて行った。

「イナホくん、大丈夫ですか!?」

セラムさんは僕に抱きつき、慌てて安否を尋ねる。

僕は目尻からこめかみにかけて熱を感じて手で拭った。

触れた手には血が薄く付いていて、それが弾丸によるものだと思った時に自分が助かったことに疑問を抱いた。

「…セラムさんが助けてくれたの?」

ライエの銃は僕の頭を狙い、そして、放たれた弾丸はまるで僕の顔に沿って行くかのような軌道で外れていった。

普通に考えたらありえない軌道だ。

僕の質問にセラムさんは首を振って否定した。

「とりあえず、二人共救護室に来てください。診察と手当をしますよ」

軍医の言葉で僕達はシャワールームを出た。

 

独房にライエを連れてきたユキは、ライエの手のワイヤーを解き、いくつか今後のことを説明した。

それを聞いているのか、ライエは俯いる状態で備え付けられたベットに座っていた。

その様子を見たユキはため息をついて、独房から出ようと背を向けた。

「ねぇ。あいつの瞳って、赤かった?」

「…あいつが誰を指すのか分からないけど、あなたが撃った私の弟のイナホを指しているんなら瞳の色は黒よ。少し休みなさい」

ユキは背中越しにライエの質問を受け、若干、強い口調で答えた後に扉を閉めた。

「イナホ…」

ユキが居なくなった独房のベットにライエは横倒れた。

 

 

 

クルーテオの揚陸城の中にある応接室で、スレインとザーツバルムは対面で座っていた。

「15年前。ヴァース帝国は食料不足の限界になり地球侵略を企てた。我らはハイパーゲートを使い、月に勢力を結集させせ、軌道上に今は軌道騎士と呼ばれる者達が揚陸城を配置した。その時の私も軌道騎士中の1人にいた。そして、若手の中でも精鋭かつ巨大な力を持つ我と、我が婚約者であったオルレイン子爵、そして数人の有力な火星騎士達は尖兵として種子島に降下した。我らは順調に種子島基地の地球軍を殲滅していった。その時だ、あの忌々しいハイパーゲートの暴走が起きたのは」

ザーツバルムは目を閉じて回想し、持っていた杖を強く握り締めた。

「ハイパーゲートの暴走で割れた月が地球に降り注いだ。我々もまた身の危険を感じて地球から退避を始めた。しかし、突如、オルレインのデューカリオンに不調が発生し飛行が困難になった。我はオルレインを助けるためにデューカリオンを牽引しながら種子島を飛び立とうとして、運悪く月の破片が種子島に落ちた。そして、瀕死の重症の我と大破した我がカタフラクトのディオスクリアは孤島に流れ着き、トロイヤード博士によって助けられたのだ」

「月の破片は一つの国の地形を変えるほどの破壊力であったと聞いています。あ、あの、よくご無事でしたね」

「我が生きているのは偶然にすぎない。我以外の尖兵達は月の破片に巻き込まれて死んでいったと、火星に戻った私は観測していた火星騎士の報告で知った。そして、我はオルレインの無念を晴らすことを誓った」

ザーツバルムは淡々と答えた後に、スレインが提供した種子島の映像を写した。

「このデューカリオンがあるということは、オルレインが地球で生きている可能性があるということ、そして我はオルレインの安否を地球軍に問いたださなくてはならない…話が長くなった。スレイン、君のこの情報は我に大きな希望を持たせてくれた、多大な感謝をする」

「い、いえ、とんでもありません!」

ザーツバルムが頭を下げたのを見て、スレインは慌てた。

「本来はこの話をするつもりはなかったが我の気持ちが収まらなかった。さて、これからが君に面会を求めた本題だ」

ザーツバルムが頭を上げてスレインを真剣な表情で見つめた。

「スレイン、君はトロイヤード博士が研究するために所有していたアルドノアについて知っているかね?」

「いえ、父からアルドノアの話は耳にしたことはありますが、所持していることについては何か言っていたという記憶にありません。」

ザーツバルムは持っていたケースをテーブルに置き、ケースを開けた。

「これは、アルドノアですか?」

「そう、我が火星に帰還する前にトロイヤード博士から受け取ったものだ。これを地球にいるトロイヤード博士が持っていても狙われるだけ、だから、我に託された。今この時、トロイヤード博士の息子である君に渡そう」

スレインはケースの中の、拳位の大きさのアルドノアを手に取った。

「今まで、君にこれを渡さなかったのは、地球人である君がアルドノアを持つことによる危険を考えてのこと。しかし、今、この戦争の中で姫の救出部隊へ志願する君には必要なものだ。そして、この度の情報を我に提供してくれた褒美としてカタフラクト一機、君に授けよう」

それを聞いたスレインは目を大きく開き頭を垂れた。

「ありがとうございます!!」

「直ぐにクルーテオを含めて、我が策を説明する。アルドノアを取り込んだら、直ぐに司令室に集まれ」

「はい!」

ザーツバルムはそれを聞くと、立ち上がり応接室のドアに向かった。

 

 

 

地球軍本部に着いた僕達は、本部の司令官達に呼ばれ事情を説明し、直ぐにセラムさんが火星へ向けたメッセージを発信することになった。

『私はヴァ―ス帝国第一皇女アセイラム・ヴァ―ス・アリューシア。祖国ヴァースへ告げます。この戦争の停戦を求めます。私を狙ったのは地球侵略を企てる軌道騎士です。この戦におけるヴァース帝国の大義はありません。今すぐ、この戦を止め和平に努めなさい!』

地球軍の格納庫で待機中の僕はその凛々しい姿をタブレッド越しで見ていた。

「しかし、これで本当に戦争は終わるのかね〜」

「オコジョ、なに不吉なこと言ってるのよ!」

「だって、火星の姫様を襲った奴ら、軌道騎士なんだろ?」

「それは…」

インコはオコジョの反論に答えずに黙り込んでしまった。

僕はインコ達の会話を聞きながら、密かにセラムさんが望む和平を僕も願っていた。

「もう、声明が終わるから僕は迎えに行くよ」

「何で、イナホが迎えに行くのよ!」

「まぁまぁ、落ち着けってインコ。ほら、早く行ってやれイナホ」

僕とインコの間に立ったオコジョは、迎えにいくように促した。

 

 

 

「敵本部を発見した。これより揚陸城の降下開始しろ。目標、ノヴォスタリスク地球軍本部!!」

クルーテオの揚陸城にいたザーツバルムは、自分の揚陸城に連絡をとり、戦闘への準備を行う。

「先程の通信は囚われている姫殿下が地球人によって言わされているものに違いない!直ぐに救出部隊を向かわせる」

クルーテオは、自分の部下に対して出撃を命じた。

「さて、この東京から地球本部への我々の転送、頼むぞクルーテオ」

「分かっている…話は変わるが、ザーツバルムが我が召使いにアルドノアとカタフラクトを与えたと聞いたが、随分と入れ込んでいるようだな」

クルーテオはそばにいるザーツバルムに鋭い視線を向けた。

「やつは我が命の恩人トロイヤード博士の息子だ。命を救われた分の義理は果たしたまで」

「…まぁいい。直ぐに用意をしろ。ハイパーゲートを制御する我がアルドノアの力は、ハイパーゲートから遠いここでは転送できる数や、過度な消耗などの制約を受ける。二度目の転送は無い以上、乗り遅れるなよ」

「感謝する」

 

ザーツバルムは司令室から離れ、自分のカタフラクト・ディオスクリアの元へ足を向けた。

「スレイン、タルシスの調子はどうだ?」

「僕には過ぎた機体です。ザーツバルム伯爵にはなんとお礼を言ったらいいか」

「まだ、アルドノアを取り込んでから、力を使いこなすのには時間がかかる。出来るならば、最初は前線に出ずに慣らすことを勧めるが」

「お気遣いありがとうございます。しかし、姫様が救助を待っている以上、私だけが後方でのんびりしていられません」

スレインはザーツバルムにより授けられたタルシスに乗り、出撃の許可を待っていた。

「君は、先程の姫殿下の声明についてどう思う?」

「…僕は地球人に利用されている所を種子島でこの目で見てきました。あれは地球人によって無理やり言わされているに違いないと思います」

「ならば、直ぐに助け出さねばなるまい。姫様はお前を待っているかもしれんぞ」

「はい!!」

元気よく返事をしたスレインとは対象的に、ザーツバルムは表情を変えずにディオスクリアに乗り込んだ。

「命の恩人の息子をけしかけるとは...我は地獄でトロイヤード博士に責められるに違いない。しかし、もう止まれんのだよスレイン」

ザーツバルムは呟いた後に、通信端末を用いて自分の揚陸城に繋いだ。

「いいか、我らがそちらに転送される前に何としてもアセイラム姫を殺せ。また、地球軍の中にいるオルレイン子爵を知る高官を捕縛せよ」

部下の返事を聞いたザーツバルムは目を閉じ、この後に来る戦に闘志を燃やした。

 

 

 

セラムさんの声明の後、間もなく揚陸城が地球軍本部のそばに降下した。

着陸した揚陸城からは無数のバンカーバスターが発射され、地中にある本部に向かい、攻撃が開始した。

突然の強襲によって、基地は大規模な爆撃を受けた。

「クソ、火星人どもに停戦の意思はないということか!!」

「直ぐに、カタフラクト隊を出動させろ!!」

基地内では怒声や悲鳴が絶えず続き、次々と地球カタフラクトがバンカーバスターで穴の空いた敵が攻めてくるポイントに急いで出撃していった。

その頃、僕は声明が終わったセラムさんと一緒に行動していた。

「もはや、私の言葉でも戦争は止まりませんか…初めから、私を亡き者にして戦争を始めるつもりだったのですね」

「そんな、…姫様」

セラムさんが失意で涙を流す中、僕は迫る危機からセラムさんを退避させるために、耳につけている無線機を使い戦艦との連絡を取る。

「こちら、界塚イナホです。現在はアセイラム姫と行動中、状況の説明をお願いします」

「こちら、マグバレッジ。イナホくん、本部からの情報ではバンカーバスターを使い地中のこの基地に穴を空け、そこから無数の敵カタフラクト、及び戦闘機、輸送機が侵入をしているとのことです。直ぐに姫様を連れて戦艦に来てください...と言いたいところですが、敵の侵入が早く、既にこの戦艦の周りにも敵が多く侵入しています」

「分かりました。僕達は一度、格納庫に向かってカタフラクトに乗り戦艦との合流に向かいます」

僕は無線機を切り、持っていたタブレットに表示した基地の地図で迂回路を探した。

「セラムさん、直ぐにカタフラクトに乗った後に、戦艦に向かいます。ここはもう安全じゃない」

「分かりました..」

僕はセラムさんの手を引いて、カタフラクトがある格納庫に走った。

 

敵を避けながら進んでいた僕達は、なんとか無傷で格納庫にたどり着いた。

「格納庫にも兵隊が!」

エデルリッゾが驚き、セラムさんの手を強く握った。

「カタフラクトに乗るには、あの敵歩兵達を突破しなければいけない。だけど、僕だけでは数が多くて困難だ...どうする」

僕の武装は支給された拳銃のみ。これだけでは、装備を整えた歩兵を奇襲で1人倒すだけでも難しいだろう。

その時、僕の無線機から聞き覚えのある声が聞こえた。

「助けてあげようか?イナホ」

「その声は、もしかしてライエ?君は地球軍の独房に移されたと聞いているが」

「その独房が敵の攻撃で壊されて、私は命からがら逃げてきたの。まぁ、そんなことは別にいいわ、助けて欲しいの?」

無線機から僕とセラムさんを襲った赤毛の少女ライエの話を聞き、考える間もなく僕は返答した。

「手助けしてくれるなら僕達の目の前の歩兵を倒して欲しい。僕だけでは突破できない」

「分かったわ。今、私があなたを助けること、忘れないでね」

無線機の通信が切れると同時に、激しい銃声とカタフラクトの駆動音が前方の格納庫から聞こえた。




いよいよ、1期目の終盤ですね。
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