僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z イナホに憑依) 作:ロベルトジョー
僕たちの行く手を阻む火星の歩兵達に、カタフラクトに乗ったライエが戦闘を行っていた。
「今から、あの待機中のカタフラクトまで走ります。僕がコックピットを開けたらすぐに乗り込んで下さい」
僕たちは敵の注意がライエに向いている隙に、格納庫に置いてあるカタフラクトまで走った。
セラムさんや僕を殺そうとしたライエが、僕達に協力的なのに疑問は尽きないが、今はライエの言うことを信じるしかない。
なんとか敵に気づかれずに、カタフラクトに到着した僕はコックピットに乗り込む。
僕が乗ったことを確認したセラムさんはエデルリッゾを抱きかかえてコックピットに乗り、僕の膝の上に乗って無理やりその上からシートベルトで固定した。
コックピットを閉めてカタフラクトを起動させた僕は、戦闘中のライエに無線を繋ぐ。
「これから戦艦と合流する。ライエ、援護を頼む」
「分かったわ」
その返事を聞いた僕はカタフラクトの推進機を最大限に使い、まだ、敵がいる格納庫をあとにした。
--
戦艦が敵歩兵からの攻撃にさらされている様子を、司令塔で見ていたマグバレッジは敵の攻撃で揺れるたびに苦悶の表情を深くしていった。
「...待つのが限界のようですね。これ以上は戦艦への侵入を許しかねない」
「艦長、出発の許可を」
不見咲の言葉にマグバレッジは頷き、無線機を口に近づけた。
「コントロール、メインゲートの開放をお願いします」
しかし、無線機から反応は返ってこなかった。
「…こじ開けます。メインゲートへミサイル発射してください」
戦艦から発射されたミサイルがメインゲートを破壊し、戦艦が出られるほどの大穴が空いた。
「こちらマグバレッジ。イナホくん、現在地を教えて下さい」
「イナホです。もうすぐメインゲートに到着します」
「戦艦は既に浮遊中のため、甲板に飛び乗って下さい。搭乗を確認次第、直ちに基地を出発します」
マグバレッジは無線機を置き、椅子に腰掛けた。
「艦長、2機のアレイオンが姿を現しました!」
「機関砲による援護をしてください」
—
基地を出発する戦艦に何とか間に合った僕達は、推進機を使い甲板に飛び乗り戦艦に乗り込んだs。
急速に高度を上昇させた戦艦はメインゲートを抜けた。
高度を取って、敵の攻撃範囲から抜けた僕達は今、マグバレッジ艦長達を含めてミーティングルームに集まっている。
「一旦は危機から逃れましたが、これからどうすべきか。地球軍本部が侵攻を受けている以上、もはや時間の猶予がなく、本部が制圧されれば地球人の負けです」
「今から逆転するには、本部のそばに落ちた揚陸城を何とかする必要がある」
マグバレッジの言葉にマリトが続いた。
僕は揚陸城に対する考えを思いついて、セラムさんに問いかける。
「セラムさんは揚陸城の機能を止められる?」
「可能ですが、それをするためには揚陸城の内部の制御室に入る必要があります。揚陸城には備え付けられた強力な兵器、及び強力なアルドノアの力を持った伯爵を相手にしなければなりません。この戦艦だけでは無謀です」
「それはセラムさんの力を含めても?」
「あの赤い火星カタフラクトを使えば、私の力で揚陸城には近づけます。しかし、一度力を使えば私は意識を失うかもしれません。そうなると、揚陸城を停止させることは難しいでしょう。また、揚陸城を制御できるのは伯爵以上の強力なアルドノアが必要になり、エデルリッゾを連れて行っても意味がありません」
セラムさんの意見を聞き、僕は少し考えた。
「揚陸城がある限り、地球軍本部は制圧されて僕達地球人は終わりだ。だから、セラムさんの力は揚陸城の機能停止以外には使えない。しかし、セラムさんの力が使えないと揚陸城には侵入すらできない...どうすればいい」
「すみません、私が争いに向くようなアルドノアの力を持っていれば…」
「エデルリッゾが悩むことではありませんよ」
セラムさんがエデルリッゾの軽く抱きしめ頭を撫でて慰めた。
そうして、意見がなくなり皆静まった頃、ライエが前に出た。
「私が火星カタフラクトを操縦すれば、揚陸城に乗り込むぐらいなら出来るかもしれないわ」
「そういえば、あなたも火星人だったわね」
ユキはライエに鋭い視線を向けた。
「あなたのアルドノアの力はどのようなものですか?」
「私の力は…」
マグバレッジ質問に対して、ライエは少し黙りグレーの瞳が赤く染まった。
「は…おい、あいつはどこにいった?」
マリトはさっきまで注視していたライエの姿を見失った。
「ここにいるわよ」
「っ!?いつの前に界塚弟の前に」
ライエが声を発した瞬間、僕の目の前にライエが移動していることに皆気がついた。
「私の力はステルス。使っている間は他の人から認識されないわ、本当にスパイや暗殺者向きで私は好きじゃないからあまり使ってないけど。まぁ、欠点として、アルドノアを持っている者で私と同等以上のアルドノアを持っていると効果が著しく落ちるから、火星騎士以上のアルドノアを持っていると直ぐに気づかれてしまう。そう、だからこの中で私を認識できるのはお姫様だけのはず…ねぇ、どうしてアルドノアを持たない地球人のあなたが、私を認識できるのか不思議なのよね、イナホ」
そう、僕はライエが移動している様子を目線を外さずに見ていた。
ライエが言う通りなら、僕はライエのアルドノア破る何かを持っている。
僕には検討もつかないが。
「…僕には分からない」
「まぁ、そんなことはどうでも良いわ。どう?火星カタフラクトで私の力を引き上げれば、敵は火星カタフラクトに乗った火星騎士だけじゃない?しかも、レーダに捕らえられないから、ステルス状態の私を見つける方法は目視だけ。まぁ、それを見つける道具が存在するかもしれないけど」
「私は今まで、他人に認識をさせないという能力を聞いたことがありませんが、一部レーダに映らない能力を持つ者は聞いたことがあります。揚陸城はレーダに映らなければ敵を察知することはできないと思います。そして、揚陸城にいる火星騎士は数人程度。伯爵にさえ見つからなければ、ライエさんの力で揚陸城に侵入できる可能性は高いと思います」
セラムさんがライエの言葉に補足した。
「それで、あなたは素直に協力をしてくれるのでしょうか?」
「そうね…私は地球人なんてどうでもいいし、火星人に対してもどうでもいいと思ってるわ。だから、私のお願いを叶えてくれたら協力してあげる」
マグバレッジにライエは返答した後、セラムさんに向かって笑みを浮かべた。
「…そのお願いというのは、私達が受け入れることができるようなものですか?」
「出来るんじゃないかしら、別に誰かを殺せとかじゃないし。私のお願いは…あなたよ」
ライエが僕に抱きついて、僕の耳もとで囁くように言った。
「…何かをすればいいの?」
「そういうのじゃなくて、あなた自身が欲しいのよ。ねぇ、私を抱いて..」
「っ…」
ライエが僕に唇を重ね舌を入れてきた。
それを見ていた皆が一瞬放心した後に、驚きを声を上げた。
僕は慌ててライエを引き離したが、ライエは僕の右腕に抱きついて離れない。
僕はチラリとセラムさんの方を見ると、セラムさんは目を大きく開き驚愕の表情をしていた。
「ま、待って下さい!!イナホくんは私のです!!」
「ち、ちょっと姫様。イナホさんは姫様のってどういうことですか!?」
セラムさんはさっきまで軽く抱きしめて慰めていたエデルリッゾを離して、僕に走って近づき左腕を引っ張った。
「だ、抱いてって、そ、それに、どうして、あんたは殺そうとしたイナホにキ、キスしてんのよ!!あと、何でイナホがアセイラム姫のモノなのよ!!」
「うぁ、これって修羅場?リアルで初めて見たよ」
「インコにお姫様にライエさん…イナホくんって実は節操無し?」
インコがセラムさんやライエの前に出て抗議し、オコジョがそれを眺めながらニヤニヤして、ニーナが僕に冷たい視線を向けた。
「よく人前であのようなことが出来ますね」
「不見咲くん、君が結婚できない理由を教えましょうか?相手が取られてからでは全てが遅いのですよ」
「それは艦長の体験談でしょうか?」
「...君とは少し話をしなければなりませんね」
マグバレッジが真顔で不見咲の方へ視線を移した。
「おい、お前ら、今は遊んでる暇は無いだろうが!後でやれ、後で」
マリトが呆れたように言ってその場を収め、マグバレッジの代わりに今後の方針をまとめ始めた。
—
マグバレッジが無線機を持って合図をかける
「では、これから上空よりカタフラクトの降下作戦を開始します」
カタフラクトに乗ったマリトは格納庫のハッチを空けて、地上の揚陸城のある方向の雲を見ていた。
「よし、作戦開始だ。デコイを落とせ、全部だ!!」
艦体から投下された大量の物体は勢い良く膨らみ、カタフラクトのような形になった。
「よし、次はカタフラクト隊だ…いいか、この作戦が地球人の運命を決めると言っても過言じゃない!!だから、死力を尽くせ、命を賭けろ戦友よ」
マリトはそう言って最初に飛び降りた。
「インコ、イナホくん頑張って..」
「お前ら、生きて帰って来いよ..」
ニーナとオコジョの声が僕の無線機から発せられた。
「…あなた達は残ってもいいのよ」
「ユキ姉、マリト大尉の言うとおりこの戦いは地球人の将来を決める戦いだ。僕らは地球人であり、この作戦に参加している以上、逃げる行為は地球人への裏切りになるよ。僕は行くよ」
「わ、私も、行きます!!」
「…なら、もう止めないわ。お互い、頑張りましょう」
ユキのカタフラクトが格納庫のハッチに近づいた。
「ねぇ、ナオくん。あなたに今まで黙っていたことがあるの」
「急にどうしたのユキ姉?」
ユキが僕に直通無線を繋いできた。
「ナオくんは、きっと疑問に思っていたと思うけど、一度も私に尋ねて来なかったあなたの生まれのことよ。私達の親はヘブンズ・フォールで死んだ。でも、あなたが生まれたのはヘブンズ・フォールの後」
そう、僕が生まれたのはヘブンズ・フォールの日から数ヶ月経った後だ。ヘブンズ・フォールで両親が死んだなら、僕を生むことはできない、僕は自分が連れ子であることを知っている。
でも、僕はユキとの関係を悪化させる気はなく、それについては心の中に留めていた。
「何で今さらそれを言う必要があるの?」
「さっきライエが、アルドノアを持たない地球人がなぜアルドノアの力を破ることが出来たのか、と言っていたのを覚えているわよね。あなたは軍人の私達の祖父が連れてきた連れ子、ある日、私は祖父からあなたの親について教えられたわ」
ユキのカタフラクトはハッチに足をかけて間もなく飛び降りる体勢に入った。
「あなたの父親は分かっていない、でも、母親は火星人よ。その母親はあなたを産んで直ぐに亡くなった」
「…え?」
ユキは愕然としていた僕の反応を待たずに、戦場へ降りていった。