僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z  イナホに憑依)   作:ロベルトジョー

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1クール終わりです。


13話

僕達は揚陸城を停止させてから、突如出現した数機の火星カタフラクトによって次々と味方のカタフラクトが倒されて、絶対絶命の状況に陥っていった。

僕とマリトを含め数機のカタフラクト隊がディオスクリアを相手にしているが、強力な敵の力を前に一方的に狩られ続けられる状態であった。

「おい、火星の姫はまだか!?」

「向こうでも待ち伏せがあって戦っていると思います…誰か、デューカリオンの援護に行く必要があります」

しかし、唯一追加装備による機動力の高さで、ディオスクリアの注意を引いて攻撃を回避し続けている僕が抜けることは出来ない。

他の機体の機動力では間違いなく、敵の攻撃や能力である吸い込みから逃げきれないだろう。

「インコ、ユキ姉聞こえる?今からセラムさんを助けに行けそう?」

「無理よ!私達が戦ってるこの火星騎士の相手はどうするのよ?」

ユキやインコもまた、ディオスクリアが引き連れてきた火星騎士に苦戦を強いられているのが、逼迫している声で分かった。

他のカタフラクト隊を同じように危なげに戦っている様子で、とてもではないがセラムさんを助けに行けるような人はいなかった。

「予想以上に手こずらせるな地球人共、我にはこの後にやらねばならないことがある。あまり遊んでいる時間はないのだ。騎士達よ、揚陸城から少し距離を取れ」

ザーツバルムの命令を聞いた火星騎士が、戦闘中のカタフラクト隊から大きく離れて上空へ退避した。

「おい、敵が離れていくぞ。あいつ何をする気だ!?」

マリトはディオスクリアを警戒して注視する。

僕達もまた、ディオスクリアの行動に集中した。

「我がアルドノアの力に塵と成れ」

ディオスクリアは震脚のように、大きく片足を上げて勢い良く地面に振り下ろした。

その瞬間、ディオスクリアから数十メートルの範囲にいたカタフラクト全てが粉々になり、揚陸城の外壁の一部が崩壊した。

「ぐっ…衝撃波だと!?」

ザーツバルムの攻撃により、僕が装備していたコンフォーマルパワーアシストの車輪は破壊され、機体は倒された。

他のカタフラクト隊の機体は僕よりも被害が大きく、脚部を大きく損傷したり、崩壊した外壁に埋もれたりして、殆どが行動不能に追い込まれた。

それを見て、僕の頭には全滅の文字が浮かんだ。

僕は壊れた車輪の付いた脚部の追加装備をパージして直ぐに起き上がり、ディオスクリアにライフルを向ける。

「ほう、この状況でまだ銃を構えるか。いいだろう、貴公のその闘志に敬意を表し我が必殺を用いて仕留めよう」

ディオスクリアがレーザーブレードを居合の体勢で構えた。

ディスプレイにはライフルには数発しか弾が残っていないことを示している。

僕の額には玉のような汗が流れていた。

「セラムさん…僕は..」

 

 

「イナホくんが危ない!!」

制御室でライエとスレインの戦いを見守っていたアセイラムは、イナホの危機を感じ取った。

アセイラムはまるで引き寄せられるように揚陸城を制御する宝石へと走り、その宝石へと手を触れる。

アセイラムはこの宝石が揚陸城を制御する事としか知らない。

だから、今している行為はイナホの危機に役に立たないと思っている。

「私の中のアルドノアが教えてくれた。この危機を乗り越えるにはこれしか無いって。お願い、揚陸城。イナホくんを助けて」

停止していた揚陸城は活力を取り戻したかのようにゆっくりと起動を始める。

 

 

ディオスクリアから漂う雰囲気は重苦しく、そして体の底から冷えるように冷たかった。

まるで体が凍ったかのように僕は微動だにせず、ディオスクリアを見ることしかできなかった。

ディオスクリアが前足を踏み込んでいるのが、ゆっくり見える。

大きな衝撃を受けて僕の機体は倒れた。

ディオスクリアの腕が動いている時に、僕は横殴りされてさっきまでいた場所から吹きとんだことに気づく。

「散れ」

「ナオくん、生きなさい!!」

ディオスクリアがレーザーブレードを居合抜きした時、僕の目の前に眩い光りが通り過ぎた。

光線はディオスクリアを起点に揚陸城を真っ二つにし、雪原の大地を砕き、巨大な雪山を削り取った。

「ユ...キ…姉?」

光りが通り過ぎた場所は綺麗に無に還り、攻撃の余波である強烈な突風が僕の機体を襲った。

「騎士の必殺を横から妨害するとは、なんと無粋な」

僕の中に何かが膨れ上がったのに気づいた時には、加速を最大にブースターユニットを使いライフルを撃ちながらディオスクリアに迫っていた。

「...」

僕は悲嘆と憤怒で言葉を発することも出来ず、ただ操縦桿を使いディオスクリアに突進する。

「哀れな。触れるものを無に還す力を忘れるほどに狂ったか」

ディオスクリアはそれを何もせずに待ち構えていた。

弾が無くなったライフルを捨て、僕は右腕に装備し続けていた小型ミサイルを格納する追加装備を鈍器の代わりに大きく振りかぶり、ディオスクリアに殴りかかった。

揚陸城から大きな駆動音が聞こえた。

僕の殴打はバリアに阻まれずにディオスクリアに命中し、ディオスクリアを後ろに仰け反らせた。

「な、アルドノアの力が使えなくなった!?」

起動した揚陸城の対空砲が動き、上空で待機していた火星騎士達を攻撃し始める。

僕は追撃として、両手を組んで振り上げて思い切りディオスクリアに叩きつけった。

その攻撃に堪えられずディオスクリアは下がりながら、闇雲にレーザーブレードを振り回す。

僕はレーザーブレードを切り上げる一瞬をついて、両手でレーザーブレードを持つ腕を抑え、体当たりを食らわせた。

「調子に乗るな、地球人!!」

ディオスクリアはそれを受け止め、片手で僕の機体を掴み引き剥がした後、機体のコックピット目掛けてもう一方の腕を振り抜いた。

「がっ!!...」

その衝撃で機体は後方に吹き飛び、強烈な振動を受けた僕は気を失った。

 

 

ザーツバルムは攻撃してくる揚陸城の対空砲をレーザーブレードで全て破壊して、ようやく緊張を解いた。

「やっと終わったか、急に我がアルドノアが使えなくなったのは姫様の影響に違いない。おおよそ、揚陸城の隠された機能を用いて姫様は揚陸城にあるアルドノア全ての停止を使ったのだろう。まさか、揚陸城を持ったことがない姫様が使ってくるとは予想できなかったが。おかげで、連れてきた全ての火星騎士がアルドノアの力を封じられ対空砲の餌食になるとは」

ザーツバルムはゆっくり歩いて、倒れて動かないイナホの機体に近づき、ディオスクリアの腕を動かして機体のコックピットに手をかけた。

「貴公の力だけではないが誇るといい、トリルランの力を得てからほぼ無傷で過ごした我にとっては久しく傷を与えられた。我は貴公の面を記憶し葬ろう」

コックピットを引き裂いて、頭から血を流して倒れているイナホの顔を目にして、レーザーブレードを振り上げる。

「…いざ、さらば...」

レーザーブレードを振り下ろそうとしたとき、ザーツバルムは目を大きく開いて手を止めた。

「その顔、どこかで見覚えがあるな…お前の親は火星人か?」

しばらく、じっとイナホを注視していたザーツバルムはレーザーブレードを消して、イナホを手の平に載せた。

「貴公に聞きたいことが出来た、連れ帰らせてもらう」

少し経って、揚陸城の外壁を中から突き破ったタルシスがアセイラムを手に抱えて、ディオスクリアに近づいてきた。

「スレイン、離して下さい!!」

「姫様、暴れないで下さい、落ちてしまいます。ザーツバルム伯爵、アセイラム姫を救出いたしました」

スレインは手の平に載せたアセイラムをザーツバルムの前に差し出す。

アセイラムは、ディオスクリアの手の平に、頭から血を流して倒れているイナホを見て口元に手を当てた。

「イナホくん!?イナホくん!!」

アセイラムが倒れているイナホに呼びかけても、イナホは返事を返さなかった。

「この少年はイナホというのか…」

ザーツバルムはチラリとイナホを目に映した後に、タルシスへ目線を向けた。

「よくぞ、姫様救出を成し遂げてくれたな、スレイン。我は君に褒美を与えねばなるまい」

「ありがたき幸せ。姫の従者として当然のことをしたまでです」

ザーツバルムはディオスクリアから降りて、タルシスの前に歩いた。

「渡すものがある、姫様を降ろした後にこちらへ来なさい」

「かしこまりました」

スレインはタルシスの手のひらに乗せていた、ショックで動かないアセイラムを降ろす。

その後、タルシスのコックピットから降りたスレインはアセイラムの腕を掴みザーツバルムの元へ連れて行った。

スレインはザーツバルムの前に出ると頭を下げた。

「さて、ではスレイン。これがお前に渡す我からの褒美だ」

「はい…え」

スレインが顔を上げた瞬間、一発の銃声が鳴り響いた。

「スレイン、あの世でトロイヤード博士によろしく頼むぞ」

崩れるようにスレインは倒れ、その周りには血が広まる。

「さて、姫様。我が民のためお命頂戴します」

ザーツバルムは放心しているアセイラムの心臓に銃口を向け、無慈悲に引き金をひいた。

胸を抑え苦しそうにしながら、アセイラムもまた地に伏した。

「…イナ...ホ...く」

弱々しい言葉でイナホの名を呼びながら。

ザーツバルムは倒れるスレインとアセイラムに目も向けず、ディオスクリアのコックピットに戻った。

ディスプレイを見て既に地球軍本部へ侵入した部下が、地球軍の反撃で撤退をしていることを知る。

しかし、もう一方の目標であったオルレインを知る地球人の捕縛は達成したことが分かり、ザーツバルムは笑みを浮かべた。

「この度の戦で我らは大きく消耗した。雌伏の時だ、我は次こそ全てを奪って見せる」

ディオスクリアは宇宙へと飛翔した。




アニメでは、ザーツバルムがアセイラム姫を撃ち、ザーツバルムをスレインが撃ち、イナホがスレインに撃たれた、って感じでしたね。

自分としてはラスボス感漂わせるザーツバルムが気の弱いスレインに衝動的に倒される、この展開があまり好きでは無いんですよね。
よって、このSSではイナホ、アセイラム姫、スレインはザーツバルムによって倒されるということにしました。
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