僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z イナホに憑依) 作:ロベルトジョー
新芦原市から揚陸艇に乗り避難をしている僕たちは物資の補給ポイントに向かっている最中であった。
「本当に変装を解いてもいいのですか?姫様」
僕と茶髪の少女に変装しているセラムさん、従者のエデルリッゾは現在、揚陸艇内にある小さな個室に居た。
「えぇ、彼は大丈夫です」
そう言って、セラムさんの瞳が翡翠から一瞬赤く変化すると、姿形がドレス姿の金髪の美少女に変身した。
「それが、アルドノアの力ですか?」
「アルドノアの力を使っていますが、変身ができるのはこの宝石のおかげです。火星の遺産にはアルドノアの力を利用した様々な道具が存在していて、火星カタフラクトもその一種です」
セラムさんは胸元にあるその宝石を指さした。
だから、ついセラムさんの胸元に目が向いてしまうのは仕方がないのだ。
そして、僕は気恥ずかしくなり無理やり視線を反らした。
「いくつか尋ねたいことがあります。まず、歓迎パレードでセラムさんの代わりに乗っていた彼女は誰ですか?」
「...彼女のことは、非常に残念でなりません」
「彼女は従者の一人です!姫様は地球に来て慣れない重力にお体を崩されて、護衛達が影武者を使うように強く進めていたのです」
エデルリッゾは、顔を伏せるセラムさんの前に出た。
「...おそらく、あのテロを起こしたのは地球にいるヴァ―スのスパイです。一部の軌道騎士たちの攻撃開始までの間が短すぎます!あらかじめこれを予期して準備をしていなければ即日で攻撃などいくら軌道騎士とはいえ無理なはずです」
「...地球の人々には私たちのいざこざに巻き込んで、取返しのつかないことをしています。だからこそ、すぐにヴァ―スに私の生存を伝え停戦をする必要があるのです!」
それを聞いた僕は、セラムさんが火星へ生存を知らせる方法について思案した。
「火星への連絡手段としては、この強いジャミングが中で、揚陸艇に備わっている軍用無線端末では不可能。地球軍本部の基地であるならば可能かもしれない。確実なのは、軌道騎士に頼んで伝えてもらうことだけど、現状だれが敵なのかわからない以上それは悪手」
「私もそう思います。各々の軌道騎士が地球を狙う動機がある以上、裏切っている軌道騎士を見分けるのは困難です」
「そうなると現状維持で、この揚陸艇に乗って地球軍の本拠地に連れて行ってもらうことがベターかな。セラムさんが火星に安否の報告と軌道騎士の裏切りを伝えれば、皇女暗殺事件の真相解明までは停戦になるかもしれない。今の地球軍にとってセラムさんの協力は是が非でも欲しいから、積極的に協力してくれると思うよ」
僕はそう言って、セラムさんは頷いて肯定した。
「そういえば、先ほどからイナホさんが言っている、セラムさんとは姫様のことですか?」
エデルリッゾは眉をひそめながら僕を見た。
「いいのですよ、エデルリッゾ。イナホくんは特別です」
「な!?ひ、姫様のと、特別って!!」
エデルリッゾが混乱をしながら、慌てて僕とセラムさんを交互に見た。
「特別といってもセラムさんとは過去に会ったことがあるんだ。その時に、セラムと呼ぶように言われ...」
「なぜ、地球にいるあなたが、今まで火星から出たことのない姫様と会ったことがあるのですか!?スレイン以外に姫様に直接会った地球人のことを私は耳にしたことがありません!」
「それは...」
なんと、説明すればいいのだろうか。
とりあえず、セラムさんのアルドノアが原因といえばエデルリッゾは理解はしなくても、納得はするのではないだろうか。
魔法のように、なんでもありなアルドノアなら火星と地球との瞬間移動もハイパーゲートの例もあり十分可能であるし、実際にあの邂逅の原因はアルドノアの力以外考えられない。
「イナホって、ここにいる?あれ、鍵がかかっている」
個室のドアノブが音を立てたが、鍵をかけていたため開くことはなかった。
「その声はインコ?少し待ってて」
僕とセラムさんは視線を合わせて頷きあった。
僕はドアに近づいて鍵を開けて、ドアから顔を出した。
「どうしたの?」
「もうすぐ補給ポイントの港に着くから、荷物運びに甲板に集合だってさ」
「わかった。今すぐ行くよ」
ドアを開けて廊下に出た僕とインコは、そのまま甲板へと向かった。
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「もう一度聞く、トリルラン卿はどうした?」
クルーテオは表情を崩さずに、スレインを睨め付けた。
「...戦死を確認いたしました。偵察中にトリルラン卿が乗っていた二ロケラスが大破しているのを目撃し調査をしたところ、トリルラン卿らしき遺体の一部を発見しました」
「ほう、ではトリルラン卿を倒したのは誰だ?まさか虫けらの地球人ではあるまいな!?」
「二ロケラスを発見したときには既に敵らしき姿は周りには見当たりませんでした。しかし、その後に新芦原から脱出をしている揚陸艇が発見されています。おそらくは...ぐっ」
スレインが言い終わる前に、クルーテオが杖でスレインの頬を殴った。
「貴様ら地球人が、アルドノアの力で傷一つ当てるのが困難であろうトリルラン卿を破ったと、そう申すのか!?」
クルーテオは怒りを露わにした。
「...現状を見るにその可能性が高いと思います」
クルーテオはスレインから背を向け、部下の方を向いた。
「ブラドに新芦原を脱出した揚陸艇を追い、皆殺しにするように伝えろ。あぁ、あとトリルラン卿を破った者がいることもな。戦狂いの彼奴ならば、喜んで追撃しに行くだろう」
「クルーテオ伯爵、私にも追撃の許可をお願いします」
「理由は?」
「姫様の仇を...」
スレインは拳を握りしめ、クルーテオの背中に向かって声を上げた。。
クルーテオは振り向くと同時にスレインの腹に杖を突いた。
スレインは腹を抑えながらも、クルーテオを鋭い視線で見ていた。
「...いいだろう。だが、出撃はブラドの後の掃討戦だ。皆殺しと伝えているが、彼奴は大きな獲物を取ったら捨て置くだろう。犬が無謀に突撃して敵に撃墜されては、私の沽券に関わる。以上だ退がれ」
「ありがとうございます!!」
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「ったく、なんで俺らが荷物運びやらされてんの?」
オコジョはダンボールを持ちながら不満を吐き出した。
「さっさと運びなさいよ。後ろつっかえてるわ」
「我らが生徒会役員どのは、こんな時でも真面目ですな。火星人どもマジでくたばれ。てか、カームまで真面目に荷物運びかよ」
「おう、今は火星人倒すためならなんだってやってやるよ」
そう言って、カームは他の皆よりも大きめの段ボールを運んだ。
補給ポイントの港に着いた僕たちは揚陸艇から、カタフラクトの母艦機能を有するわだつみに乗り換えていた。
この港は既に廃棄されることが決定していて、僕はそのために使えそうな物資をわだつみに持ち運ぶ手伝いを命令されている。
「ふー。ようやく、終わったぜ」
「ほらよ、水だ」
「サンキュー」
カームが配給された水を僕達に配った頃、警備中の複数カタフラクトの機動音が近づいて来た。
「マグバレッジ艦長。警備中のカタフラクト隊、隊長の中林少尉であります。これより、カタフラクト隊に召集をかけ、わだつみへと搭乗いたします」
「ご苦労。こちらも、全カタフラクトの搭乗の確認次第、わだつみを出発させます」
ダルザナ・マグバレッジ。新芦原脱出時に火星カタフラクトと戦っていた僕の援護として、揚陸艇の準備を主導した女性だ。
聞いた話ではマリト大尉が救出チームを呼びかけた時に、興味があるとチームに加わった人だ。
僕はマグバレッジ艦長を何気なく見ていると、赤毛の少女が隣に立った。
「あなたが火星カタフラクト倒した、って噂の人?」
「そうだけど、君は?」
「私は、そのカタフラクトに追われていたライエよ...奴の最後は?」
ライエは僕を睨んで、そう尋ねた。
「知っているかもしれないけど、奴のバリアの覆っていない場所に銃弾を叩き込んで、爆発した。搭乗してるなら、生きてはないハズだよ」
「そう...ありがとう」
一瞬、表情を緩めたが、直ぐに引き締めてライエはわだつみに乗り込んだ。
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「こちら、アパルーサ3。おい、あのカタフラクトは何だ?」
わだつみへの召集のため集まっていたカタフラクト隊に、白い装甲のカタフラクト、アルギュレが暗闇から現れた。
「地球で見たことのない形のカタフラクト...敵襲!!」
カタフラクト隊は持っていた銃でアルギュレを攻撃した。
すると、アルギュレは跳躍と同時に背部の推進器を使い、銃を撃っているカタフラクト隊の攻撃を回避しつつ、カタフラクト隊の背後に回った。
「飛び道具ばかりとは、なんとも面白みのない...」
背後からカタフラクト隊に急接近したアルギュレは、手を構えて近くにいたカタフラクトのコックピットを貫いた。
「アパルーサ3!...クソ、動きが早くて、当たらない。グレネードを使って範囲攻撃だ!」
カタフラクト隊の隊員が、推進器を使って移動をし続けてるアルギュレに向かってグレネードを撃ちまくった。
爆発による煙が晴れるとそこには、アルギュレは居なかった。
「抜刀」
アルギュレは腰にあるビームサーベルの柄を取り出した。
そして、柄からビームが出るのと同調するのうに、アルギュレの背中からロケットエンジンのような音を立て火を噴きだした。
「何か、やる気だ!構わず、撃て!?」
カタフラクト隊は自棄になって、ひたすら引き金を引き続けた。
「終わりだ虫けら」
アルギュレが突如、瞬間移動のように目の前に現れるような急加速をして次々とカタフラクト隊を切断していった。
抜刀さん、もうちょっとカッコよくするにはどうすればいいか考えた結果、戦闘狂という属性をつけました