僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z イナホに憑依) 作:ロベルトジョー
「状況報告、敵カタフラクトの戦力は?」
「1機です。どうやら、ビームサーベルのようなものを持ち、背中の推進器で近づいて近接戦闘を行ってくる模様。すでに、警備中のカタフラクト4機がやられています」
「敵は強力なようですね...直ぐに出港準備を!」
マグバレッジは顎に手を与え思案した後に船員に命じ、その場が慌ただしくなった。
「マグバレッジ艦長、俺が出て時間を稼ぐ」
マグバレッジはマリトに視線を向けた。
「マリト大尉、よろしくお願いします」
それを聞いたマリトは格納庫の方へ走っていった。
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敵襲を聞いて、カーム達が格納庫に来た時には、僕は既に格納庫でタクティカルスーツを装着して出撃の準備をしていた。
「イナホ!お前も出るのか?」
「このままじゃ、敵はわだつみに近づいてくる。もし、わだつみが大破すれば僕たちは移動手段を失い、地球軍本部に合流するのが絶望的な状態になる。動ける人はカタフラクトに乗って時間を稼がないといけない」
僕は無線端末を肩に指して、それに繋いであるイヤフォンを耳に入れる。
「俺も行くぞ、イナホ」
「私も行く!」
カームとインコはそう言って更衣室に走った。
「おいおい、あいつらマジかよ...俺ら、訓練生でもないのに」
オコジョは顔をゆがめ、カームとインコの走っていた方向を向きながら呟いた。
「オコジョはどうする?」
「俺は荒事には向かないから船の中で避難民対応でもしながら健闘を祈ってるよ」
僕はそれを聞いて、カタフラクトのコックピットに乗った。
「敵の武装はビームサーベルでおそらくプラズマを利用している。炸薬が入っている弾頭はビームサーベルに触れると敵にあたる前に爆発するから徹甲弾じゃないと有効打を与えられない...敵の推進器はどうする?あの移動速度は脅威だ...それに、敵はアルドノアの力も持っている」
そう、魔法のような力を持つアルドノアを無視はできない。
僕が倒した敵がバリアに触れたものを消滅させる能力を持っていた。
今回もそれ相応の能力を持ってしかるべきであると考えたほうがいいだろう。
「いや、何も全てのアルドノアが攻撃に使われるわけではないか。あのビームサーベルや推進器の補助に使われているなら」
「ブラドのアルドノアの能力は人の精神に作用させる能力であったと記憶しています」
セラムさんがコックピットに乗り込んできた。
「人の精神に作用?」
「えぇ、彼はその力を使い、時に仲間の志気を高め、時には逃げる相手に対して戦闘意欲を引き上げて無理やり戦わせることができる」
「セラムさんのアルドノアで敵のカタフラクトは止められる?」
「カタフラクトは起動時にアルドノアを使いますが、一度起動してしまうとアルドノアの力を必要としません。御爺様のアルドノアは火星の全ての遺産を支配化におけるのですが、私のアルドノアはあくまでアルドノア自体の制御のみで、それはカタフラクトには作用しません」
セラムさんは首を横にふり、残念そうに言った。
「分かりました。ありがとうセラムさん」
セラムさんは額が触れる程度まで僕に顔を近づけた。
「イナホさん...アルギュレは、前回の二ロケラスのように私の力が有効打になることはなく、私がついて行っても邪魔になってしまうと思います」
セラムさんはゆっくりと僕の首筋に顔を当て、僕を軽く抱きしめてきた。
「セラムさん!?」
「ブラドのアルドノアの力は、相手に対しては戦闘意欲の引き上げです。しかし、それは決して抗えないものではなく、強い意志を持つことが一番の対策になります。なので、これはお守りです。もし、彼に能力を使われたら、この温もりを思い出してください。私はイナホくんの帰りを無事を祈りながら待っています」
セラムさんから伝わる熱により、僕の鼓動は大きくなっていく。
僕もセラムさんを若干ではあるが少し強めに抱きしめた。
「...イナホくん」
「セラムさん、行ってくる」
「行ってらっしゃい...イナホくん」
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アルギュレはわだつみに徐々に迫っていた。
「地球人、さっさと強いやつ出さないと船が沈むぞ」
ブラドは嘲笑をしながら、足元のカタフラクトの残骸を踏み潰した。
「おい、お前の相手は俺だ」
「挨拶はいい。さっさと、攻撃してこい」
カタフラクトに乗ったマリトはわだつみから飛び出て、スピーカー越しで相手を挑発し合った。
マリトは銃を撃ち推進器を使ってゆっくり自由落下をしながら、アルギュレを攻撃する。
一方、アルギュレは背部の推進器を用いて前方に急加速して躱し、跳躍してマリトに迫る。
「ちっ、思ったより早い!」
マリトは推進器を逆に噴射して、強引に着地し、さらに推進器を使って距離を取りつつ発砲した。
「ほう、少しはやるようだが。それだけでは足らんな」
アルギュレは断続的に推進器を利用することで、空中を何度も軌道を変ながら銃弾をかわし、距離を取っているマリトに追従する。
「嘘だろ...なんて機動性能だ」
「もう終わりか?なら、これで散れ」
加速をしていたアルギュレはその勢いで、マリトを蹴飛ばして、転倒させる。
「くそっ...また火星人に負けるのか」
アルギュレはマリトに向かってビームサーベルを振りかぶった。
その瞬間、わだつみの方向から大きな弾頭が飛んできた。
アルギュレはそれを切り払ったが、大きく爆発を起こしてその場からアルギュレを退かせた。
「無粋だぞ。虫けら!」
怒りをあらわにしたブラドの目には3体のカタフラクトが目に映っている。
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「よし、当てたわ!」
「インコ、でかした。あとの援護射撃も頼むぞ」
「任せて!二人も気をつけてね」
カームと僕は、推進器を使い二手に分かれて敵のカタフラクト、アルギュレに向かった。
アルギュレはそばに倒れているマリトを無視して、僕に向かって跳躍して空中を急加速してきた。
「撃て、カーム」
「もちろん!食らえ!!」
カームの大きなライフルから放たれた弾頭が、迫りくるアルギュレに向かって放たれる。
アルギュレはそれも切り払うも、大きな爆発を起こし軌道がズレて落下し、僕はそれに対して徹甲弾で追い打ちをかける。
「こざかしい!」
頭部に徹甲弾を被弾したアルギュレは推進機を断続的に用いて、ジグザクと軌道を変えて今度はカームに迫る。
カームはライフルをアルギュレに向かって発射したが、余裕を持って躱したアルギュレは腕でガードをするカームに向かってビームサーベルで斬りつける。
炸裂装甲を腕に纏ったカームのカタフラクトに向かったビームサーベルは、反動で後方に吹き飛んだカームの機体と反発するように弾かれた。
「また、爆発か!!やるではないか。我が剣を弾くとは」
「ぐっ、イナホ!炸裂装甲の炸薬の量を間違えてないか?」
「炸薬はあくまで爆発による敵のビームサーベルから回避だから、自分の機体が吹き飛ぶ量にしないと意味ないだろ?それと、今だインコ!!」
「待ってました!!いくよー」
インコは体勢を崩したアルギュレに対して弾倉を使い果たすまで榴弾を打ち続けた。
「クソ!?」
カームの炸薬装甲で体勢を崩して回避を間に合わないアルギュレは、ビームサーベルで対応するが榴弾の爆発により大きく後退させられる。
「カーム、ありったけの徹甲弾を叩き込め!!」
僕とカームは、インコの榴弾に対応しているアルギュレに向かって数多の弾丸を放った。
「わだつみ、発進準備が整いました。イナホさん達は早く搭乗してください」
無線からマグバレッジ艦長が僕達に撤退の合図を告げた。
僕はカームにアルギュレの相手を任せて、倒れているマリト大尉に駆け寄る。
「マリト大尉、動けますか?」
「あぁ、なんて無様な野郎なんだ俺は…」
一度、カタフラクトから降りた僕は、頭から血を流しているマリトをカタフラクトから引っ張りだして、コックピットの後方に載せる。
「そうか、貴様らだな。アルドノアを持つ火星騎士を倒した者達とは。まだ、終わらんぞ!!!」
アルギュレの全体には徹甲弾が被弾した跡が残っていたが、動作に支障があるようには見えない。
そして、今まで一つであったビームサーベルが二つになり、両手にそれぞれ持っていた。
インコは、弾倉を入れ替えたライフルでアルギュレを狙うが、アルギュレは跳躍し推進機を使ってジグザクに加速を繰り返して榴弾を躱していった。
「あんなの当たるわけないじゃない!!」
「どうするイナホ!」
「さっきまでの連携で仕留めきれなかった僕達の負けだ。炸裂装甲や重い装備はパージして、全力で撤退する。インコは援護をお願い」
「ちくしょう!!」
僕とカームは、わだつみの方へ推進機を用いて向かう。
「逃さんぞ!!臆病者どもが!!」
その言葉がアルギュレから聞こえた瞬間、僕は突然の憤怒を感じた。
「予め知っていたとは言え、これほどとは」
僕が感じるこの訳もわからない怒りは、すべて後ろから迫るアルギュレに向けられている。
僕はなんとか踏みとどまったが、ここにはもう1人、祖国を火星人に滅ぼされて避難してきた火星人への憎しみを持つカームがいる。
「クソ火星人が!!よくも俺たちの祖国を!!」
「ダメだカーム!」
さっきまで撤退をしていたことを怒りで忘れたように、わだつみとは真反対のアルギュレの方へ急反転していった。
「さぁ、殺し合おうぞ」
スピードを落としたアルギュレは二本のビームサーベルを大きく広げて、カームを待ち構えるように構えた。
カームはまだ持っていたライフルでアルギュレを狙い撃つが、見切っているように紙一重でアルギュレは躱す。
ライフルが通じないと悟ったのか、カームは収納されていたカタフラクト用の大きな単分子カッターを手に持ってアルギュレに突進をしていった。
「カーム!!!」
僕は無線機に向かってカームに怒鳴り声を上げたが、無線機から聞こえてくるのは獣のような怒声のみであった。
「抜刀」
アルギュレの背部が眩く光り、今まで以上に急加速をして、突進してくるカームの機体を正面から十字に切り払った。
「…カーム?」
カームの乗っていたカタフラクトはアルギュレの通った道で四散爆散した。
「嘘でしょ..」
インコもまた、唖然と二振りのビームサーベルで友人を切ったアルギュレを見ていた。
「あぁ、なんて甘美、爽快。素晴らしい闘気であったぞ地球人よ」
その声がアルギュレから聞こえてきた時には、すでに僕はアルギュレに最後の徹甲弾の弾倉をつけたライフルのトリガーを引き続けていた。
「次は、お前だ!」
「…」
「逃げて、イナホ!!」
インコの悲鳴を無視して、僕はアルギュレが前方から迫るアルギュレに弾倉が空になったライフルを投げつけた。
アルギュレは難なくそれをビームサーベルで切り払い、勢いをつけて僕目掛けて切りかかってくる。
僕は、推進機を全開で使用して前方への急加速を行い、迫り来る片方のビームサーベルに向かってまだパージしていなかった炸裂装甲を殴りつけた。
さらに、炸裂装甲の爆発が発生するのを利用して、僕はアルギュレに抱きつき共に同じ方向に吹き飛ぶ。
吹き飛んで互いに地面に転がる中でアルギュレが僕をどかすために藻掻いたが、僕は残った片腕の炸裂装甲を敵のコックピット目掛けて殴りつけた。
この爆発により、僕のカタフラクトが大きく損傷を受け、カタフラクトの頭部が取れてコックピットがむき出しになり、僕自身もまた左腕に破損したカタフラクトの部品が突き刺さった。
至近距離で胸部への爆発を食らったアルギュレも無事ではなく、大きく損傷し胸部の装甲が抉れてブラドの顔が見え、背部の推進機からは黒煙が途切れなく漏れていた。
「よくぞ、このブラドにここまでの手傷を与えた。褒めてつかわす!!さぁ、この死合に終幕を与えようではないか!!」
ブラドの目が赤く輝き、僕の闘争心もまたピークになっていった。
僕のカタフラクトは度重なる炸裂装甲の爆発により両腕の肘から先がなくなり、残っている装備も現状使用不可能なカタフラクト用の単分子カッターのみであった。
この状況でも、僕の目はアルギュレの胸部に見えるブラドを鋭く見ていた。
その時であった。
「イナホくん、聞こえていますか?セラムです。出発前のお守りを忘れてはいませんか?」
セラムさんの声がどこからともなく聞こえてきた。
正気を戻した僕はその場で反転し、カタフラクトの足をワダツミに向けた。
「おい!?どこに行く地球人!!」
ブラドは慌てて、僕にそう呼びかけた。
「あんたと戦っている暇はない」
僕は声を上げてブラドに即答した。
「...いいだろう、この度の死合は貴様が我がアルドノアの力を破った褒美として見逃そう。我名はブラド、お前の名を聞かせろ!!!」
「イナホだ!!次に会ったときは倒す!!!」
「はは、その威勢良し。楽しみにしているぞ」
ブラドは豪快に笑いながら、わだつみへ走る僕の背中を見ていた。
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カーム死す、というのが今回の内容です。
闘争の果に死ぬとかカッコいい気がしません?
以上です。