僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z  イナホに憑依)   作:ロベルトジョー

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5話

2009年、スレインは地球を離れ、父親と共に火星への移住をしている途中で宇宙船が故障が発生し、脱出ポッドにて危機を逃れた。

そして、その脱出ポッドは偶然にもヴァース帝国の王城に不時着した。

「あなたは誰ですか?それに、大丈夫ですか?」

脱出ポッドの中でスレインが意識を覚ましたときには目の前にアセイラムが、スレインを心配そうに覗き込んでいた。

「ぼ、僕はスレイン。ここは?」

「ヴァース帝国のお城ですよ。あなたはどこか来たのですか?」

「地球から」

「本当ですか!?」

喜ぶアセイラムに見惚れたスレインは、気づいたように人が集まっていくのを見て慌てた。

「姫様、危険でございます!直ぐに、避難を」

従者の1人がアセイラムに声を上げた。

「彼は地球から流れ着いた方です。彼に敵意はありません、手厚く保護をしなさい」

「なぜに彼奴を保護するのでしょうか?」

「彼には地球のことで聞きたいことがあるのです。そう、家庭教師にします」

「…一先ず、承知いたしました。すぐさま護衛の火星騎士へと通達いたします」

アセイラムのもとに従者達が辿り着き、スレインから守るように立った従者に対して、アセイラムはスレインの保護を命じた。

 

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火星騎士ブラドの襲撃から何とか逃げ延びた僕達の空気は重かった。

「カームが…カームが死んじゃった」

「ニーナ..」

「…あいつが死んだなんて嘘だろう」

わだつみの船内の広間で、泣き止まないニーナを目元が赤くなりながらも慰めるインコ、呆然としているオコジョはカームの戦死を悲しんだ。

特にカームと共に滅んだ祖国から避難民としてやってきたニーナにとっては、過ごした時間は僕達よりも長い分より悲しみが強いのだろう。

「…僕は、疲れたから少し寝るよ。また後で」

僕はそう言い残してその場を早足で去った。

 

僕が就寝スペースに着いたときには、セラムさんがベットに腰掛けていた。

「おかえりなさい、イナホくん」

「...セラムさん。僕がカームにブラドのアルドノアの力を教えていれば、彼は生きていたでしょうか?」

「それは...わかりません。もしかしたら、カームさんは生きていたかもしれないし、そうでないかもしれません。でも、イナホくんとカームさんがブラドに立ち向かったことによって、私達がこうして生き延びることができました」

セラムさんはベットから立って僕に近づいた。

「それでも、僕はカームを見殺しにした気がしてならないです。カームが死ぬ間際に無線機から聞こえた怒声が耳から離れない…えっ」

セラムさんは僕の顔を胸元に引き寄せて抱きしめた。

「イナホくんがアルドノアの力を黙っていたのは私が火星人だとバレないためですよね。なら、私にもその責任があります。1人で背負わないでください」

「…」

僕は抵抗せずにセラムさんに抱きしめられながら、止まらない涙で彼女の服を濡らしていた。

少し経って、その体制で嗚咽が泣き止んだ僕を確認したセラムさんは、ベットに僕を引き込んだ。

「イナホくんは度重なる戦で心身共に疲れています。今はゆっくり休みましょう」

僕と共にベットに入ったセラムさんは、備え付けられている遮光カーテンを閉めた。

 

「あいつ、火星人だったの?」

廊下にしてイナホとアセイラムの話に聞き耳を立てていたライエは、表情を固くしながら静かにその場を離れていった。

 

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ブラドから報告を聞いたクルーテオは驚きの表情を浮かべた。

「まさか、お前と引き分けるとは」

「地球人にもなかなか骨のあるやつが居た。次に合う時こそ決着をつける」

そう言い捨てて笑みを浮かべたブラドはクルーテオの前から去った。

クルーテオは顎に手を当てて思案した跡に、そばに経っているスレインに視線を向けた。

「…ちょうどいい、出撃の許可を求めた貴様に仕事ができたぞ。わだつみを追って、敵の戦力を分析しろ」

「承知しました。直ちに向かいます」

スレインはクルーテオの命令を聞き一礼をして、直ぐにスカイキャリアに向かった。

「どうやら、トリルランを倒した地球人に手を焼いているようだなクルーテオ」

クルーテオの目の前の映像にはザーツバルムが写っていた。

「そういえば、先程、お前が命令を下した少年。トロイヤード博士の息子か?」

「それがどうした?」

「なに、亡きトロイヤード博士について個人的に尋ねたいことがあったのを思い出したのでな」

「ふん、あの地球人が特に役立つような情報を持っているとは考えられんが。まぁいい、やつが戻ってきたらザーツバルムとの面会を伝えておく」

「感謝する、クルーテオ」

 

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ジャミングが一時的に開放され、船舶のモニターに写ったのは、ヴァース帝国の皇帝レイレガリアだった。

「和平のために尽くした我が家族であるアセイラム・ヴァース・アリューシアの死をもって、我々ヴァース帝国は悪逆なる地球人への正式な宣戦布告を行う」

避難民達はそれを恐怖しながら見ていた。

「何が宣戦布告だ。その前から攻撃してるじゃないかよ!!」

オコジョは憤りながらモニターに映るレイレガリアに対して声を上げた。

「たしかに、火星の姫様が死んで俺たちの目を覚まさせてくれた。俺たち地球人と火星人は戦うしかないと」

頭に包帯を巻いたマリトはミニボトルのウイスキーを飲んでそう言った。

「さっき繋がった通信では、地球軍本部も戦争をするみたいです。あと、15才以上で健康の方にマグバレッジ艦長より話があるとのことです。直ぐに私についてきてください」

ユキは避難民にそう言って広間から一部の避難民を誘導していった。

「話ってなんだろう?」

「この状況を考えると徴兵とかじゃない。戦争が始まるから」

ニーナとインコの会話を聞いたオコジョが頭を抱えた。

「徴収だって!!冗談じゃないぞ..」

セラムさんは顔を伏せた。

「御祖父様は止まらなかったのですね..」

「姫様…」

 

僕達がユキに誘導された会議室で、マグバレッジ艦長が現在の状況及び、地球軍の意向の説明があり、そして僕達の徴兵の話が上がった。

「これより、兵隊になった皆さんの働きに期待します。今後は、種子島基地で補給を行い、ロシアの地球連合本部に向かいます。それでは直ちに配置に着いてください。以上、解散です。」

その後、作業服を支給された僕達は格納庫に居た。

「整備員だけましか」

青い整備服を着たオコジョは忌々しそうに支給された服を引っ張っていた。

僕とインコは戦闘要員用の緑色の軍服を渡されていた。

「今後、本当にやっていけるのかな」

「そりゃ、やっていくしかないだろ...生き残るためには」

インコは軍服を強く抱きしめて、不安を呟いた。

「ここ15年も戦争をしていないんだ。相手も素人さ」

「マリト大尉」

僕達に近づいてきたマリトは僕に視線を向けた。

「港の戦闘で情けなくやられていた俺をお前が助けてくれたんだよな、界塚弟。本当に助かった」

「いえ、当然のことをしただけです」

「そう言ったって目の前に敵がいる中で、なかなかできる事じゃねーよ」

マリトは大破した僕のカタフラクト・スレイプニルに近づいていった。

「そうだ、お前らは次の目的地の種子島について知っているか?」

「種子島ですか?たしか、ヘブンズ・フォールが起きた時に、月の破片が初めに降り注いだ場所だったと思います」

「インコ、よくそんなの知ってるな?」

「逆になんでオコジョは知らないのよ?学校の座学でやったじゃない」

「当時、種子島基地配属だった俺はヘブンズ・フォールの後、種子島レポートを作成して本部に提出したが握り潰された」

マリトは振り返って僕達の方に視線を向けた。

「種子島に月が落ちる前に、火星の奴らが降りてきた。そして、地球カタフラクトなどなかった俺たちは戦車で化物の火星カタフラクト相手に戦い、そして全滅した。だが、その後すぐにヘブンズ・フォールが起きて、火星の奴らは種子島基地ごと吹き飛んだ。それについて書かれたのが種子島レポートだ」

「どうして種子島レポート握りつぶされたんですか?」

僕がマリトに尋ねると、マリトは肩をすくめた。

「さあな、物的証拠はなく俺のレポートは妄想扱いになった」

マリトはそう言い残して格納庫の出口に足を向ける。

 

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わだつみの甲板でフォークリフトでの作業が終わった僕は、破壊されたスレイプニルの代わりに割り当てられたカタフラクト・アレイオンのスペックをタブレットで見ていた。

「基本的にはスレイプニルと同じで、出力が増えるが、重量が増えただけ移動速度が下がる…か。実際に動かしてみないと差異はわからないな」

僕はタブレットしまったとき、ふと甲板に座る人影を見つけた。

僕の足音に気づいたのか、こちらをセラムさんが向いた。

「イナホくん」

「何を見ているの?」

セラムさんは目の前に広がる広大な海と快晴の空を見つめた。

「いつみても、本当に美しいですね」

「前に地球に来た時は、内陸だったから海は今回始めてでしたね」

「えぇ」

セラムさんは微笑んだ。

「そうだ、セラムさんは空が青い理由を覚えていますか」

「もちろんですよ。空が青いのはレイリー散乱でしたよね」

セラムさんは立ち上がり僕の目を見つめた。

僕は自然とセラムさんに近づいていた。

「そうだ!イナホくんはまだ、宇宙から地球を見たことはありませんよね?次は一緒に、宇宙からこの地球を眺めましょう」

「うん、この戦争が終わったら二人で」

「あ、姫様とイナホさん。ここにいらっしゃったんですか」

エデルリッゾが甲板にいた僕達に気づいて近寄ってきた。

「エデルリッゾ。宇宙にはないこの青い空の景色はどうですか?」

「はい、とても素晴らしいです!」

「ふふっ、空が青いのは...」

セラムさんがエデルリッゾに青い空を語っている光景見た僕は、彼女を守りたいと強く思った。




次回から種子島戦です
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