僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z  イナホに憑依)   作:ロベルトジョー

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6話

夕焼けの空は雲がかかり薄暗く不気味な景色を表していた。

海上を進むわだつみの船頭に一人の男が座り、目の前に見える暗黒に包まれる種子島をぼんやりと眺めている

「今夜には種子島に着きますね、マリト大尉」

「マグバレッジ艦長か...そうだな」

座って種子島を眺めているマリトに、マグバレッジは立ちながら横に並んだ。

「どうですか、久しぶりの種子島は?」

「...屈辱的で惨めな気分にさせられる。火星人共に蹂躙され、死んでいった仲間達を残して、俺だけが生き残ったことを実感するんだよ」

マリトは手に持っていたミニボトルのウィスキーを口に少し含んだ。

「筋違いでしょうが今でも私は、貴方が生き残り、私の兄が死んだいったことに思うところがあります」

「艦長の兄?どこの部隊所属だ?」

「貴方の相棒ですよ、ヒュームレイという名前を忘れたとは言わせませんよ」

マグバレッジはマリトをギロリと睨んだ。

「あいつに妹がいたのか...お前はヒュームレイの最後を知っているか?」

「既に貴方の書いた種子島レポートは読んでいます」

マリトはその言葉を聞いて目を閉じた。

「そうか、ならアイツを見捨てた俺は憎たらしいよな?」

「...」

マグバレッジは返事をしなかったが、マリトは察したのか自分の懐から拳銃を取り出した。

「今、あんたが俺に死ねと命令すれば俺は、こいつの引き金を引きながら海に飛び込む。お前にはアイツの敵討ちをする権利がある」

マリトは立ち上がり、こめかみに拳銃を当てながら、海の方に歩いていった。

「そんなことは命令しませんよ。私を公私の区別がつかない人間と思いですか?それに、あなたが自害したところで兄は報われません。あなたに命令することはただ一つ、火星人と逃げずに戦い続け生き残りなさい」

「ふっ、なかなか厳しいことを言うじゃあねぇか」

マリトは拳銃を降ろして、種子島の方に向き、持っていたミニボトルを海に投げ捨てた。

その時、マグバレッジは種子島から幾つかの光りが船に迫っていることに気がついた。

「敵襲!?…くっ」

「なんだ!?」

ふらついたマグバレッジを支えたマリトは甲板に突き刺さっていた鋼鉄の巨大な拳に目を開いた。

 

 

「戦闘隊員はすぐさま格納庫に集まって下さい。整備兵は各自、持ち場に着いてください」

艦内が大きく揺れた後、緊急の艦内放送によって、食事前に食堂に集まっていた僕達は急遽、戦闘配置についた。

「すぐさま、カタフラクトは敵の攻撃を撃ち落としなさい!!さもないと、種子島に着く前にこの船は沈みます」

マグバレッジの声が無線機から聞こえ、次々とわだつみの戦闘隊員達はカタフラクトに乗り、甲板へと送られる。

「えぇと、敵は種子島からこっちに向かって鋼鉄の塊?を飛ばしているみたい」

インコは共有された情報をタブレットで見ながら、出撃を待っていた。

「今回の敵は固定砲台かよ。あまり船壊されると、俺たちの仕事が増えるんだが」

「何のん気なこと言ってるのよ」

「え、ユキさんもう怪我は大丈夫なんですか?」

オコジョのぼやきに対して割って入ってきユキの腕には補助器具が着いていた。

「もう大丈夫よ。むしろ、この機械着けていたほうが力が強いわ」

「そうは言っても全治2週間の怪我だろ?安静にしなきゃいけないと思うけど」

「ナオくんに心配して貰って嬉しいけど、もうすぐ私の出撃だらか行くね」

ユキはカタフラクトに向かって歩いて行った。

「イナホくん、ちょっといいですか?」

「セラムさん、どうしたの?」

僕の背後にセラムさんとエデルリッゾが居た。

「あれ、そういえばこの船に乗ってからよくイナホとよく一緒にいる、えぇと、誰でしたっけ?」

「私はセラムです。あなたはイナホくんのお友達ですか?」

「うん、私はインコ。イナホとは幼馴染で今は同じ学校に通ってる。いや、今は通ってたかな。そういう、セラムさんはイナホとどういった関係で?」

セラムさんは少し考えた後に僕の方をチラリと見た。

「イナホさんとは…特別な関係でしょうか」

「と、特別!?い、一体、いつからなの!?」

「おいおい、我らが学年主席に春が来たと思ったら、相手が美人すぎて冷やかす前に嫉妬しか湧かないんだが…イナホ、お前どうやって落としたんだよ!?」

インコと、オコジョに問い詰められた僕は辟易としてセラムさんの手を握り、意図せずに燃料投下をしながらその場から離れた。

前にエデルリッゾに同じことを言ったら誤解をしたことがあったのに、ここでもそれを言うとは確信犯ではないかと僕は思う。

 

「それで、話というのは敵カタフラクトについて?」

セラムさんを格納庫の隅まで連れてきた僕は、セラムさんにそう尋ねた。

「はい、今回の敵はフェミーアン伯爵。今までと異なって、37家門の伯爵にはそれぞれに一騎当千の力を持つアルドノアが与えられています。そして、彼女のアルドノアの力は召喚で、印を付けた物を手元に呼び出すことが出来ます」

今回の敵はアルドノアの召喚を用いて、推進器付きの鋼鉄の拳を呼び出して、僕たちに射出しているのか。

「また、彼女のカタフラクトには6本の巨大な腕があり、それらは彼女を近く敵を屠り、頑強な盾になるとも聞いたことがあります...現在、わだつみは彼女から距離がある以上、彼女に勝つことは困難です」

「今のところ戦艦の被害は軽微で、このまま種子島には到着出来そうだけど」

「フェミーアン伯爵は嗜虐心があると噂になっていました、意図的に攻撃の手を緩めていると思います」

セラムの説明にエデルリッゾが補足した。

「私を彼女の近くまで連れて行けるなら、彼女の召喚を止めることが出来ます。しかし、縦横無尽に飛び回る6本の腕の対処には手を焼くでしょう」

その時、船内が大きく揺れ、僕は倒れそうになるセラムさんを支えた。

「イナホくん。今回は、トリルランやブラドの時と違って、敵が強いだけでなく圧倒的不利な状況です...それでも行くのですか?」

セラムさんは僕にしがみつき、下から僕を見上げた。

「この船が沈むと僕達は生き残れない。出撃以外の選択肢が選べないんだ」

「それなら、私もイナホくんの機体に乗せてください。私が召喚を止めればわだつみは種子島に近づくことが出来ます」

エデルリッゾはそれを聞いて大きく慌てた。

「ひ、姫様。戦場に立つなど危険過ぎます。トリルラン卿の様に姫の力で敵を無力化出来る訳では無いのですよ!?」

「それは、先ほどイナホくんが言ってましたよ。この船が沈んだら私たちは生き残れない、と。ですよねイナホくん?」

あぁ、なるほど。僕がセラムさんの連れて行くことが拒否出来なくなった。

セラムさんを僕がフェミーアンの元に連れていかなければ、わだつみが沈む事を避けられないのは間違いないだろう。

しかし、僕の感情面ではセラムさんを戦場に立たせたくないと強く感じている。

「...でも、カタフラクトの狭いコックピットには一人分の席しか用意できません。大きく揺れることが予想される以上、床か壁に固定させる必要がありますが、揺れで怪我をする可能性が高いです」

セラムさんはそれを聞いて少し考えた後に目線をやや下にして頬を薄赤く染めた。

「私に考えがあります」

 

僕がコックピットの操縦席に座り、セラムさんは僕の膝の上に、僕に背を向けて座りシートベルトでキツく固定した。

「イナホくん、キツくはありませんか?」

「...大丈夫です」

僕はセラムさんの体の感触に、これから戦闘にも関わらず集中をかき乱される。

頬を真っ赤に染めたセラムさんはやや腰を動かして、何かを気にした様子だった。

「あの、何か当たって...いえ、何でも無いです」

「...すみません」

もはや、僕は気にしない事にした。

合図を送られた僕のカタフラクトは、甲板へのエレベーターに乗った。

ここまでに10機以上のカタフラクトが出撃をしているが、僕の番に回ってきたということは、未だに状況が好転しないということだろう。

「セラムさん、甲板に上がったら特注の推進器で種子島に着陸を目指します。敵の攻撃の勢いが強くなると予想されるので、しっかり掴まって下さい」

「分かりました。私の命をイナホくんに託します」

そう言ったセラムさんは操縦席の肘掛の部分を強く掴む。

「行きます」

僕のカタフラクトの背部に無理矢理装着した様な大きなロケットの推進器から青い炎が勢いよく噴射した。




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