僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z  イナホに憑依)   作:ロベルトジョー

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7話

「わらわの領地に断りもなく踏み込んだ無礼な地球人で遊んでおったが、どうやら身の程をわきまえずに、近づいてくる愚か者もおるようだな」

フェミーアンは歪んだ笑みを浮かべ、真っ赤に染まった瞳で、背部にロケットのような推進器で真っ直ぐこちらに迫る地球カタフラクトを捉えていた。

「しかし、ヘブンズフォールで死んだオルレインのアルドノアを捜しに何もない荒地に降りて間もなく、この地に何かを求めた地球人共が来るとは。やはり、わらわの勘は正しかったようだ」

フェミーアンの乗るカタフラクト・ヘラスの周りに大量の巨大な鋼鉄の拳を出現させた。

「これは躱せるか?地球人」

 

 

質量兵器となった鋼鉄の拳が面となって、飛行中の僕たちを圧殺するように向かってきた。

「グレネードを打ちます。強く揺れるので、掴まって下さい」

「分かりました」

ライフルから撃ち出したグレネードは、爆発によって拳の機動を大きく逸らした。

しかし、逸れた拳は光とともに消え、再び敵のカタフラクト、ヘラスの周囲に出現した。

「撃ち出した拳もすぐに召喚できるのか!?これじゃ、キリがない」

数十の拳の弾幕が迫ってきているのを見た僕は、機体を上空に傾けて急加速をして退避した。

さらに追ってくるミサイルの様に迫る拳をフェイントを入れて躱し、暗黒の雲の中に入った。

機体のすぐそばを射出された拳が何度も通り過ぎるたびに、余波で機体を揺さぶられながらも雲の上にむかって飛び続けた。

「敵の攻撃は高度な追尾性能がなくて助かった...一旦は危機を脱出しました、セラムさん大丈夫ですか?」

「えぇ...なんとか」

急な加速を受けたセラムさんは息を荒げながら、深呼吸をして呼吸を整えていた。

その時、雲を抜けた僕達は眩い夕焼けと一面朱色になった絶景に言葉を失った。

「...イナホくん。雲の上の景色もまた美しく、素晴らしいです」

「僕もそう思います...名残惜しいですが時間がありません。セラムさんのアルドノアの効果はどれくらいの範囲まで効果が発揮できますか?」

「少なくとも、フェミーアンの数百メートル程度だと思います」

「今の兵装だと、ヘラスに近づくのは困難です…一旦、ヘラスの注意を引いて、わだつみへの攻撃の手を緩めさせる方針に変えます」

僕は再び雲に潜るよう操縦桿を操作した。

 

僕のカタフラクトが急降下で雲を抜けると、ヘラスはわだつみに向かって攻撃をしていた。

僕は、ヘラスに向かってグレネードを数発撃ちだした。

「やかましいぞ、逃げるしかできぬ地球人が」

僕に気づいたフェミーアンは、ヘラスから6本の巨大な腕が分離させて周囲に浮かべてグレネードを防いだ。

「あれが巨大な6本の腕です。今まで撃ち出していた拳と異なり、自在に動かすことができます」

無傷のヘラスからは報復とばかりに、今まで以上の数の拳をあたり一面に召喚して僕の機体に向かって射出した。

僕は高速で飛来してくる拳を避けながらヘラスに近づいて、それを数回繰り返した。

ヘラスが数百を超える拳の広大な面が同時に連続して射出された。

「!?あの数は避けられない」

僕は、向かってくる拳に対して闇雲にグレネードを打ちまくった。

しかし、爆発により一番手前の拳の軌道をそらしても、その後ろに控える拳が迫っているのが見えた。

「イナホくん…」

その声が聞こえたときには弾倉のグレネードが尽き、間もなく拳の弾幕が視線の先に迫っていた。

「ごめん、セラムさん...この戦い、僕達の負けだ」

カタフラクトの腕をコックピットを守るように、交差させる。

セラムさんが僕の手を握り、僕はセラムさんの手を握り返した。

「あきらめるな、界塚弟!!」

無線機からその声が届き、向かってきた幾つかの拳の推進部が爆発した。

爆発したその拳は僕の機体にぶち当たり、拳の勢いが僕の機体を吹き飛ばして、種子島の大きな亀裂の中に落ちていった。

 

 

フェミーアンは自分の鋼鉄の拳を攻撃した機体に鬱陶しそうに睨めつけた。

その機体はイナホと同じように背部に大きな推進機を無理やり取り付けたカタフラクトで、ライフルをヘラスに向けていた。

「その時代遅れのロケットを背負っても、わらわの攻撃を躱すことはできぬのは先程見ていただろう。手をわずわらせるな」

フェミーアンはイナホの時と同じように周囲に多数の拳を召喚して、海上を高速で進むカタフラクトを撃墜すべく射出させた。

「あぁ、たしかに俺だけなら躱せないだろう。だが、….」

飛んでいるマリトのカタフラクトの上を、数機のミサイルが抜いて拳に着弾した。

その後に、いくつかの弾丸が続き拳の軌道を逸し、マリトは拳の弾幕の薄いところへ進んでいった。

「全速前進、後のことは考えなくていいです。全主砲は、目の前の敵の攻撃しなさい。カタフラクト隊はわだつみの甲板からマリト大尉を敵の攻撃を撃ち落としなさい」

マグバレッジが椅子に座りながら、マリトのカタフラクトを見て呟いた。

「マリト大尉、任せますよ」

 

マリトは愚直にヘラスに向かって突撃した。

「援護射撃程度でわらわの攻撃は撃ち負けるわけなかろう」

フェミーアンが出現させている鋼鉄の拳の数は数千を超えて、その全てがマリトとその後ろのわだつみに向かって次々と射出されている。

マリトは避け損なった拳により機体の片足が破損し、わだつみもまた、幾つもの拳が艦体に突き刺さった。

「おぉぉぉぉぉぉ!!!」

そして、被弾をしながらもマリトは種子島に到着し、そのままの勢いでヘラスに突撃をした。

「無駄だ。近づいた程度で、眷属達によってその指はわらわに届きはせん」

ヘラスは浮かべていた6本の巨大な腕を前に持っていってマリトの突撃に迎え撃った。

「それは、分かってる!!だからこそ、俺の目的はお前への直接攻撃じゃない」

マリトはカタフラクトからベイルアウトして森の中に着地した

コックピットのなくなったカタフラクトは、そのままヘラスの腕にぶち当たり広範囲に渡って大きく厚い白煙を撒き散らした。

「作戦成功です。カタフラクトに大量に積んでいた煙幕によって、敵の視線を遮っている今がチャンスです。このまま、艦体の軌道を右にずらして、種子島に接近してください」

わだつみの軌道が逸れても、ヘラスは同じ方向を攻撃し続けていて、海に大量の鋼鉄の拳が大きな水しぶきを上げて次々と飛び込んでいった。

「小賢しいぞ、地球人!」

もはや、視界は白煙に包まれ、フェミーアンは逃げたマリトに追撃するために、無差別に種子島に拳を射出した。

その衝撃により、種子島の沿岸部の崖が崩れ、わだつみが入れるほどの大きな洞窟が現れた。

「!?艦体はあの洞窟に向かって突撃してください」

マグバレッジは指示を飛ばした後に、艦体は急な軌道修正を行い、そのまま洞窟へと向かい、そして、船首が洞窟に入った。

「皆さん、耐衝撃用意。何かに捕まりなさい!!」

マグバレッジが呼びかけると同時に、わだつみが岩を削りながら洞窟に侵入していった。

 

 

「...イナホくん!意識はありますか!?」

「ぐ、っ...セラムさん?」

僕がセラムさんの声に気がつくと、そこには心配そうに翡翠の瞳で僕の目を見つめているセラムさんが介助していた。

力が入らない体を無理やり起き上がらせ、壊れたコックピットから出ると目の前には今まで見たことのない真っ赤なカタフラクトが立っていた。

「ここは?」

「私達はヘラスに撃墜された後に、種子島のこの大きな亀裂の中に落ちたのです」

あの時、僕達に迫る拳の推進機をマリトが破壊したため多少の減衰が起きたのが、カタフラクトは大破したが僕達が奇跡的に行動不能な怪我を負うこともなく生き残れた要因に違いない。

「この真っ赤なカタフラクトは火星の?」

「私はこのようなカタフラクトは見たことがありません。おそらくヘブンズ・フォールの前に地球に来ていた火星騎士のものだと思いますが...」

僕は、そのカタフラクトに近づいた。

今、自分のカタフラクトを失った僕が撃墜されて落ちた先に、この火星カタフラクトが立っていた。

このカタフラクトは僕が来るのを待っていた、そんな気がしていた。

まるで、物語のようにご都合主義な展開だ。

「火星カタフラクトはどうやって乗るの?」

「火星カタフラクトはアルドノアがなければ起動しません。私に任せてください」

セラムさんは火星カタフラクトに近づいて、その装甲に手を触れた。

セラムさんの瞳が赤く染まり、胸元からまばゆい光りが発生すると、それに答えるようにカタフラクトの瞳が光り駆動音を立てて、コックピットを開いた。

「アルドノアがない僕でも操縦だけはできる?」

「はい、起動さえしてしまえばカタフラクトはアルドノアを持たない人でも操縦は可能です」

僕が火星カタフラクトのコックピットに入り、腰を下ろすと様々なゲージが表示された。

セラムさんは、前の時と同じように僕の膝の上に背を向けて座った。

「そもそも、火星カタフラクトはアルドノアを持つ者の戦闘の補助が目的です。そして、すべての火星カタフラクトは操縦者のアルドノアの力をより強化する。私の力の効果範囲もまた拡大することができるはずです」

コックピットを閉め、徐々に表示されているゲージが伸びていることが確認できた。

「操縦はこの玉に手を触れてください。この玉から操縦者の意思を感じ取り、カタフラクトが動きます」

僕は言われた通りに、左右の玉をそれぞれ掴み、前に移動するように念じる。

おそらく数年以上も起動すらなかったであろうカタフラクトは軽快に前方に歩いた。

セラムさんは、玉を掴んでいる僕の手に手を被せて玉に触れる。

「行きましょう。イナホくん」

「はい、セラムさん。今度は勝ちに」

 

真っ赤な火星カタフラクトの背部の推進機が音を立てて、ゆっくりと機体が浮かび始めた。

 

 




原作でのカタフラクトのデューカリオンはアルドノアを取り出されて戦艦に移植されましたが、このSSの設定ではアルドノアは人が取り込んでいます。
そのため、デューカリオンは特に整備された状態で、無傷で種子島の基地に格納されていた、という流れにしました。
原作イナホくんは最後まで地球カタフラクトで戦っていたけど、なんかパワーアップが合ってもいいだろう、と思いこのSSのイナホくんは火星カタフラクトに乗ります。
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