僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z イナホに憑依) 作:ロベルトジョー
白煙の中、ヘラスに乗りながらフェミーアンは種子島の小丘で待機していた。
「煙が晴れた時こそお前たちの最後だ、地球人共」
フェミーアンは悪態を着いた時、上空で火星のスカイキャリアが接近して通信を求めている表示がスクリーンに現れているのに気がついた。
「貴様、ここは我が領地だと知っての侵入か?」
「恐れ入ります、フェミーアン伯爵。私はクルーテオ伯爵より、ここに逃げ込んだという地球人の戦艦への攻撃を命ぜられています」
「ふん、あれはわらわの獲物だ。直ちにここを去れば不問にしよう」
「申し訳ありませんが、私はクルーテオ伯爵より戦力の分析をするようにも命ぜられています。攻撃に加わりませんが、地球人を殲滅するまでは上空で観察させていただく許可を頂きたく思います」
「邪魔さえしなければ、好きにしろ。ただし、地球人の殲滅が確認できたから直ぐに去れ」
「承知しました」
スレインはそのまま上空を旋回し始めた。
亀裂の中に僕達は居た。
「この火星カタフラクトには武装が積んでいないのか?」
セラムさんの説明を聞きながら、真っ赤な火星カタフラクトを色々、動かしている。
その結果、強力な飛行能力を持つこの機体の攻撃手段が、現状体当たり以外にないことがわかった。
「火星カタフラクトには、武装を使わずに操縦者のアルドノアの力を補助するだけのものもあります。以前戦ったトリルランのニロケラスもアルドノアの力が無ければ、武器を持たない巨大な鉄の塊にしかなりません。ですから、私のアルドノアの力を攻撃に使うしか方法がありません」
「セラムさんのアルドノアの力は、アルドノアの停止って前聞いているけど、それ以外にも何かあるんですか?」
セラムさんは僕の手の甲を覆っている手を少し強く握った。
「アルドノアには階級があり、階級が大きいアルドノアはそれより下の階級のアルドノアを制御することができます。私のアルドノアは皇帝とほぼ同程度の階級で火星の王族以外のアルドノアの制御の権限が与えられています」
「つまり、前にセラムさんが見せた敵のアルドノアを無効化する力はそれによるもので、本来は他にも力があるということですか?」
「はい…そして、私のアルドノアの力は概念への干渉だそうです。あまりに強力な力で普段の私には扱えるものではありません。しかし、今、このカタフラクトの補助があることで使えるようになっている気がします」
セラムさんのいう概念への干渉というモノがどういうものか分からない。しかし、今は時間が残されていない以上、それに頼る他ない。
「この白煙が完全に消える前に、この亀裂から出て奇襲をかけます。セラムさん、行きますよ」
僕は地球のカタフラクトでは到底出ないであろう急上昇をして亀裂から外に出た。
「ほう、逃げずによく来たと褒めてやるべきか、それとも愚かだと罵るべきか。まぁ、いい。やることは変わらぬ」
フェミーアンの乗るヘラスに向かって急速に距離を詰めてくる機体に対する警告が、コックピットのスクリーンに現れた。
「今度こそ、潔く逝け」
フェミーアンは最初から数千もの鋼鉄の拳を、白煙に向かって接近してくる機体の方向に射出した。
しかし、直ぐに予期せぬことが起きたことにフェミーアンは気づいた。
「なぜ、召喚が出来ぬ!?しかも、断片すら残らんほどの攻撃を超えて、接近ができるのだ!?」
攻撃により若干薄くなった白煙の中、ようやく見えたのは真っ赤なカタフラクトだった。
「デューカリオン!?なぜ、地球人が…いや、オルレインのアルドノアか!ようやく見つけたぞ!!運命に干渉する唯一のアルドノア!!!!」
ヘラスが浮かべていた5本の腕を向かってくるデューカリオンに向かわせた。
「アルドノアよ。この機体の装甲に触れる固体を溶解せよ」
スクリーンに前方から敵の攻撃の警告が現れたと同時に、セラムさん翡翠の瞳が赤く染まり、胸元から光りを放つ。
その時、セラムさんの胸元の宝石が砕け、姿が金髪の本来の姿になった。
白煙から目の前に現れた鋼鉄の拳は、元々液体であったかのように、次々と機体にぶつかった瞬間に液体に変わった。
「アセイラム・ヴァ―ス・アリューシアの名において命ず、我に危害を加えようとするアルドノアを停止せよ!」
再び、アルドノアの力を使ったのか、さっきよりも眩い光りを放つ。
「イナホくん。これで、フェミーアンはアルドノアの力を使えなくなりました」
「分かりました」
僕は、更にヘラスの向かって加速した。
「前方に敵反応!」
「私のアルドノアの力がこの機体を覆っています。このまま突進してください」
巨大な腕が広げている手に向かって突進した機体は、手のひらから腕を溶解していった。
「なんて強力なアルドノアだ」
「思った以上に消耗が激しいです…早く決着の方をお願いします」
弱々しくなったセラムさんの声に気づき、チラリと顔を見ると玉のような汗を書いて頬は赤くなっていた。
そして、ようやくヘラスを視界に捉えた。
「なぜ、子爵のオルレインのアルドノアが、伯爵のわらわのアルドノアの制御が聞かない!?しかも、逆にわらわのアルドノアが停止させられているだと!?それができるのは王族だけのはずだ!!」
最後の一本の腕を溶解したのを見たヘラスは、驚きで動けないようであった。
僕はヘラスに向かい急加速をした。
「まだだ!!わらわの運命を変え、皇帝即位の野望はまだ終わらんぞ!!」
状況把握の出来ていないフェミーアンは、ヘラスを巨大な拳に変形して突撃をしてきた。
「決着だ」
僕は迫るヘラスに向かって突進し、機体に触れたヘラスはその勢いで自ら液体へと変わっていった。
日が沈み、辺りは夜の風景になっていた。
僕達がヘラスを倒して、しばらくしてから種子島の中心部から戦艦が現れた。
巨大な戦艦には、大破したわだつみから乗り換えたマグバレッジ艦長やマリト大尉、ユキ、インコ達、その他船員が乗っていた。
この戦艦には、どうやら火星のテクノロジーが使われておりエデルリッゾが起動させたと後に聞いた。
火星カタフラクトに乗っていた僕達は、無線で予めこの火星カタフラクトには自分が載っていることを伝え、戦艦の甲板に着陸しコックピットを降りた。
そして、火星カタフラクトを囲んでいた皆が驚いていることに気づき、一緒に降りてきたセラムさんの姿がいつもの変装姿ではなく、本来の姿に戻っていたことを失念していた。
「どうして、火星のお姫様が生きている!?」
マリトがセラムさんに向かって歩いて来たので、セラムさんを隠すよう僕は前に出た。
「セラムさん…アセイラム姫は火星人のスパイによって暗殺されかけて、新芦原で彷徨っているところを僕が保護しました」
「なぜ、それを教えてくれなかったのですか?」
マグバレッジ艦長が鋭い視線で僕の答えに疑問を投げる。
「それは、どこに火星のスパイがいるか分からなかったためです」
「おい、イナホ。お前、自分が何やってるか分かるか!!そいつは、俺たちを攻撃してカームを殺した火星人の奴らの親玉だぞ!」
「オコジョ、抑えなよ」
インコが今にも飛びかかりそうなオコジョを羽交い締めにした。
「アセイラム姫が居なければ、きっと僕は、いや僕達は新芦原で死んでいました。彼女の協力無しでは、今後も火星人達の猛攻を凌ぐのは無理でしょう」
「イナホくん…」
僕がセラムさんの擁護をしていると、弱々しい声を上げてセラムさんが僕の背中に抱きついてきた。
「セラムさん!?すみません、アセイラム姫はヘラスとの戦闘で、度重なるアルドノアの使用により非常に消耗しています。今すぐ、救護室につれていく必要があります」
僕はセラムさんを背負い、周りの言葉を無視して軍医の先生と共に救護室に連れて行った。
「アセイラム姫が生きていた…そして、地球人に捕らえられている。早く、このことをクルーテオ伯爵に伝えなければ」
スレインは戦艦に感知されないように、雲の影にゆっくりと漂いながら、その光景を見ていた。
セラムさんをチートにし過ぎた感があった