僕の考えるA/Z (旧タイトル: A/Z  イナホに憑依)   作:ロベルトジョー

9 / 16
9話

「何?姫様が生きているだと」

「はい、クルーテオ伯爵」

種子島から東京の揚陸城に帰還したスレインは、クルーテオに種子島で目撃した内容について報告した。

「そして、火星騎士を倒すために捕らえられているだと…それは真か?」

「はい。こちらに、その時に録画した映像があります」

スレインの報告を通信画面越しに聞いていたザーツバルムが割り込んだ。

「この見覚えのある赤い機体…まさか」

「デューカリオンだと…」

スレインの報告を通信画面越しに聞いていたザーツバルムが、驚愕して声を上げた。

「直ぐに救出部隊の編成を。そして、僕もその部隊に配属させてください」

「待たれよ。姫の力が地球人共の手に渡ったとなれば、正面から追撃をしたところで、我々は少なくない犠牲を払うことになる。そして、姫が人質となっている以上、むやみに手を出すと姫のお命までもが危うくなる」

「しかし、…」

「確かに、ザーツバルムの言うことも一理ある。確か、姫のアルドノアの力は物体に自分の思い浮かべた属性の付与だったハズ。映像のフェミーアンがデューカリオンに触れた途端に液体へとなっているのは、その強力すぎる力によるものだろう」

クルーテオは顎に手を当てて考え始めた。

「我に策がある。数刻したら、また連絡する」

ザーツバルムはそう言い捨てて、通信を切った。

 

 

「…おのれ、地球人共が!!我が大望の邪魔をするだけでなく、オルレインの機体を奪い、我と敵対させるとは」

ザーツバルムは持っていた杖を地面に叩きつけ、憤怒で怒鳴り声を上げた。

 

 

 

 

 

種子島から出発した巨大戦艦に乗った僕達は地球軍の基地へと向かっていた。

フェミーアンとの戦いの後直ぐに、気を失ったセラムさんを救護室へ運んだ僕は介抱する暇もなく、マグバレッジに呼ばれて戦艦内の会議室に呼ばれた。

僕が会議室に着くと、マグバレッジ以外にも副館長の不見咲、ユキ、そして、エデルリッゾが既に待っていた。

「あなたに聞きたいことがあります。あなたが火星のお姫様をかくまう理由は既に教えてもらっていますが、それに至った経緯について教えて下さい」

僕は新芦原で火星騎士との戦いから今に至るまでの話を、マグバレッジやユキに所々質問されながら説明した。

「しかし、火星カタフラクトが火星騎士のアルドノアを補助するものだったとは。そして、そのアルドノアはアセイラム姫により無効化できる。これは我々にとって強力な切り札ですね」

「姫様を利用することは、私が許しません!」

不見咲の言葉に反応したエデルリッゾが少し怒りながら反応した。

「火星騎士に追われている現状、生き残るためにはお互い協力が必要不可欠です。もちろん、無理強いさせるつもりはありませんが、もし、我々が危機に陥った場合は同時にアセイラム姫にも危険が迫ること忘れないで欲しいですね」

「しかし…」

「アセイラム姫のアルドノアの力は非常に強力ですが負荷も非常に大きく、使用すれば気を失うほどの消耗をするようです。あまり、多用できる力ではありません。それに、彼女を前線に立たせて怪我でもさせれば、後に火星側とのやり取りで地球側の負い目になります」

僕はそう言うと、マグバレッジは頷き僕の言葉を肯定した。

「以後、我々の第一目標を、アセイラム姫を地球軍本部へ無事に送り届け火星にその安否を伝えることとします」

 

 

救護室に運ばれたアセイラムの目が覚めると、喜びの表情を浮かべたエデルリッゾがアセイラムに抱きついた。

「心配かけました、エデルリッゾ」

「姫様、よくぞご無事で!」

アセイラムはエデルリッゾと抱きながら、周囲を探すように見回した。

「イナホくんは?」

「乗っていた火星カタフラクトに何人かの船員を連れて、コックピットの説明をすると言っていました」

「そうですか…」

アセイラムの少し残念そうに呟いた。

 

軍医から健康に異常なし、との診断を受けたアセイラムは汗を流すためにシャワールーム入った。

シャワールームには既に人が入っていて、一番奥の方の個室に入ったアセイラムは着替えを始めた。

「全く、姫様を利用するなどと本当に許せません。それに、私達は被害者なんですよ」

「私達は協力するしか道がない以上、助け合いは必要なことですよ。あまり、敵意を向けてはいけません」

「姫様がそう仰るなら…。あれ、すみません!今すぐ代えの着替えを持ってきます!!」

アセイラムに脱いだ服を手渡されたエデルリッゾは、着替えがないことに気がついてシャワールームから出ていった。

アセイラムは、スレインに渡された首飾りを壁に掛けシャワーを浴び始めた。

それと同時に、先にシャワーを浴びていた人が個室から出てアセイラムの入っている個室に近づいた。

シャワーの音によって、アセイラムは人が近づいてきていることに気が付かなかった。

「...」

赤毛の少女は壁に掛かっていた首飾りを手に取った。

 

 

整備士達に火星カタフラクトのコックピットを、僕が知っている範囲で説明した。

地球カタフラクトと異なり、アルドノアによって起動される火星カタフラクトを見た彼らは一通り見た後に、お手上げの様子で解析しなければ分からないと言い、その場は解散となった。

ちなみに、僕が使っていた地球カタフラクトのアレイオンは大破したため、次の戦いに備えて代わりのカタフラクトが必要になったが、火星カタフラクトはアルドノアを持たない人が扱ってもタダの鉄の固まりに過ぎず、再びアレイオンを支給されることになった。

「この短期間でカタフラクトを二機も壊しているのは僕ぐらいじゃないかな」

整備士の人には、もう少し大事に扱えと苦言を言われてしまった。

「あ、イナホさん」

救護室に向かっている僕は、その途中で服を持ったエデルリッゾに出会った。

「やあ、エデルリッゾさん。セラムさんは元気?」

「はい、医師の方に以上は無いと診断されています。今はシャワーを浴びていらっしゃいます」

「それなら、僕は一旦部屋に戻るよ。荷物の整理もある…っ」

突然、悪寒が僕を襲った。

そして、僕の頭にセラムさんが苦しんでいるイメージが焼き付いた。

「エデルリッゾさん、セラムさんはシャワールームって言ってた!?」

「はい、そうですけど。え、あの、走ってどこに行くんですか!?」

僕はエデルリッゾの声を無視して、直ぐにシャワールームの方へ走った。

 

「セラムさん、大丈夫!?セラムさん」

「急にどうしたのですか?それに、姫様は今シャワーを浴びています…って、イナホさん、何で入っているのですか!?」

シャワールームに入った僕は、奥のシャワーの個室の備え付けられているカーテンが外れていて、床に落ちているのに気がついた。

「セラムさん!?」

僕が奥のシャワーの個室を除くと、そこには裸の状態でセラムさんが床に倒れていた。

直ぐに、セラムさんに近寄って様子を確かめる。

「呼吸なし、心拍なし、首を何かで締められた跡がある。まずい、今すぐAEDを使わないと。エデルリッゾさん、今すぐ、タオルとAEDを持ってきて!!これから救命措置を始める」

「姫様!!」

「早く行って!!間に合わなくなる」

僕は着ていたブレザーをセラムさんの体に被せて、胸部に両手を重ね、体重をかけて胸骨圧迫を始めた。

「セラムさん!!」

30回の圧迫を行い、セラムさんの顎を上に持ち上げ気道を確保する。

僕はセラムさんの唇に自分のを重ね、息を吹き込んだ。

「アセイラム姫は無事ですか!?」

「イナホさん、AEDを持ってきました」

マグバレッジとAEDとタオルを持ったエデルリッゾが急いでやってきた。

「直ぐに用意して下さい!」

僕は被せたブレザーを取り払い、エデルリッゾから受け取ったタオルでセラムさんの体を拭いた後に、AEDのパットを右胸と左わき腹に取り付けた。

「カウンターショック行きます。離れて下さい」

僕はAEDのボタンを押した。

電気ショックが起きたことを確認した僕は再び、胸部圧迫を行う。

「セラムさん、戻って来るんだ!!」

「姫様..」

胸部圧迫が終わり、人工呼吸で唇を重ね息を吹き込んだ。

その時、セラムさんが意識を戻り、薄っすらと開けた目が僕の目と合った。

「セラムさん!」

「っ….はぁはぁはぁ…」

「姫様!!」

僕は、セラムさんが助かったことに安堵した。

咳き込んだ後で呼吸を整えたセラムさんに僕は抱きついた。

「イナホくん、私は...」

「生きてる…本当に」

「姫差、姫様!!」

エデルリッゾもセラムさんに泣きながら抱きついた。

マグバレッジは、無線機で現状報告を行っていた。

だから、僕達は誰も背後を気にしていなかった。

「動かないで!!」

「...何のつもりですか?」

マグバレッジから拳銃を奪った赤毛の少女ライエは銃口をマグバレッジに向けた。

「アセイラム姫は!?」

「来るな!!」

そこに、シャワールームに入って来ようとしたユキ、マリト、軍医に対してライエは威嚇射撃をした。

「...一旦、離れましょう」

「わかりました」

ゆっくりとユキ達は部屋からゆっくりと離れた。

「君は何者だ?」

僕は個室から出て、ライエと向き合った。

「私はヴァースのスパイ。そして、火星人。私の父はアセイラム姫を暗殺するためにテロを起こした首謀者。あなたを殺せば、私達は火星で騎士の地位が授けられる。でも、口封じのために私の目の前で無残に殺されたわ!!」

ライエは憤りを声で表しながら、銃口を僕に向けた。

「私はもう火星には戻れない。でも、地球人でもない。帰る場所を失い、家族を失った私に残っているのは父の達成できなかったあなたの暗殺だけ。あなたが...あなたが地球に来たせいで私には全てを失った!!」

ライエの目は涙で溢れていた。

「…でも、あなたを締め殺そうとした私の気が晴れることは無かった。だから、もうあなたの暗殺はしない。でも…」

銃口を僕に向けたまま、ライエの指が引き金にかかった。

「あなたの大事な人を殺して、あなたの苦しむ姿を見たら満足できる気がするの」

「逃げてイナホくん!!!」

セラムさんが声を上げて立ち上がった時、一発の銃声がシャワールームに響いた。

 




本SSでは、ライエさんは若干病んでます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。