東方操装庫   作:猫仮面

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出会いと望み

少女「ねぇ、人と妖怪って仲良くなれると思う?」

 

青年「ん? 現に俺とお前が仲良いじゃねぇか」

 

少女「ふふ、それもそうね。」

 

20代ほどの青年と10代後半の少女が岩場に座り、仲良く談笑している。

 

この二人は、本来は出会ってしまったら争わなければならない運命である。

 

それは、生まれながらにして必然である。

 

しかし、この二人だけは違った。

 

初めて会ったのは、少女がもっと小さい頃。

 

__________

 

少女は、森の中1人孤独に泣いていた。

 

誰にも見つからず、誰とも話すことなく。

 

しばらくすると、近くの茂みがガサガサと音を立てる。

 

獣「グルルルルル」

 

出てきたのは1匹の獣。

 

それも、妖怪の獣。

 

少女「ヒゥッ...」ビクッ

 

少女は驚き、尻餅をつく。

 

獣が1歩また1歩と少女に近づいていく。

 

少女「や、やだ...来ないで...」

 

少女の懇願は空しく、獣は近づいてくる。

 

少女は腰が抜けてしまい、尻餅をついたまま後ずさりすると

 

ドンッ

 

少女「あぅ...」

 

後ろには大木があった。

 

既に、獣は目前。

 

走って逃げることなどできなかった。

 

少女「だれか...」チョロチョロ

 

少女は失禁してしまう。

 

獣は、また1歩と涎を垂らしながら近づいてくる。

 

少女「誰か助けて!!」

 

少女の声に反応し、獣が襲い掛かる。

 

少女「イヤァッ!!」

 

少女が丸くなり、目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

少女「......あれ?」

 

痛みは無い。

 

むしろ、襲われたという感覚も無い。

 

自分は既に死んで黄泉の国へと来てしまったのか?

 

そう思いながら、閉じた目を開ける。

 

目の前には

 

ポタッ...ポタッ...

 

1本の杭のようなもので獣の口は一突きされている。

 

よく見ると口だけではなく、体中にだ。

 

杭の根元には何やら黒いものが覆いかぶさっている。

 

少女「何これ...」

 

少女は目の前の光景が理解できなかった。

 

そして

 

パタッ

 

生きていたという安心感からか、その場に失神してしまった。

 

_________

 

少女「ん...んぅ...」パチリ

 

少女が気がつくと、空には雲が無く、代わりに満天の星空が広がっていた

 

耳を澄ますと、何やらせせらぎが聞こえる。

 

青年「おっ、目覚めたか。」

 

見知らぬ声が聞こえる

 

黄泉の国の人だろうか?

 

少女「ここは...?」

 

青年「ん? ここは、○○の国から少し離れた川だよ」

 

○○の国...?

 

それって、あの森の近くの...

 

少女「ハッ!!」ガバッ

 

体を起こすと、自分の体には毛でできた掛け物がかけてあった。

 

衣服に乱れは無い。

 

だが、股がスースーする。

 

青年「あ、君の下着は汚れてたから、そこの川で洗って今は乾かしてるよ。 あ、これそこの川で獲った魚だけど食べる?」

 

どうやら、下着が汚れていたので、この男性が洗ってくれたようだ。

 

....ん?

 

少女「...え?」

 

一瞬、思考がフリーズした。

 

そして

 

少女「こんのぉ...変態!!!!」

 

青年「グホォッ!!」

 

気づいたときには男性をグーで殴り飛ばしていた。

 

慌てて、近くに干されていた下着を履く。

 

まだ完全には乾いてないようで、少し冷たい。

 

青年「いたたた。いきなり殴ることなんて無いじゃないか」

 

少女「どの口が言うのよ変態!! 私を攫った上に下着を脱がせるなんて!!」

 

青年「いや、攫ってないし。 しかも、君の下着が汚れていたかr『言い訳はいらないわよ!!』なんか、すいません...」

 

青年が、腫れた顔で正座し、謝罪する。

 

しかし、ここで冷静になって考えてみる。

 

自分は、森の中で獣に襲われそうになった所を何かが獣を倒してそのまま失神してしまった。

 

少女「えっと...もしかして、貴方。 私を助けてくれた人...?」

 

青年「え゛っ、気づかなかったの?」

 

少女「.....ごめんなさい。」

 

素直に謝る。

 

この人は、自分を助けてくれた上に、失禁してしまった自分の下着を洗ってくれたのだ。

 

恥ずかしいことには変わりないが、彼は変態ではない。

 

_______

 

青年「ところで、君は何であんな所に? あそこは妖怪がいっぱい出る森だよ?」

 

少女「だって... 私、妖怪だもん」

 

青年「へ~..... えっ?」

 

青年は思考がフリーズする。

 

瞬時に間合いをとろうかと考えたが、この少女には敵意はなさそうなので、その考えは放棄した。

 

青年「ま、まあいいや。 でも、妖怪なら何で、妖怪に襲われてたんだ?」

 

少女「知らないわよ... きっとお腹が空いてたんじゃない?」

 

青年「随分と適当な思考を持った妖怪だな。 君。」

 

少女「その言い方からして、まるで自分が人間って言ってるみたいね、貴方。」

 

青年「そうだけど?」

 

少女「え゛っ?」

 

少女はまたも思考がフリーズした。

 

また、攻撃しようかとも考えたが、下手なことをするよりは、先ずは相手を探ったほうが良いと思い、攻撃をやめた。

 

少女「ま、まあいいわ。 でも、何で人間がこんな所に?」

 

青年「ん? ああ、仕事帰りでね。 ここを通らないと元の国に帰れないんだよ。」

 

少女「ふ~ん....」

 

少女は、見た目は童だが、思考は並の大人と同じほどには回転力がある。

 

さらに、鋭い洞察力で、瞬時にそれが嘘だと分かった。

 

しかし、嘘で塗り固められた少女は、それを問いただす事はできなかった。

 

少女「そいえば、獣が何か変なもので倒されてたけど、あれは何?」

 

青年「ん? ああ、コイツのことかな?」

 

そういって青年は、何かを出現させる。

 

黒い布に覆われたそれは、"人形"だった

 

少女「えっ? 人形?」

 

青年「そう。 【蛸】っていう傀儡人形なんだ。」

 

その人形は、腕が6本あり胴体には何個か穴がある。

 

少女「でも、あの獣を倒したのは、こう...杭みたいなのがでてる奴で」

 

青年「ああ、【蛸】はこうすると」

 

そう言って青年は指を1本クイッと曲げる。

 

すると、カチリッという音と共に

 

シャコンッ!!

 

穴から勢い良く獣を貫いていた杭が出てきた。

 

青年「正確には、杭じゃなくて五寸釘だけどね。」

 

もしかすると、自分はとんでもない人物に助けられたのかもしれない。

 

そう思った、少女だった。

 

__________

 

「で、子供の頃言ってたでしょ?「妖怪と人間が共存できる世界を作る」って...ねぇ、聞いてるの?」

 

「ああ、聞いてるよ。 紫。」

 

紫「全くもう、貴方は昔からそうよね。人の話を聞いてるんだか聞いてないんだか」

 

「ああ、聞いてるよ。 紫。」スヤァ

 

紫「....聞いてないわよね?」ピキピキ

 

岩場で話す二人組みは妖怪と自称・人間。

 

本来、相まみえる事の無い、二人。

 

その二人の中には、食う・食われる・倒すというような概念は無かった。

 

本来、望まれるべき形。

 

「いたたたたた。 いきなり殴ることは無いだろ。」

 

紫「寝てた貴方が悪いのよ。」

 

そう。

 

紫の目指す、世界の形。

 

紫「ねぇ。」

 

「ん?」

 

紫「人と妖怪って共存できると思う?」

 

「お前が望むなら、できるさ。」

 

人と妖怪の間に憎しみも悲しみも痛みも無い。

 

幸せな形の世界。

 

________

 

「くっ... 紫は...?」

 

誰かに後頭部を殴られた九郎は、1分ほど気絶していたようだ。

 

紫の姿は無く、殴ったであろう人物の姿も無い。

 

「いたたたたた。 頭がズキズキする。」

 

どうやら、脳震盪を起こして気絶したらしい。

 

一般的には、脳震盪を起こし、2分以内での気絶ならまだ安心できる方らしいが、1週間の休養は必要だ。

 

「チッ... 結界が張られてやがる。」

 

外に出るためのドアを開けようとしたが、ピクリともしない。

 

窓も当然開かない。

 

近くのテーブルに置手紙がある。

 

【1週間は安静にしていなさい。そして、地底とは関わらないこと。】

 

相変わらず、地底と関わってはいけない理由は書いていない。

 

「.....」

 

九郎は考えた。

 

頭痛のする頭の中で必死に考えた。

 

ここまでして地底と関わらせない理由を。

 

彼は必死に考えた。

 

しかし

 

「駄目だ... 集中できねぇ」

 

頭痛の中で考えれるほど、彼は万能ではなかった。

 

「仕方ない。 明日にでも考えよう。」

 

結界が張られているため外に出れない九郎。

 

食料は1週間分は置いてあるようだ。

 

「出たら、先ずは紫に説教だな。」

 

そう考えながら、彼はまた眠りに落ちた。

 

_____________

 

?「いいのですか、紫様? 仮にも九郎様をあんな風に」

 

紫「いいのよ藍。 あれが一番正しい選択ですの。」

 

藍と呼ばれた九尾をもつ女性は紫の式神。

 

藍「私も、彼にあんな事はしたくなかったのですが」

 

紫「ああでもしないと、彼は止まってくれないですの。彼は昔から強情ですから。」

 

藍「しかし、理由も説明せずに地底へ行くのを禁止するのは『藍...』ビクッ」

 

紫が、冷たい声で藍の名前を呼ぶ。

 

紫「彼に知られては駄目ですの。 いいえ、私たち二人以外に知られてはいけませんの。」

 

藍「紫様...」

 

紫は頭の痛みを堪えながら呟く。

 

紫「私だって、こんな事をしたくは無い。 でも、こうでもしないと人間と妖怪の共存なんてできない。 "地底"という"悪"を"自然に"消し去るまでは!!」

 

紫は、どこか悲しげな声でそう告げた。

 

紫「だから、この計画に失敗は許されないの。 絶対に。」

 

紫の計画は進んでいく...

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