Infinite Stratos~蒼騎士の軌跡~   作:ミリオンゴッド

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起動

 セシリアの看病を行った翌日、俺は授業を無断で休んだ件について千冬の部屋に呼び出しを食らっていた。

 

「さて、入学三日目から授業を無断で休むとは、いい度胸だなクロウ」

 

「いやー千冬ちゃん、これにはやむをえない事情があってだなあ」

 

「オルコットの看病か?」

 

「そうそう!人助けの代償って奴?」

 

「アイツの調子はどうだ?随分と高熱だと言っていたが……」

 

「ああ、だいぶ良くなったみたいだぜ。明日からは授業に出られるんじゃないか?」

 

「そうか……だがそれとこれとは別問題だ。授業をサボっていい理由にはならん、今後は気をつけろ」

 

「あいよ……えっ、それだけ?」

 

「何だ、続けてほしいのか?こんな些末な事よりも本題に入りたいんだが?」

 

「いや結構です!!……んで、本題っつーとやっぱあの事かよ」

 

「ああ。束の件、詳しく聞かせてもらおうと思ってな」

 

 やはりこちらが本題のようだ。千冬の顔が呆れ顔から真剣な表情へと切り替わる。篠ノ之束、か……また厄介事を持ってきてくれたもんだぜ。

 

「クロウ。束の言う計画、どのようなものだと考える?」

 

「さぁな、なにせ情報が少なすぎる。だが、恐らく計画の舞台はIS学園、メインキャストは一夏。加えて箒、そして千冬…アンタだ」

 

「そうか……」

 

「ああ、元々のアンタと一夏への異常な執着、加えて今回の通話で確認したが箒にもそれを向けていること、そして一年前に言い残したあの言葉……ほぼ間違いない。そして俺は本来あのクソ兎の脚本には存在しないイレギュラー……ま、そんな所だ」

 

「成程な……今回はお前や、お前の機体を狙っているわけではないということか?」

 

「いや、ヤツは俺に用事は無いと言ったが内心じゃ未練タラタラだ。あんだけ敵対心向けてくるのがイイ証拠だぜ。ま、あの様子じゃ隙があれば潰しににくるだろ。だが……」

 

「ああ、そこでクロウ。お前の入学という仕込みだ」

 

「世界で二人目の男性操縦者、今や世界中の有名人だ。そんな人間を白昼堂々とは殺せねぇ。アンタの提案でヤツも俺のことは表立って狙いにくくなったハズだ」

 

「加えて、襲撃に備えて同室に代表候補生(セシリア・オルコット)を設置した。他の有象無象を近くに置くよりも有事の時の戦力として数えられるだろう……尤も、束相手に代表候補生程度がどこまで戦力になるかはわからんが」

 

「オイオイ、そのうち一人部屋になるんじゃなかったのかよ」

 

「束の件が完全に片付いたら、な」

 

「成程な……クソッタレが。お嬢が俺のルームメイトなのはそういう思惑だったワケだ。だが、ただでさえ俺の存在が学園の危険度を上げちまってる。悪いがこの件に何も知らないお嬢を巻き込むつもりは無いぜ?」

 

「無論私とて生徒を危険に晒したくはない。あくまで保険だと思ってくれ……しかし束め、一夏に何をするつもりだ……?」

 

 頭を捻った所で、現状ではとにかく判断材料が足りない。だが、ヤツの行動パターンを考えると、わざわざ所在を明かすような真似は避けたいはずだ。

 

 ならば返り討ちにされて捕縛されるリスク、潜伏先が露見する可能性を考慮すると、本人が直接襲撃してくる限りなく可能性は低いと思っていいだろう。

 

 本人による襲撃が無いとすればヤツに残された手段は電脳戦…学園へのハッキングか、或いは捨て駒になりそうな何かを用いた襲撃が考えられる。しかし、俺の知る限りヤツに相手に嗾ける手駒になりそうな人間は居ないハズだ。

 

 ハッキングが目的なら俺に対して邪魔をすれば殺すなんて表現は使わないだろうし、それを行うことによって一夏達を計画に巻き込むビジョンも見えない。だが、間接的な手段としては使ってくる可能性が無くはない。

 

 そして、奴は俺の周囲の犠牲というワードに対して、どうなろうと知ったことではないと言った。あのクソ兎、周囲に犠牲が出る前提で計画を考えている可能性が高い。ならば直接的な手段で計画を行うと考えていいだろう。

 

「ま、ヤツの口ぶりから恐らくアンタ達三人を殺すことは無いだろうが、何らかの強硬手段に出てくる可能性は高い。その中でお前たち以外の人間に犠牲が出ようと関係ないってトコだな。千冬、とりあえず内側だ。学園のネットワークのセキュリティ強化を頼む。俺は外を張る」

 

「了解だ。だが、束相手では気休めにしかならんぞ?」

 

「分かってる、それでもやらねぇよりはマシだ。ヤツ相手に先手を打ったという事実が重要なんだよ。それがヤツにとって些細なことでも、苛立って思考が乱れてくれれば御の字だ。それと、有事の時は俺も出る。一応許可は貰っておくぜ」

 

「ああ、許可しよう。一夏を守ってやってくれ」

 

「おうよ。任せときな千冬ちゃん♪」

 

 しかし、セシリアが同室なのは対クソ兎の戦力って狙いがあったワケか……何ともまあ、身勝手な大人の事情に巻き込まれてやがる。もちろん、巻き込むつもりは毛頭無いが、俺と一緒にいれば万が一が起こりかねない。

 

 一度しっかり実力を見せてもらうぜ、代表候補生(セシリア・オルコット)――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 試合当日、第三アリーナAピット。俺はISスーツに着替え試合開始を待っていた。

 

 試合順は特に決まってなかったのだが、一夏の専用機が届くのが遅れるということで初めに俺とセシリアが闘い、負けた方が先に一夏と闘うという流れで決まった。

 

 ちなみに一夏だが、ISの訓練をしようにも訓練機を借りられず結局剣道ばかりしていた。特訓のおかげもあって少しはマシな動きが出来るようになったのではないかと思う。尤も知識の方は箒が教えなかったのか教えられなかったのか空っぽのド素人状態のようだが。

 

『――アームブラスト、そろそろ時間だが最終調整は問題ないか?』

 

『オルコットさん、準備完了しています。アームブラストくんも急いでください!』

 

 ピット内に通信で千冬と真耶の声が響く。

 

「ああ、問題ねぇ。いつでも行ける」

 

『そうか……ならばお前の力、改めて見せてもらうぞ』

 

「おうよ!ま、俺様の実力、しっかりその眼に焼き付けな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イメージするのは戦場を共に駆け抜けた、蒼の騎神――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――来い!《オルディーネ》!!」

 

 左耳の蒼いピアスが光を放ち、その刹那、俺の身体に使い慣れた機体が装着された。以前の騎士人形の姿と違い、現在はISとして最適化しているためか通常のISと同じく俺の身体にパーツが装着される形に変化している。

 

『クロウヨ、久シブリノ実戦ダナ』

 

 脳内に声が響く。戦闘前にコイツと話すのも随分久しぶりか。

 

(そうだな、一年振りくらいか)

 

『行ケルカ?』

 

(問題ねぇ。それに今回はただの試合だ、気負う必要はねぇよ)

 

『ソウカ、ナラバ起動者(ライザー)ヨ、再ビ我ガ力、存分ニ振ルウガヨイ』

 

(ああ、行くぜ!!)

 

「――クロウ・アームブラスト、オルディーネ、出る!!」

 

 再び蒼の騎神を駆り、戦場へと飛び出した――

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