Infinite Stratos~蒼騎士の軌跡~ 作:ミリオンゴッド
「では一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
クラス代表決定戦翌朝、SHR。一夏のクラス代表就任が決定した。クラス中で拍手が巻き起こり、各々一夏に対して激励の言葉をかけている。
「どうして俺なんですか!俺はクロウにボロ負けしたし、セシリアとは戦ってすらいないんですよ!?普通なら全勝したクロウがやるべきでしょう!」
一夏はどうやら納得していないらしく声を荒げて必死に抵抗している。
というか、一夏は何か勘違いをしているようだ。今回のルール、勝ったヤツがクラス代表になるなんて誰一人として言っていない。
「クク……一夏、もう一回今回のバトルのルール、思い出してみな?」
「えっと確か…俺とセシリア、クロウで対戦して、勝った奴がクラス代表の選択権を……あ!?」
「そうだ、得られるのは
ルールに気付き、一夏は狼狽える。そもそもコイツはクラス代表になりたくないのに試合には勝とうとしていたが、本当に勝ったヤツがクラス代表になるってルールだったらどうするつもりだったんだろうか。
「ぐっ……別に俺じゃなくたってさあ、ほ、ほら!セシリアだってやりたがっていたじゃないか!!なあセシリア、譲るぜ?」
「いえ……わたくしは辞退いたしますわ…………この件で、皆さんに謝罪したいことがあります。織斑先生、少しだけわたくしに時間を頂けないでしょうか?」
「……ああ、構わん」
セシリアは浮かない表情で前に出る。恐らく、極東の猿などの差別的発言を謝罪したいのだろう。
肩を竦ませて俯くその表情からは、唇をキュッと結び怯えながらも、どんな辛辣な言葉にも耐えてみせるという覚悟が覗える。
「――皆さん。先日の失礼な物言いや差別的な発言、心より謝罪致しますわ。申し訳ありません。本来なら消えてほしいと思う方も居るでしょうが、厚かましくもわたくし、まだこの学園に居たい理由があります。許してくれとは言いません。どうかこれからもこのクラスに在籍する一員であることを許可してはいただけないでしょうか……?お願い致します」
そう言ってセシリアは深々と頭を下げる。流石にみんな彼女の変わりっぷりに戸惑っているのか、教室がざわつく。
そのざわつきを悪い意味で取ったのか、セシリアの目元には最後列でも分かるほどに涙が滲んでいた。
「(ねぇくろくろー、助けてあげないのー?)」
隣の席ののほほんとした女子が小声で話しかけてくる。ちなみに最近知ったが、コイツの本名は布仏本音というらしい。
「(ああ、ここで俺が助けたらこの場は凌げるだろうが、その後絶対お嬢は孤立する。それじゃ意味ねぇだろ。受け入れてもらうには女子の誰かが言いだして、それがみんなに波及する形が理想的なんだよ。それに今、お嬢は自分の意志であの場に立ってんだ。そこに俺が割り込んだら野暮ってもんだろうが)」
「(ふーん…くろくろもいろいろ考えてるんだー。さすがおじさんだー)」
「(だからおじさんはやめろっつの……)」
本音と話しているうちに、周囲のざわつきも大分治まっていた。どうやら、女子達の中でも考えがまとまったみたいだ。
ポツリポツリと、彼女らは話し出す。
「……いいんじゃないかな、許してあげても」
「うん、私もいいと思う。織斑くんだってイギリスのこと馬鹿にしたわけだし」
「慣れない土地で、きっとどうしたらいいかわからなかったんだよ!ね?」
「せっかく一緒のクラスになったんだしね!」
「うん、そうだよね!イギリスのお話とか、ISの事とか色々聞きたいし!!」
次々と言葉を紡いでいき、大きな流れを作る。次第にクラス中がセシリアを受け入れるムードになっていった。
「ぐすっ……皆さん、ありがとうございます……ありがとう…ございます…………」
セシリアは未だ瞳から大粒の涙を零しているが、その表情は先程までよりも晴れやかだった。
「ぐずっ…ずびっ……ぜ、青春でずねぇぇぇ……よがっだですぅぅぅ……」
何故か知らないが、渦中の人物であるセシリアよりも真耶が一番泣いていた。顔中を涙と鼻水で濡らしている……正直乳が無きゃ子供にしか見えねぇ。
「――よし、この件はもういいだろう。オルコット、今回の発言、お前の立場を考えれば一歩間違えば国際問題にまで発展していた可能性がある。それについては重く受け止めろ。まあ、後はそうだな……今からでも遅くはない、せいぜい自分なりにクラスに溶け込む努力をして、皆の信頼を得るんだな」
「はいですわ!それでは皆様、今後もよろしくお願い致します!!」
「さて、話を戻すが、クラス代表は織斑一夏に決定。依存は「ちょっと待ってくれよ千冬ね痛ってええええ!!!!」……依存は無いな?」
「「「「「「ハイ!!!!!!」」」」」」
こうして、改めて一夏のクラス代表就任が確定した――
***
その後、休憩時間。一夏が俺の席に来て駄弁っていた。未だ一夏は不満タラタラといった感じだが、千冬に殴られて抵抗する勢いは無くしたのか、ただただ落ち込み俯いている。
「クロウ、酷いぞ……俺はクラス代表なんてやりたくなかったのに…………」
「まぁそー言うなって。よーく考えて見ろ?クラス代表になればいろんな女子とお近づきになれるチャンスが生まれるかもしれないんだぜ?」
軽口を叩くと、一夏はのっそり顔をあげる。半眼で俺を睨むその顔は、さながら親の敵でも見ているかのようだ……いや、コイツの場合は姉の敵か。
「だったらクロウがやればいいじゃないか。俺よりよっぽど女好きだろう?」
「いんやここは俺みたいなのが行くよりもお前みたいな「クロウ!!……一夏に変なことを吹き込むのはやめてくれないか……?」……ほ、箒サン?」
「どうしたんだよ箒?そんな顔して……」
箒がいきなり話に割り込んできた。その表情は怒りを必死に抑えて懸命に笑顔を作っているという様子で、なんとも表現し難い感じに歪んでいる。
「そんな顔とはなんだ!!いや、ただな?そんな出会いなど……一夏には要らないというか……一夏には私が……というか……)」
「え?なんだって?」
「い、一夏ぁぁぁ!!」
刹那、箒は何処からか出した木刀を振りかぶる――
「――っ!?ストップだ箒!ステイ、ステイ……よし、まずはそのどっから出したかわからん木刀を置け、んで深呼吸だ、うん…そうそう……よーし、落ち着いたか?(ここで暴力は逆効果だって言ってんだろ!!)」
「……あ、ああ(だ、だが一夏が!一夏が!!……くうぅぅぅ……)」
「……?何だよ二人とも、俺のこと除け者にして。酷いじゃないか」
「酷いのはお前の頭と耳だぜ、一夏……」
むしろこれだけの出来事が目の前で起きて自分が除け者と思うあたり、一種の才能なんじゃないだろうか。コイツの唐変木スキルはきっとカンスト済みなんだろう。
「どうしてそうなるんだよ……ワケがわからないぞ」
「お前……感情はあるか?大丈夫か?」
「クロウ……本気で怒るぞ。そうやって言われた人の気持ち、考えろよ」
「お、おう……悪かったぜ(お前も箒とか、おチビとか、その他諸々の気持ち、考えろよ……)」
「――すみません皆さん。ちょっと、よろしいですか……?」
セシリアが申し訳なさそうに話しかけてくる。話を遮ってしまったのではないかと不安になったのだろう。近くでフリーズしてる箒も含め、俺達三人の顔を次々とみて挙動不審になっている。
「お嬢、心配すんな。大した話はしてねーからよ」
「あぁ、下らない話だぜ?それで、何のようだ?」
「え、ええ……織斑さん、篠ノ之さんも、改めて先日の件、申し訳ありませんでしたわ。それと、クロウさん、貴方にも失礼な暴言を吐いてしまい、すみませんでした」
「あーいいっていいって、一夏も箒ももう気にしてねぇだろ。な?」
「おう!流石にそんな小さい男じゃないぜ!!」
「あ、ああ……思うところはあるが、お前の謝罪の気持ちは本物だろう。そのくらいは分かる……」
「だとよ、良かったじゃねえか♪」
「ぐすっ…皆さん……ありがとうございます…………」
セシリアはまた、瞳に大粒の涙を溜める。どうやら余程罪悪感を抱いていたようだ。だが――
「――おいおいお嬢……泣き顔も美人だが、今は泣くとこじゃなくて笑うとこだぜ?」
――何も許されてまで泣く必要はない無いだろ。
「ク、クロウさん……はいっ!!」
元気良く返事をして、セシリアは満面の笑みを浮かべる。その笑顔は涙に濡れながらも美しく、眩い輝きを放っていた。
「クク……イイ笑顔だ。そのまま笑っとけ♪」
「あ、そういえば。セシリア、イギリスにも美味い料理あるんだろ?俺、馬鹿にしたけど本当は全然知らないんだ!どんなのがあるか、聞かせてくれよ」
「織斑さん……はいっ♪そうですわね、まずは――」
(……ったく、平和でいいねぇ)
一夏も、箒も、セシリアも楽しそうに笑っている。
彼等の穏やかな、こんな日々が続きますように。
彼女等の青春は、楽しく過ぎていきますように。
彼女等の学園生活は、綺麗な思い出で終わりますように。
心の中で、願う――
――だが着実に、悪意の足音は近づいてきていた。
クラス代表決定編、とりあえず終わりました!
読んで下さってる方々、ありがとうございます!
次回かその次あたりには多分鈴が出てくるかと……
今後の執筆の参考にしたいので、感想、評価などお待ちしております。
しかし、一夏の描写が少なすぎて千冬に殴られるだけの機械になってる気が……