Infinite Stratos~蒼騎士の軌跡~   作:ミリオンゴッド

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クロウ・アームブラスト

「あの、えっと……」

 

「あぁ悪い!!今外してやるよ」

 

 女が去った後しばらく茫然としていたが、少年の申し訳なさげな声に気付き、慌てて拘束を外す。

 

「あ、ありがとうございます?さんきゅー?えっと何語で話せばいいんだ?」

 

「大丈夫だ、少年の言葉はわかるからよ……ん?」

 

 自分がこの少年の言葉が分かるはずがない。これは全く知らない言語だ。いや、そもそもなぜ俺はあの誘拐犯たちと会話出来ていた?

 

「わかりました!!とにかく、助けてくれてありがとうございます!!」

 

「いや、気にすんなって。偶々居合わせただけだからよ」

 

 少年の礼を受け取り、一旦言語についての疑問に蓋をする。今はそれより、いくつか確認しておきたいことがある。

 

「ところで少年、あー……「織斑一夏です」一夏、コイツ等のオトモダチとお話した時に聞いたんだが、お前はブリュンヒルデ?って奴の弟ってことでいいのか?」

 

「……はい、俺はブリュンヒルデの…千冬姉の弟です」

 

「そうかい。んで、ブリュンヒルデってのは何だ?」

 

「…………え?」

 

 一夏が俺を何かありえないものでも見たかのように見つめる。どうやらブリュンヒルデというのは、かなり有名なものらしい。

 

「ブリュンヒルデは世界最強のIS乗りの称号です。千冬姉が前に世界大会……モンド・グロッソで優勝してから、そう呼ばれるようになったんです」

 

「最強の称号ってワケか……ISって何だ?スポーツか何かか?」

 

「インフィニット・ストラトスの略称で「何だと!!」ッ……!?」

 

 思わず大声を出してしまい、一夏が怯えているが構っている余裕は無い。あれをスポーツに使うとはとてもじゃないが思えない。あれは紛れもない兵器だ。

 

「……さっきお前を拘束していた女が言ってたぜ。俺の拳銃はガラクタだとよ。あんな兵器を、スポーツに使うってのか?」

 

「え、ええっと、詳しくは俺もわかんないんですけど、なんか銃とかで撃ってもお互い傷つかないように出来てるらしいです」

 

「……意味わかんねえぞ、それ」

 

 どんな機体に乗っていようと、機体を貫通すれば肉体がダメージを受けるはずだ。例外は無い。自分自身、身を持って体験している。

 

 暫く考え込んでいると、一夏から声を掛けられる。

 

「あの、ところで貴方はどうしてこんな場所にいたんですか?」

 

 まあ、当然の疑問だろう。ここがどこなのかはわからないが、少なくとも用もない一般人が迷い込む場所ではないだろう。それに、俺自身も未だにどうしてここにいるのか分かっていない。

 

「さぁな、気付いたらここにいた。ま、捕らわれの少年を助けるために参上したヒーローってことにしといてくれや」

 

「……正直意味わかんないです」

 

「ククッ、それでいいさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 その後、徐々に警戒を解いて行った一夏と様々な話をした。歳は十三で、どうやら学校に通っているらしい。鈴や弾って奴らと親友で、いつも遊んでいるようだ。

 

 話を聞いていくうちに、俺の脳裏には残してきた三人の友人たちとの日々が蘇ってきた。

 

 そんな懐かしい感覚に身を委ねていたためか、俺は直前まで殺気の接近に気付くことが出来なかった。

 

「一夏、話の途中で悪いが敵だ!!逃げろ!!」

 

「え……」

 

 次の瞬間、先程敵が開けた大穴から別の機体が飛び込んできた。それと同時に俺は拳銃を構え、狙いを定める。

 

「来な!!ガラクタで遊んでやるぜ!!」

 

「一夏ッ!!!!」

 

 ISを纏った女がこちらに突っ込んでくる。物凄い速度で、跳ね飛ばされれば恐らく一瞬で肉塊になるだろう。だが、俺はなぜだか一夏をあの時俺を看取った少年と重ねてしまい、見捨てることができなくなっていた。

 

「走れ一夏!!」

 

 両手に拳銃を構え叫ぶが、一夏が走りだす様子は無い。足が竦んだのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。

 

「二人ともやめてくれ!!千冬姉、この人は誘拐犯じゃない!!」

 

「何だと!?」

 

「あんたもやめてくれ!!」

 

「……成程、そういうことかよ」

 

 先程の女がなぜ圧倒的有利な状態でありながら逃走したのか、ずっと気になっていた。奴は目標は達成されたとも言っていた。

 

 そしてブリュンヒルデは最強の称号。その彼女がこのタイミングでの登場した意味を考えれば、自ずと一つの答えに行きあたる。

 

「おいブリュンヒルデ、アンタ大会を棄権したな?」

 

「たった一人の弟の命に比べれば安いものだ。ところで……貴様は何者だ?誘拐犯ではないらしいが……」

 

「千冬姉、この人は俺を助けてくれたんだ!!」

 

「ほぅ……それについては感謝するが……目的は何だ?」

 

 織斑千冬は何もない空間から一瞬で巨大な剣を取り出し、俺の喉元に突き付ける。同時に俺も彼女の眉間に拳銃を向けるが、引鉄を引こうがこちらの銃弾は当たらないであろうと容易に想像できる。

 

「雰囲気や動作で分かる。お前はかなり強い。そもそもその二丁拳銃はフェイクなのだろう?刀か槍かそれ以外かはわからんが、近接武器が本来の得物だな?」

 

「どうだろうな。少なくともコイツも一応俺のお気に入りだぜ?」

 

「フッ……それで、だ。お前のような男が目的無くこの場に居るとは考えにくい。だが、悪人にも見えない。お前の眼は腐っていない」

 

「アンタ見る目無いぜ?俺はただのテロリストかもしれない」

 

「ただのテロリストが一夏を救出し、逃がそうとするわけあるまい?」

 

「さぁ、どうだかな」

 

「まぁいい。それで、この状況で一夏を単身助けている。お前に危険はあれどメリットは無い。なぜ助けた」

 

「……ハァ、俺の居場所がコイツ等の仲間にバレたんでな。逃げるついでに助けてやろうと思っただけだ」

 

「お前は私の弟が攫われる前からここに潜伏していたというのか?」

 

「いや、そいつはちょいと違うな。気がついたらこの薄汚い廃墟にいた。その前の事は良く覚えてねぇんだ」

 

「記憶喪失……か?」

 

「そう思ってくれていいと思うぜ」

 

「……成程、腑に落ちんが、一旦はそれで納得してやる。後でたっぷりと話を聞かせてもらうからな。それで、いつまでもお前お前と呼ぶわけにもいくまい。覚えていれば、名前を教えてくれないか?」

 

「そういえば俺は名乗ったけど、あんたの名前は聞いてないな」

 

「あぁ、とりあえず《C》……いや、俺の名前は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――クロウ・アームブラストだ」

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