Infinite Stratos~蒼騎士の軌跡~ 作:ミリオンゴッド
休憩時間が終わり、二時限目。この時間はISの基礎知識についての講義が行われた。
俺は半分寝ていたためあまり覚えていないが、どうやらクラス中で一夏だけが内容について行けず千冬に説教を食らっていたらしい。
(ま、テキスト読んですらいない俺はもっと分からないんだがな)
そしていつの間にか授業が終わり呆けていると、先程からずっと感じていた視線の主が近づいてきた。
「ちょっと、よろしくて?」
ブロンドのロングヘアーに蒼い瞳が特徴的な、ドレス風に改造した制服を纏った美少女。比較的小柄ながらスタイルも良さそうだ。佇まいからは恐らく貴族の令嬢であることが伺える。
「おうよ!美人の誘いならいつでも大歓迎だぜ♪」
「あら、随分と軽いんですのね」
「お嬢様は俺みてぇな軽い男は嫌いかよ?」
「少なくともあなたのような女性に媚びを売るしか脳がなさそうな男性には興味ありませんわ」
「オイオイ、初日から嫌われたもんだな~(ま、視線でわかってたけどよ)」
「大体そんな着崩した格好をして……野蛮ですわ。少しは場を弁えたらどうですの?」
「そんな改造制服着てるお嬢に言われたくないけどな」
「まぁ、このセンスがわからないんですの!?これだから野蛮な男性は……」
「いや似合ってるし可愛いとは思うけどよー」
「貴方に褒められても嬉しくありませんわ!!」
そう言いながらも若干耳が赤くなっている。分かりやす過ぎんだろ。
「クク、照れんなって♪」
「てっ、照れてないですわ!!まったく、男性操縦者が二人も現れたというからどんなものかと思えば……二人目がまさかこんな失礼な方だなんて。せっかくあちらの極東の猿よりはまだいいと思って話しかけて差し上げましたのに」
「そりゃまあ、ご期待に沿えず申し訳なかったぜ(極東の猿、ね……)」
このお嬢様はここが日本で、クラスも比較的日本人が多いことを理解して大声でそんなことを話しているのだろうか。
「はぁ……まあいいですわ。エリートであるわたくしは心が広いですから、あなたのような野蛮でどうしようもない男性にも優しいのです。まあ今後分からないことがありましたら、泣いて頼めば教えて差し上げてもよくってよ。そう、エリートであるこのセシリア・オルコットが!!」
「へぇ、エリートだったんだな~。よっ!エリートお嬢!!」
「フフン、そうですわ!エッッッリートなのですわ!!……ってわたくしの事を知らずにお話していましたの!?」
「いやー、初日だし名前まではまだ覚えて無くてよ。ワリィな」
「そういうことではありませんわ!!わたくしがイギリスの代表候補生にして入試主席、唯一教官を倒したエリート中のエリートであるセシリア・オルコットだと知らずに会話していたのかと聞いていますの!!」
代表候補生。確か国家代表のIS乗りの候補に選ばれている人間の事だっただろうか?
「代表候補生、ねぇ……やっぱお嬢すげぇじゃねーか」
「やっぱり知らなかったんですのね!!いいですか、そもそも――」
セシリアの言葉を遮るようにチャイムがなる。どうにかこの絡みも終わりそうだ。
「話の続きはまた改めて!よろしいですわね!!」
「……はいよ」
訂正。どうやらこの絡みはしばらく終わらないらしい。
***
「では、この時間は実技に使用する各種装備の特性について説明する」
先程までと違い、三時限目は千冬が教壇に立っていた。余程重要な事項なのか、真耶もメモを取ろうと準備している。
「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
(クラス代表……委員長みたいなモンか?)
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更は無いからそのつもりで。誰か立候補はあるか?推薦でも構わんぞ?」
「はいっ。織斑くんを推薦します!」
「私もそれがいいと思います!」
(ま、そーなるよなぁ……)
自薦他薦は問わないというのなら、まぁまず間違いなく一夏に投票するだろう。俺が女子の立場でもそうする。その方が面白くなりそうだからな。と、いうワケで――
「ハイッ!アタシも一夏クンがイイと思いますゥ♪」
――女子に混じって推薦しておくぜ。
「あっ、なら私はアームブラストくんがいいと思います!」
(あ、ヤッベ……)
「うん!私もアームブラストくんを推薦します!」
「私も私もー」
「わたしもくろくろー」
ふざけて一夏を推薦したのが完全に裏目に出てしまった。完全にこちらに注意が向いてしまい、集中砲火状態だ。
「ああ、俺もクロウがいいと思うぞ」
一夏の野郎がこちらを見てニヤリとほくそ笑みやがった。道連れになれってことか……てかアイツ、俺がヘマしなくても俺のこと絶対推薦してやろうとしてたな。あれは絶対そういう目だ……
「では候補者は織斑一夏とクロウ・アームブラスト……他にはいないか?自薦他薦は問わないぞ」
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
甲高い声と共にセシリアが机を叩き立ちあがる。
(おっ出たなお嬢、いいぞもっとやれ!!)
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
どうやらセシリアは典型的な女尊男卑主義らしい。尤も、エリートのプライド的な面もありそうだが。まあ、ともかく盛大に暴れて俺の推薦をなあなあにしてくれれば文句はない。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿や野蛮な品格の無い男にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来たのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
(あーヤバい、一夏がキレそうになってる。アイツ意外と沸点低いからな……)
「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――」
(耐えろ、耐えるんだ一夏!むしろお嬢の気分を良くして代表譲っちまえ――)
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
(――あーあ言っちった…耐えきれなかったか……)
「なっ……!?美味しい料理はたくさんありますわ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
一夏とセシリアが睨み合い膠着状態になる。セシリアが散々反日してくれたお陰で流石にクラスの空気が悪すぎるし、仕方ない……少し空気を変えてやるかね。
「――さぁ始まりました!第一回、クラス代表決定戦!!」
クラス中の視線が俺に集中する。
「ルールは至って簡単!ISバトルによって勝敗が決定!勝者はクラス代表の選択権を得られるぜ!!さぁ!!織斑一夏VSセシリア・オルコット、勝負の行方は!?――ってのはどうよ、織斑センセー」
一通り言い終えた後、千冬に話を振る。後は勝手に進めてくれるだろう。
「ふむ……面白い。織斑、オルコット、アームブラストから提案があったがこれで構わないか?」
「ああいいぜ」
「こちらもいいですわ、決闘ですわ!」
「んじゃ決まりだな!日時なんかは「なぁ、アームブラスト」ん?なんだよ織斑センセー」
「ところでさっきの提案にはお前の名前が入っていないんだが、何故だ?」
痛い所突かれたな。このまま二人の闘いに持っていって俺のことはうやむやにしてしまおうと思っていたが、千冬相手では厳しいか?
「いや、二人でガチンコ対決のほうが盛り上がるかなーと」
「推薦されたからにはお前も出ろ。どうせお前のことだ、勝敗でこっそり賭けでもしようとしていたのだろうが……自分のクラス代表がかかっていれば悪事も働けまい?」
「チッ、バレバレかよ……面倒くせぇ」
「まぁ許せ。私もお前の《専用機》を見てみたいんだよ」
千冬が意地が悪い笑みを浮かべる。どうやらそれが一番の目的みたいだ。
「あ、貴方専用機持ちですの!?」
「あー……ま、持ってるぜ。いろいろと複雑かつデリケートな事情があってな」
「貴方のような男が専用機持ちなど、認められません!!勝負ですわ!クロウ・アームブラスト!!」
「クク……しゃーねぇか。受けるぜ、セシリアお嬢」
「それでは決まりだな。織斑、オルコット、アームブラストの三名で総当たり戦だ。日時は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑にも後日専用機が届くから条件は対等だ。存分に戦うといい」
こうして、一夏とお嬢と俺の三つ巴の闘いが決定した。