Infinite Stratos~蒼騎士の軌跡~ 作:ミリオンゴッド
俺達の決闘云々で一悶着あったが、その後は滞りなく講義が進んでいき、今日最後の講義を終えた。その瞬間、教室内は喧騒に包まれ、再度俺や一夏に視線が集中する。
「ふわあぁぁぁあ~~~~……やーっと終わりやがったか」
こんなに長時間机に座っていることが久し振りだからか、思っていたよりも疲れが酷い。やはり自分には座学よりも実技が合っている。
(さてと、散策がてら適当に散歩でもすっかね)
俺としてもせっかくの学園生活、できれば楽しく過ごしたい。そのためには学内の設備の把握はしっかりとしておく必要があると思う。
「待て、アームブラスト」
立ち上がって教室から出ようとすると、千冬に呼び止められた。彼女の手には寮の部屋の鍵であろう物が握られている。
「ほら、寮の鍵だ受け取れ」
「お、あんがとよ。寮まではどうやって行きゃいいんだ?」
「そのくらい自分で……いや、私が案内してやろうか?……丁度幾つか話したいこともある」
話か……内容はおおよそ想像はつくが、寮の場所を聞くついでに聞いておいてもいいだろう。
「そうかい。んじゃまあ、お言葉に甘えさせてもらうぜ」
「よし、ならば付いてこい」
「あいよー」
こうして、俺たちは女生徒たちの視線を浴びながら教室を後にした。
***
俺は千冬に連れられ、寮へと向かっていた。……ハズなのだが、速足で歩いているのに歩いても歩いても寮に着く気配はなく、むしろ遠ざかってる気さえしてくる。
「おい織斑センセー、まだ着かねぇのか?」
「……よし、そろそろいいか。済まないな、野次馬共を撒くのに遠回りをしていた。クロウ、少し止まって話をしよう。今は勤務外だ、その呼び方もやめていいぞ」
一通り周囲を確認し立ち止まる。成程、校舎の陰の入り組んだ位置。ここなら野次馬も来なそうではある。
「まずはクロウ、済まなかった。お前がISが使える事を隠そうとしていたのは知っていたのに、こんなことになってしまって……」
「別に構わねえさ、その話は何度もしただろ。一夏のためだ。それに
「ああ、そうだ。だがそれでも、私の頼みで学園に縛り付けて、お前の行動を制限してしまった。本当に済まない……」
「いや、今の状況でも手段がないことはない。それに、俺が動けなくても外との繋がりは絶たれちゃいないしな」
「そうか……できる限り私も協力しよう」
「アンタには充分世話になってるさ……さて!この話は終わりにしようぜ千冬ちゃん♪他にも話、あるんだろ?」
「ああ、わかった……次の話だが、今日を持ってお前の情報が全世界へ行き渡った。流石に経歴は詐称してあるが、お前の顔が世界に知れ渡る。一応覚悟しておけ」
「俺様のスーパーイケメンフェイスが世の中に知れ渡るのか……世の女性達が心配だぜ♪」
「ハァ…真面目な話なんだがな……まあいい、次だ。お前の専用機についてだが、学園から詳細なスペックデータを取るよう命令されている。悪いが次のクラス代表決定戦を利用させてもらうが、構わないか?」
「いいぜ、この状況で断るわけにもいかねえだろ。それにあの場で俺の出場を強制したのもそれが理由だったんだろ?」
「……感謝する」
「おうよ。んで、話はそんなトコか?」
「そうだな、伝えておきたいことはこのくらいだ」
大体は予想通りの内容だった。俺がIS使える事を把握しているのが千冬含め一部の協力者だけだったのが、世界に広まった。ただそれだけのことだ。尤も俺自身IS適性を得ちゃいるが、俺の専用機自体はISと言えるかどうか微妙な所だ。ISとしての反応も示しているし、その機能も一応は果たしてはいるみたいだが。
「なら、話は終わりだ。あんまり同居人が遅いと一夏のヤツも不審に思うだろうしな」
「一夏が?……ああ言ってなかったな。アイツは篠ノ之と同室、お前とは別室だ」
「カァーッ羨ましいねえ!女子と同室とかどんなラブコメだよ。もしかするとヤルことヤッちまうんじゃねえのか?」
「あの朴念仁の愚弟に限って、あると思うか?」
「あーうん、そー言われっと自信ねぇわ……」
あの朴念仁の鈍感野郎には、おチビのヤツも苦労してたしな。まあ、同室になったくらいで一線超えるならアイツは今頃ハーレム帝国を築いてるんだろうよ。
「それにクロウ、お前も女子と同室だぞ」
「は?マジかよ、てっきり一夏とじゃないなら一人部屋だと思ったぜ」
「様々な事情があってな。お前達の場合は前例が無いケースだ。すまんが折り合いをつけてくれ。まあそのうちそれぞれ個室でも用意されるだろう」
「りょーかい。むしろ俺的には可愛い女の子と生活なんてご褒美って感じだぜ」
「……お前も一夏も苦労するだろうが、まぁなんだ……強く生きろ」
千冬はどこか陰のある、憐れむような目で俺を見る。
「……?ま、とりあえず話も終わったんだ。部屋に案内してくれや」
「……ああ」
その後千冬と共に改めて寮へと向かったが、部屋に入るまで彼女の視線の意味は理解することは出来なかった。
***
「ここが俺の部屋、か……」
俺は千冬に寮の場所を教えられ、その後一通り学内を探索してから寮へと戻り部屋の前に立っていた。
鍵と一緒に渡された紙に書いてある部屋番号は、目の前の番号と一致しているし、まず間違いないだろう。鍵は……開いている。すると同居人がもう中にいるのか?
先程の千冬の憐れむような視線が気になって仕方がない。あの態度から考えると余程の奇人変人の可能性もある。
(あんま変なヤツじゃないといいけどねぇ)
何時までも部屋の前で立っているわけにもいかず、覚悟を決めて部屋に入る。部屋の中は薄暗いが、高級な香水のような香りがほんのり漂っている。内観としては変わった所は無いが、良い設備だと思う。一つだけ気になるとすれば、片方のベッドだけ物凄く豪華で、まるで貴族のお嬢様が使いそうなものになっているくらいか。
(――ん?貴族?……嫌な予感が)
「…んん……?……なんですの…………?ああ、もしかしてルームメイトの方ですの?」
どこかで聞き覚えのある声が聞こえる。というか、ものすごく嫌な予感がする。
「申し訳ありませんわ、少し疲れて眠っていましたの。今照明を点けますわね」
パッと照明が点き、部屋の中を一気に明るく照らす。瞬間、どこかで見た綺麗なブロンドのロングヘアーの後ろ姿が目に入る。そして少女は、こちらに振り返りながら言葉を紡ぐ。
「お見苦しいところを見せて申し訳ございませんわ。わたくし、ルームメイトのセシリア・オルコ…ット……です…………って!!な、ななな、なんで貴方がここにいるんですの!?」
そこには、昼間に揉めに揉めたエリートお嬢が、透け透けのキャミソール姿で立っていた。
(千冬が言ってた意味ってこういうことかよ……)
目の前の状況に思わず頭を抱える。
「あー……状況的に俺がお嬢のルームメイトみたいだわ。なんつーかまぁ……ハァァァァ…………取り敢えず外出てっから、その恰好、襲われたくなかったら着替えることをオススメするぜ」
「恰好……?……ッ!?みっ、見ないでくださいな!!!!」
「へいへい。ま、イイモン見せてもらったぜー♪着替え終わったら読んでくれや――」
セシリアに背を向け部屋を後にする。扉を閉めた瞬間、自然と溜息が漏れた。
「――ハァ……これからどうなっちまうのかねぇ…………」
このルームメイトの人選に、今後の学園生活を考えると不安が募るばかりだった。