地球教勝利END   作:kuraisu

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わざわざ活動報告に分けるのどうよと言われたので、今更ながら解説部分を加筆修正してくっつけることにしました


地球教勝利END解説

深夜テンションと出来心で執筆してしまった地球教が勝利した絶望しかないデストピア。

地球教が勝利するのってどんな歴史だろうと妄想しながら書きましたが、本筋からズレるとこもあるので省略した部分を世界観やキャラ解説を交えて書こうかと思います。タグにIFってつけたように原作本編とは大きく歴史の流れが変わってしまっています。

 

 

+神聖地球同盟

地球教勢力によって乗っ取られた自由惑星同盟が宗教国家と化した姿。

形式上政府や議会は自由惑星同盟時代と大して変わらない風を装っているが、地球愛党によるヘゲモニー政党制が導入され、他の政党は地球愛党の指導に従わなくてはならないため、事実上の一党独裁体制となっており、一応、昔と変わらず民主主義の理念を掲げていてるが、実質は完璧なまでに損なわれている。

この国を自由惑星同盟と同じ国家と考えるのは、銀英伝的には銀河連邦と銀河帝国を同じ国家というようなものであり、史実の例も出すならドイツ帝国・ワイマール共和国・ナチスドイツを同じ国家と考えるようなもの。それくらい内実が変わっており、同盟憲章は廃止こそされていないものの有名無実化され、代わって地球教の教義が憲法のように扱われている。

帝国側の地球教徒たちと手を組んで銀河を統一し、ハイネセンから人類の故郷である地球に遷都しており、人類の魂を導く巨大な大理石の神殿が政府の役割を果たしている。

 

+地球愛党

自由惑星同盟末期に誕生した宗教政党にして、神聖地球同盟の指導政党。

腐敗しきった政界に対して宣戦布告し、狂信的で清廉な姿勢と信徒たちの大規模な宣伝活動によって同盟の民衆多数の支持を獲得し、それを背景に悪魔じみた謀略を巡らせて自由惑星同盟の全政党を傘下に組み込み、事実上の一党独裁体制を構築した。

対帝国の聖戦中に地球教本部との一体化がはかられ、総大主教が党首を兼任し、党首脳部は高位聖職者で固められるようになり、銀河統一後はダトラーが従事しているような過去の歴史の改竄も行なっている。それは究極的には現体制こそが人類がたどり着いた理想の社会であり、歴史の終着点なのであって、全人類に対してこの最高の平和を揺るがすことは大罪であるという絶対的認識の啓蒙を目的としているためであり、歴史の改竄はそのための一方策である。

 

+同盟軍

自由惑星同盟から継承された神聖地球同盟の軍事組織。

地球愛党による一党独裁体制を敷いてから粛軍が行われ、高級将校の多くが地球教のエージェントと入れ替えられたが、中堅以下は同盟時代の気風を色濃く残しており、それゆえ地球教からはあまり信頼されていない。

聖戦時に高級将校たちが過激で悲惨な作戦を立て、一三日戦争以来のタブーである有人惑星への熱核攻撃も何十回も繰り返したこともあって、将兵の間には少なからぬ不満が蓄積されており、彼らとド・ヴィリエ一派が綿密な計画の上で行動をともにすることがあれば、地球教の支配体制を崩すこともできるかもしれない。

だが当然、そのことは地球教もわかっているのでまともな将兵が徐々に地球教の手先と入れ替えられている。

 

+宗教警察

神聖地球同盟の治安組織。東ドイツのシュタージを人類社会にふさわしい規模に拡大した上で、さらに凶悪化させたがごとき組織であり、背教者を宇宙から絶滅させることを目的として発足した。警部補以上の階級はすべて狂信的な地球教徒のみで構成されており、おそろしい猟犬として地球教の支配体制を強力に支えている。銀河統一後は帝国の社会秩序維持局や憲兵隊、諜報機関の人員なども流入し、人類史上最強最大の異端審問会と化した。

一治安組織としてはありえないほどの特権を有しているが、地球教特有の集団意識による自然な相互監視の影響で腐敗はほとんどなく、非常に能率的で危険な組織となっており、原作名ありキャラの多くが彼らの手で処分されている。

 

+ド・ヴィリエ一派

反体制テロ・グループ。元々は地球教団のド・ヴィリエ大主教を盟主とする派閥で、教義に沿わぬことでも統治を円滑化するために許容する姿勢から世俗派と呼ばれていたが、原理派との派閥抗争に敗れて教団を追われ、異端者の烙印をおされ、宗教警察の最優先殲滅対象となっている。

……余談だが、原作名ありキャラ最後の砦でもある。

 

+原理派

現在地球教で支配している派閥。原理派という言葉通り、教義をなにより重視する狂信者派閥。

彼らから見れば世俗派は信仰心に欠け、人類を導く資格がないように思えたらしい。

少なくとも、世俗派と比べると物質的欲望に乏しい、ないしは抑える術に長けていて清廉なのは間違いない。

 

 

 

 

 

+ヴィルヘルム・ダトラー

前半部分の主人公とでもいうべき人物。狂いきってる現体制の有様を内部から解説してくれる。

帝国学芸省で戦史研究家をしていた経歴を買われ、人類史編纂委員会の下級役員をしている。

原作で言及されていた地球を無視した誤り続けた歴史を修正する作業を行っているが、地球教に対して大きな反感を持っており、反体制テロのニュースを唯一の楽しみとしているが、それを表に出すことは決してなく、具体的に何らかの行動をとることもない。

……おそらく第三者視点ではセレブリャコーフと同じ、地球教に屈服しきっている卑屈な奴に見える。

 

+ユーリィ・セレブリャコーフ

ダトラーの同僚。フェザーンで活動していたやり手のビジネスマンで、反地球抵抗運動にも参加していたが、同盟軍による悲惨な弾圧で心が折れてしまい、多くの仲間を地球教に売り飛ばして保身に走った。

その過去から地球教と敵対することを極端に恐れており、ド・ヴィリエ一派のテロに批判的。

……あるいはダトラー同様、本心を偽ってそういう風を装っているだけかもしれないが、本心はだれにもわからない。

 

+ド・ヴィリエ

原作銀河英雄伝説における最後の敵。こいつも地球教陣営じゃないか!とツッコミが入るかもしれないが、こいつが信仰心を持ち合わせていないのは明らかなので、地球教勝利ENDなのにこいつが権力層に居たら違うだろと筆者が思ったのでソ連におけるトロツキーのようなポジションについてもらった。

地球教による人類社会を支配することには成功したが、統一後に慢心しすぎたことと原理派の狂信者たちの暴走力を過小評価していたせいで立場を失い、反地球教テロ活動の顔役になってしまった。

状況が状況であることもあって、原作と違ってトリューニヒトやルビンスキーとは強固な信頼関係で結ばれている。

 

+ヨブ・トリューニヒト

華麗なる詭弁家にして、こいつ以上の純粋政治家の悪役は存在しないのではないかと思える究極のナイスガイ。

この世界線でも地球教とフェザーンの支援を得て出世街道を駆け上がり、最高評議会議長になったようだが、地球愛党の一党独裁体制が敷かれると用済みになって権力の中枢から追い出された。

それからは地球教世俗派の一員として行動し、そこから長じてテロ・グループの幹部になった。同盟の政治家時代に培ったコネクションを活用してテロの実働部隊を編成・統括している。

ちなみに魔術師というコードネームを持つ優秀なテロの指揮官とは深い信頼関係で結ばれている。

 

+ドーソン

神聖地球同盟時代も同盟軍中央の要職にとどまるとかいう、他の原作名ありキャラではできなかった、ある意味とんでもないことを達成している。他の名ありキャラは閑職に飛ばされるか、粛清されているというのに……

彼が軍中枢にとどまれた理由として、トリューニヒトの指示で旧時代から地球教に接近していたからというのもあるが、それ以上に彼の清教徒的で禁欲的生活スタイルが、地球教の高位聖職者から好感を持たれたということも大きい。

保身感情もあってド・ヴィリエ一派のテロ活動にはそんなに協力的ではないのだが、同時に地球教の支配体制に不満を溜め込んでもいるため、こっそりとトリューニヒトに情報を流していたりする。

そして原作で皇帝亡命等の機密管理徹底させたことからもわかるように、こうした活動においてドーソンは決して無能ではなく、彼の情報提供が保身のために玉虫色のことが多いこともあって、地球教首脳部はドーソンの背信を察知できずにいるため、ド・ヴィリエ一派にとっては貴重な情報源である。

 

+アドリアン・ルビンスキー

元フェザーン自治領主。この世界線では帝国を劇的に変化する兆候がなかったので、地球教の計画に全面的に加担し、ド・ヴィリエと組んで地球教の実権を握ろうと目論んだが、失敗した。

ド・ヴィリエ一派では財政・諜報面を担当しており、地球教の厳しい監視を掻い潜って体制内に仲間を作り、資金や情報を入手する最高責任者である。

余談だが、弟子に生意気な金髪がいて、非常に可愛がっている。

 

+ルパート・ケッセルリンク

元フェザーン自治領主補佐官。もう誰も知らないがルビンスキーの息子でもあった。

この世界線でもケッセルリンクは父親を暗殺してその地位を奪うことを画策していたのだが、補佐官になっても金髪と赤毛の二人の有能すぎる懐刀の存在もあって長期に渡って雌伏の時を過ごし、ルビンスキーがフェザーン回廊通行権を地球教に売り渡そうとした時を好機ととらえ、民衆の反地球教運動を利用してルビンスキーを排そうとしたが、失敗して地球教の掌中に落ち、宗教警察によって処刑された。

 

+ヤン・ウェンリー

名前はでてないけど作中でシャンプールへのテロを指揮していた魔術師である。

地球教によって民主主義の精神が完全に踏みにじられたばかりか、養子のユリアン、副官のフレデリカ、後輩のアッテンボローが宗教警察の手にかかり、無残に処刑されている。

ヤン自身はその時遠方の星域にいて、地球愛党がハイネセンで大粛清をしていると知って戻ろうとしたが、たまたま任地が同じだったキャゼルヌとシェーンコップの必死の説得で思いとどまり生存したものの、たとえ命の危険があろうとも彼らを助けにハイネセンへ行くべきではなかったのかと悔やみ続け、結果として地球教への復讐鬼として覚醒し、原作では才能が示されながらも発揮されることはなかった謀略の才能をフル活用している。

それはある意味では原作の民衆からの人気が絶大でなにを考えているのかさっぱりわからない同盟稀代の英雄なんかより、はるかにわかりやすい生き方だったのでトリューニヒトは非常に心強い部下として全面的に後方支援しており、ヤンのほうは「戦争を煽っていたトリューニヒトが……」とやや複雑な思いを抱いているが、支援は非常にありがたく思っているので両者は深い信頼関係で結ばれている。

 

+ラインハルト・フォン・ミューゼル

宮内省の役人がアンネローゼを発見する前に、フェザーンの豪商がオーディンで商売をしに来てたときに偶然発見し、セバスティアンに天文学的金額を積んで買収し、アンネローゼを強引に嫁にしてしまったため、ラインハルトは帝国ではなくフェザーン商人を敵視するようになり、銀河商人伝説の幕があがる。

姉を売った金の一部を父親から奪い取って、その資金を元手にフェザーンの商業大学へ親友と一緒に入学。そこで優秀な成績を示したので、まだ長老会議の議員の一人だったルビンスキーの目にとまり、ラインハルトの能力を高く評価して自分の大学卒業後に直接会って、自身の秘書官に抜擢する。

ルビンスキーが自治領主になると、フェザーンの豪商をあらゆる手で叩き潰してまわる政策実行の中心的人物となり、結果的に姉を豪商から解放することに成功した。

色々と面倒を見てくれたルビンスキーには恩があるのでいまのところ下克上をする気はないが、ケッセルリンク補佐官が宗教警察によって処刑されてから、なぜか自分を息子のように扱うようになったことには大きな不満を抱いている。

こういった流れなのでキルヒアイスもアンネローゼも生き残っているが、彼が帝国で台頭しなかったために原作の帝国側登場人物の多くが悲惨な目にあっているに違いない。

 

::その他原作主要キャラの確定死亡者::

+オスカー・フォン・ロイエンタール

原作的に門閥貴族に殺されるか、それを回避できても地球教に殺されている

+ウォルフガング・ミッターマイヤー

同上。九割方エヴァも殺されている

+ウィリバリト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ

ゴールデンバウム王朝に忠節尽くすだろうし、地球教がそんな奴に容赦するわけがない

+ベルンハルト・シュナイダー

上官がそうなるのであれば、シュナイダーもそうなるだろう

+クラウス・フォン・リヒテンラーデ

もうどうにもならんと地球教に降伏したけど、地球教に戦犯として処刑された

+ダスティ・アッテンボロー

反骨的な将校と評判だったので宗教警察に目をつけられ、粛清

+フレデリカ・グリーンヒル

父親の罪状で連座されてしまい、宗教警察によって粛清

+ドワイト・グリーンヒル

良識家として地球教の大粛清に反対したため、処刑される

+ユリアン・ミンツ

ヤンに対する人質として宗教警察に狙われたが、激しく抵抗し、射殺された


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