ツバメ   作:シロヴィ

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友軍艦隊の演出っていいですよね


12話

――鎮守府近海 上空

 

 敵艦隊発見。その報に空気がピリリと引き締まった。そして向こうも私達に気がついた様で、ドン、ドンという対空砲火の炸裂する音が聞こえてくる。

 

 「あわわわわ‥。」

 「大丈夫だ、まだ遠くで爆発している。そう当たる物ではない!」

 

 後ろの席から聞こえる泣きそうな声を叱咤する。人間、自分よりも怖がっている人を見ると不思議と恐怖が消えるものではあるのだが、後から思い返すとこのときの私は冷静すぎた気がする。こういうところが”反転妖精”の補正なのかも知れない。

 

 『我々第2小隊は、中央の駆逐艦を狙う。ついて来い!』

 

 そう言ってV陣形の先端の小隊長機が翼を振る。あちこちでパパッ、と撃ち上がる対空機銃の弾が光っていた。話に聞くところの曳光弾(アイスキャンデー)というやつだ。流石に恐怖を覚え始めたのか、息が荒くなる。

 

 「ッ、ハアッ、ハアッ‥。」

 

 ドン、ドンという音とともに現れる黒い煙のような対空砲弾の爆発跡。だんだんと振れ幅が小さくなってくる。相手の狙いが合ってきた証拠だ。それに混じる機関銃の光、そしてその中を突き進むエンジンの音――

 

 『突入ッ!』

 

 小隊長の号令で、私は一文字になり降下していく。エアブレーキ展開。

 

 ウウウウウウウーーーッッ

 

 あたりに唸るような音が響き始めた。Ju87”スツーカ”の代名詞、急降下時に風圧で鳴るサイレン、通称ジェリコの喇叭だ。

 

 ガタッ、ガタガタガタッ

 

 吹き付ける猛烈な風に、風防が振動する。速度が出すぎないようにエンジンを絞っているので際だって聞こえた。

 

 黒い点でしかなかった目標の姿が徐々に現れてくる。海面に波の跡を残しながら回避運動をとっているそれは、まるで大きな黒いクジラのようであった。少なくとも私の知っている駆逐艦とはかけ離れている。

 

 ビリビリと振動する操縦桿を固く握りしめ、自分に落ち着けと言い聞かせる。矢のように降りていく機体。目標が視界に占める割合が大きくなってゆく――

 

 『投下!』

 

 先頭の小隊長機が爆弾を投下し、離脱。それに続き、私達も爆弾投下のレバーを倒し、思い切り操縦桿を引いた。

 

 「ぐうぅ‥。」

 

 急降下から一気に機首を引き起こした為に発生した気絶しそうな程のGに体がきしむ。

 

 「‥っハアッ!」

 

 それが和らぐと、私は止めていた息を吐き出した。そして、次の瞬間。

 

 ドゴォォォン!!

 

 大きな爆発音が響いた。まさか、命中か!?

 

 「副手、状況知らせ!」

 「きゅう‥」

 

 気絶していた。仕方が無いので自分で周りを見てみると、3隻とも朦々と炎や煙を噴き上げ、動きを止めていた。

 

 『皆よくやった、全て撃沈だ!これより帰投する。被害を受けた者は知らせよ。』

 「『了解!』」

 

 この日の戦果は、敵艦隊、軽巡以下3隻を撃沈。此方の損害は雷撃機2機の撃墜と、多少の被弾のみであった。その雷撃機の搭乗員も、すぐに近海型U-ボートにより救助されたという。

 

 ‥しかし、たったの16機で巡洋艦を含む艦隊を壊滅させられるとは。やはり相手が艦である以上、一番効くのは雷撃であろう。しかし、今の我々には極東の同胞達が持つと聞くような軽快な雷撃機がない。時代遅れの複葉機か、鈍重な双発機ばかりだ。今回の結果からも分かるように、それでは敵の防空網をくぐり抜ける事は難しいだろう。

 だが必要とはいえ、全く以て新しい物を開発するには長い時間がかかってしまう。今までにない分野となればなおさらだ。

 

 ‥いや、待てよ?同じような事例を私は見たことがあるような‥。

 

 考え事をしながら少々雑な着陸をした後、すっかり疲れてしまっていた私は床に入るのだった。

 

 




次回はまた番外編です
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