ヘルミーナさんが、不意に資料をめくっていた手を止め、私の顔をじっと見る。
「‥設計図もあるじゃない。これ本当にあなたが描いたの?」
「そうだが。」
正直に答える。彼女は無言で私をしばらく見つめた後、紙面へ目線を戻した。
「随分とまあ細かく描いてあるけど、あなた本当にただのパイロット?‥まあいいわ。要はスツーカに魚雷引っかけられるようにすれば良いのよね?‥というか、なんで私の所には変な依頼ばっかり来るのかしら‥。あー、うん、分かったわ。」
途中で何かボヤキが聞こえたが、どうやら了承してくれたらしい。気分屋と聞いてはいたが、悪い妖精ではなかったようだ。
「ありがとう。機体は後で運び込んでおく。」
「お礼なんていーわよ別に。丁度この対地攻撃型が終わって暇だったしね。あ、じゃあ君、これを陸軍の所まで持ってってくれる?ハンス大佐って人だったはずよ。」
「僕ですか‥。」
流れるように青髪に仕事を押しつけるヘルミーナさん。嫌そうにしながらも断れない所を見ると、益々二人の関係が気になる。
「あ、そうだ。お礼はいらないとは言ったけどさ、改造終わったら酒保でビールでも買って持ってきてよ。4機も改造するんだから、その位は貰うわ。」
悪い妖精というより、多少図々しい妖精だったようだ。
――鎮守府近海 数日後
晴れた空の下、3隻の艦娘が飛沫を立てて海面を疾駆する。
先頭は、軽巡洋艦エムデン。艦隊の中では古参であり装備も旧式だが、長い間に渡って戦闘に貢献し続けた強者である。
「レーダーに感あり!10時の方向、距離11,000!」
彼女の艤装に憑依している乗組員養成より報が入る。
「針路そのまま。全艦、対空警戒態勢に入れ。」
「
その後に続くのは2隻の駆逐艦。Z2:ゲオルグ・ティーレと、Z4:リヒャルト・バイツェンである。
「ねえバイツェン、対空砲は今回禁止なんでしょ?つまんないなぁ。」
「そうよ、ティーレ。相手は試験機だと聞いているわ。壊しては困るのよ。」
「う~ん、ま、いっか!避けるのは得意だし。」
「そうね。でも、これはそもそも回避の演習よ?」
「あれ、そうだったっけ?」
よく分かっていない様子のティーレに、バイツェンは呆れた顔をした。
「貴様達!陣形が崩れそうになっているぞ。喋っている場合ではない!」
「「は、はい!」」
ずっと喋っていた2隻に、エムデンの叱責が飛んだ。彼女は今ではほとんど前線に立つことはないが、その経験を活かし練習巡洋艦となって役目を果たしている。
「!!」
そのとき、彼女の鋭い目が機影を捉えた。実験部隊の雷装型スツーカだ。編隊を組んで、左舷より低空で突入する気のようだ。
「ティーレ、バイツェン、遅れるな。両弦一杯ッ!」
彼女は立てる飛沫をより一層激しくし、空を睨んだ。
15話にして初のまともな艦娘シーンである