――数時間後 ルクセンブルグ 西欧方面司令部
そこには、険しい顔の二人がいた。
「まず状況の確認からだ。手短に頼む。」
先に口を開いたのは、ドイツ海軍最高司令官、アルフレート提督であった。先ほど連絡機で飛んできたばかりである。
「ああ分かった。昨夜、姫クラスと思われる艦が単騎でドーバーに侵入。イギリスの警戒艦隊をコテンパンにした後、沿岸に片っ端から砲撃したようで、当のイギリスだけじゃなくうちのカレーやダンケルクも少し被害を受けているらしい。」
報告したのはネイビーブルーの軍服を着た長身痩躯の青年、フランソワ提督。フランス本国艦隊の司令官である。
「で、その姫クラスは姿をくらましているが、それと入れ替わりに侵入してきた艦隊によってオランダ方面に強襲揚陸を受けてる。‥復興途中地域だから民間人に被害が出ていないのは不幸中の幸いだったか。だが、今はデン・ハーグに立て籠もって応戦中のオランダ軍はあまり長くは保ちそうにない。」
アルフレート提督は軽く頷く。
「成る程。では、反撃計画はどうなっている?敵の戦力は分かるか?」
「‥まだ情報がまとまっていないから断言は出来ないが、敵艦隊の規模は戦闘艦艇に限れば軽空母ヌ級が1、重巡リ級が3、軽巡へ級が2。その他、揚陸部隊を運んできたワ級が数隻と護衛の駆逐艦が数隻ってとこだな。揚陸部隊はこちらの基準でざっと2個連隊くらいらしい。まあちっと数は多いが、お前の所の艦隊なら撃破可能だろ?」
数年前に協議された防衛計画では、もし深海棲艦が侵入してきた場合、ドイツ艦隊が即応部隊となって敵を迎撃する事になっていた。それを踏まえてのフランソワ提督の発言だったのだが‥。
「駄目だ。」
アルフレート提督は首を横に振った。
「すまない、何だって?」
「今は無理なんだ。」
「何故!?おい、どういう事だ!」
思わず大声を上げるフランソワ提督。アルフレート提督は苦虫を噛み潰した様な顔で答えた。
「不覚にも、鎮守府近海に機雷を敷設されていた‥。飛行機からバラ撒くやつだ。現在除去作業中だが、すぐには艦隊を動かせそうにない。」
フランソワ提督はそれを聞くと、思わず額に手をあて唸った。
「‥待ってくれ。フランスの主力艦隊は今ダカールに展開中で、本国ブレスト鎮守府にいるのは軽巡1に駆逐艦4だけだぞ?イギリスにしても警戒艦隊はドック入り、本国の主力艦隊も今は作戦行動中らしいと聞く。」
がら空きである。
「それは何ともタイミングの悪い時に来られたものだな‥。」
「アテにしていたドイツ艦隊が動けないならばこうなるのは必至だろう!?‥いや、まあ、英仏が同じタイミングで主力を動かすなという話なのかもしれんが‥。」
二人同時にため息をつく。
最早どうすれば良いのか分からず、暗い雰囲気が部屋に漂い始めた。が、
バアンッ!
派手な音をたてて扉が開かれる。
なんでドイツ人とフランス人が普通に会話してんだよ、というツッコミに対しての先制攻撃ですが、
この世界には艦娘、妖精、そして提督(=妖精と話せる人間)のみが解する共通言語、仮称「妖精語」があります。