派手な音を立てて部屋に入ってきたのは一人の青年だった。
長身で切れ目、薄い金髪碧眼。勲章の多く付いた青い軍服を着ている。
「話は聞かせてもらったぞ。私にいい考えがある。」
突然の登場に、独仏二人は驚いて立ち上がっていた。
「お前は‥。」「ニコライか!」
ニコライ。若きロシア対深海局の重鎮であり、ペトログラード鎮守府の司令官でもある。
「‥こんな時に何をしに来た?」
艦隊が行動不能という大変な事態に大いに頭を悩ませていたアルフレート提督は、かなりイライラした様子で対応する。
「待て、考えがあると言うじゃないか。一応聞こう。」
フランソワ提督はまだある程度冷静であった。
「ああ、実は、襲来した艦隊に対し迎撃出動できる位置に戦艦が1隻いるのさ。具体的に言うと、セヴァストポリ鎮守府から改装のためにこちらへ回航中だった、戦艦パリジスカヤ・コミューナがボルドー沿岸にいる。彼女とフランス艦隊が組めば、ある程度は対抗できるんじゃないか?」
まあ俺がここに来た理由はその彼女が騒動に巻き込まれていないかを確かめる為だったんだけどな、とニコライ提督は続けたが、英仏の二人は既に作戦計画を練り始めていた。
「‥確かに、可能かもしれない。ただし懸案事項としては、相手の空母がいる事だな‥。」
「そこは、陸上の空軍を動かせばいいだろう。ただし、我々の戦闘機は海戦している間ずっと制空権を維持できるほど連続稼働時間が長くない。」
「ローテーションを組めばなんとかなる。イギリスにも協力を要請してみよう。」
ニコライはすっかり蚊帳の外である。
「な、なあ。確かに彼女の指揮権は一時的に渡すし、海の方を叩く算段をつけるに越した事は無いんだけどよ。上陸してきた部隊の相手はどうするんだ‥?」
その言葉に、アルフレート提督はこう答えた。
「我々海軍は今回少しばかりヘマをしたが、陸軍までもがそうだと思ったのか?」
――オランダ デン・ハーグ 防衛指揮所
高い階級章をつけた妖精達が険しい顔をして悲痛な無線を聞いていた。
『ついに戦車まで見え始めました!』
『こちらA面、撤退の許可を!』
『負傷者多数!メディーック、メディ--ック!!』
一人が口を開く。
「やむを得ない・・・。ここは一度撤退するべきだろう。」
「だが、デン・ハーグを捨てるとなると、次の防衛線はどうなる?薄く広がりすぎても不味いぞ。」
それにもう一人が反論する。しかしそれにまたもう一人が問題を指摘するなど、議論は堂々巡りとなっていた。
「失礼しますっ!」
そこに伝令が飛び込んできた。将校達が何事だと問うと、伝令兵はパッと顔を輝かせてこう叫んだ。
「援軍です、ドイツ軍の援軍であります!」
おお、と声が上がる。そこに、一つの通信が舞い込んできた。
「こちらドイツ第3戦闘団。内突撃砲大隊の展開が完了した。これより攻勢を開始する!」
ハーグの戦いは描写しません